厨二病全開\(゜ロ\)(/ロ゜)/
夜。
暗い森の中をひとりの男が必死に逃げている。
「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ…!!」
恐怖に引きつった顔に余裕というものは一切なく、月光の薄明かりさえ届かない暗い森のなかで男は何度も足をとられながら必死に逃げ惑う。
逃げながら、男はついさっき己の身に起きた出来事を、まるで白昼夢のように思い出した。
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その男はいつのまにか立っていた。
簡易とはいえ、ここはかつて戦争中に木の葉の忍が拠点として用いていた海岸近くの洞窟。
入り口には少なくとも二人の見張りが立っていたはずだ。
ただならぬ雰囲気を漂わせ、ホールのようになった洞窟の中心、五十人近い人数がたむろする中を彼は悠然と見渡した。
まるで気後れしていない雰囲気に、この場を治める元霧隠れの中忍は
(…ひょっとしたら自分の知らない、盗賊連合に参加した他の盗賊の首魁かもしれない)
と思った。
であれば問答無用に切り捨てるのは不味かろうと、元中忍の男は現れた男に誰何(すいか)した。
「お前、どこの団員だ?連合のひとりか?」
だが問いかけた元中忍の声を無視するように男は引き続き部屋を見回すと、がっかりしたように肩を落とす。
「…やれやれ、最大規模の非合法組織と聞いて来てみれば。なにが『夜明け連合』だ。盗賊のくせに仰々しい名前をつけやがって」
男の言葉に違和感を感じた元中忍は、もう一度目の前の男をよく見る。
良く言っても時代錯誤な装備をした男の姿に、元中忍は既視感を覚えたのだ。
まず目に入るのは第一次忍界大戦でよく用いられたと聞く鎧具足だろう。鉄の国の侍と違い、最小限に抑えられたそれは身を守るというより不意打ちに備えたような印象を覚える。
腰には恐らく口寄せ用の巻物を下げ、武器の類は苦無さえ持っていない。
元中忍は少なくとも目の前の男は現役の忍ではなかろうとたかをくくった。
しかし、それが過ちだった。
「《火遁・豪火滅却》」
「なっ!?」
驚く間もなく炎の壁が迫ってくる。
如何に広いとはいえ誰がこんな閉じた場所で、しかも初対面の人間が大規模殲滅用の術を放ってくると思うだろうか。
「《水遁・水陣壁》!!」
咄嗟に腹心の同じ元霧隠れの忍が対抗しようとするが、そのときにはもう元中忍の男は隠し通路の扉を塞ぎ、逃走を図っていた。
元中忍の男は現れた男の正体を炎が吐き出される寸前思い出していた。
『木の葉の赤い業火』。
かつて戦場で今の技が放たれたとき、無数の忍が瞬く間に炭に変えられたのを元中忍の男は覚えていた。
やつが手練れの数十人に囲まれながら、向かってくる相手を嬉々として殴り潰していった光景を覚えていた。
あらんかぎりのチャクラを足にこめ、元中忍の男は走る。
急げ、急げと。
背中に熱が迫ってくる。
このままでは焼かれてしまう。そう元中忍の男が思ったとき、隠し通路の出口が見えた。
元中忍の男はためらわずに雷遁で外の扉入り口につけた起爆札を爆破させる。
大量の土砂にもまれながら、それでも元中忍の男はめげずに外を目指す。
やがて、空気がひんやりとしたものに変わったのを感じたとき、元中忍の男は歓喜した。
やった、自分は生き残ったと。
しかし、息を整え見上げた先にあったのは───月を背景にこちらを睥睨する“赤い眼”だった。
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それからも男はひた走った。
“赤い眼”から逃れねばと。
肺が破け、心臓が張り裂けんばかりに走り続けた。
