※この作品はR-18です。

うちはの火影   作:SHV(元MHV)

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蝶がつくほどお久しぶりでございます。ひじき姐さんの活動報告くらいしか最近顔を出していませんが皆さんいかがお過ごしでしょうか。どうにか時間を作ってえっちらおっちらこちらから書き上げました。
久しぶりすぎて話の流れを作者すら忘れてますが、まあ連載なんてそんなもんです。

それでもいいという人だけ、お読みください。


雨崩し★

──木の葉での合同中忍試験を終え、一年が過ぎた。

 

下忍から中忍になった者。

 

それ以上の立場になった者。

 

変わらず下忍のままである者。

 

少々の変化はあったが、概ね世界では平和な時間が過ぎていた。──表面上は、という言葉が頭につくが。

 

あれより一年。各国より選抜された上忍を中心に組まれた黒ゼツ探索部隊【黄昏】は、不規則に各地で現れる不死身の化け物と日夜戦っていた。並の下忍や中忍では対峙することがすなわち死を意味するその化け物はいつしか【暴獣】と呼ばれ、その存在を隠蔽されつつも静かに各国の強者を疲弊させていた。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

 

木の葉病院の特設入院棟の入り口でひとりの男が立っていた。

 

既に火が消えたタバコのフィルターを噛みながら、男──不知火ゲンマが戻ってきみたらしアンコへ問いかける。

 

「……ライドウの容態は?」

 

「……まだ、意識が戻らないそうよ。幸い生きてはいるけど、運ばれたのがここじゃなければ死んでたって」

 

「そうか。仙丹様様だな、まったく……!!」

 

悔しげに壁を殴りつけるゲンマは、都合四度目となる“暴獣”との戦いを振り返る。

 

圧倒的なチャクラ。無限とも思えるほどの再生能力。それだけでも厄介だというのに、奴らは日々学習し厄介になっていく。

 

──まるでニンゲンのように──

 

今回も木の葉の上忍である並足ライドウが、自身の両腕と引き換えに体内で起爆札を炸裂させたものの、暴獣は再生よりも攻撃を優先し彼の腹を引き裂いた。三個小隊で活動している忍の中に氷遁を扱う白がいなければ彼の生還はありえなかっただろう。

 

暴獣の出現場所は多岐に渡る。木の葉、砂、岩、雲、音、霧。

 

人口密集地にまでその被害は及んでいないものの、小規模な村や集落はすでに文字通り壊滅してしまった場所も多い。

 

各国はこれによる恐慌状態を避けるため【黄昏】の大部分を特化運用して対処に当たっていたが、それでも限界は近づいていた。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

サイゾウは執務室で火影としての仕事をする傍ら、竹遁分身により並列して各地で現れる暴獣に自ら対処するという多重生活を送っていた。

 

圧倒的に手が足りなのだ。無論【黄昏】には木の葉を始め、各里から優秀な忍が参加している。だが木の葉においてライドウが助かったように他の里でもというわけにはいかない。既に多数の犠牲者が出ているのが現状だ。黄昏の中にはイタチやナナシといった実力者らも参加しているが、それでも全ての戦線に対応できるわけではないのだ。

 

それに、今や人知を超えた強さを得たサイゾウが出撃するのが事態への対処としては最も手っ取り早いのも事実だ。だがそれは最悪サイゾウが必要な事態に即応できない可能性を意味し、最悪の事態を招く可能性をも秘めている。

 

その為サイゾウが出動するのは可能な限り最後の手段だ。本人でなくとも竹遁分身で須佐能乎を展開すれば、暴獣を須佐能乎で包むことで驚異的な再生能力も無理矢理封印することは可能であるのだから。

 

しかし須佐能乎はそれだけで肉体へ強い反動を与える。影分身とはいえ日々の反動がじわじわとサイゾウを苛むのも事実。決戦までに自身が疲弊しきっては意味がないと自覚するサイゾウではあったが、目立った対策が取れない現状に忸怩たる思いを隠せないでいた。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

止まない雨が降り注ぐ街中を、10人ほどの忍達が疾駆する。

 

建物の影をまるで這うように動き回り、全員がまるでひとつの生き物であるかのように素早く移動していく。

 

彼らは黒ゼツを探索する為に結成された部隊【黄昏】の本来の役割を負った部隊である。【黄昏】の任務は今となっては二種類存在する。そしてその任務の大半は、現状各国から選りすぐられたかつての【暁】における特級戦力へのカウンターを想定した部隊だ。暴獣への対処はこれらの部隊が対処していることになる。

 

