※この作品はR-18です。

ガンダムビルドファイターズ OB   作:庵パン

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飢狼書いてたらエロンダムが先に出来ました。
しかし今回、あまり面白いところないです。
エロもバトルもないです。


3月中旬 ③

「幸運は用意された心のみに宿る」

旧世紀のフランスの細菌学者、ルイ・パスツールの言葉だ。

日本を始め他の国々でも、同じようなことを似た言葉で多く言い回されている。

努力し、精進する者に幸運は訪れるということだとヒデツグは理解する。彼にも覚えがあるからだ。

シーマの娘であるアカリと初めて会った時、正にヒデツグは人生の中で最も順風満帆といえる時期だった。

学業にしても高校生としての生活にしても、それだけの努力を重ねそれだけの成果を得てきた。

それはヒデツグが努力家という訳ではない。彼の学力からすると、幾分か下の高校を受験したのである。

今でも見た目は10代後半だが、実際に十代前半だった頃の彼は他人を馬鹿にして心の奥底で見下すという実に嫌な性格であったのである。

そんな彼が、自分が見下していたようなレベルの人間が通う高校に通学することになったのだ。

わざとレベルを落とした高校を受験したわけではない。

股関節の骨が壊死する病に罹り、1年ほど入院して中学に通えなかったのである。

世の中には院内学級という、病院内の児童が通い学ぶ学校が院内に設置されるらしいが、現在は極めて子供の数が少ない日本だ。入院している児童はヒデツグ一人だった。

学ぶこと自体は出来るのだが、友達もおらず競争もなく同世代で遊べるような楽しみもない。ヒデツグの楽しみと言えば、ただただガンプラを作ることだった。

そして退院したのが高校受験間際である。その時点で選べる高校など数少なかった。

彼の学力がズバ抜けて高ければ徒歩で行けるような近くの進学校にいけたのだろうが、そうではないから自転車やバス、それに電車を使う必要が出てきた。

そして自転車と電車一本で行ける高校に通える高校が、府中にあったのである。

 

それからヒデツグは努力した。そう、自尊心に関わることや、ある条件が関わると物臭なヒデツグでも努力することを惜しまないのだ。

見下していた連中の中でもトップの成績を取るべく学業に励んだ。運動の方は苦手だから兄弟姉妹に任せるとして……。勉学の仕方は工夫に工夫を重ねて見事に学年内のトップ(ランク)に入っていた。

そんな努力の中で、シーマの娘であるアカリに会った。ヒデツグは、これを「幸運」と見ている。幸運は「準備」された場所にしか訪れないのだ。

 

それからシーマとの無言の離別。ヒデツグはCO大学に入り、先輩女子大生から告白されて付き合うこともあったが四六時中デートしていたシーマの時の事を思い、今度は余りベッタリしないようにしていたら関係が自然消滅してしまった。

しかし、縒り戻せるならシーマを選ぶ。何故なら、身長も高くて包容力があり、甘えることができる。それに高い身長に見合う上の大きな乳房だ。

就職の内定が貰えたら、府中を中心にシーマを探そう。そう考えていたヒデツグだが、その内定が貰えることはなかった。

ようやく貰えた内定に歓び勇んで都心に居を移せば、その数か月後にガンプラショック。続けて襲来するリストラと、それからの宿無し生活。

それからの生活は今更語るに及ばない。元来の自尊心の高さと我の強さでトラブルを起こし、痛い目にあったのも1度や2度ではない。

彼が“見の程”というものを知ったのは、肺炎で死にかけてからだ。

ガンプラバトルの為に夜にゲーセンに入り浸り、複数人で連るんでクダを巻いているような人間に目を付けられないようにした。

今でこそジャギのような世紀末から出てきたような人間ともチームを組んでいるが、見た目で素行の悪そうな人間とは極力関わらないようにしていたのである。

ヒデツグが異世界の神の信徒になり、他人を見下さなくなったのはこの頃からだ。

「髪を染めて粋がってるようなニーチャンでも、仕事して経済活動に寄与している分、自分よりはマシ」

そのように考えるようになっていたし、赤の他人からの善意で命を繋ぐこともできた。

それからヒデツグは己の生業を、かつて入院した時に大量生産したガンプラに求めた。

時代の機微を捉え、その流れに乗れたことこそ全くの偶然であり幸運だろうが、ヒデツグはそれから数年間に渡って努力した。

努力に努力を重ね、彼女も出来たし妹も出世した。実家近くに住んでいる兄は建設会社の役員となって雑誌にも取り上げられたし、姉も今や長野県警の警部だ。

父は相変わらずフィールドワークで世界のどの辺りにいるのか解らない状態だが高名な民俗学者になっているし、年齢不詳の若い母は病気一つせず呑気なものである。

 

