ガーディアン本部の情報統合部署に仕掛けた盗聴器から聞こえてきた会話に、瑚太朗は思わず目を見開いた。
『……確かなのか、それは』
『間違いない。かなり機密保持されているが、そろそろ隠すのも限界に近くなってる』
『南極が……まさか』
『そればかりじゃない。ガラパゴス諸島が沈んだそうだ。今必死になって政府と国連が隠蔽しようと動いているがバレるのは時間の問題だろう』
『世界規模なのか、それは?』
『……おそらく地球規模での天変地異だ。海上自衛隊の調査派遣部隊が一艇消息不明になったらしい。メタンハイドレードの急激な噴出が頻発している』
『海底火山活動か?』
『それもあるが。……やがて日本にも巨大な津波が来ると予測されている。何せ大陸のほぼ半分近い氷河が崩落したからな』
『誤魔化せるわけないだろう、そんな!』
『しい……っ! 大きな声出すな。上層部にでも知れたら口を封じられるぞ』
『情報操作ったって限度がある。混乱は避けようがないぞ。早いところ対策を講じないと何もかも手遅れに……!』
『いま会議側が民間ヘリを使って実態解明に動いている。何せ国家規模での情報操作だ。こちら側としても打つ手がない』
『くそ…っ! 江坂室長が足止めくらってるのはこれか』
――天変地異。
ニュースでもネットでもそんな情報、欠片も流していない。
ここ数日で起きたことではないはずだ。おそらく数ヶ月も前から起きていた。だがそれも隠しきれなくなってきているということか。
(……篝は気づいていたのか)
星の化身だ。地球規模で起きている事象を成すすべもなく感じていたに違いない。
時間がないとしきりに言っていた。篝では防ぎようもないことだ。どうして気づいてやれなかった。
(今は……考えても仕方ない)
それより自分の成すべきことを先にするのが先決だった。
瑚太朗はもう用済みの無線型受信機を手で握り潰した。
玄関を開けてから、瑚太朗は安堵の吐息をついた。
篝の森の匂いがまだ漂っている。逃げていないことが何よりもの幸いだった。
本当は受信装置の置いてあるホテルで情報を聞きながらレポートを書きたい。
万一盗聴器が発見されたときの用心に、何箇所かのホテルに分けてある。
だが、篝の側を離れて過ごす気にはどうしてもなれなかった。
「かが…」
リビングに入って声をかけようとした途端、瑚太朗は目をこすった。
窓際にいる篝の姿が、一瞬、透明になったような気がしたのだ。
「……っ」
慌ててもう一度よく見ると、確かにそこに篝がいた。
いや、透明というより、存在が希薄になったような……。
(認識撹乱……?)
存在を視認できなくなる、鍵の持つ防御機能。
それはなぜか瑚太朗にはきかないはずだった。
だが最近の篝は、口数も減り、きかれたことには答えるが、前ほど鍵の使命を繰り返し呟くことはなくなった。
(時間が……もうないのか)
瑚太朗はぎゅっと拳を握った。
もう何が何でもレポートを早急に仕上げる必要がある。
まだ足りない情報がいくつかある。超人の能力推定値は確証の域に至っていない。だがそんな事も言っていられない。
(足りない分は、……海外にいるあいつらに情報を集めさせるか)
危険な橋を渡らせることになる。
彼らは喜んで果たしてくれるだろうが、本当は少しでも犯罪を犯して欲しくなかった。
心の中で詫びるが、もう引き返すことなどできない。
何を犠牲にしてもこの仕事を終わらせないと、篝に『良い記憶』を見せることができないのだ。
「篝」
近寄って背後から肩に触れた。
篝は瑚太朗の手に反応を示し、ゆっくりとそちらを見た。
(良かった……)
篝はまだ瑚太朗への関心を失っていないようだった。
「しばらくレポートを作らないといけない。リビングにいるから、何かあれば声をかけてくれ」
篝から声をかけることなどないとわかっている。
だが少しでも篝の側にいる口実が欲しくて、つい言ってしまった。
(バカだよな、俺……)
みっともなく女の気を引こうとしている。
そんな自分に嗤いがこみあげた。
「……」
篝は肩から離れようとする瑚太朗の手を、ふと掴んだ。
「篝?」
しばらく瑚太朗の指をひとつひとつ確かめるかのように触れていた。
指に指を絡めたり、指の間を広げたり……。
「お、……おい」
その手を、篝は口に入れた。
「……っっ!!」
篝の口の中で舌が指に絡まる。食べようとしているわけではなく、ただその仕草は。
瑚太朗が教えた愛撫そのものだった。
「か、篝っ! ダメだ、離せ!」
(そんなことをされたら……!)