そしてもうひとつが、各国の暗部より選りすぐられた者で構成された黒ゼツの捜索隊である。

 

表向きには【黄昏】自体が黒ゼツ探索を理由に結成されたが、時を同じくして各地で暴獣による被害が多発したことから、忍連合によってその名を借りて大部隊が編成されたというのが実情である。だがそれでは肝心の黒ゼツ探索がおろそかになってしまう。そこで各影らが推薦した者達、いわゆる直属の暗部による特殊戦術部隊が結成されたのである。

 

そんな尋常ならざる実力をもった忍らを取りまとめるのはサイゾウの養子でもある薬師カブトである。これには多分に政治的な事情も鑑みられるが、カブトの実力は今は亡き大蛇丸にすら匹敵すると言われている。部隊を率いる上で周囲の者からの反対はなかった。さらに部隊には音の守り刀十傑集のひとりでもある鬼灯満月の姿もある。影級の戦力を少なくとも2名擁するこの部隊は、遂に雨隠れへの潜入を果たしていた。

 

そびえ立つ旧時代の遺跡とも言われる、巨大な高層建築群を彼らは疾駆する。しかし全員が一様に違和感を抱いていた。なぜ人の気配が一切しないのかと。

 

「……」

 

カブトは集合の合図を示すハンドサインを出して、扉の開いたままになっている一軒家へと全員を集合させる。部隊のひとりである日向一族の者と霧隠れから参加した青が周囲を警戒する。

 

「誰もいない。不気味なくらいにね」

 

カブトが切り出す前に満月が雨に濡れた体を水化の術を応用して体内に吸収、雨に仕込まれたチャクラを分析しつつ先に答えを口に出す。

 

「強化された雨の結界でこれまで外から確認はできなかったが、まさか雨隠れの里から人の姿が消えているとはな……」

 

「やはり、すでに住民全員が殺されたと見るべきでしょうか?」

 

満月の言葉を受けて、青が呟く。それを受けて夜月一族らしき雲隠れから参加したらしき青年がカブトへと質問する。その意味は撤退するか否かである。

 

「暴獣の素材には人間が使われているからな。……恐らくは、そういうことだろう」

 

カブトが表情を平淡なまま雨隠れを襲った悲劇を口にする。

 

彼の視線は下。それに気づいた感知タイプの何人かが、下へと意識を向ければそこには無数のチャクラが感じ取れた。

 

「これは……まさか……!」

 

思わずといった光景に、青が呻く。白眼を通して彼が眼にしたのは、無数の女達が奇妙な触手に繋がれ強制的に妊娠と出産を繰り返させられる姿。

 

その数は数百や数千では効かない。妊婦となれる体の者なら、年齢を問わずに苗床とされていたのだ。

 

「……隊長、囲まれています。敵は地中からです」

 

岩隠れから参加した忍、紺ツチの言葉にカブトは警戒を怠ったかと考えるが、それは違う。暴獣には自身が持つチャクラをジャミングする能力があり、これによって距離感を狂わし、視界に写るチャクラによって感知する日向一族による感知を遅らせてしまうことができるのだ。

 

しかしそれもオオノキの一族に連なる、この中で最も優秀な感知タイプである紺ツチによって地中の振動を感知されれば何ということはない。カブトは手を合わせると、瞬時に自身へ自然エネルギーを取り込み隈取りを出現させる。

 

仙人モードへの早すぎる移行に満月さえも口笛を吹くが、それもそのはず。彼の展開速度は、初代火影千手柱間に匹敵するほどであるのだから。これこそは義父であるサイゾウをも凌駕する、彼の努力によって開花した才能だった。

 

「仙法・無機転生!!」

 

「土遁・地沈の術!」

 

生まれたその性質ゆえに、自然エネルギーが集まるのに気づいた数体の暴獣が急ぎカブト率いる部隊が待機する一軒家へと飛びかかる。しかしカブトの術が展開するのに合わせて紺ツチが一軒家をまるごと沈下させ、彼らの攻撃を回避してしまう。

 

しかしその程度で諦める暴獣らではない。彼らはその身に抱えた量産型零尾の力を解き放ち、尾獣チャクラを収束させた虚狗砲を沈下した一軒家へと叩き込む。

 

禍々しい黒いチャクラを、さながらレーザーのごとく圧縮して放つ暴獣。しかし森を薙ぎ払い山をも穿つ威力のそれは、一本の剣をもった男によって全て弾き返される。

 

「悪いけど、返すよ」

 

満月によって反射された虚狗砲によって上半身を蒸発、あるいは抉り削られる暴獣達。しかし彼らの再生速度をもってすれば例え心臓を失ってもなんら問題はない。

 