吉祥寺の映画館に行く最中、行方不明の昔の恋人であるシーマの娘を見つけたヒデツグは、彼女の名が明らかになり即座に決断した。

「すまん! ミオ。アイダちゃんとこのあと楽しんで!」

それだけ言い、自分の財布から取りだした2枚の1万円札をミオに握らせる。それからヒデツグはすぐに、アカリ達の後を追ったのである。

 

*  *                            *  *

 

箸がころんでもおかしい年頃というのがある。正に今のアカリがその年頃で、彼女の友人と思われる長髪を脱色した一人の女子(恐らく中学)生徒がアカリの名を呼んだ際、その声の大きさでヒデツグは少女がアカリだということを確信したのである。

周りの4人は楽しそうで盛り上がっているが、その中でアカリだけがそれ程楽しそうでないのが気になる。

1つの可能性が脳裏を過るヒデツグは、自分と同じでスタミナの無いガラケーで時折録画する。

やってることが変質者だが、自分の義理の子になっていたかも知れないアカリが一目見た限りじゃ真面目とは言えそうもない少女達と連(つ)るんでいるのだ。何かあれば証拠として取っておきたい。

箸がころんでもおかしい年頃とは言え、四六時中ハイテンションというワケがない。離れて後を追うヒデツグには、大概の話声が聞こえなくなっている。

ヒデツグのガラケーには、ボイスレコーダー機能も付いている。逡巡するのは録画を止めて電池の消費が少ないレコーダーを使用するか否かだ。

人間の耳でも彼女達の会話が聞こえないのである。劣化したバッテリーのガラケーで録音できる筈もない。

しかし、彼女達は何処まで行くのか……。

今ヒデツグが考えるのはそれだけだ。今更アイダやミオの元に戻ってデートし直そうとは思わないが、15秒刻みで1回の録画するガラケーのバッテリーが気になってしまう。

もはや、離れて録画してても埒が明かない。アカリとその知り合いが5人でこの場にいることは映像として撮れたし、録画でバッテリーを消耗し続けるのより、先々のことを考えてヒデツグはガラケーの使用を中止する。

吉祥寺という街は、ヒデツグが知らないことが多い。

吉祥寺だけではなく、新宿や都心の一部以外の東京都は勿論のこと、産まれ育った日本の多くの地域のことをヒデツグは知らない。

考えてみれば、それは一個人として当然のことで、ニュース番組やワイドショーに出てくるコメンテーターが自身と全く繋がりがないように見える場所や事柄に逐一文句を述べれるのは、それだけ物事を調べたり知人がいるという裏付けがあるからだ。

まぁ、世の中には知ったかぶりということもあるのだが。

その時、ヒデツグはアカリ達から視線を外して街並みを見ていた。

始め来る街だということもあり、駅から離れた場所の街並みをじっくり見ておきたいというヒデツグも欲もある。

しかしその時、アカリ達少女が立ち止まっていることに気付いた。

どうやら5人の中の1人がドラッグストアに入っているらしく、出てくるのを待っているようだ。

傍から見れば今のヒデツグは十分に怪しいのだが、彼女達に見つかって怪しまれる訳にはいかない。ヒデツグも立ち止まり、歩道の脇に避けて携帯の地図検索しているフリをする。

あくまでもフリだ。実際にガラケーでやると、通信料が掛かってしまうのでやるわけがない。

しかしアカリが待っていた1人はすぐに出てきた。

円筒形の物を持っているが袋は無い。それを見てヒデツグは思う。「まさか万引きしたのか?」と。

今までアカリがどのような人生を送ってきたか解らないが、非行に走らせるわけには行かない。イフ…というものを考えるのは虚しいが、場合次第ではヒデツグが父親だったのだ。

