今回、エロはありません。
その昔、お釈迦様は仰った。
「愛欲はマジクソ」
実際に愛欲を持ち続けると毒性の強いアドレナリン…不幸の原因であるノルアドレナリンが多量に分泌され、幸せを呼ぶことができない。
憂鬱に関係するストレスホルモンで、鬱病のリスクが高くなったり攻撃的になるからだ。
アイダという今カノの他に、志摩ことシーマ様や実妹のミオとも肉体関係にあって、アイダとミオとは出来るだけこれからもセフレ以上であり続けようとするヒデツグなんかは危ないんじゃぁないかという所だが、彼は愛の神の信徒だ。
愛は愛欲と違い、他者の幸せを願うことから始まる。
家族、友人、ペット等……なんでも良いから他者を幸せを願い思い、愛を注ぐことでβエンドルフィンが分泌される。
このβエンドルフィン、先のノルアドレナリンと違い、幸福感を得たり頭が良くなったり老化を抑えたりする幸せホルモンとでも言うべき代物である。
他にも美味いものを食べたり、運動したり、瞑想したり、成長を実感することでもβエンドルフィンは得る事ができる。
まぁ、何にしても「やり過ぎると死ぬ」のだが。
ちなみにお釈迦様、「女はう○こ袋」という奇抜ななお言葉も残されているうえ、砂で絵を描かれていたので、ヒデツグが信奉するT様と似たお人柄かも知れない。
今の世にいらっしゃれば、コンテ千本くらい割っていたかも知れない。
「だからね、般若心経は失敗作なの!」とか今更おっしゃられても、世界幾億の仏教徒は困るのだが。
* * * *
そんなヒデツグは神保町の本屋街に来ていた。
彼女であるアイダは、案の定医学に関連する本を探していたのである。
「解体新書ってアナタ……」
気軽に3Dプリンターで臓器を始めとする人体の全部位が再現できる時代だというのに、杉田玄白さんも草葉の陰で勉強熱心な女子大生がいることを喜んでいるだろう。
もっとも、アイダは基礎研究志望なので実際に患者に会うことは稀だから、自身の興味の分野なのだろうが。
「兄よ。あれを見よ」
カロッゾ・ミオが示した先、漫画の棚を見るヒデツグ。
「ん、どうした?」
「これだ。これこれ」
ミオが引っ張り出したのは妖怪のバトルモノっぽい漫画だ。その作者名にミオは注目したのである。
見ると原作・著者名共に〔NIWA YORINAGA〕
ローマ字で記載されると漢字表記が解らないが、ヒデツグとミオの父親と同じ読み名だ。
「えぇぇ……まさか、別人だろう」
仮面の下のミオの表情も、「まさか、そんなバカな」という顔をしているのだと思うが、鉄仮面なのでポーカーフェイスである。
まったく気の利かないハイテク器物め。
アイダは解体新書全4巻を買い、それから皆で中野へ向かう。
ちなみにこの解体新書…後にアイダに内容を聞いたところ、スプラッタでグロく、血生臭いどころかではなくオカルトめいた話もあるので、微妙にオカルトがガンプラを操作してるっぽいヒデツグからしても一層アイダとの仲が縮んだ気分になる。
そろそろ好い加減、言葉として婚約を申し出た方が良いかも知れない。
* * * *
中野のジム(身体を鍛える方)に行くと、ミオの顔見知りの健康美人のインストラクターが迎えてくれた。
過不足なく鍛えられていて魅力的である。
ヒデツグは二人の美女とデート中だから食指は伸ばせないが、フェリーニがいたらナンパしていただろう。
プールで泳ぎ始めたヒデツグを見て、健康美人さんは驚嘆の声を挙げる。
「す、すごぉーい!?」
ヒデツグの水中適正はSSSクラスといって良い。
ジオン水泳部のエース達よろしく、ジェンツーペンギンか河童のように水中で身体をくねらせ、自在に水中を游<およ>ぐ。
所謂ドルフィンキックというヤツだが、戦う意志を持つ事ができる人間だから銛さえ渡せばホオジザメすら手玉に取り、仕留めることが出来そうである。
ちなみにホオジロザメが泳ぐ速度は25km/hでジェンツーペンギンが36km/hだ。殺ろうと思えば殺れる。
問題はヒデツグに体力がないことだ。25mプールを端から端まで泳いで、もう息が切れている。
「ふぅ、心地良い疲労感……」