しかしその間に紺ツチとカブトは無機転生と土遁を組み合わせ、地中を掘り進み驚くべき速度で逃げていく。満月はすっかり球状に変形した一軒家に避難しながら、果たしてこのまま逃げ切れるものかと冷静に考える。場合によっては自身が持つ草薙の剣、布都御魂剣の力を解放せねばならないかと。

 

しかしそんな満月の覚悟を知ったか知らずか、夜月一族の青年が地上へと続く道を作ってもらえるよう紺ツチとカブトに頼み込む。彼の持つ術を知るカブトは即座にそれを了承し、地下へと掘り進んでいたのを急展開させ上昇を始める。

 

無論それを見逃す暴獣ではない。彼らは今度こそ外すまいと、先程以上の数をもって撃滅せんとチャクラを溜め込み始める。──しかしその程度、見抜いていないカブトではない。

 

「土遁・開土昇掘!!」

 

紺ツチによって突如として地面が盛り上がり、構えていた暴獣らは立つべき地面を失って跳ね上げられる。そしてそれは彼らだけではない。地中を走っていた一軒家もまた同じくである。

 

「天送の術!!」

 

カブトと比べれば遥かに時間はかかったものの、予定のタイミングまでに仙人モードを発動させた少々カエルじみた顔になってしまった青年が空中へ飛び上がった一軒家へ自身得意の術をあえて不完全に発動させる。

 

彼の姉は雷影の秘書マブイ。そして彼の名はマタタキ。もうひとりの天送の術の使い手である。

 

「イイイヤッホオオオウ!!!」

 

マタタキの歓声と共に凄まじい勢いで飛び出した一軒家はあっという間に雨隠れから離れていく。……このあと、着地の問題を考えていなかったマタタキが大いに慌てるがカブトの無機転生によって落下する森一体をクッションとすることで事なきを得ることができた。

 

こうしてカブト率いる特殊戦術部隊は、どうにか暴獣による追撃を避けて雨隠れの里を脱出することに成功する。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

サイゾウは滅多に吸わないタバコを口にしながら、窓から外を眺める。今日は、雨が降っていた。

 

「はい。あの国で生きている人間は……いえ、人として存在している者はもはや一人としていません」

 

カブトは冷静に青が見た光景をサイゾウへと報告した。地下に広がる大空洞。そこが暴獣の一大生産工場として稼働していること。生きながらただ生体兵器を産むための存在として扱われる女達のこと。化け物になぶられ、限界が来れば処理される光景のことを。

 

これを直接見てしまった青は精神を病み、今は霧隠れに戻り療養を受けている。それほどの光景を、カブトは報告の為に山中一族によって彼の記憶を一部自身へ写させていた。サイゾウはそれほどのことをしたにも拘わらず、眉もしかめず冷静に報告する義理の息子を見つめる。忍として優秀に育ったと誇らしい気持ちになる反面、人としては誤った育て方であることを改めて自覚し、いずれは彼にも人間らしい生き方を与えてやりたいと願う。

 

そして老若男女を問わず暴獣の苗床とする、文字通り人間など蛆のように湧いて出るとしか思っていないだろう黒ゼツの所業に、知れずサイゾウの表情が険しくなる。

 

かつての“暁”の理念を知るサイゾウからすれば、その行為はかつての理念を侮辱するにもほどがあり、あまつさえ戦乱の中に生きてきたあの国の人間の誰もが望まぬ結末であると。

 

──ゆえにサイゾウは覚悟を決める。

 

「イタチ、いるか」

 

「ここに」

 

音もなくカブトの横に現れるうちはイタチ。

 

「カブト、シスイを呼んできてくれ」

 

殺気とも違う、見るもの全てに圧力をかける覇気を漏らしながら、サイゾウは静かに告げる。

 

「承知しました」

 

「イタチ、結界班に俺(・)達(・)が出たらすぐに結界を最大出力で発動させるように伝えろ。第二級戦闘配備だ」

 

「承知です」

 

サイゾウの指示に二人が退出し、サイゾウはタバコを握りつぶす。

 

「カブト達が全員無事に帰ってきたのを見るに、黒ゼツは直接現場に関わっていないか、はたまた明らかな挑発か……。だがまあこれだけお膳立てしてくれるってことは、どうしても俺に雨隠れまで来てほしいってことか。……上等だ!」

 

サイゾウは握ったタバコを感情の昂りに応じて溢れた炎で焼き尽くしながら、憤怒の表情で雨隠れの方向を睨む。その眼には、生半可な罠など小細工同然だと言わんばかりの炎が満ちていた。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