だが、どれだけ走っても見上げた先にはあの“赤い眼”をした男が立っている。
もう自分がどれだけ走ったかわからない。
このままでは呼吸が止まる。
だがどれだけ走っても“赤い眼”からは逃げることができない。
やがてチャクラも使い果たし、体力も底を尽きた元中忍の男は、“さきほどから必死で足踏みをし続けた”場所で息絶えた。
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息絶えた忍を見下ろしながら、サイゾウは嘆息する。
彼は焦っていた。すでに里を出てから二年半が経つが、いまだ自分への接触はない。
サイゾウは里を出奔してから、ふたつの手段を用いて犯人を探していた。
ひとつは、自分自身が九尾事件の犯人であるかのような噂を流すこと。
これは表面上抜け忍となった自分自身への、非合法組織からの接触を期待してのものである。
仮に犯人が組織だった集団であれ、個人であれ、手柄を横取りされたような噂を流されて気分がいいはずがない。
必ず接触してくると考えたサイゾウだが、いまだ自分を“九尾事件の犯人ではない”として接触してくる相手はいなかった。
また逆に、サイゾウ自身は九尾事件を単独犯ではないと踏んでいた。
木の葉へあっさり侵入できたことといい、事件を裏から支援した存在が必ずいる。
だが、大小の組織を無数に潰しても未だ手がかりひとつ手に入れられてないのが現状だ。
こちらに関しては、近々自分が里を出てから出奔したという大蛇丸に情報提供を頼むつもりだった。
もうひとつが、以前ちらとその姿を見かけた黒い影だ。
サイゾウはこちらの方をこそむしろ本命だと思っていた。
妙な甘言を吹き込もうとしてきたので火遁で焼き尽くしてやろうとしたのだが、ミナトからは
「まず捕まえようよ」
と呆れられたのを思い出す。
もし今度姿を見かけたら、開眼した万華鏡の能力を徹底的に試してやるつもりだった。
サイゾウは懐から煙草を取りだし、掌に現出させた火遁で火をつける。
紫煙を燻らせながら、サイゾウはこれまでの調査でうちはの抜け忍はいないことを確信していた。
そもそも名門ともいえる“うちは”や“日向”から抜け忍が出ることは滅多にない。
生活環境の変化に大半が付いていけないからだ。
サイゾウとて、こうして調査をしているとき以外は高級宿を拠点にしている。
人間、早々自分の暮らしを変えることはできないものだ。
一年半前に会った綱手は、今は木の葉に戻ってくれている。
トラウマを克服したわけではないものの
「あんたが戻る場所くらい、守ってやらなきゃね」
と、サイゾウに照れ笑いを向けて告げる姿はひどく眩しかった。
思わずむらむらして押し倒したので出発が一日伸びたが。
シズネも
「あ、あんなことしたんですから、ちゃんと無事に戻ってきてくださいね!」
と言われたので、結果的には出発が二日伸びたが。
また三代目から直属の暗部を使って時折連絡が来るが、やはり事件当日現役のうちはに犯人はいないようだ。
とはいえ九尾を口寄せしただけならともかく、瞳術で操ったというのが引っかかる。
そんなことができるのは“万華鏡”の開眼者以外にいない。
サイゾウは自分自身が万華鏡写輪眼に開眼したことから、以前以上にその考えを強くしていた。
今サイゾウが把握している万華鏡の開眼者は三人。
まずは自分、次に“兇眼”フガク、そして“瞬身”シスイ。
このなかで九尾を操れそうな候補に上がるのがシスイだ。
だがそれはないだろう、とサイゾウは思う。
まずシスイが里を襲う理由がない。ミナトを死なせたのが結果的なものだったとしても、“弟”がそんな風になっていれば自分が気づかないはずはない、とサイゾウは独りごちる。
…あるいは何者かが《口寄せ・穢土転生》を用いてマダラを操ったか。
