まとめ直してたら結局合計20000文字越えたので分割して投稿します。
四方の殆どを結界仕込みの石壁で囲まれた部屋の中に、木の葉における最高戦力といっても過言ではない面子が集まっていた。
まずは3年前の九尾事件を契機に現役復帰し、今もなお他里から恐れられる『万能』三代目火影猿飛ヒルゼン。“ある理由から”ここ3年ほどで急激に痩せ衰えてはいるが、その眼光は戦時中をすら上回る覇気を見せつけている。
次に『忍の闇』と呼ばれた男、志村ダンゾウ。
ここへは無理矢理連れてこられたことと、これまで自分の立てた作戦を悉く邪魔してきたサイゾウが目の前にいるとあってやや殺気だっている。
そんなサイゾウを庇うように腕組みして立っているのは、千手綱手。『伝説の三忍』に数えられる忍世界全体を通しても最高峰の医療忍術の使い手であり、単純な戦闘力においても“影”クラスの戦闘力足り得る“腕力”を備える女傑である。
さらにそれだけではない。
『瞬身のシスイ』。現役のうちは一族のみならず、木の葉における最速の忍であり、うちはサイゾウの少々歳の離れた弟である。また万華鏡写輪眼の開眼者であり、その瞳力は相手に気づかれることなく幻術にかけることが可能なほど強力で、その瞳に宿った最強幻術《別天神》はあらゆる幻術を“上書き”してしまうほどの効力を発揮する。
そして、少し遅れてやってきた男。
白塗りの肌に蛇を思わせる青紫の隈取りをした、綱手と同じく『伝説の三忍』に数えられる男、大蛇丸である。戦時中残虐の限りを尽くし、最近ではその目に余る所業が火影に露見し木の葉を出奔した、と表向きはされていたが、実態は先日までテロ組織である暁への潜入任務を行っており、今回弟子であるサイゾウのたっての願いから木の葉に舞い戻った。
綱手と同じく大蛇丸もまたさりげなくサイゾウを庇う位置取りに立っている様子を見て、ヒルゼンなどは
「あの大蛇丸が…」
と驚いていたりもする。
そして、この場所はうずまきナルトが生まれた場所であり、ヒルゼンの妻ビワコが殺された場所でもあった。
穢土転生に使用する生け贄、強力な幻術で仮死状態にした盗賊らをサイゾウは口寄せする。
「…さて、準備は整いましたね。大蛇丸先生、触媒をいただけますか」
「待ちなさいサイゾウ。万が一に備えて、あたしは別の口寄せを担当するわ」
「別の?」
「ええ、まあ状況的に敵にはならないでしょうしね」
「なるほど…」
そう言って笑う大蛇丸を見て察しがついたサイゾウは同じく笑みを浮かべる。
「…ヒルゼン、この状況が我らを謀殺する企みであった場合、どのようにして責任を取るつもりだ」
「無論、死ぬしかなかろうな。元より今のワシらでは大蛇丸はおろかサイゾウの遥か格下だ。だがそんなことを今に至って心配する辺り…お主、人を見る目が衰えたか」
「なんだと!」
「ふっ、それでいいダンゾウ。お前はそうやって、“俺”に噛みついてくるぐらいでちょうどいい…もしお前が余計なことをするなら止めてやる。火影としてではなく、“友”としてな」
「…!?どういうつもりだ、ヒルゼン」
苛立ちを隠そうともせず告げるダンゾウに、ヒルゼンは至って冷静なまま答える。ここに至ってヒルゼンが自分を友と呼んだことに、ダンゾウは疑心よりも先に不穏がよぎった。
「…少し無理をし過ぎたせいかな、ワシはもう長くない。綱手の診断によれば、あと一年保てばいいほうだそうだ」
「なに!?」
「なんだとっ!」
「…妙に弱っていると思ったらそういうことだったとはね。綱手、その話は本当?」
ダンゾウとサイゾウは驚き、大蛇丸は内心の動揺を隠しながら綱手に確認を取る。
この場で驚いていないのは、3年前から火影直属の暗部となり、つい最近ヒルゼンから直接知らされていたシスイだけだ。
「…なにもこんなタイミングで言わなくていいだろうに。ああ、末期ガンだ。…正直、手の施しようがない」
うつむく綱手の診断に、この場にいる全員が理解してしまう。
