※この作品はR-18です。

【Rewrite】崩壊序曲〜finality〜   作:千月華音

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※18禁になります。


(5)また逢える日まで

 

 

 あれから三時間。

 小鳥はバスルーム手前の扉の前でしゃがみこんで膝を抱えていた。

 現在は深夜二時。彼女の身体は睡眠を欲していたが、心配で眠るどころではなかった。

「瑚太朗……くん……」

 彼ならきっと生きている。そう確信していた。

 ただ――。

 狂歌現象が起きたということは……もう、時間がない。

 小鳥は滅びを受け入れていた。

 決してとまることのない死へのカウントダウン。いかなる手段を用いても救済をとめる手立てはない。

 それを。

 瑚太朗は、――とめると言った。

 どうやるのか見当もつかないが、彼は自信を持っているようだった。

 それが小鳥の不安を煽っていた。

 瑚太朗が死ぬかもしれないという恐れ。

 彼の身が犠牲になるかもしれないという恐れ。

 ……馬鹿げている。

 世界で誰よりも嫌っているあの男がいなくなることを、恐れるだなんて。

 でも瑚太朗がこの世から消えてしまうことを考えるだけで、胸の中がからっぽのがらんどうのようになる。

 もう両親はいない。ペロもいない。生きている意味など……ない。

 でも、……瑚太朗がいたから。

 彼のために何かをしたいと思ったから、生きている。

 死ぬなんて許さない。

 何が起ころうと、最後までついていく。

 小鳥はひとつの決意を胸に固めた。

 

 

 

 

 

「篝。……篝、大丈夫か?」

 最初の極みで気を失った篝を、瑚太朗は抱き上げながら顔を覗きこんだ。

 陶酔したような笑みを浮かべて熱い吐息を漏らしている。

 そんな彼女を見ているだけでまた繋がりたくなる衝動を必死に堪え、頬や額にキスをして彼女の覚醒を促した。

 ……何が起きたのか、自分でもわからない。

 激しくしたつもりも、性急に進めたわけでもない。――ただ優しく、心をこめて愛した。

 その感覚に酔いしれた。

 夢中になったというか。

 今まで感じたことのない快感が、篝を通して伝わってくるようで。

(ただの……愛撫のはず、だ……)

 そんなものではなかった。

 篝の中で溶けて混ざりあってしまうような、譬えようのない一体感。

 かろうじて気を失わずに済んだのは、極みを目指す彼女をひたすら見つめていたから。

 自分の感覚だけに酔いしれたままなら、篝とともに気絶していたかもしれない。

 ……それほどすごかった。

 醒めやらぬ興奮で、手足の震えもまだ収まりきれていない。

(こんなの、今まで……)

 知らなかった。

 枷を解き放っただけで、こんなに気持ち良くなれるなんて……。

 喉を鳴らして篝を見る。

 額の汗と唾液で濡れた唇が艶かしく、しだれかかる火照った身体の美しさ。

 篝の身体は傷ひとつなかった。先程の怪我も、髪の乱れも、何事もなかったかのように元に戻っている。

 元どころか、……以前より美しさを増していた。

 もしもこれが。

 生命としての篝の最後の輝きなのだとしたら。

(……させるか)

 篝を失いたくない。

 わかっている。彼女は鍵だ。人類を生命を滅ぼすために生み出された存在。

 役目が終わればどうなるかくらいわかっている。

 だけど、……渡したくない。

 星になど還したくない。

 不可能な願いだろうと、ありえない未来だろうと、篝のいない人生などもう考えられなかった。

 

 

 

 

 

