※この作品はR-18です。

うちはの火影   作:SHV(元MHV)

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折れど曲がれど、不屈こそが私の信条。



中忍試験① ★

──ナルトとサスケが苦難を乗り越え中忍試験に挑んでいる頃。

 

サイゾウは試験会場から離れた訓練場にて、ひとりの男と対峙していた。

 

「だいぶ勘が戻ってきたな。全盛期まで、あと三割ってところか?」

 

「昔と比べての全盛期なら、とっくに追い越しているんですけどね……!!」

 

息を荒げながらサイゾウと対峙するのは、うちはイタチ。見守る者のいない戦いではあったが、その緊張感は森を震わせ、目敏い者は巨大な気配同士がぶつかり合う空気を感じ取っていた。

 

「龍池洞(りゅうちどう)での修行の成果。そろそろ見せてもらおうか」

 

「お手柔らかにお願いしますよ!」

 

イタチは言うなり印を組むと、その姿を無数の烏へと転じさせ姿を眩ませる。

 

変化と幻術を併用したイタチ得意の烏分身の応用である。

 

「ほう……」

 

サイゾウは静かに一言漏らすと、自身を囲み今にも襲いかかりそうなイタチの殺気に心地よさげな笑みを浮かべる。

 

──瞬間、どうやって飛ばしたのか烏から無数の苦無や手裏剣がサイゾウへ向かって飛来する。

 

サイゾウはそれを輪廻眼・天道の斥力を発動してその場に留めると、片手印によって発動した風遁によって飛ばされた方向へとそのまま打ち返す。

 

しかしそれを見越して放たれた苦無と手裏剣の第二波が互いに打ち合い、全てとは言わないまでも弾かれた多くが乱雑にサイゾウへと向かって殺到する。それら全てを斥力で再び弾くこともできたが、サイゾウは敢えて両腕を硬化させてそれら全てを素手で叩き落とす。

 

「──術を発動した直後のタイムラグを狙うつもりでしたが、思ったよりも手強いのですね」

 

烏に紛れ姿を現したイタチ。仙術を発動したその目には完璧な隈取りが、更にその右腕には須佐能乎が纏われており、彼の本気が見て取れた。

 

「舐めるな。俺の隙を窺うつもりなら、術の規模をあと三倍は大きくするんだな」

 

獰猛な笑みを浮かべ、サイゾウは駆ける。硬化した状態の腕による打撃は八門遁甲を用いずとも、生身で受けるには些か危険すぎる。

 

イタチは即座に印を組むと、得意とする寅の印をこれ見よがしにサイゾウへと示す。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

仙術によって並みの豪火球を上回るサイズの火炎だが、サイゾウはそのまま火球へと剛拳を繰り出しチャクラをかき乱して術を霧散させる。

 

「天照!!」

 

しかし次の瞬間発動された術には、流石のサイゾウもたたらを踏まざるをえなかった。

 

「ぬおっ!?」

 

突き出した右拳から体へと黒い炎が這い上がってくる。

 

消えることのない不滅の炎に皮膚を焦がされながらも、サイゾウは不敵に笑った。

 

「闇満羽!」

 

サイゾウの万華鏡写輪眼によって不滅であるはずの炎は掻き消える。しかしその瞬間をこそ狙っていたと言わんばかりに、瞬身を用いて接近したイタチの持つ須佐能乎の刀がサイゾウの首へとめり込み──いとも簡単にへし折れた。

 

「……くっ!」

 

さしものイタチも想定外と言わんばかりに距離を取る。サイゾウは首の様子を確かめるかのようにコキコキと鳴らすと、称賛する視線をイタチへと投げ掛けた。

 

「やれやれ。俺でなければ死んでいるぞ」

 

「……正直手合わせであることを忘れるくらいには本気の一撃でしたよ。今のは一体どういう理屈ですか?」

 

「そう難しいことではない。硬化と併用して威装・須佐能乎を発動しているだけのことよ。皮の下一枚にな」

 

とんとんと首を叩くサイゾウへとイタチは呆れた視線を向ける。

 