うちは一族という忍の一族がいる。

 

六道仙人直系の子孫にして、最強の忍の一族筆頭に数え上げられる存在である。

 

かつて木の葉隠れを興した英雄、千手柱間とうちはマダラの二人によって纏めあげられた里は、マダラの暴走による混迷、初代火影と二代目火影の死、九尾事件に伴う四代目火影着任早々の死などといった多くの困難を潜り抜けて、大きく強く育ってきた。

 

そして里が始まって以来初となる“うちはの火影”はそれに匹敵する幾度もの混乱を乗り越え、死すら乗り越えて君臨している。

 

そんな彼が今久しぶりに本気で戦おうとしていることを、彼の幼馴染みであり親友であるフガクは察していた。日頃里全体を包み込むようなサイゾウの暖かいチャクラが、まるで嵐の前触れのように凪いでいるのに気づいたからだ。

 

うちは警務部隊も変わった。かつてのように政治犯を見張る牢獄は別の場所に建て直され、彼らの主な任務は里の守護となった。皮肉にも暴獣による数度の襲撃がうちは警務部隊の必要性を高め、里からの信頼度をあげていた。

 

フガクはサイゾウの気配が空へと移動したことに気づき、ふと見上げる。するとそこには、突如として黒い巨神が現れていた。どこか悪魔を思い起こさせる、黒い翼を持つサイゾウの須佐能乎である。さらにそれだけではなかった。同じく自身の息子であるイタチが赤い巨神を、その親友であるシスイの緑の巨神もその傍らに並んで空に聳え立つ。一種幻想的な光景だが、ともすれば国を滅ぼしかねない存在が三柱存在していることに不安を隠せない者も出るだろう。警務部隊としてはそれによって起きるかもしれない混乱にも備えねばならない。

 

「サイゾウめ、相変わらず面倒なことは俺に押し付けてくれる……」

 

自身もまた須佐能乎を展開することはできるが、あそこまで見事なものは展開できないだろうとフガクは見上げながら思う。いつの間にか自身の力など及ぶべくもない領域へと至った親友と、それと並び立つまでになってくれた息子の姿を、フガクは誇らしげに見上げながら自分の仕事をする為に警務部隊の本部へと足を運ぶのだった。

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

雨隠れ上空にて、三柱の巨神が雨雲の上空に集っていた。

 

『いいか、5分で全てを終わらせる。全員最大級の豪火球を一点集中で放て』

 

有無を言わさぬサイゾウからの心伝心の術による指示に、二人は無言で従う。サイゾウが何を仕掛けるか、術を介さずとも察したからだ。

 

「「火遁・豪火滅却!!」」

 

イタチとシスイはそれぞれが放てる最大威力の豪火球、その発展系である豪火滅却を放つ。須佐能乎を介したことにより、まるで巨神がその口から巨大な炎を吐き出すかのような姿は遂にこの世の終わりが来たのかと思わせるほどであった。

 

「火遁・豪火滅失」

 

しかしそんな二人以上の規模を持った火炎が、あっさりとサイゾウの須佐能乎の前に形成され始める。

 

サイゾウはそれらをひとつに纏め、さながら雨隠れの上空を包む黒雲のごとく巨大な火炎を一度膨れ上げさせ、圧縮させる。それこそはかつてうちはマダラの天碍震星をも消滅させた大忍術。

 

「火遁……豪火大焔失」

 

僅かな躊躇を見せ発動された小型の太陽が、ゆっくりと地上へ降りていく。

 

ゆっくりと落下していくように見える炎の雲が、雨隠れを囲むように包み込む雨雲とぶつかって大爆発を起こす。

 

須佐能乎で衝撃の大半を防ぎながらも、シスイとイタチはその衝撃を受けて苦しそうに呻く。しかしサイゾウはその表情になんら変化を表さず、雨雲を消し飛ばした小太陽をじっと見守る。

 

やがて高層ビルを飲み込みながら地上へと辿り着く小太陽。サイゾウは最後の仕上げとばかりに、着弾の寸前その眼を赤く輝かせて瞳術を発動する。

 

「闇龗……!」

 

サイゾウの写輪眼によって、着弾の瞬間太陽が一気に膨れ上がる。とはいえ、このまま発動すればサイゾウはともかくイタチやシスイはただでは済まない。

 

無論サイゾウはそれを理解してか、さらにだめ押しの一手を指す。

 

「神羅天征!!」

 

瞬時に変化した輪廻眼によって静かに発動された術。それによって生まれた超重力が、膨れ上がる爆焔を押さえつけ雨隠れの里そのものを消滅させていく。

 