アカリ達は再び歩き出し、ヒデツグもそれを追おうとする。

だがそのヒデツグに声を掛ける者が居た。

「君」

怪し過ぎたかっ!? と思い見ると、着物に道行襟のコートを羽織、そして茶人帽を被った如何にも易者という風体の男がいる。まだ寒いのにご苦労な格好である。

「私でしょうか?」

「そ、君。めっちゃ女難の相が出てるよ」

軽い物言いの易者の言葉に「巨乳美女の難なら是非遭ってみたいですねぇ」とフェリーニ以上に質の悪い女たらしであり人たらしの普段のヒデツグなら言う所だが、今はそれどころかではない。

アカリを追わなくてはならないのだ。

「用心します」とだけ言い残して、離れていくアカリ達の後を追う。

暫く歩き、ようやく止まったと思うと、そこはオーシュハウスという名の店舗だ。

彼女達は暫し、店の前で話していたが、やがてアカリが不承不承、或は渋々といった感じに店の中に入り、2人の少女がそれに続く。

ヒデツグは、この店舗がなんの店なのか知らない。何かの商品を売っているのか、それとも何かのサービスを提供しているのか。

アカリは中学生だが、女子高生だと言わたら納得してしまう年頃だ。

他人を見た目で判断するのは良くない(ヒデツグ自身、身をもって理解してる)が、見た目ギャル系の知り合いがアカリをJKビジネスに紹介したのではないかと疑ってしまうのだ。

もしそうなら、ヒデツグのような男がJKビジネスの斡旋場に顔を出すのは不自然極まりないだろう。無論ヒデツグはそのような業界を知る筈もないので、不自然かという判断は主観でしか判断できないのであるが…。

だが現代に至ってもJKビジネスは違法だ。ましてや中学生のアカリに違法行為の片棒を担がせる訳にはいかない。

3人の少女が未だに店の前にいるが、ヒデツグは構わずに店の中に入っていった。

 

*  *                             *  *

 

オーシュハウスは個人経営の商店で、扱う品は多岐に渡る。

地主の爺さんが必要以上に余った金を持て余し、気まぐれで始めたコンビニのような店だ。

友人からの紹介で体格の良い従業員を雇い、店主と防犯を兼ねさせる。それだけの店だ。

早い話、ヒデツグが考えたことは杞憂だったのだったようである。

彼はすぐさま自身の義理の子になっていたかも知れない娘の姿を探しだした。可能性の1つが杞憂だったとはいえ、アカリの顔は望ましいものではなかったのだから。

オーシュハウスは広いとは言えない店内に様々な商品を積んだ、固く重みのある器具っぽい名前のディスカウントストアに近い経営方法だ。

店内で火事があった時、客が避難できるか気になる。

そんな店内だから、ヒデツグはアカリの姿を探すのに苦労した。

だがそんな狭い店内でヒデツグの前を急いで通り外に出ようとする者がいた。アカリとともに店に入った2人の女子中学生だ。

そのことにヒデツグはこれ以上ない程に嫌な胸騒ぎを感じる。

2人が来た方向に行くと、体格の良い従業員がアカリの腕を掴んでいる場面に出くわした。

「お客さん。お会計まだでしょ」

この場面と従業員の言葉を聞けば、アカリが万引きの片棒を担がされたのだと解る。

「すいません……」

アカリは静かにことりと言葉を出す。が、そこにヒデツグが飛び込み、いきなり土下座してみせた。

「すいませんっ! うちの娘が!」

これを聞き、ヒデツグ以外の今場に居る人間全員が驚く。

十代後半程度に見える男が十代半ばの娘を自身の子供だというのだから当然だろう。んかでも一番驚いたのは、やはりアカリである。

突然の第3者登場と、かつて見知った顔のままで自身の父親だというのだから。




本回の中でヒデツグが非常に嫌なヤツだったことが明らかになりました。
今は……まぁDIOよりは良いヤツです。
今回は前回よりちょっと短いんじゃぁないかと思います。
3月中旬は次回で終わりですが、次は下旬も一緒にやるかも知れません。
早いところ4月に入って静岡に行かせたいので。
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