反射的にした行動ではなかった。つまり、戦闘中サイゾウは常に今の防御方法を全身に及ぼしているということである。

 

「俺自身、強さには自信があるんですが……ちょっと無くしそうです」

 

言いつつイタチは再び烏分身によって姿を消す。如何にサイゾウが無敵無類の強さを誇るとはいえ、だからこそまだ試したい手段があった。

 

「ふん、俺と一対一(タイマン)張れる時点でお前は誇っていい強さの持ち主だよ。さあ、お次はなんだ!」

 

サイゾウは嬉しそうに烏に紛れて現れた無数のイタチへと拳を構える。

 

「朝孔雀!!」

 

一息に発動された八門遁甲から流れるように燃える拳を繰り出すサイゾウ。イタチの烏分身が燃えていくが、影分身と思われたイタチは炎を纏い更にその数を増やして襲いかかる。

 

「俺に幻術だと……!? いつ仕掛けた!!!」

 

サイゾウは即座に幻術を解除し嗤う。恐るべきはサイゾウをして気づかれずに幻術を仕掛けたイタチの実力にあった。

 

サイゾウは自身を取り巻く炎を腕の一振りで掻き消すと、頭上には展開されたイタチの完成体須佐能乎があった。

 

「八坂ノ勾玉!!」

 

「火遁・豪火滅却!!」

 

巨大な三つの勾玉とそれを上回るサイズの連なった無数の火球がぶつかり合う。

 

余波を自身の須佐能乎で御しつつ、サイゾウは特攻して捕らえたイタチの首を握りながら心臓に当てられた苦無を見下ろし──満足げに微笑んだ。

 

「ま、こんなところだろう。しっかし流石は一族の麒麟児と称されただけはあるな! 危うく殺すところだったぞ! はっはっはっはっは!」

 

笑いながらイタチを助け起こすサイゾウ。

 

イタチはと言えば殺すつもりで挑んだ結果がこれである。最後も苦し紛れに心臓へと苦無を当てたが、果たして通用したかと思えば疑問が残る。

 

あまり深く考えない方がよいだろうと、大半の忍がサイゾウに抱くことを考えつつ、イタチは今ごろ第二試験を受けている弟のことを考えるのだった。

 

__________________________________

 

 

ナルトとサスケは無難に第一の試験を乗り越え、続く第二の試験の会場である死の森へと既に突入していた。

 

連日の修行でふらふらのサクラは意地で付いてきているが、その体力に限界が近いのは誰から見ても明らかであり、二人はひとまず彼女を休ませようと長い試験期間を利用して簡易拠点を構築していた。

 

これは第二の試験内容が“森を72時間以内に突破すること”という、彼らからすれば実に簡単な内容であったからだ。

 

「“死の森”なんて仰々しい名前だからどんなところかと思ったが、案外過ごしやすいじゃないか」

 

「生き物の気配がスゴいってばよ! これなら食べるのには困らねえな!」

 

大木の虚を十分ほどで見せかけの拠点へと改造したサスケは、即座にその反対側の木の根本を土遁で掘り起こしその地下に二十畳ほどの空間を作り上げていく。

 

ナルトは僅かな時間で獲得してきた蛇や野兎といった獲物をさばき、手際よく食べられるように加工していく。その早さはサイゾウの妻である三人から料理の手解きを受けたサクラをして惚れ惚れするほどのものだった。

 

「山菜も取ってきてあるから、汁物も作るってばよ」

 

「キノコはあるのか?」

 

「選別も済んでるってばよ。毒キノコは後でトラップに使うってばよ」

 

疲労でまともに動けないとはいえ、二人の見せる異様なサバイバビリティにサクラは圧倒されっぱなしである。

 

とはいえ役に立てない自身がこれほど情けないことはないとサクラは思う。足手まといにならない為に鍛えた結果がこれであるのだから尚更だ。

 

「……ごめん、あたしまた「そこまでだ。俺達はチームなんだ。今役に立たないって思うなら、今後役に立ってくれればいい。実際、お前の知識は十分役に立っている」……ありがとう」