如何に体力が無いというヒデツグでも、25メートルで終わるということはなかった。
折り返しの25mは今の生き方の如く惰性で浮かぶように泳ぎ、その後も妹や彼女と遊ぶように水を掻いている。
しかし、やはり体力が尽きるのは早かった。
プールサイドに上がって花柄ビキニのミオと競泳水着のアイダが競って泳ぐのを見て愛でる。
カロッゾ面を取った新進気鋭のグラドル妹と、隠れ巨乳の彼女であるアイダ。この2人とデートできるのだから、ヒデツグは家無しでも勝ち組なんじゃぁなかろうか。
春先に水着回をやってしまったが、今後も水着回は多分、ある。
* * * *
国民所得通常の3倍増計画なるものが出来たのが、ヒデツグが子供の頃だ。
それから十数年経って、5年前のガンプラショックで世界経済が大きく落ち込んだりしたが、昔に比べれば日本人の平均所得は1.6倍くらいにはなっている。
ただし、ヒデツグのような人間にとって余り嬉しいことではない。物価が上がるからだ。
賞金額も所得と同じくらい増えてれば良いのだが、食費やネカフェ使用料金。そしてガンプラの値段も上がる。
本来ならば1000円を越える値段のするジム様やズゴックが700円台で買えるのは、メーカーや玩具屋の努力の賜物である。
だが、それはガンプラの話であって飯ともなるとそうもいかない。
ヒデツグはラーメンが好物なのだが、値段が4ケタのラーメンには「死ね」と言いたい。イチランラーメンとか、正にその典型である。美味いから良いけど。
「流石にフタケタは………ないか」
ヒデツグ達はジムから近い飯屋の中華飯店にいた。
店名から解る通り中華の料理屋であるのだが、回るテーブルを囲んだり赤い装飾で囲まれているということはなく、カウンターに向かって座る居酒屋に近い。
デートで来るのが居酒屋みたいな飯屋かよ…と、お思いだろうが、良いのである。まぁヒデツグにとっては余り良くなかったのだが、アイダもミオも「デート中のご飯は美味しいの」ということで、以前来た時に食べて美味しかった中華飯店に来たのである。
中華というからにはラーメンもある。
ちなみにラーメンを日本人で最初に食べたのが水戸黄門こと水戸光圀と知られているが、それは間違いで、室町時代の1488年に京都の僧侶らが「経帯麺(けいたいめん、ラーメンの一種)を食べた」と「蔭涼軒日録」(いんりょうけんにちろく)に記述されているらしい。
真偽の程は、新横浜ラーメン博物館に行けばわかる。
カウンター席でヒデツグを中央に右手にアイダ、左手にミオという並びで豚骨ラーメンを啜っていると、店主が料理に忙しなく動く厨房の上のテレビに注目した。
「あ、テ、テレビの音量上げて」
ヒデツグから注文を受けた従業員がテレビにリモコンを向けると、程無く店内に響き渡る音が物を焼き煮炊きする音のなかに、男性アナウンサーの声色が混じる。
「兄者、どうした?」
物を食べる時だけオープンフェイスするカロッゾ仮面のミオが聞く。声は相変わらずカロッゾ・ロナである。
「あの国のこと、良く知らんからさ」
テレビのアナウンサーは中央アジアの国、アザディスタンの第2王女の日本留学を伝えていた。
このアザディスタンはガンダムООに登場する国名と同じ名だが、アニメではペルシャ湾とカスピ海の間に位置していたのに対し、こちらのアザディスタンは中国大陸のエベレストに沿った形で存在する多人種多民族国家だ。
原型となった国は今から50年程前に中華人民共和国の端で、テロリズムによって独立を勝ち取ったイスラエルに似た成り立った経緯を持つ。
それが、30年前から数年に渡る内戦の末、何処ぞの王族を掲げた国王派が勝利したことにより今の形に落ち着いている。
経済は主に農耕と観光収入に頼り、余り豊とは言えないが日本とも国交があり、勤勉な国民性で出稼ぎにきたアザディスタン人は歓迎される。
ヒデツグなんかは、進歩したAIやロボット技術とアザディスタン人に、誰でも出来るような仕事を奪われた人間である。
世間に開放的な王族の一人をDNA鑑定したところ、ファラオの血筋という話も聞くが詳細は不明だ。