瑚太朗は必死になって片手で口を押さえて理性を押しとどめようとしたが、篝は指を舐めるのをやめようとしない。
それどころか。
指を吸い上げてきた。
「~~~っっ!!」
技巧は稚拙そのもの。だが迷いのない挙動が瑚太朗の言葉すら奪う。
篝の冷たい口の中が、滑る舌が、唾液が、このうえなく官能的で。
これ以上我慢できそうもなかった。
「……っ!」
篝を引き寄せ、指を口から離して唇を奪う。
数日ぶりに抱きしめる篝の身体は、堅く硬直していた。
まるで彫像のような身体をきつく抱きしめ、不埒なことをした口内を蹂躙する。
舌で掻き回し、喉の奥にまで侵入すると、篝はようやく苦しそうな吐息をもらした。
「っ……は、ぅ…」
篝の吐息が媚薬となり、さらに口付けを重ねた。次第に熱がこもっていく篝の口の中。眩暈がするほどの心地良さに震える。
(こんなこと……もうしてはいけないのに)
泣きたくなる。
こんなにも意志が弱い自分を。
篝に触れているだけで何もかもがどうでもよくなりそうで。
長い接吻にようやく終止符が打たれたのは、篝の手が瑚太朗の袖を掴んだときだった。
篝は泣いていた。
「か……篝……?」
涙を指で掬うと篝は首を小さく振って、掠れるような声で言った。
「瑚太朗……篝が動かなくなる前に……」
「……っ」
「どうか……お願いします」
篝が求めていた。
さっきのあれは、間違いなく誘っていたのだ。
そんなことを篝がするとは思いもしなかった瑚太朗は、言葉を失った。
「なんで……」
瑚太朗の唇がわなわなと震えていた。
驚愕なのか、期待なのか、恐れなのか、わけがわからない。
ただ信じられない思いで篝を見た。
「ヒトの営みをしないと……理性を失ってしまう……」
「な……?」
「瑚太朗に……繋ぎとめてもらうしか、もう……」
さめざめと泣く篝を、瑚太朗はただ見つめるしかなかった。
(理性を失う……?)