 

サクラ自身動くことが出来ない分その豊富な知識を活かしたサポートを行っていた。

 

ナルトでさえ初見でわからないキノコの選別を行ったのは彼女である。もはやこの三人にとって“死の森”で過ごす時間などキャンプと変わらない。

 

三人は試験が始まるまでの間、徹底的に短所を鍛えられた。

 

ナルトならば思考の短絡さ、知識不足、勤勉さ。

 

サスケならば必要以上の猜疑心、慎重さ、決断力。

 

サクラならば絶対的な決定力不足、知識頼りに偏重した立ち回り、胆力不足。

 

これらを解決するに当たって、ナルトにはイルカを。サスケにはイタチ。サクラにはサイゾウの妻である三人のくのいちがつくことになった。

 

ナルトはそこでイルカがかつて九尾事件に際して両親を失った話を聞き、いずれやってくる敵との戦いにおける覚悟を新たにした。また高いサバイバビリティはこのとき身に付けている。

 

サスケはイタチとの組手や龍池洞での修行を経て強さと自分自身への自信を得た。万華鏡写輪眼こそ開眼していないものの、今の彼の実力は兄のお墨付きとなった。

 

サクラは試験までに体調を整えることがままならなかったものの、サイゾウを支える女三人による死の一歩手前まで追い込む訓練は確実に彼女を強くした。なお中忍試験が終了しても彼女の修行は継続予定である。

 

──サクラは先の第一試験を振り返り、改めてこのメンバーの精強さを思う。ぶっちゃけ合同の試験でよかったのかと。

 

第一の試験は、全十問の減点式筆記試験。教官の判断で即失格を言い渡され、試験の内容は上忍でなければわからないような難問ばかりであった。

 

しかしナルトは人柱力としての超感覚で、サスケは写輪眼の瞳力によって即座にこの試験が仕組まれたものであることを看破。サクラは実力で試験を突破した。最後に試験官であるイビキが「試験を受けるか、それとも辞めるか。ただし失格すれば二度と試験を受けられない」という恫喝を行ったが、そもそもナルトが動じないので二人は泰然とクリアして見せた。

 

そして、そんな彼らが悠々自適に過ごす第44演習場、その通称を“死の森”といった。これは大袈裟ではなく、常人が入れば遭難必至なほどに入りくんだ複雑な土地と、獰猛な肉食獣が無数に生息することから付けられた名である。

 

ただし、それは他里の忍であればの話。木の葉の忍は下忍の内から必須条件として高いマッピング技能を身に付けさせられる。これは木の葉を置く火の国が広大な森林と山々に囲まれた土地であることから発展した必須技能である。

 

自らの土地である森の中を行き交う術は木の葉の忍であるならば当然身に付けるべき技能であり、ましてやそれも中忍ともなれば全ての場所をある程度把握している必要性に駆られる。ゆえに木の葉では仲間に火急の危機あらば即座に救援を送ることができるし、中忍以上ならば例え侵入者が格上でも互角以上に戦えるほどの土地勘を必然的に身に付けていなければならないのだ。

 

そう、初めから木の葉の忍に有利に出来ているのがこの第二の試験。だがそんなことは他の里も承知のことであり、これが霧隠れなら霧隠れが、雲隠れなら雲隠れが有利な試験が組み込まれるのは当然である。

 

これは暗に“この程度の逆境をはね除けられないようでは、中忍となるには不足”と断言されているに等しい。

 

その上今回の中忍試験は初となる全里合同での試験。送り込まれた下忍の少年少女らはやる気も十分に逸っていた。

 

しかし、彼らの想像以上に試験は残酷だった。

 

「あぎゃあああ!!」

 

「ドス!」

 

突如現れた大蛇によって捕らわれ、瞬く間に全身の骨を砕かれていくドス・キヌタ。得意の籠手による攻撃を披露することもなく、呆気なくその身を飲み込まれていく。

 

「いやああああ!」

 