 瞼や唇にキスを落とすが、目を覚ます気配はまだなかった。

 吐息は乱れているが、気持ちよさそうな顔で眠っている。……感じてくれている。それが嬉しかった。

 篝のお腹を手で押さえると。

 水音とともに大量の精が彼女の膣入口から零れてきた。……こんなに出したのか。

 このままではいくらなんでもかわいそうなので、篝を抱き上げて移動した。

 シャワーをかけて少しずつ彼女の汚れを落としていく。

 バスルームは淡い虹色の靄がうっすらとかかったままだったが、身体が馴染んだかのようにもうなんの苦痛もない。むしろ蕩けるような心地よさだった。

 濃密な森の香りがする。……篝が生まれた場所と同じ匂い。

 それは自分の体内からも同じ香りが染み出しているような気がした。気のせいではなく、実際そうなのだろう。

 篝を見つめる。

 彼女と同じ体質を得たことに、幸せを感じた。

 先程の天にも昇る境地も、篝と同じ存在になれたことの証のようなものだった。

 彼女とひとつになれることが、――こんなにも。

 こんなにも至福をもたらすものだなんて、知らなかった。

 早くまた繋がりたい。

 篝に口づけながら、指で膣内を優しく掻き混ぜた。

 篝の足が揺れ動く。眠りながら感じる彼女を愛おしく思いながら、ひたすら唇を重ね合わせた。

 ……すると。

 いつの間にか、篝の手が伸びて瑚太朗の右耳をつねった。

「い…って」

「ひどい、です……瑚太朗」

 拗ねたような声で唇を尖らせ、恨みがましく睨みつけてきた。

 思ってもいなかった反応。

 あまりの可愛らしさに反則だろと思いながら、彼女の唇を貪った。

「ん……ぅ」

「ひどいのは篝の方だろ。先に気絶するなんて……」

「違います。気絶させたのは瑚太朗で、篝はまだ途中……んっ、ぁ」

「だから、続きをしよう」

「……まだ、無理です」

「身体は欲しがってるようだけど」

「そうではなく。……わかっていないようですね。何のためにこんなことをしているのか」

「こんなこと、って……」

「篝はまだ途中までしか紡げていません。……合わないんです、計算が」

「はい? 計算?」

「ちょっと黙っててください。もう少しでわかるんですから」

「……なんの話をしてるんだ?」

 黙れと言いながら篝は瑚太朗の顔を引き寄せ、口づけを交わしてきた。

 それに応えながら篝の膣に挿入しようと伸ばした手を叩かれる。

 挿れたいんだけど、と口づけの合間に言うが、少しは我慢しなさい、と答える。

 ……わからない。

 篝はなにをしようとしているのか。

 ただ普通にセックスしたいだけじゃないのか。

「えと、その……続き、してもいいんだよな?」

「駄目だと誰が言いましたか。むしろ途中でやめられては困ります」

「よかった。それを確認したかった。……で、なんで今は駄目なんだ?」

「瑚太朗が途中で気絶させたから、計算が合わなくなったんです」

「だから、なんの計算だよ?」

「染色体と塩基配列の伸張修復回数です」

「……ちょ、……っと待て」

 篝がなんの話をしているのかさっぱりわからないが。

 少なくともそれは今やることなのか?