どこの王の末裔かがヒデツグの知識には抜けているのだが、この国の面白い……というか、明らかにおかしなところが公用語にゾンカ語とヒンディー語、そして英語と日本語に忍殺語を用いているところである。
明らかにおかしいのだが、どうやら国を支配する国王派の中に日本人がいたのか、日本被れがいるらしい。
国王が居るが、政治体制は王政ではなく日本や多くの国と同じで議院内閣制である。というのも、王位継承権が男女問わず第一子とされ、嘗て国王の長男が謀殺されたことが関係していると言われている。
「しかし兄、あの王女が可愛いから見てるんじゃ」
「いや確かに可愛いけどさ……俺の好みとはちょっと違うし」
外国なのに
国王派の日本被れは、国王その人だったんじゃないかという気もする。
「って、練馬大学だってさ。アイダちゃんと同じところじゃん」
「学部が違いますけど、会うかも知れませんね」
アイダが通う医学部と貴家・ノイエという王女が通うことになる建築学部は同じ本郷キャンパスにある。
ガンプラバトルの知り合いとしてリカルド・フェリーニやランバ・ラル大尉という世界でも屈指のファイターがいるヒデツグだが、アイダもワールドワイドな顔の広さになるんじゃないかと思ってしまう。
下層社会で蠢くヒデツグが、上層社会で大学生をやっているアイダと交際できているのが奇跡なのだ。
学歴もあるし可愛いし、胸も母乳が出るんじゃないかというくらいに大きいし、ヒデツグと交際している理由はない。もっと上を目指せる彼女なのだ。
このあと行くラブホで、ミオには申し訳ないがアイダ寄りに体力を使おうかと考えるヒデツグである。
ラーメンの麺を食べ終えたヒデツグが、ここで1つ逡巡した。
昔の人が言う。ラーメンのスープをシンクに流すと地球によくない。だからヒデツグは、その昔の人がしていたように、ヒデツグもスープを飲み自分を犠牲にして地球を少し守ったのである。
中野の街をみながら駅前に戻るヒデツグ達は、このままラブホテルに行くか否か迷う。
ヒデツグが予定していた計画はミオの参加で頓挫している。このままラブホテルに行くと、その後の時間が異常に長くなってしまうのだ。
幸い2人とも明日も休みなので、ヒデツグは奮発して吉祥寺まで行くことにした。
吉祥寺のギネマシティで映画を見た後、三鷹のラブホにチェックイン。プールで疲れたヒデツグだが、今夜は寝ずに2人の美女をイキ狂わせるつもりだ。
映画は何を見るか決めていないが、ミオのリクエストで蛙女商会のMガンダムVS怪獣王を見ることになった。Mガンダムは近年になって放送されたガンダムで、地球圏から遠くはなれた星系が舞台の新たなガンダム神話だ……と、放送開始時に製作者は言っていた。
出来栄えとして作画は所謂萌え系で、ストーリーが酷い。
ストーリー上の良心と言えるキャラが一人もおらず、最終話には主人公側の新型モビルスーツ、メケメケガンダムがG3ガスを噴射しまくって敵味方全滅エンドという終わり方をしており、作品そのものが黒歴史とされていた。
ガンダムという作品の著作権がフリーになってから、外国で作る話は玉石混合である。
ストーリーから作画まで、ベネズエラで作られたガンダムは結果として失敗作と思われていたが、何を思ったのか蛙女商会が拾いやがったのである。
「メケメケがコチラちゃんを毒殺するのか」
「普通に噛まれて終わりだと思う」
昔、映画内映画で5機のガンダムが合体して巨大ンダムになる作品があったが、今回もネタの肥しに見る分には面白いかも知れない。メケメケ自体がネタとして世界から認識されているのだ。仕方ない。
他愛無い話をしながら、ヒデツグとミオとアイダは吉祥寺を歩く。そんな中、すれ違う少女達の顔がヒデツグの目に入る。
その少女の中に、少し前に見た顔を見つけた。府中のマクロスバーガーで、ヒデツグの顔を見て狼狽えたように言葉を詰まらせた少女だ、
あの少女は、シーマの娘のアカリではないか?
ヒデツグの疑念が確信に変わったのは、少女たちの話し声が聞こえて来てからだった。
40kbあると思ったけど、今回は以前と比べて短いですねぇ。
ともあれ、感想など御座いましたら忌憚なく申し付けください。