だがこの術には欠点がある。
浄土から口寄せした対象は、その能力を全盛期に近づければ近づけるほど操るのが難しくなる。
マダラならば操らずとも木の葉を襲いそうなものだが、そうなった場合おかしいことがある。
これは大蛇丸とともにサイゾウが《口寄せ・穢土転生》を研究していて気づいたことなのだが、あの術は口寄せした対象が印を知っていると一方的に解除することができるのだ。
するとどうなるか。
無限のチャクラを持つ制御不能の不死身の怪物が生まれるのである。
で、あるならば殊更におかしい。
もしそうなら先のような半端な襲撃にとどまらず、マダラは無限のチャクラを用いて里を蹂躙したはず。
そうなったとき、マダラを止めることは容易ではないだろう。
仮にあの“おとぎ話”じみた逸話が本当だとすれば、それこそ対抗手段は初代火影千手柱間を《口寄せ・穢土転生》するしかなくなる。
しかしそうではない。となると…
「…犯人は、死んだ誰か。いや、死んだように見せて生き残ったうちは、か?だとしても、里を襲うほどに憎む理由が理解できん」
戦争で死んだうちは一族は多い。
それはうちはに限らないが、みな納得して死んでいったのだ。
里を、誰かを守るために。
そんな“誰か”が木の葉を潰すほどに憎むなど、サイゾウは考えたくなかった。
「ま、憶測だけじゃ無理があるか。やはり犯人に繋がる情報を手にいれる必要があるな」
サイゾウは短くなった煙草を指で弾くと、跡形もなく焼き尽くす。
まずは近いうちに大蛇丸と接触し、そこで彼が入ったという“暁”に関する情報を手にいれる。
サイゾウは改めて今後の行動を確認すると、残った盗賊達の拠点へと、赤い眼を輝かせて向かっていくのだった。
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神無毘橋の戦いより約一年前。
特に理由もない小競り合いから発展した第三次忍界大戦。
当時、戦場は未曾有の消耗戦と化した。
木の葉を率いた千手柱間、扉間の両名はすでに亡く、彼らと曲がりなりにも対抗できる強者もほとんどいなくなっていたことが、戦いにおける決定打を失わせ、消耗に次ぐ消耗という戦争として最悪の形へと移行していった。
それはお互いに手段を選ばぬ戦いへと移行していき、捕まった忍の多くが激しい拷問によって命を落とした。
そんな中、ひとりのクノイチが捕まった。
海岸近くに作られた、捕虜を捕らえておくことを目的とした簡易要塞。
血継限界という霧隠れにおいて忌み嫌われる能力を持ちながら、努力によって中忍へと登り詰めた才女。
照美メイは、大蛇丸に囚われていた。
「…大蛇丸先生、この間捕まえた女の尋問ってまだでしたよね」
サイゾウは師である大蛇丸の薬品調合を手伝いながら、なんのことはなしに尋ねた。
「ええそうよ。霧隠れに捕まって悲惨な目にあった木の葉の同胞は多いと聞くわ。あの女、懸命に隠していたけど霧隠れの名門“照美”の血筋よ。彼女には精々悲惨な目にあって、里の者達の溜飲を下げる“材料”になってもらうわ。くくく、自慢の娘を無惨に殺されて狼狽する、照美家当主の顔を想像するのが楽しくて仕方がないわ」
「…そうですか」
「言っておくけどサイゾウ。妙な気を起こすんじゃないわよ。あの女を逃がしたところで、仲間が後から犠牲になるだけ。それがわからないあなたじゃないでしょう?」
「…ま、わかってますよ」
「ええ、わかってるならいいのよ。けど、あの女を逃がすだなんて真似をしたら、その対価は思ったよりも高くつくのを理解してちょうだい」
「うす。それじゃ、俺はちょいと出てきます」
背後からの大蛇丸の視線を感じながら、サイゾウは霧隠れとの戦いに限らずこの戦争自体が異様な空気に呑まれていると感じていた。
