アーリグリフのモブ兵士たち向けの展開になります。
一挙ではなく、徐々に書き進めていく予定です。
静寂を破るがやがやとした声が聞こえる。はっと我に返ったクレアは、思わず身をこわばらせる。男性の声である。秘湯なだけに男女別といった区分けはされていないことに今更ながらクレアは思い至った。
「…っぱり、最高だよなぁ…」
「ああ、シーハーツの連中が本当にうらやましいぜ」
雪見の風情に似つかわしくない声である。シーハーツ、と自国の名前が出れば、つい耳をそばたててしまう。どうやらカルサア修練場の「漆黒」の兵士らしい。ばしゃ、ばしゃ、と勢いよく掛湯が床と体を叩く音がする。
「ほんと、美人ばっかりでさ……。特に、なんといっても…」
男の声色が少し上ずる。他の男が首を縦に振って諾意を表す。
「クレア様、だよなぁ……」
雲の上の人にもほどがあるけどな、などと苦笑する男達。弾む話がいやがおうにもクレアの耳に入ってくる。
「顔よし、気立てよし、家柄よし、スタイルよし」
「完全無欠っていう感じだよなぁ、ホント……」
「まぁ、あれだよな、なんっていっても……今日の演舞、真面目に勉強させてもらうつもりだったんだけどよ…あれじゃあ集中できねぇよなぁ」
演舞というのは、武術の型の話である。集中できないとはどういうことだろうか。盗み聞きをするつもりはないが、聞こえてきてしまう。演舞に問題があったのならば、その指摘は傾聴に値する。部下たちは軍司令官に対する立場を憚って、問題を指摘しなかったのかもしれない、風通しの良い関係を意識しているクレアにとっては、大事である。観衆であった彼らの実直な意見を聞かねば、と余計に彼らの言葉に行き来する。
「だよなぁ…」
集中できない、などといいつつ、男達は何やら高ぶっているようだった。
「あんなにプルンプルン、揺れてちゃあなぁ…」
男は顔をだらしなくしながら、胸の前で何かを持ち上げるように上下させた。その瞬間、クレアの顔は瞬時に真っ赤になる。何が揺れていたか、はその仕草で一目瞭然であった。彼らは皆一様にうなずくと思い思いの欲望を口にする。
「あー、クレア様のおっぱい触りてぇ……」
たわわな山脈に指が触れることを妄想する。弾力が指を優しく押し返すであろうことが想像できる。
「揉みてぇ、吸いてぇ……」
手をわきわきとさせて、指を食い込ませ、ツンとした乳首にたっぷり舌を這わせることを妄想する。そして、何より、自らの怒張をあの揺れる双球の狭間で暴れさせることを夢想する。
「「「パイズリしてぇ~~~」」」
三人が情けない声で唱和した瞬間、ん、と先客に気が付く。あまりに欲望ダダ漏れの言葉を聞かれた為、流石に彼らも焦燥する。
「っと、すまねぇ。でもあんたも思ったろ?あの乳を見…て…?」
同僚の一人だと思ったのか、馴れ馴れしく肩を叩こうとするが、それで違和感を感じたのか、その男が口ごもる。
「ん?どうしたんだ?……」
パクパクと口を開閉させる男を見て、少し湯気の晴れたほうを見れば、もうひとりの男も絶句する。最後の男もいぶかしげに彼らの視線と同じ向きに顔を向ければ、石のようにかちんと固まってしまった。終わった――。湯気の晴れた先に見えた、羞恥に染まった頬と目じりから流れる雫を愛らしいと思う間もなく、彼らの頭を走馬燈が駆け巡った。