セントべレス山頂にある、巨大で荘厳な神殿があった。今日も『真・光の教団』を名乗る者たちがモンスターたちを使役し、さらに巨大な建築群を神殿周囲に建て増ししていた。光の教団の者たちは鞭を持ち、まるで奴隷を使役するようにモンスター労働者たちを酷使するのだった。
その荘厳な建物群から少し外れたところに、掘っ建て小屋が立ち並ぶスラムがあった。モンスター労働者たち向けの宿舎が立ち並び、それらを取り囲むように酒場や遊戯施設が連なっている。そのはずれのみすぼらしい、馬小屋ほどの大きさの掘っ建て小屋が建っていた。モンスター労働者向けのぱふぱふ屋である。そこでビアンカとタバサはぱふぱふ娘として働いていた。
ぱふぱふ娘になりすましたビアンカだったが、最初はおっかなびっくりだった。何しろ知らないモンスターに肢体を弄られ、乳で顔を挟んでやらないといけないのだ。
ぱふぱふ娘とは、文字通りぱふぱふというサービスを金銭と引き換えに提供する職業だ。ぱふぱふとは、狭義の定義では乳房で男性の顔面を挟み込む行為である。
ぱふぱふ屋では客は、ぱふぱふ嬢の躰を触ったり会話を楽しみながら、乳房で顔を挟んでもらえる。たいてい酒や食事をしながらだ。中央のステージでは、手品やポールダンスなどの余興をやることもある。大人の夜の遊園地といった方がしっくりくるかもしれない。また追加料金を払うと、ペニスをしごいてくれたり舐めてくれるサービスもある。ぱふぱふ娘によるが、中にはセックスをさせてくれる嬢も居るようだった。
ふたりが潜入してから三か月の時が経っていた。ぱふぱふ屋はブヒオの情報を収集するには持って来いの場所だった。入れ代り立ち替わり、モンスターの労働者たちが性的な癒しを求めてやってくる。接客しながら、それとなくブヒオの外見に似たオークをどこかで見たことがないかなど、手掛かりになるような話を雑談を通して収集していた。しかし、いまだはっきりとした手掛かりは掴めていない状態だった。
日が落ちて夜――ぱふぱふ屋は今夜もネオンを灯し、仕事が終わったモンスター労働者たちを迎える。
ビアンカとタバサもぱふぱふ娘として客を迎えていた。ビアンカとタバサは源氏名を使わず実名で勤務している。ブヒオがふたりの評判を聞き、客として会いに来てくれないかと思ったからあえてそうしたのであった。今までばれたことはなかった。妃と王女が、こんな場末のぱふぱふ屋で勤めているなど誰が思うだろうか。
ぱふぱふ屋の薄暗い店内は、ピンクや紫のライトで怪しく照らされている。テーブル大ほどの狭いステージ周囲に、二人掛けの狭いソファーが所狭しと並べられている。
客の入りは満杯で、すべての席がモンスターとぱふぱふ娘で埋まっていた。みな思い思いに酒を飲んだり、ぱふぱふをしたり、それ以上のプレイをしている席もあった。
「タバサちゃん、あれやってよ! 頼むよ~」
客のモンスター、ホークマンが甘ったれた声でタバサを拝む。
タバサはたわわな上乳が強調されたバニースーツに身を包んでいる。16歳の完成されたボディは、雄モンスターすべてが振り返るほど蠱惑的だ。
タバサは小さい頃ぱふぱふ娘になりたいと言ったことがあるほどだったため、最初から喜々としてぱふぱふをしていた。そしてサービスはぱふぱふだけに留まらず、さらに濃厚なプレイもあり、美麗な顔と豊満な躰をもつタバサはたちまち人気嬢になった。
今日もタバサは念願のぱふぱふ娘になれて、張り切って乳奉仕に精を出すのであった。
「もお、しょうがないわね♪ チップは弾んでもらうからね? パイキルトッ!」
タバサが爆乳魔法パイキルトを唱えると、ただでさえ大きい乳房がブルンッと大きく膨らむ。膨らんだ乳房はバニースーツから溢れ、ピンク色の乳首がチラリと見えてしまっている。
「うっひょお、これだよ! この爆乳にぱふぱふしてもらいに来たんだよ!」