圧縮された爆発力が、熱量が、文字通り細胞の一欠片も残さず雨隠れの地下にあった生産工場を焼き尽くしていく。地下から無数の暴獣が湧き出してくるが、その身に宿した量産型零尾の力を発動するまでもなく彼らは焼き消されていく。

 

地上の熱量とは裏腹に、サイゾウはどこまでも地上を冷たく見下ろす。すでに写輪眼へと戻した超視力を用いて、文字通り一体も残さず討ち滅ぼすために静かに冷徹に観察を続けていた。

 

文字通り、雨が崩された。圧倒的な熱量と斥力によって、天地のチャクラが乱れたことでいつまでも降り続けていた雨はその役割を終え、そこにはかつて雨隠れの里と呼ばれた、どこまで続くかわからないほどの巨大な穴のみが残った。

 

サイゾウはこのために連れてきたイタチとシスイに見逃しがないか確認をさせる。二人はサイゾウに従い周囲一体を観察するが、かつて雨隠れと呼ばれた場所にはもはや何も存在していなかった。

 

『戻るぞ』

 

サイゾウの言葉に従い、帰還する三柱の巨神達。

 

そんな彼らを、遥か離れた場所から眺める黒ゼツの姿があった。

 

「やはり正面から戦うには……十尾が必要なほどかッ」

 

空間を歪めて三人を、もといサイゾウの力を確認した黒ゼツ。

 

黒ゼツにとって雨隠れはすでに利用価値を失っていた。常人や並みの忍を苗床とした人工尾獣は本来の零尾ほどの力はもたなかった。量産型零尾とでも言えるそれらを気まぐれに暴獣へと与えたのは、黒ゼツ自身にとっても失敗と言えた。なぜならばこの一年世間を騒がせる暴獣による騒動は、黒ゼツ自身制御が難しくなってしまった暴獣による暴走とでも言える事態だったのだから。

 

ゆえに黒ゼツにとって暴獣が各地で暴れまわるのは想定外だった。だが幸いだったのは彼らが各国の忍およびサイゾウを疲弊させてくれたことだ。黒ゼツにとって他の有象無象はもはや問題ではない。唯一自らの母であるカグヤに匹敵すると思わしき力を持つうちはサイゾウ。彼の力をカグヤ復活までに如何に削いでおくかは、黒ゼツ自身ひたすらに悩んでいたことなのだから。

 

それに元々暴獣とは人工尾獣を作る上での副産物に過ぎなかった。短い寿命と引き換えに得させた驚異的な再生能力こそ厄介だが、再生を繰り返せば一月と持たず寿命が来てしまう。それでは、今後到来するであろう大筒木と戦わせる兵隊としては不十分だと黒ゼツは考える。

 

それゆえに雨隠れへ黄昏の特殊戦術部隊がやってくるように状況を整え、すでに黒ゼツの手を離れていながらも未だ生産を続けていた工場を潰させるように仕向けたのだ。そして黒ゼツにとって、そこへサイゾウが乗り込んでくるであろうことは予想通りであった。

 

「クフ……! 女子供の悲鳴が忘れられないだろう、サイゾウ? お前はこれからも日々雨隠れで生きたまま苦しんでいた者達の悲鳴を背負って苦しむんだ。……ククク、お前が心に数多の傷を抱えていること、私が知らぬとでも思ったか? クククククククク……!」

 

如何にも可笑しいと言いたげに、黒ゼツはその黒い髪を靡かせて嗤い転げる。

 

「クク、さぁて、サイゾウのおかげで不良在庫の処理もできたし、あとはこちらの準備を整えるだけだ。……クク、他にもあちこちに人をやって必死に探しているようだけど、無駄無駄。こっちの拠点はお前らの空間には存在しないんだからさ」

 

薄く嗤いながら、黒ゼツはその身を翻す。もしサイゾウがその姿を眼にしていれば、紛れもなく驚愕させられていただろう。褐色の肌という点を除けば、その姿は彼の妻である“日向カエデ”と瓜二つであるのだから。

 

やがて黒ゼツは掌をかざし、無数の板をズラすかのように空間に隙間を開けると、何処かへと消えていった。

 

 

 




久々すぎてなんかもう関係ない作品色々見ながら書きました。ちなみに決め手になったのは血煙の石川五右衛門。
あれの独特な雰囲気見てたらすらすら書けた私の脳内はどうなっているんでしょう……

まあ作中で書こうとしたこと、かなり端折ってます。色々と中途半端で泣けてくるぜ。
ほんと悲しいわ。人生って儘ならないものよね。

※諸々訂正済み。
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