戦争というのは、あくまで手段でなければならないとサイゾウは考えている。
しかしこれまでサイゾウが経験してきた小競り合いとは違う本格的な戦争は、あらゆる人から人間らしさを奪っていると感じていた。
師である大蛇丸ですら、近頃は捕虜を解体するのを楽しんでいる節がある。
だからサイゾウは
そこは“まだ”生きている捕虜が入れられている牢のひとつだった。
サイゾウは無造作に鍵を捻り壊し、部屋へと踏みいる。
「…くっ!」
部屋には両手足を縛られた少女がいた。髪の色は茶、まだ若いが女としてそれなりに成熟した体型が自由を奪われているのは、それだけでどこか“そそる”ものがある。
しかしサイゾウは諸々の衝動を抑えて、冷徹に女へと話しかける。
「おいお前、なんで死ななかった」
「…」
「自分が捕まったらどういう目に遇わされるかくらい、わからない
目の前の少女が大蛇丸特性の薬によりチャクラを練れなくされているとはいえ、自害まで禁じられているわけではないことをサイゾウは知っていた。
それは大蛇丸の慈悲か。はたまた人の心を弄んでのものか。
「…わたしは、わたしはこの世界を変えたい。そのためには、こんなところで死んでいる場合じゃないんだ。わたしは血霧の里と呼ばれるあの里を、霧隠れを変えたいっ!」
「ふっ、現実を見ろ。お前は捕まり、チャクラも練れず、やれることと言えばわめくか死ぬかの二択だけ。…それでどうやって霧隠れを変える?」
「…あんたに、いいえ、“貴方”に協力してもらうわ」
「俺が?どうして見ず知らずのお前に協力するんだ」
サイゾウは身動きできない少女を見下ろして薄笑いを浮かべる。
「ここに入ってすぐ、貴方はわたしの体を舐め回すように見ていたわ。だから、貴方が協力してくれるならあたしの体を好きにさせてあげる」
「全然足りないな。お前の体を好きにするだけなら、この後大蛇丸先生に薬を打たれた後でやればいい」
「本気で貴方を愛して抱かれてあげるわ。それでもダメ?」
「…悪くないが、まだ足りん。それしか無いなら、俺はもう行くぞ」
「くっ、なら取っておきの情報よ。六尾の人柱力がもうすぐ木の葉の国境沿いに点在する拠点をしらみ潰しに叩くわ。貴方が協力してくれるなら、人柱力が最初に目標にしている場所を教えてあげる…!」
「なんだと…」
サイゾウは僅かに悩んだ。相手が人柱力を投入しようと考えているなら、半端な忍では対処できない。
国境沿いの拠点といえど、ひとつではないのだ。
「いいだろう。では改めてお前の名を聞こう。俺は“うちはサイゾウ”だ」
「『赤い業火』!?とんでもない男に協力を頼んだものね、あたしも。それに今の条件で納得してくれたのも理解できたわ。優しくしてね?『種馬』さん」
「…その名前、マジであちこちに広がってんのかよ。ま、善処してやる」
言うなりサイゾウは、メイの上へと覆い被さった。
縄はそのままに、服を切り裂いて乳房と秘所をむき出しにする。
「ちょっと、裸のまま出ていかせる気?」
「こうでもしなけりゃ、俺が襲ったって思われないだろうが。まあ無理だと思うが、一応嫌がる演技をしてな」
「どういう意味───んむっ!」
メイは唇を奪われ、口の中をサイゾウに蹂躙される。
メイとて、処女というわけではない。
戦場に出ることになる前に、数年前に処女は捨てている。
相手の男はあっさり死んでしまったが、それでも会えばお互いを求めあうくらいには情熱的な関係だった。
だが、今されている口づけはかつて交わしたものとまるで違う。
まるで、炎で熱せられているような感覚。
体の奥が口から伝わる熱で溶かされていき、無意識に固く入れていた力が抜かれていく。
「んんふっ、ふんん、んぱっ、はうっ、あ、まって、息が…」
「そんな余裕はやらねえよ」
サイゾウの指が、メイの秘所をこする。