篝はいま人間の感情を理解できている。
その感情が、篝の本来持っている鍵としての本能に恐れを抱いている。
鍵の本能。――滅び。
人類への滅び。
いま篝はそれを人間の持つ感情で必死に抑えているのか。
(なぜ……)
人間を滅ぼすことが、本来の鍵の役割だったはずだ。
滅びをとめる手段はただひとつ。『良い記憶』。
最初から篝はそう言っていた。
滅びを……とめる。
とめる、と言っていたのだ。
あの丘で会ったあの時から。
(なんてこった……)
今頃になって気づくなんて。
篝は人間を滅ぼしたいわけじゃない。
ただもう、間に合わないから。何もかも手遅れだから。今の人間を滅ぼしたら星の再進化もできないから。
篝は最後の鍵なんだ。
だからこんなにも人間を理解しようとしている。
「…篝…」
彫像のような篝の身体を抱きしめる。
篝は瑚太朗の腰に手を回して、必死にしがみついてきた。
早く滅びを回避しないといけないのに、時間は篝に容赦せず、刻々と身体を変質させていく。
その焦りと悲しみが痛いほど伝わってきた。
「どうすればいい?」
自分に出来ることをするしかない。
篝を助けないと、『良い記憶』を見せる前に手遅れになってしまうかもしれない。
早くレポートを作らないといけないのはわかっている。
だが篝を放っておくことなど出来なかった。
篝は瑚太朗の問いに、躊躇わず答えた。
「気を失うほど……抱いてください……どんなに激しくしても、もう……瑚太朗を傷つけません」
「篝、だけど……!」
そんなことはできない、と言おうとした瑚太朗の唇を篝が塞いだ。
篝からの初めての口付け。
それに驚いたのもつかの間、篝は両手で瑚太朗の頭を引き寄せた。
自然と深くなるのを、瑚太朗は目を瞑って押しとどめた。
「かっ……、篝。ダメだ。篝がそれでよくても、そんなことしたら篝の身体を傷つけてしまうかもしれない。そんなこと出来ない!」
「大丈夫、です……性行為の体内受傷は……快楽情報へと……変換しています……局部や肌の鬱血も……」
「そういうことを言ってるんじゃ……!」
「瑚太朗、お願いです……もう意識が乖離し始めてます……自我が、これ以上……」
「篝?!」
「瑚太朗しか……瑚太朗のことしか……考えられないようにしないと、もう……篝にはとめられ……っ」
また涙を流しはじめた篝の唇を塞いだ。
篝は黙って触れるだけのキスに応えていた。
唇の震えが伝わる。
温度とにおいを伝えたいのに、篝の唇は冷たいままだった。
「篝はこの星が少しずつ崩壊しているのに気づいてたんだな?」
瑚太朗を見上げて、諦めたような顔で小さく頷いた。
「篝には、もう……どうすることも……」
「なぜ最初に教えてくれなかった?」
思えばあの丘で再会したときからそれは起きていたのだ。
でなければ滅びをとめるなど、鍵が言うはずもない。
「話しても……一個体の人間に……何が出来るのですか」
「対処方法はいくらでもあった! 人間だって自然に多少抗えるだけの力は持っている!」
「それは組織としての……国家としての……対応です……篝は、初めから……」
「ああ、そうだな。俺しかいなかった……わかってるさ!」
篝は最初から天王寺瑚太朗に頼むしかなかった。
鍵を唯一見逃した人間。
見逃したのは天王寺瑚太朗しかいなかった。
(ちくしょう……!)
世の中、バカばかりだ。
自ら滅びを邁進して。
鍵をうまく導けば、どんな天変地異だろうと防ぐことはできたはずなのに。
でも防げたとしても。
星の活力は失われている。
もう再進化するだけの余力すらないと、篝は最初に言っていた。
やり直しの機会すら失われているのだ。
「手加減しなくて、いいんだな?」
篝の腰に手を回して引き寄せると、応えるように瑚太朗の背中に手を回してきた。