仲間が無惨に殺され悲鳴をあげるキン・ツチだが彼女だけ狙われないわけではない。ドスを襲ったそれよりも一回り以上巨大な蛇が顎を開き彼女を飲み込もうとするが、それを横合いから駆けてきたザク・アブミが突き飛ばす──己の身を犠牲にすることで。

 

「があああ!! 斬空極波ぁ!!」

 

両手の平に空けられた穴から繰り出された圧縮空気と超音波を併用した斬撃によってどうにか大蛇を倒したザクだったが、その身を貫いた牙による出血は間違いなく致命傷だった。

 

「ザク! しっかりして!!」

 

「ばが……やろ……さっさと、逃げ……ろ!」

 

音隠れから参加した彼ら三人は、よりによって死の森最大の難所である“蛇の巣”へと足を踏み入れてしまっていた。

 

他にも雨隠れの忍らがいたが、彼らもまた抵抗空しく既に大蛇の胃の中である。

 

「やだよぉ! ザクだけ置いていけないよ!」

 

泣きじゃくりながら叫ぶキンだが、事態が好転したわけではない。ザクは感覚がなくなりはじめた下半身を引きずりながら、どうにか彼女を助けようと腕を上げ──意識を失った。

 

(……ああ、こんなところで死ぬのか。すいません、大蛇丸様……)

 

「ほら、起きな坊主」

 

「え……?」

 

意識を失ったと思ったザクは、直後に木の葉の忍に起こされて呆然と佇む。五体には傷ひとつなく、その隣には死んだと思われたドスや、泣きじゃくっていたキンが横たわり眠っていた。

 

「ど、どういうことだ……!?」

 

「幻術だよ。悪いが、第二の試験はこの幻術を突破できるかが合格条件なんだ」

 

そこにいたのは、今回受験生の大半を幻術へと陥れたシスイの姿があった。

 

「じゃ、じゃあこの試験で死んだ人達は……!!」

 

「誰も死んでないよ。ま、残念ながら不合格だけどね」

 

そう言って快活に笑うシスイの姿に、意地の悪い試験もあったものだとザクは思う。

 

そしてふと見下ろしたキンの目から涙がこぼれ落ちたのを見て、ザクの胸が締め付けられる。

 

「……俺の術中で涙を流すだなんて、よほどツラい思いをさせちゃったみたいだな。起きたら謝らなきゃね」

 

「いえ、そんな! むしろ幻術に気づけなかった俺達が悪いんですし!」

 

「はは、そこはまあ五代目を除けば最強の幻術使いを自負しているからね。むしろあっさり突破して見せた子達とかを見るとちょっと自信を無くしそうだよ」

 

たはは、と笑うシスイ。

 

今回の試験は幻術空間において72時間耐えるか、幻術空間に仕掛けられたゴールへとたどり着くことでも突破することができる。

 

ただし、この試験を幻術と見抜いて突破した組が二つあった。

 

日向ネジ、テンテン、ロック・リーの組と、日向ヒナタ、犬塚キバ、油目シノの組である。

 

ネジは下忍離れした実力とこれまでの経験から幻術であることを察知して突破。ヒナタはキバが瀕死の重傷を負ったにも拘わらず、怪我の内容とキバの状態の齟齬から幻術であることを見抜きこれを突破した。

 

また砂隠れの三人は、シンプルに我愛羅の砂に乗って最速で森のゴールへと駆け抜け突破している。

 

「あとは幻術って察知しているにも拘わらず、ついでにキャンプを満喫している馬鹿な甥っ子達とかね」

 

「な、なんですかそれ」

 

「ああ、気にしなくていいよ。彼らを下忍として扱うこと自体、俺は本来反対なんだから」

 

呆れた表情を浮かべるシスイは、やれやれと言わんばかりに眠りこけるナルトとサスケの姿を見下ろすのであった。

 

 




……大変長らくお待たせいたしました。

まあ、ね。色々あったんですよ。色々。
書きますけどね引き続き。

色々無編集ですけどそこまでは時間とか諸々なかったのであしからず。
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