下履きの上からこしょこしょと。
柔らかく刺激されたにも関わらず、的確に“豆”をつめで掠りあげられた快感が全身に伝わっていく。
やがてメイは、口づけと指の刺激だけで達しそうになっている自分に気づく。
そのあまりの早さにメイは愕然とするも、動きをまるで緩めないサイゾウによって口を塞がれたまま達してしまう。
「~~~っ!」
自分から誘ったとはいえ、あまりといえばあまりな展開にメイの頭はついていけなくなる。
「…それじゃ、入れるぜ」
「うあああっ!?うそ、ふ、ふといぃ!」
かつての恋人の逸物がまるで指にしか感じられない。
いつのまにか縄は解かれ、四つん這いになっていたメイは声をかけられた時には挿入されていた。
サイゾウの逸物は急激な圧迫感をメイにもたらし、動きによって全身をしびれるような快感が追加で叩きつけられる。
「うあっ、こんな、いや、まって、まってえ…!」
「ダメだね、お前が誘ったんだ。責任はとってもらうぜ…!」
「…あなたはなにをしているのかしら、サイゾウ」
突如として聞こえた第三者の声に、メイは内心で震え、膣がきゅうきゅうと絞まる。
「尋問、して、るん、ですよ!」
動きをまるで緩めず、腰を前後させながら答えるサイゾウ。
メイは大蛇丸がもたらす尋常ではない殺気に震えが止まらない。
「…あたしは許可した覚えがないわよ」
「知って、ますよ!だったら、先生が“壊す”前に楽しみたいじゃないですか!」
サイゾウは激しく突いたことで震えているように見せかけたメイを安心させるように、今度はゆっくりとした抽挿に切り替える。
根本まで抜き、奥まで突き刺す。これをじっくりと、ゆっくりと繰り返すのだ。
「大蛇丸先生、六尾の人柱力が今どこにいるか知っていますか?」
「どういうこと?六尾なら、波の国でジライヤの率いる部隊と戦っているはずよ」
「ではもう、情報が古いですね。今詳細を聞き出している最中ですが、六尾はこちらに向かっていますよ」
「なんですって?」
その時、拠点としていた洞窟が大きく揺れる。
「…まさかここが最初かよ」
「ちっ、サイゾウ!さっさと終わらせて迎撃に出なさい!わたしは資料をまとめて木の葉に送るわ!」
急いで出ていった大蛇丸の姿にサイゾウはほっと胸を撫で下ろす。
あやうく目の前の少女とともになますに刻まれるところだった。
サイゾウはまだいきり立ったままの逸物を引き抜くと、口寄せ巻物を取り出してそこから着替えを取り出す。
「とりあえずその格好でここから逃げろ。道は俺が作ってやる」
「…ま、まだ股間が変な感じする。え、ちょっと、貴方はどうするのよ!」
「六尾を止める」
「な!?バカなこと言わないで!相手は尾獣よ!しかも衝撃からして、おそらく完全に尾獣化しているわ!いくらあんむっ───…バカ、キスで誤魔化すだなんて、最低よ…」
すがりつくように抱きつくメイを、サイゾウはゆっくりと引き剥がす。
「このくだらない戦争が終わったら、次に会ったときはたっぷり続きをさせてもらうぜ」
メイの下腹を撫でながら言うサイゾウだが、不思議とイヤらしさはなかった。
「…約束よ、もし破ったらあなたのこと溶かしちゃうんだから」
「そいつは怖いな。…さて、やるとするか」
サイゾウは比較的外が近い方向の壁を向き、左拳を構える。
「第六・景門…開!!」
次の瞬間、サイゾウの全身から凄まじいチャクラが溢れだす。
「な、なに、その技は…?」
「今は教えられん、いずれな。今から“出口”を作る、お前はそこからまっすぐ逃げろ」
「…わかったわ。死なないでね」
「おう!…
斜め上に向かって放たれた凄まじい一撃が、洞窟の壁を砕き貫いていく。
十メートル以上に渡って人一人が楽に通れるほどの穴が開くと、メイは瞬身で一気に外へと躍り出た。