リボンが二人を取り囲むように揺れていた。
「もう攻撃はしないのか?」
「その心配は……ありません……瑚太朗を敵性対象から……外してます」
「つまり、前やったときは……まだ敵だと」
「篝を……裏切ったと……思って……」
胸が痛む。
それは瑚太朗のした囮作戦が、篝の信頼を裏切ったからに他ならない。
瑚太朗は篝の肩を抱きしめた。
「正直、俺もどこまで理性がもつのかわからない。……篝を傷つけたくない。だから」
篝の額に優しく唇を落とした。
「これはただの性行為なんかじゃない。愛し合う行為だと思って欲しい」
「愛し……合う」
「動物は繁殖のために交合する。だが人間は心と心を通い合わせるためにするんだ。……篝。人間の理性を持っていたいのなら、俺に心を開いてくれ」
「どう……すれば……?」
「まずは隠し事はなしだ。あとは、そうだな……」
ふっ、と瑚太朗は小さく笑う。
一瞬バカなことを夢見てしまった。
篝と一緒に幸せな日々を過ごせたらどんなにか……。
「俺に、恋してくれないか」
篝はきょとんと瑚太朗を見た。
意味はわかってないのだろう。
当たり前だ。篝は人間ではない。わかるわけもない。
でも。
(それでいい……)
鍵に恋した人間など、自分ひとりだけで構わない。
篝に口付けしながら、瑚太朗は満ち足りた気持ちを感じていた。
ベッドに降ろすと、篝は瑚太朗の首にしがみついてきた。
すでに服は消えている。
リボンだけが篝の身体を波打つように覆っていた。
「篝、力を抜いてくれ」
だが篝は瑚太朗の首から離れたくないのか、しがみつく腕の力を緩めようとしない。
篝の背中から腰を撫でて、とにかく力を抜いてもらおうとするが、触れた箇所は驚くほど硬直していた。
肌の質感は以前と変わらないが、まるで木の幹のように身体が動かない。
(樹木化してるのか)
鍵は滅びが近づくと大地に根を張り、その姿を樹木に変容させる。
以前ヤスミンと調べた鍵の伝承にそんなことが書いてあった。
(できるのか……?)
篝の膣の入口をなぞり、内部を確かめる。
幹のような身体とは違い、中は期待に打ち震えるかのように蠢いていた。
暖かくて、柔らかかった。
以前よりそこは数段と……。
「篝、これ……」
瑚太朗が篝の顔を覗きこんで尋ねると、微笑んで答えた。
「アウロラの一部を……そこに……回しました……」
「アウロラ?」
「星の命の……源です……」
「それって、篝の……!」
「大丈夫、です……まだ多少の余力は……」
(ここまでして……)
瑚太朗は篝が命を使ってでも理性を保ち続けたいと願う気持ちに、心が打ち震えた。
なおさら乱暴にするわけにはいかない。
「篝」
瑚太朗は篝の腕を外すと、手の甲に巻いてあるリボンに口づけた。
「悪いがゆっくり抱き合ってる時間はない。初めから飛ばすけどいいか?」
「構いま……せん」
「飛ばすってのは篝の意識だ。痛い思いなんかさせない。ただ気持ちよく感じてくれ」
足を抱えあげると迷わず篝の秘部に口づけた。
舌を使って内部を掻き回す。
「瑚太朗……!」
思ってもいなかったのか、篝は瑚太朗の頭を引きはがそうと手を抑えた。
だがそれはかえって瑚太朗の動きを助長しただけだった。
「いけない……! そんなことしたら、……瑚太朗が……っ!」
篝の制止の意味がわかるのに時間はかからなかった。
舌で触れた途端、瑚太朗の口から瞬時に脳へと何か強烈な刺激物質が送りこまれた。
「……っ」
命の源泉であるその物質は、瑚太朗に原始的な感情を齎した。
殺戮。衝動。憤怒。凌辱。憎悪。
ありとあらゆる負の感情に満たされる。だが瑚太朗は意地でもそれに抗い続けた。
(こんなの、篝の苦しみに比べたら……!)