「それはそんなに大事なことなのか?」

「だから言ったではありませんか。何のために瑚太朗と繋がったと思うのですか」

「……何のため?」

「瑚太朗のためです」

「俺の?」

「あなたの思いに報いたいだけです。篝のために今までずっと尽くしてくれた、その感謝の証です」

「…………」

 篝が何かをくれようとしているのは、わかった。

 それはセックスと密接に絡んだ何かであるらしい。

 ……よくわからないが。

 篝が感謝するという言葉を言ったのは初めてだった。

 ここは素直にありがとうと言うべきなのか。

「その……ありがとな」

「まだ受け取ってないのですから、謝意はいりません」

「いや、気持ちだけで十分だから。……なにくれるのか知らないけど」

「ここまで話してもまだわからないのですか」

 話がだんだんかみ合わなくなってきている。

 瑚太朗はもうそろそろ我慢できなくなってきた。

 篝の膣内に無理やり堅く反り返ったモノを挿れた。

「んっ……」

「悪いけど、もう限界。時間もあまりないから続きをやろう」

「瑚太朗。するのは構いませんけど、もったいないですよ」

「なにが?」

「先程の感覚を、もっと長く味わいたいのでしょう?」

「そ、そりゃ……」

「そうしてあげると言っているのです。だからもう少し待てと」

「それ……やりながらじゃ出来ないのか?」

「出来なくもないですけど。また気絶しなければ」

「わかった。善処する。……ゆっくり、動くからな」

 篝の腰を持ち上げて、揺らすように動かした。

 中の揺らめきが次第に熱く蕩けるようになってきた。少し動いただけなのにもう持たなくなっている。……だが耐える。

 篝は瑚太朗の首にしがみつきながら、何かをぶつぶつと呟いていた。

 ……何を計算しているのか。

 それが気持ちよくなるために必要なことなら邪魔するのも悪いが、しかし気になる。

「瑚太朗。……お願いが」

「なんだ?」

 篝が囁いた言葉に目を見開いた。

「そんなことしたら……」

「大丈夫です、もう濃度は薄まってます。先程のあなたの治癒も、そこで行ったのですよ」

「……そうなのか?」

「瑚太朗。……そこでなら、きっととても気持ちよくなれます。お願いします。連れていってください」

 微笑む篝に、逆らいようもなかった。

 信じて彼女を抱き上げる。おそるおそる足を向けた先は。

 不思議な色をしたプールのような浴槽。

 色が……何色も移り変わっている。

 蒼から緑、黄、オレンジ、桃色……。

 濃度が薄いと篝は言った。確かに先程のようなドロドロの虹色ではなくなっている。

 ふわりとした湯気が漂って、まるでいろんな入浴剤を混ぜたような色合いになっていた。

 足を入れると。

 まるで温泉のような心地よさがあった。

 篝と湯に浸かり、抱きしめながらその温かさに酔いしれる。

 さっきまでと全然違う……。

 全身から生気が満ちていくような、安らぎに包まれていくような感覚だった。

「気持ちいいですか?」

「……すごくいい。なんだこれ。疲れが吹き飛ぶみたいだ」

「たぶんこの中でなら、できるような気が……」

「その、篝がしたいこと?」

「瑚太朗。……篝にまた、会いたいですか?」

 腕の中から見上げてきいてくる篝を。

 瑚太朗は涙を堪えるようにきつく抱きしめ、口づけた。

「別れの言葉みたいなこと言うなよ……」

「……」

「篝。……行かないでくれ。もう時間がないのはわかってる。だけどもう少しだけ、このまま……」

「また、会えます。きっと……いつか。たとえ姿形が変わってしまっても」

「篝…っ」

「瑚太朗。篝の命を、あなたに分け与えます。……会いにきてください。どこにいても、どんな姿でも、篝は待ってます」

 篝は振り向くと、自ら瑚太朗自身を招き入れた。

 足を広げ、感じ入る吐息を隠すこともなく、柔らかな膣内に誘う。

 泣きたくなるほど嬉しいのに。……寂寥と哀別に胸が痛くなる。

 湯の中で動こうとする篝の身体を、そっと壊れものを扱うように抱きしめた。

「篝。……篝。……愛してる」

「……んっ、……あ……」

「また、一緒にいこう……今度は気絶させたりしないから」

「瑚太朗。……んっ、もう少し、……ゆっくり」

「こ、う……か?」

「は、あ……あぁ……そこ……」

 篝が指し示してくれる感じる部位を、優しく回すように動かす。

 痛いほど自身が膨れあがっていく。篝とともに極めたいのに、自制のない下半身が恨めしかった。

 でも篝の感じる表情を見ているだけで、それだけですべて満たされていくような気がした。

 もっと気持ちよくさせたい。

 篝の胸を愛撫し、吐息すら奪うほど激しく口づけ、熱い膣内を縦横に動かした。

 どれだけ動いても動き足りない。疲れが微塵も感じられないせいなのか、ただ快感のみを追い求めることができた。

 篝がリボンとともに揺れて、足を大きく広げてしがみついてくるのを見て、愛しさが溢れてどうにかなりそうだった。

「瑚太朗。……我慢、しなくていいです、から……」

 篝が射精を促そうとキツく中で締め付けてきた。

 それに苦笑を漏らして彼女の喉元を吸い上げる。

「んっぁ」

「終わらせたくないんだ……もう少し、こうして……」

「欲し、い……瑚太朗、の……」

「…………」

 篝の言葉に目を丸くした。

 素直に口に出したその言葉は……欲情を煽るには十分すぎる。

 そこまで言われて我慢などできるだろうか。

 だけど……。

「も、……もう一度言って」

 期待をこめてそう言うと、篝は素直に同じ言葉を口にした。

「瑚太朗の精が、欲しいです……」

「か、がり……」

「お願いです、はやく……」

 照れも恥ずかしさもなく。――素直に。

 彼女の欲求に、もはや抗いようもなかった。

 獣のような肉欲が込み上げてくる。優しく抱きたかったはずなのに。

 こんな……。

 こんなの自分じゃないと思いながらも、瑚太朗は我慢できずに篝の奥深くの入口をこじあけるように突き上げた。

「あぅ……っ!」

「篝、……ごめんっ」

 突き破って中に侵入し、震えと吸い上げを感じながら勢いよく注ぎこんだ。

 そのまま射精しながら更に奥へ奥へと突き上げていく。

 篝がビクビクと痙攣するのも構わず、攪拌するような動きをどんどん激しくしていった。

 こんなに長く絶頂したことなどなかった。

 だけどとまらない。篝が絞り取るように蠢き、それをもっと促そうと動きを早めていく。もはや彼女の気絶を気遣う余裕もなかった。

 ――が。

 篝はずっと瑚太朗の射精を促す動きをしていた。襞が生き物のように動き、吸い上げてくる子宮の動きがたまらないほどの気持ちよさを齎している。

 篝の性欲の強さに驚いた。

 こんなにタフだったのかと感心したが、この羊水のような湯の効果もあるのかもしれない。

 篝をひっくり返して浴槽の縁の大理石に掴まらせた。

 窓の外から街の灯りが見える。……誰も見ていないだろうけど夜景が宝石箱のように綺麗だった。

 こんな贅沢な場所で、彼女とこうして繋がって。

 たとえ人生をやり直せたのだとしても、これ以上の幸せは得がたいような気がした。

「篝。……もっと欲しい?」

「……はい、もっと……もっと、ください」

 彼女の言葉に熱を煽られる。

 背後から何度も突き上げ、気持ちよさそうに声をあげる篝を、瑚太朗は優しい笑みを浮かべて見つめていた。

 

 

 

 

 

 いつか……きっと。

 また会えるといったその言葉の意味がわかるのは、――まだ先の話。

 篝は一度だけ眠っている瑚太朗を見て、そして。

 天窓のガラスをリボンで切り刻むと、消滅したガラスごとその姿を消した。

 

 

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