興奮したホークマンがタバサの爆乳に顔を埋めてぐりぐりと首を横に振る。
「もう、爆乳好きなんだからぁ。ぱふぱふ❤ 」
タバサははぷぱふと掛け声をかけながら、両手を使ってホークマンの頭を乳で挟み込む。
「うひょぉ、相変わらずすげえ弾力だぜ……!あ、あとさあ、きょ、今日けっこう金持ってきててさ。例の『尻ぱふぱふ』やってよ!」
爆乳ぱふぱふに飽き足らず、さらにサービスを要求するホークマン。
「ふふ、お尻も好きよね❤ じゃあしてあげる❤」
タバサは四つん這いになり尻を高く挙げ、ソファーに座ったままのホークマンの顔面に尻を押し付ける。シックスナインのような体勢だ。
「ほ~ら、ぱふぱふ❤ お尻ぱふぱふよ❤」
タバサは尻を横にグラインドさせる。ホークマンの顔面が、左右に揺れるタバサの大きな臀部に挟まれ翻弄される。
「はぶっ、うぶぶっ! はあ~、た、たまらねえ……! タバサちゃんのデカ尻の最高……! はうっ!?」
尻の圧力の快楽にまどろんだホークマンの声が、急に裏返る。タバサがホークマンの勃起したペニスを、大きく口を開けてがぽりと咥え込んだのだ。
「はあっ、すげえよぉ~! タバサちゃん、フェラチオもしてくれるなんて……!」
「んじゅぽっ、んぐっ、んぐっ、サービスよ、お得意さんだし♪」
尻を左右に激しく振りながら、ホークマンのペニスを激しくバキュームフェラするタバサ。こんな芸当できるぱふぱふ娘は中々居ないであろう。周囲にいるぱふぱふ娘や客たちはタバサのテクニックを見て、ほうと嘆息している。
「ああ、タバサちゃん、もうイッちゃいそうだよぉ……!」
「うん、いいよ! お口に出しちゃって♪」
――ドクッ! ドクドクドクッ!
遠慮なくタバサの口内に勢いよく噴射されたスペルマを、タバサはごくりと嚥下する。
「はあっ❤ ザーメンぜんぶ飲んじゃったよぉ」
タバサはべろりと舌を出して精飲したことをしめした。感激したホークマンがチップをたんと弾んでくれたことは言うまでもない。
「お〜い、ビアンカちゃん。5卓さんご指名で〜す!」
スーツを着た蝋燭型のモンスターがせわしなく薄暗い店内を動きながら、ビアンカの名前を呼ぶ。巨大な蝋燭に魂が宿ったモンスター、ともしび小僧だ。モンスター労働者向けぱふぱふ屋の店長をやっている。細やかな気遣いができて性格も穏やかで、客やぱふぱふ嬢からは『トモさん』と呼ばれて親しまれている。
「は〜いトモさん、ただいま参ります♪」
バニースーツに身を包んだビアンカが、服からこぼれそうなたわわな巨乳を揺らしながら、奥の控え室から現れた。
客のモンスターたちは思わずその美麗な顔、そして熟した肢体に目を奪われ生唾を飲む。
ビアンカを指名した5卓の客は、腐った死体であった。
「ロバートさん、また来てくれたのね! 嬉しい♪」
ビアンカは腐臭漂う腐った死体を抱擁し、胸元を顔面に押し付けサービスする。
「ビ、ビアンカチャン、ア、相変ワラズ、オッパイ、デカイナ……」
腐った死体はたどたどしい呂律が回らない口調でビアンカをほめそやす。死体になっても性欲はバッチリあるらしい。
ビアンカは躊躇なく腐った死体の膝の上に乗り、お互い向かい合わせになる。
「オッパイ! オッパイ……!」
腐った死体はビアンカの乳房に顔を埋め頬ずりする。
他のぱふぱふ娘はこの腐った死体を嫌がるが、ビアンカは全く嫌がらずサービスをする。夫であるリュカの仲間に、腐った死体が居たため全く慣れたものであった。
「パイ……パイズリ! パイズリ!」
腐った死体はひとしきりぱふぱふを堪能した後、パイズリと連呼しながらビアンカの胸元にチップのゴールドを挟む。追加サービスのパイズリを要求しているようだ。
「はい、パイズリですね❤」
ビアンカは愛想よく、慣れた手つきで腐った死体のズボンを下す。
――ムワァッ……!