瑚太朗は篝の膣内をひたすら愛撫することだけを考えた。
彼女を気持ちよくしたい、ただその一心で。
膣内を引き裂いて噛み千切ってしまいたい衝動など絶対にない。
そんなのは絶対にあるわけがないのだと自分に言い聞かせる。
「瑚太朗……っ」
篝の懇願が理性を保たせてくれた。
一瞬でも上書きしようと安易に思った自分を意識の外に追いやる。
(俺は篝を愛してる)
それだけを考えた。
舌だけではなく、指も使って、優しく中をかき乱す。
瑚太朗のために濡れ出したその中を愛しく思いながら、舌で吸い上げ、舐め、指で優しく解きほぐす。
熱い愛液が迸るようになった頃、ようやく篝の口から恍惚とした声が聞こえはじめた。
「篝……」
幹のように固かった身体が、次第に身が捩れるほどの柔らかさを取り戻す。
篝は身悶えていた。
感じすぎて涙をとめどなく流している。
「…………」
その美しさに目を奪われる。
もう昏い感情などどこにもなかった。
いや、ないわけではないけれど、耐性がついたかのようにあまり感じなかった。
篝もこんな感情を味わったのだろうか。
(おそらくそうなんだろう)
でなければあんな必死にとめようとはしない。
瑚太朗の肩にはまだ篝の爪の痕が血が滲むほど強く残っていた。
「篝……もう少し、足をあげてくれ」
もうだいぶ柔軟さを取り戻した身体は、瑚太朗の望むまま大きく足を開いた。
さっきまであんなに固かったのがウソのようだった。
(感情……)
篝の中にある人間の感情が身体を変化させている。
ヒトと繋がりたいと強く欲すれば欲するほどヒトに近づこうとする。
まだ滅びまでは猶予があるような気がしてきた。
「瑚太朗……瑚太朗……瑚太朗……」
篝の呼びかけが愛の囁きのように聞こえて、それに応えるかのように指と舌を使って愛撫した。
だが実際のところ、篝は瑚太朗に特別な感情を抱いているわけではない。
それは瑚太朗もよくわかっていた。
人間の持つ感情と、鍵が会得した感情は、似て非なるものだ。
それは自然の摂理のようなもの。
納得できてしまう自分がおかしかった。
(俺、こんな達観できるやつじゃないのにな……)
自分で自分がわからなくなり苦笑すると、その吐息も篝には刺激になったのか、一際高く啼いた。
「あ、ぅ……っ!」
叫ぶと同時に達する。瑚太朗の顔に篝の飛沫がかかり、それを舐めてから彼女に口づけた。
「ごめ……なさ……っ」
謝ろうとする篝が可愛くて。
瑚太朗は泣きながら謝る篝の瞼や頬を啄むようにキスをし、幾度となく唇を重ねた。
篝の膣に潜りこませたままの指は火傷しそうなほど熱かった。
「もう……いいです……から……」
早く挿れてほしいと懇願する。
だが瑚太朗はまだ篝を極めさせてあげたかった。
「篝……胸、揉ませてくれ」
今まで断ったことなどないが、篝が先ほどからしきりと自分の胸を両手で隠しているのが気になった。
快感が強すぎて胸を押さえているのかと思っていたが、まだ離そうとしない。
「い……や……です」
拒む仕草すら可愛いが、しかし、拒絶の意味をはかりかねた。
「なぜ?」
「胸……小さい……です……」
「……は?」
「瑚太朗……悦ばせる……胸じゃ……」
しばし悩む。
篝の胸はとても綺麗だと思う。
ふくよかで、柔らかくて、いつまでも吸いつきたいと思うほど。
小さいことなど考えたこともなかった。
「バカだな……。そんなこと全然気にすることないのに」
言って、ふと気がつく。
篝が胸を気にする?
それじゃまるで、人間の女みたいじゃないか。
(えええ??)
混乱する。
そもそも女性が胸の大きさを気にするのはなぜか。
それはもちろん見た目の問題もあるだろうが、多くの場合は男性を喜ばせるためのものだ。
男は巨乳に弱い。(もちろん例外もあるが)
それは瑚太朗にもいえるが、しかしそんなのは一般論のようなもので、胸の大小など大して気にもならなかった。
まあぶっちゃけ、例外の中に入る部類だろう。
しかし好きになった相手であれば、巨乳だろうと貧乳だろうと、等しく愛せる自負はある。
女性の場合、男性のシンボルの形など気になるものだろうか。
そりゃ大きければ大きいほど、より女性を喜ばせることができるだろうが、しかし……。
やはりそれは女性にとってもどうでもいいことなのではないか。
※この間思考時間0.2秒
(ちょっと待て。篝は羞恥心を感じてるのか?)