すぐ近くで六尾の尾獣が暴れまわり、無造作に振り回した尾が岩を飛ばしてくる。
メイに向かって飛来した岩石だったが、彼女はそれを見ようともしない。
しかしそれは彼女の想定通り、後から飛び出した男がすべて打ち砕いていく。
「行け!」
メイはその言葉に返事することなく、駆け抜けていった。
「…さて、それじゃこっちもさっさと次の手札を切りますかね」
一度八門遁甲を解除したサイゾウは、術を発動する。
「《影分身の術》!」
六体現れたサイゾウの影分身は、すさまじい速度で尾獣の周囲を囲む。
「…お前のような馬鹿デカい化け物には、それなりの対処法ってものがある」
一際高い木の上に立ち暴れまわる尾獣を見下ろして告げる。
「《火遁・
サイゾウが告げれば、六ヶ所に配置された影分身が一斉に爆発し、激しい炎の濁流と化す。
「《火遁影分身》だ、せいぜい焼かれて悶えろ」
結界を兼ねた炎の領域が、中心にいるナメクジにも似た六尾の尾獣を熱にさらし焼いていく。
『ギィィィィィィィィィ!?』
甲高く苦悶の声をあげる尾獣がさらにのたうちまわり、木々をなぎ倒し、森を壊していく。
「思ったよりもチャクラを消費してない…なら見た目ほどのダメージはないか、さすがは尾獣」
写輪眼でチャクラの流れを読み取れば、相手へのダメージはせいぜい表面的なものだとわかる。
とはいえ、尋常ではない苦痛を味わっているだろうが。
「畳み掛けさせてもらうぞ」
サイゾウはさらに印を組み、集中する。
左腕が疼き鳴動するが、それを意思力で無理矢理押さえつける。
「《木遁・
発動と同時に、サイゾウの足元から筍が生えてくる。
一見滑稽な姿だったが、次々と生えてくる筍はあっという間にその数を増し、進軍するかのように六尾の元へと近づいていく。
その間に六尾が炎の結界を、全身から吐き出したシャボン玉に似た尾獣玉で無理矢理吹き飛ばす。
「遅い、“
逃げ出そうとする尾獣の足元まで殺到した筍が成長し、その動きを邪魔するように竹林がそびえ立っていく。
「こおぉぉぉぉっ!」
再び六門・景門を開いたサイゾウは、今度は右拳を構える。八門遁甲の第六の門を開いたことで活性化された身体エネルギーが、目視できるほどに濃いエネルギーとなって一点に集まっていく。
その間も尾獣は逃げようともがくが、折っても折っても生えてくる竹林に阻害され遅々として逃げ出すことができていない。
「はっ!」
サイゾウの立っていた木が、気合いと共に跳び立った衝撃を受け縦に爆ぜ割れる。
尾獣の顔面近くまで砲弾の如く近づいたサイゾウは、溜めていた力を解き放つ。
「
爆竹が炸裂したような音が一発周囲に響き渡り、サイゾウは大きく吹き飛ばされた。
「…ちっ!まだ三発が限界か!」
砕けた拳と腕を抱え、サイゾウは着地する。
六尾の尾獣はといえば、打ち込まれた拳によって顔は拳の形に陥没し、海岸に近い場所まで数百メートルは吹き飛ばされその動きを止めていた。
「…相変わらずでたらめな戦いかたね」
「大蛇丸先生!見てたなら援護してくださいよ!」
「冗談言わないでちょうだい。最初の大炎界ならともかく、あんたの“竹”邪魔すぎるのよ」
「初代の細胞移植したのは大蛇丸先生じゃないですか…」
「うっさいわね。なんで適合した上に木遁で出てくるのが竹なのよ。普通に樹木を扱いなさいよ」
「そんなこと俺に言われても…」
まるで喜劇のような掛け合いだが、大蛇丸は心底驚嘆していた。
(柱間細胞への適正だけじゃない。八門遁甲といい、この子のもっとも恐ろしいのはどんなモノでも受け入れてしまう“適応力”。忍術も体術も、全てを高いレベルで自分のモノにして昇華させていく。今はまだ体術に頼っているきらいがあるけど、本格的に忍術を操るようになったらいったいどんな“化け物”に成るのかしら…!)