汚臭ともいえる腐った臭いとともに。勃起ペニスがまろび出た。
ビアンカは床に跪き、躊躇なくその汚いペニスを乳で挟みこむ。
「はい、ぱふぱふ、ぱふぱふ❤ おちんちんぱふぱふ❤」
ビアンカは上目遣いでペニスを何度も巨乳で挟み込む。パイズリをしながら舌で亀頭をペロペロと舐めて刺激するのでたまらない。
「ビ、ビアンカチャン、スゴイ……!デ、デル……!」
腐った死体は我慢できず、とりわけ臭い精液をビアンカに顔射する。
「ああ、でちゃいましたね♪ 気持ちよかったですか?」
腐った死体にいきなり顔射されてもにこやかに接するビアンカ。
ビアンカは本番サービスこそしてはいなかったが、ナンバーワンの人気嬢であった。ルックスが良いということもあるが、この女神のような優しさが人気の秘訣であろう。
人気嬢であるビアンカはまた違う客に指名され、卓を移る。今度の指名客は常連の貧相なオークであった。
「ビ、ビアンカちゃん、また来ちゃったブヒ…」
オークはおどおどした態度で伏し目がちにビアンカに語りかける。イノシシのような容姿と相まってさらに卑屈に見える。金銭と引き換えに自分の体を触らせるぱふぱふ娘でも、こんな客には出来ればついて欲しくないはずである。
しかし、ビアンカはこのオークに嫌悪感を抱くどころか、逆に親しみを覚えていた。
ビアンカが命を懸けて探しに来た、オークのブヒオとどことなく卑屈な雰囲気が似ているからである。
「クーキンさん、今日もお仕事だったの? 疲れたでしょ」
クーキンと呼ばれたオークは、照れたような笑みを浮かべる。ビアンカはオークの杯にワインを注ぎながら労う。
「きょ、今日は給料日だったブヒ……ビアンカちゃんに会いたくて仕事終わってすぐに来たブヒ……」
この真・光の教団に強制的に攫われてきたモンスターたちは、労働を強いられているとはいえ給料のゴールドをある程度支給されている。しかしそれは酒場やぱふぱふ小屋に数回行けばオケラになってしまう程度の少額のようだった。このクーキンというオークは、給料が入るとすべてビアンカと会うために全額使い果たすのであった。よほどビアンカに御執心なのだろう。
「嬉しい♪ すぐにわたしに会いに来てくれたのね」
ビアンカはクーキンの腕にぎゅっと乳を押し付ける。ビアンカのスライムよりも柔らかい乳の感触を感じて、クーキンはどぎまぎしている。このクーキンと言う名のオーク、実は何を隠そう童貞だ。ビアンカにはその童貞くさい態度からバレバレだったが。
「ビ、ビアンカちゃんと会うために毎日働いてるブヒ。こんな山の上まで連れて来られて、毎日固い岩みたいな地面を掘ってるブヒ。つるはしの持ち過ぎで手がボロボロになるブヒ。オデ、攫われる前は好きな時に魚や木の実を採って、地面に絵を描いたりしてけっこう楽しく暮らしてたブヒ……今は毎日地獄みたいブヒ……ビアンカちゃんに会わないと気が狂いそうブヒ……」
クーキンは稼ぎのすべてをビアンカと会うために遣っている。彼の言う通り、ビアンカと会うことが辛うじて彼の正気を保たせているのだろう。
「うん、頑張ったね…辛かったね…」
ビアンカはぎゅっとクーキンを抱きしめる。豊満な乳房をもってクーキンの顔を包み込む。
「ビ、ビアンカちゃん……! くっつき過ぎブヒ……! オデ、今仕事から帰って来たばかりだから汗臭いブヒ……!」
性欲を発散させる場所でも、あくまでビアンカを慮るクーキンにビアンカは愛しさを感じる。