考えられないが、そうとしか思えない。
篝が短期間で人間の感情をほとんど網羅したことに驚嘆するが、そんな感情いつ覚えた。
(俺か?)
巨乳好きと言った覚えはないが……。
しかし篝の様子は瑚太朗に対して恥ずかしがっているようにしか見えなかった。
「篝、手をどけてくれないと、愛せないんだが」
「いや……」
「前のときは何しても悦んだだろ!」
「あのときは……知らなかったんです……」
「なにを」
「瑚太朗のを……挿めない」
頭を抱える。
いや、確かにそれに近いようなことはしたけれど。
口で咥えさせようとはしたけれど。
「挿まなくていいから。俺が変なことしようとしただけだから。頼むから忘れてくれ」
すべて自分のせいだった。
「今は篝の胸を気持ちよくさせたいだけだから。俺のはどうでもいいから」
「篝も……気持ちよく、……させたい」
「は……い?」
「瑚太朗を……気持ちよく……させたい……です」
目を見開いた。
篝がそんなことを言うとはまさか思っていなかった。
激しく混乱した。
篝が自分に対して特別な感情など抱くわけがない。
それは絶対にそうだと確信する。
では、これは?
まるで愛し合う恋人同士のようなセリフは一体?
(愛し合う……?)
そういえば最初に篝にそう言った。
恋をしてくれ、とも。
もしかすると。
(篝はそれを守ろうと……?)
擬似的な感覚かもしれないが、愛情をなんとか表現しようとしているのだ。
意味などわからなくても、人間の行動パターンから分析して。
(余計なこと、言うんじゃなかった……)
瑚太朗なりに想いを伝えた言葉だが、篝に通じるはずもない。
それをこんな形で思い知った。
「篝、その気持ちだけでいい。今は篝を気持ちよくさせたいんだ。だから腕、外してくれ」
「…………」
「俺は篝の胸、好きだよ。好きだから触りたい。それじゃダメか?」
目を見つめて真摯に言うと、篝はおそるおそる腕を離した。
長いこと腕で押さえつけられていたのに、形はまるで揺らいでいなかった。
「ん……っ」
突起を押し潰すように吸い付く。そのまま両手で嬲るように揉みほぐした。
揉みながら陰唇に指を忍ばせる。
篝の中は愛液と潮で水音が高くするほど濡れていて、瑚太朗のを待ち構えているかのようだった。
(挿れたい……けど)
篝を胸だけで感じさせたい。
大きさなど問題ないくらい魅惑的で神秘的なのだと教えてあげたい。
いつしか篝は瑚太朗の頭を抱えて、胸に吸い付くのを誘っていた。
舐めて、揉んで、吸い付いて。
それだけのことなのに篝の吐息と喘ぎが次第に高くなっていった。
「篝……イキそう?」
問いかけると首を横に振る。まだ足りないか、と肌に吸い付く力を強めた。
「んっ、……んぁあっ」
刺激が強すぎたのか、篝が喉をのけぞらせた。そこに舌を這わせる。
篝の足が次第に震えてきた。……絶頂が近づいていた。
そのとき。
「え……っ?!」
篝のリボンが、瑚太朗と篝を密着させるように絡みついてきた。
リボンの一部が瑚太朗自身に巻きつき、そのまま挿入を促す。
「え、ちょっ……おいっ!」
予想もしていなかった動きに瑚太朗は抗えなかった。
(まさかこれ、篝が……?!)