将来の自らの“器”として、また記念すべき最初の“作品”として。
大蛇丸はうちはサイゾウの行く末が楽しみで仕方なかった。
「それにしてもサイゾウ。あなた結局あの女を───」
「…すげえ!尾獣を素手で倒しちまった!」
「ああ、それにあの火遁。さすがは“うちは”だぜ」
「種馬だけどな」
「なあ、なんか筍めっちゃ生やしてなかったか?俺の気のせいかな?」
わいわいがやがや、と。
サイゾウの活躍を間近で見た木の葉の忍達がやってくる。
大蛇丸は内心で舌打ちした。
蔓延する厭戦気分を、たった一度の戦いで吹き飛ばしてしまったサイゾウ。
今サイゾウを処罰すれば、せっかくの士気が台無しになるだろう。
これを無意識どころか半ば計算のうえでやっているのだから恐れ入る。
「ああ、大蛇丸先生。あのクノイチ、逃げちゃいました。すいません」
どこか得意気に語る己の弟子に、大蛇丸はまた今度一服盛ってやろうと考える。
この男と一緒にいると、自分のペースが乱され思い出してしまう。
綱手やジライヤと一緒に、純粋に木の葉の為に戦っていた頃を。
ズズズ…
いつのまに起きたのか、六尾がその巨体を海に沈めていく。
もはや追撃しようにも間に合いそうになかった。
「…もういいわよ。少なくとも尾獣を単独で迎撃できる忍がいる、という情報が知れ渡ることになっただけ今回の戦いは得るものがあったわ」
大蛇丸は考える。
この戦争が終わったとき、サイゾウと自分の関係はどうなっているのかと。
「案外サイゾウが火影になって、あたしがその補佐に回るのも面白いかもね」
「なにか言いました?」
「なんでもないわよ。それよりサイゾウ、拠点がめちゃくちゃだからここは破棄するわよ。資料まとめるの手伝いなさい」
「うえ、やけに早く終わったと思ったら終わってなかったんですね。…はい、睨まないでください。やりますから」
どこか対照的な師弟が歩いていく。
その未来がいずれ交わるのか。
夜空に輝く月は、そんな二人を照らすのみ。
補足★説明
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《木遁・竹林牢壁》
移植された柱間細胞に適応したけど、なんか妙な形で発現した能力。
ちなみにこれしかできません。未熟な頃は毎晩食事が筍でした。
《火遁・大炎界》
原作であった雷遁影分身の火遁バージョンを種火に、対象の周囲を灼熱で包み込む結界忍術。
ちなみに対尾獣用な為“大”が付く。
焦熱陣はチャクラの消耗を上げて短時間高火力にしたバージョン。イメージ的にはまんまペインパッカー。
『衝犀(しょうさい)』
一点特化の打撃技。こちらは左手。まだ八門遁甲を使いこなせてないので、某アカデミアの主人公ばりに撃つ度怪我をする。印を組むときは痩せ我慢してました。
『撃豹(げきひょう)』
一点に連続で叩き込む打撃技。決まれば尾獣でもぶっ飛ぶが、自分でも制御できない速度で跳んでいくので相手を動けなくする必要あり。理想は六連撃だけど、今回はその前に腕が壊れたため失敗。