「ううん、全然汗臭くないわ。むしろ良い匂いよ。働きものの匂いがするわ……」
ビアンカはオークの片腕も掴み、腕を挙上させる。そしてビアンカはクーキンの汗臭い腋をクンクンと匂い始める。
「ああ、本当に良い匂い❤」
クーキンのむせっかえるオスの強烈な匂い。ビアンカにとってはくさいだけではなく、女性をひきつけるフェロモンのような、頭を甘くかき混ぜるような匂いだった。
「ビ、ビアンカちゃん、オデのワキ、臭いブヒ? 止めるブヒ……!」
「やめないわ。すごく良い匂いだもの。ほら、わたしが汗を拭いてあげるね」
ビアンカはクーキンの汗だくで臭気を発している腋を舐めしゃぶり始めた。
「ちゅぱちゅぱ、んべろぉっ! はあっ、腋すっごいおいしいわ❤」
「す、すごいブヒッ、そんな汚いところをベロベロ舐めるなんて、興奮するブヒッ! 気持ちいいブヒッ!」
腋舐めという通常のぱふぱふよりもずいぶんマニアックなサービスを繰り出すビアンカ。クーキンにブヒオを重ねているのだろう。サービスに自然と熱が入る。
執拗なビアンカの腋舐めの快楽に、クーキンのドリル状のイチモツは点を貫かんばかりに隆起していた。
ビアンカはクスリと微笑み、指先でクーキンのペニスを優しくなぞる。
「挿れたいんでしょう? 今日は特別にいいわよ……」
「ビ、ビアンカちゃんは本番はしない主義だと思ってたブヒ……。う、嬉しいけど、今日はダメブヒ……その、追加のゴールド持ってないブヒ……」
オークは今夜の通常のぱふぱふ料金と店へのツケの支払いで、持ち金を使い果たしてしまったようだった。
「ううん、お金は要らないわ……だって今日はあなたの誕生日でしょう? わたしからのプレゼントよ」
「お、憶えててくれたブヒ? オデなんかの誕生日を……」
(いいよね、1年に1回の誕生日なんだし……)
娘のタバサは時々ぱふぱふのついでにペニスを挿入し楽しんでいるようだったが、ビアンカはぱふぱふ娘になってから、挿入のサービスはしたことがなかった。
ビアンカは攫われ虐待されているかもしれないブヒオを差し置いて、セックスするわけにはいかないという気持ちだった。
しかし、ブヒオにどことなく似ているオークのクーキンなら、一度だけなら抱かれても良いかとつい考えてしまったのだった。
「じゃあ挿れるわね……」
クーキンのペニスに跨り、ゆっくりとビアンカは腰を降ろした。
――ジュプッ……!
ビアンカも腋舐めをして感じてしまったのか、ビアンカの秘裂は愛液が溢れてクーキンの巨大なペニスをすんなりと飲み込む。ふたりは下半身で繋がったまま向かい合わせで抱き合い、ちょうど騎乗位の格好となった。
「ビ、ビアンカちゃんのナカ、気持ちいいブヒ……」
「ああ……あなたのすごいわ……わたしのおなかの中、いっぱいになっちゃってる……」
オークのドリルペニスを咥え込んだビアンカは、思わずブヒオとの逢瀬を思い出す。
「じゃあ、動くからね……!」
ビアンカはクーキンのペニスに跨った状態で腰を激しく上下させる。
「すごいブヒ……!ビアンカちゃんの中、うごめいてるブヒ!」
同じオークであるブヒオのドリルペニスを何度も挿入してきたビアンカのマンコである。クーキンのドリルペニスがしっくりフィットする。
(ああ、ブヒオのおちんちんを思い出しちゃう……だめ、おちんちんの溝がひっかかって気持ちいい……!)