そう遠くない内に、三代目火影が死ぬのだということを。
そして告げられた言葉に最もショックを受けたのはダンゾウだった。忍の闇とまで言われた男が動揺をまるで隠せず、唇を戦慄かせ困惑している。
「大蛇丸先生、俺の変異した柱間細胞は使えませんか?」
「…無理ね。あれは、柱間細胞はそもそも普通六道仙人の直系でなければ制御することすらままならない代物よ。猿飛先生の弱った体にはあんなもの毒にしかならないわ。むしろ、平然とアレを制御するどころか、完全に自分のモノにして取り込んでるあなたが異常なのよ」
サイゾウと大蛇丸はなにか手はあるはずだと考える。しかしその思考を止めたのもヒルゼンだった。
「よい、もう済んだことだ。ワシが死ぬのは変わらん。なればこそ、せめて“影”として出来ることをするまでよ」
泰然としたヒルゼンの様子に、その場にいる全員が呑まれる。
死を目前にして、ヒルゼンの醸し出す覇気はこの場にいる全員を上回っていた。
「…なぜだ、なぜお前が死なねばならん!そうならぬように…!その為にこそ俺は“闇”とまで呼ばれたのだぞ!」
血を吐くようなダンゾウの叫びだった。
長い戦乱の繰り返しのなかで、ダンゾウは“影”よりも深い“闇”として、ヒルゼンを、木の葉を支えてきた。
火影になるという夢こそ未だ捨てきれずにいたのも、そうすることでヒルゼンを奮起させるのがそもそもの目的だったのだから。
「…ああ、お前には苦労ばかり掛けたな。そのせいで随分と、やりたくないことばかりさせてきた。だからこそ言おう。此度のマダラの口寄せ、万が一ヤツが穢土転生を振りほどいた場合、真っ先に死ぬべきは我らだ。枯れた木の葉は、新たな芽を育てる滋養となる。…あのときは二代目様を助けられなかった。だから、“次”は俺達の番だ」
力強く語る、死にかけの親友の言葉に、ダンゾウは言葉を返せない。
すれ違うばかりだった数十年来の友が、今ともに死のうと言ってくれることが、何故かダンゾウをたまらない気持ちにさせてくれていた。
「…わかった。元より俺の命は里の為にある。それを使うことに、何の躊躇いもないさ」
一瞬。ほんの僅かな間だが、その場にいる全員が若かりし日のふたりの姿を幻視した。
「…綱手、一応後でカルテを見せてちょうだい。何かできることがあるかもしれないわ」
「…わかった」
「サイゾウ、死人を自由にさせるんじゃないわよ。完璧に制御してみせなさい」
「指ひとつ自由にさせません、と言いたいところですけど…正直不安ですね。なので大蛇丸先生“アレ”を使います…!」
「ええ、よくってよ」
ダンゾウとヒルゼンは自然と綱手とサイゾウに指示を出す姿を見て、今の大蛇丸なら火影としてもやっていけるだろうと期せずして同じことを思う。
「…だが、それをもたらしたのは」
「ああ、癪だがあの種馬だ。…伝説の三忍全員から支持を集めるなど、尋常ではない」
その様子を見て密かに会話するヒルゼンとダンゾウ。
三忍はその性格も性質も正しく三者三様である。
自来也はこの場にいなかったが、彼はサイゾウに頼まれてナルトの護衛に就いていた。
…ちなみにサイゾウに女遊びを教えたのは彼である。
今では幼いナルトにすっかりほだされ、スケベ親父から単なるジジ馬鹿と化していたが。
ちなみにこの機に乗じてナルトを狙う存在がいることを伝えると、まさかの仙人モードで待機中であった。
「ハアアアアァァァァァッッッ!!!」
サイゾウが気合いを入れると、その様相が変わっていく。
肌は浅黒く変化し、額からは三本の角が生え鬼を思わせる形相へと変身していく。
「体術、忍術、幻術…ほとんど全部使いこなせるサイゾウだけど、彼が元々体術が苦手だったのは意外と知られてないわ」
サイゾウの変貌に驚きを隠せない全員に言い聞かせるように、大蛇丸は語り始める。その言葉に驚いたのはシスイだ。
「兄さんが体術を苦手?はじめて聞きましたよ、それ」