篝は瑚太朗の頭を抱えこんだまま足をビクビクと震わせて広げていく。
無意識に瑚太朗を強く欲し、リボンを使ってでも繋がろうとしていた。
「くっ……う、……っっ」
今まで我慢していた分、反動を抑えられなかった。篝に挿った途端達する。
その瞬間、篝も身を大きくのけぞらせて極みを迎えた。
「……~~~っっ、この!」
瑚太朗は不本意にも篝によって出されたことで顔を赤くした。
「瑚太朗……」
「篝……おまえ……やっていいことと悪いことがな……」
いまだ腰に絡みついて離れないリボンが、気持ちいいのかくすぐったいのかよくわからない。
篝はいまだ絶頂が抜けきれない恍惚とした表情で首を傾げる。
「なにを……言っているのです、か……?」
「自分のやったこと、覚えてないのか?」
「……?」
「……無意識なわけね。リボン、腰から離れてくれないんだが」
「篝の意志……では……」
「これ、望んでそうしてるわけじゃないのか?」
「さあ……ただ……気持ちよく、て……」
「ありがたいけど、この卑猥なリボンを何とかして。動きたくても動けない」
「では……しばらく……このままで……」
「このままでいろと?!」
「だめ……ですか?」
「いや、……萎える気配はないからいいけど。しょうがない。離れるまで待つか」
諦めて、篝を抱き寄せた。
リボンを睨みつける。
攻撃してもしなくても、厄介な代物だった。
(篝に快楽を覚えこませた俺の責任か……)
そう思うと悪い気はしないが、しかし射精のタイミングくらい自分でしたかった。
瑚太朗は篝を抱きしめたままキスを繰り返していた。
少しでも長くとどまることができるようにと。
あれから篝の中で二回ほど出し、さあこれから本番――という時になって。
ベッド脇のチェストの上に置いた携帯が鳴った。
「…………」
「…………」
篝と二人で顔を見合わせる。
なぜ電源を切っておかなかった。
いや、緊急時には出られるよう切らないでおくのが習慣だが。
(なにもこんな時に……!)
瑚太朗は身体の下にいる篝の額にキスをして、宥めるように言った。
「少し待っててくれるか?」
篝は繋がったままの足を強く絡みつかせて、拒絶を示した。
しかしこのバイブ着信は出ないとマズイ。
断続的なパターンはガーディアン本部からのもの。
瑚太朗は意を決して篝と繋がったままの状態で電話に出た。
篝の口をとりあえず手で塞いでおく。
「……はい天王寺です」
『なんだ、寝ていたのか? たるんどるぞ、貴様!』
「申し訳ありません。緊急ですか?」
『司令部に来い。江坂室長が帰国された。貴様に話があるそうだ』
「は、はい……!」
『その寝ぼけた掠れ声で来たら容赦はせんからな』
(江坂さんが戻ってきた……)
いよいよ鍵探索が本格化する。
もうほとんど時間は残されていないようだった。
瑚太朗は電話を切ると、塞いでいた手を離し、深く口付けをした。
長い口付けを交わした後、篝の髪を撫でながら話しかける。
「悪い、本部に行かないといけない。後始末もできないけど、すぐ戻る。ここで待っててくれ」
「瑚太朗……」
「俺だって篝と離れたくない。でも……行かないと」
篝はまだ求めていた。
自我を保っていられるのは瑚太朗といる間しかないのかもしれない。
だが身体はもうほとんど動けるようになっていた。
「篝、大丈夫だ。負けないでくれ。俺もぎりぎりまで足掻いてみせるから」
篝の身体を強く強く抱きしめる。
小刻みに震えている篝の身体。
それが余計に瑚太朗の決意を促した。
『天使音階』〜『崩壊序曲』〜『崩壊序曲~finality~』へと繋がっていきます。
タイトルがくどくて申し訳ないです。変えようと思ったのですが…。
書いた当時のままで続けたいと思ったのでこのままにしました。
現在も書いておりますが、finality以前の話は『星の階を昇った先に』よりかなり前に書きました。
なので文体とか(もともとだけど)下手なままですが、あえて書き直しはしていないです。
どうぞ寛大な気持ちでお読みいただけると嬉しいです。