ビアンカは久しぶりのオークペニスに貫かれて、思った以上に感じてしまう。やはりオークのドリルペニスをからだは待ち焦がれていたのだろう。ビアンカは知らず知らずのうちに腰のピストン運動を激しくしてしまう。
「そ、そんなに激しくしたら……で、でるブヒッ‼」
ビアンカの激しい腰の動きにクーキンは辛抱できずに射精する。容赦なくビアンカの膣内に大量のオークのスペルマが放出される。
「ああ、なかで射精されちゃってる……! すごくたくさん中で出されちゃったわ……❤」
久しぶりの膣内射精の快楽にビアンカは思わず絶頂に達する。
「す、すごかったブヒ……最高の誕生日プレゼントをありがとうブヒ……」
クーキンはビアンカの胸の中で息も絶え絶えに礼を言うのであった。
「クーキンさん、気持ちよかった? こんなことお客さんにしたのは初めてよ❤」
お互いの体を綺麗に拭いた後、ビアンカはクーキンの頬に軽くキスをする。さっきまでそれどころではない恥ずかしいことをしていたにもかかわらず、照れるクーキン。
そして、クーキンはそのあとふと物憂げな表情になる。
「どうしたの? 何か気になることがあった?」
ビアンカが尋ねると、クーキンはゆっくりと話し始めた。
「こんなオデのためのにありがとうブヒ、ビアンカちゃん……じ、実は黙っていたことがあるブヒ……ビアンカちゃんが探してるブヒオってオーク、知らないって言ったけど実は知ってるブヒ。同じ現場で働いていたブヒ。ビアンカちゃんの大切な人だったら、追っかけていっちゃうと思ったから内緒にしてたブヒ……でもオデ、こんなに優しくしてくれるビアンカちゃんに嘘つきたくないって思ったブヒ……ごめんブヒ」
もともと正直ものであるクーキンは、こんなに優しくしてくれるビアンカに嘘をつくことに耐え切れなくなったのだろう。嘘をついた罪悪感で、さらに卑屈な顔になっている。
「そうなのね……嘘ついたことはいいのよ。悪気はなかったのはわかるし。ブヒオは今も同じ現場にいるのかしら?」
「いや、もう居なくなってるブヒ。あいつ、仕事でしょっちゅうミスしてたから違う現場に行かされたブヒ。キツ過ぎて誰も行きたがらない、闘技場の現場ブヒ」
「ありがとう。ここに来てからまったく手がかりがなかったから、ありがたいわ」
「すぐにブヒオを追って闘技場に行くブヒか? 俺じゃダメブヒか? ブヒオ以上に頑張って働いて、ビアンカちゃんを絶対に幸せにするブヒ」
ビアンカは寂しそうに微笑み、クーキンの頬にまたキスをした。こんな形で出会っていなければ、あるいは何らかの可能性はあったかもしれないとビアンカは思う。
「そうブヒか……しょうがないブヒ……でもビアンカちゃんが追っているやつが、オデよりかっこ悪いオークで悲しいブヒ。もっと恰好良いやつだったら、いつもみたいに簡単に納得できたブヒ……」
肩を落とし、店を去るクーキン。ビアンカには、悲しそうなクーキンにかける言葉もなかった。
そして店が閉店した後、ビアンカは店長のトモさんに退職を切り出した。
「ええ! ビアンカちゃん、辞めるって? もしかして、前に言ってた探してたオークが見つかったのかい? もったいないよ。タバサちゃんと親子でウチの看板娘なんだからさ。もっともっと稼げるって!」
「そう、ブヒオが闘技場に居るかも知れないってお客さんから聞いたの。闘技場にもぱふぱふ娘の働き口があるらしいから、行ってみようと思って」
「だ、ダメだよ、ビアンカちゃん。闘技場に行った女の子は誰も帰ってきた試しが無いんだ。見世物にされて、それはひどい扱いを受けるそうだよ。もしかしたら、死んじゃうかも」
トモさんはいつもより多めに蝋をだらだらと垂らしながら、ビアンカを必死に引き留める。
しかしビアンカは首を横に振り言った。
「トモさん、ありがとう。でも行かなきゃいけないの。大切な人を救うためよ」
ビアンカの決意は固かった。それからも何度もあれこれ引き留めを図ったトモさんだったが、最後には折れて闘技場行きに賛同してくれた。「辛かったらいつでも戻っておいでよ」と何度も言って心配してくれた。
夜明け頃、ビアンカは店の従業員がまだ寝静まっているうちに荷物をまとめ、ぱふぱふ屋を出る。タバサももちろんビアンカに付いていくことになった。
「はあ、もっと居たかったな。あそこのお店のお客さんと遊ぶの、けっこう楽しかったのに。闘技場ってところの仕事、面白いのかなぁ」
心底残念そうな顔をするタバサ。
「今から行くところは、ぱふぱふ娘はひどい扱いを受けるってトモさんが言ってたじゃない。気を付けないと」
ビアンカは自分に言い聞かせるようにタバサに注意喚起する。
(闘技場にブヒオは本当に居るのかしら? それとも……)
白壁の巨大な円形闘技場が朝靄の中、はっきりと見える。ビアンカはその威容に胸騒ぎを覚えるのであった。