「これまで必死に隠してきたのよ、カッコ悪いからって。それでもこの子は文字通り“たゆまぬ努力”ですべてをモノにしてきた。…元から才能があったと言ってしまえばそれまでだけど、この子が全身に血を滲ませながら修行していたのを知っているのは、わたしとミナト、それと今はもう死んだマイト・ダイだけよ」
どこか誇らしげに語る大蛇丸。
その間にもサイゾウの様子は変わっていき、それに合わせて肌に感じられるほどにサイゾウのチャクラも高まっていく。
「けど、仙術だけは違った。相性がよくなかったのか、何度やってもまともに自然エネルギーを得ることすらできなかったわ。…けどある日、わたしが保護した血継限界のなかに“仙人の力”と呼ばれるモノを使う子が現れたの。調べてみると、彼らの一族…といってももう生き残りはその子しかいなかったけど、彼らは先天的に“仙術チャクラ”を宿す一族だったの。わたしはそれを研究して、わたしの仙術チャクラを『呪印』としてサイゾウに付与する方法を確立したわ。ただし、ある衝動と引き換えにね」
「ある衝動?」
先程に続いていち早く変貌する兄という衝撃から立ち直ったシスイが大蛇丸に尋ねる。
「ええ、殺戮衝動とでもいうのかしら。“とにかく目の前にあるものすべてを殺さなければ気が済まなくなる”…かつてわたしの前でこの状態になったサイゾウが口にしていたことよ」
その言葉にヒルゼンとダンゾウは警戒を露にするが、大蛇丸はそれを一笑に付す。
「ダンゾウ様、それに猿飛先生。警戒するのもいいけど、あの子がそれを承知していないと思う?とっくの昔に克服しているわ。不思議なくらいにあたしのチャクラは吸収されて、今では立派なあの子の能力よ。といっても、相変わらず自分で練ることができないから定期的に補充する必要があるんだけどね」
腕を組み、まるで問題ないとばかりに大蛇丸が自身をサイゾウの前にさらけ出せば、ヒルゼンやダンゾウとて無理に責めるわけにもいかない。
「…大蛇丸先生、あまり人の恥ずかしい過去を勝手に話さないでください。さて、みなさんお待たせしました。これで下準備は十分ですかね?」
もし六道仙人の姿を知る者が見れば変化の終わったサイゾウの姿に驚いたであろう。
それはまさしく、仙人の力を得た大筒木一族の姿に酷似していたのだから。
強力な仙術のチャクラを自らに体現したサイゾウの気迫に、一同は気圧される。
「あともう一手間よ。《口寄せ・穢土転生の術》!」
大蛇丸が印を組み、生け贄となった盗賊に口寄せをする。塵が集まり、浄土から口寄せした対象が生前の姿を取り戻していくにつれ、ヒルゼンとダンゾウはまさかと慌てる。
「…む、これはどうしたことか。…おお!猿ではないか!その姿を見るに、里は長く続いておるようだな!」
はじめに言葉を発したのは初代火影千手柱間。
『忍の神』と呼ばれ、かつて起きた血みどろの戦乱を一度終わらせた男である。
「…これは穢土転生か。ワシらを呼び戻すなど、一体何事が起きたというのだ」
次に言葉を発したのは二代目火影千手扉間。冷静に現状を分析し、早くも自分を穢土転生させたのが大蛇丸であることに気づいている。
「お、大蛇丸よ、これはいったい」
「…本当はダンゾウ様への牽制と、万が一マダラが制御を振りほどいた場合に備えてお二人を穢土転生させるつもりだったのよ。ま、ダンゾウ様はあてが外れたけど」
あっけらかんと言う大蛇丸だが、その手はしっかりと印を組んでおり、先代の火影といえど下手な動きをさせるつもりがないように見える。
「ダンゾウを…?サル、事情を説明せい。それに聞き捨てならぬ名前を聞いたぞ。マダラがいったいどうしたというのだ」
厳しく詰問する扉間に、ヒルゼンはやや慌てる。
仕方なくダンゾウは、手短に説明することにした。
とりあえず穢土転生第一弾は柱間&扉間おじいちゃん。
どんでん返しのはじまりです。
そして実は死にかけヒルゼンおじいちゃん。
さて、本当に彼は死ぬのでしょうか(棒読み)