いやね、やっぱりね、エロがあるかないかはモチベーションが違いますよ。
ある方が高いですよ。
でもまぁ…………
魔道も公式漫画更新までに投稿できるようにします……。
大風呂敷広げ過ぎたせいで1話じゃ終わらんもう。
さて、当方は静岡に行ったことがないので色々ネッを見ながら書いてますが、
おかしな所があったとしても、そこは見なかったことにして笑顔で見過ごして下さい。
堪忍ご容赦願います。
4月初旬 ①
「サヨナラ!」
なぞとヒデツグが起きがけの寝言を吐くと、そこには1月に幕張で共闘したグロリア・チェンバレーや東静岡の駅員、その他ギャラリーが居た。
「ど、どしたの?」
3ヶ月ぶりの再会が静岡の駅前で、まさか悪夢でも見ているように苦し紛れの寝言を出しているとは思わなかったグロリアである。
そもそも幕張でトップエースの戦いを見せた男が、浮浪者のように駅前で寝ているとは思わなかった。
「……今、自分探ししているガンダムに殺される夢を見まして……」
ニワ・ヒデツグという男は、色々な意味でグロリアの理解の範疇から外れていた。
昨日、静岡の到着したヒデツグは、調べておいたネットカフェで泊まろうとしたのだが、生憎そこは既に営業を終了していた。普段、ヒデツグが新宿で世話になってるような終夜営業ではなかったのだ。
他に宿泊施設のアテもないヒデツグは、少し昔取った杵柄の路上生活で駅前で寝る事にした。
出来るだけ風が通らない場所を捜し、荷物が入っているバックパックを掛け布団代わりにして、壁を背に座ったままの姿勢で寝たのである。
横を見るととり憑いている霊の虚空のような眼孔が見えるので、大きなバックパックが抱き枕代わりにして寝る。
そしたらトリントンの夢を見てしまったのである。
ハマーンは実にエロくて、あんなハマーンなら何度でも抱き、孕ませたいが、その前にあった「牛肉云々」は起きた今でも考えさせられる。
最近肉はあまり食べてないが、世の中には実際にあのような仕事に就いている人が居るのだ。夢の中のヒデツグと同じような気持ちを抱いているのだろうか……。
もう少し、人に優しくしよう。
夢に見たことに、そんな意味を考えてしまうヒデツグである。
「ヒデツグは昨日から来てるの?」
そんなことをグロリアに聞かれると、ヒデツグは今自分に憑いている亡霊を見せて「これのせい」と答えた。
「えっ、なにこれ…。バシ○ーラしてくるの?」
「全部赤信号になったり交通機関が麻痺しちゃうそうです」
それで早めに来たら、全然麻痺しなかったのである。亡霊の悪意が酷過ぎて、ホントこの亡霊爺ちゃん駿河湾に沈めたい。
「ってかグロリアさんも早く来たんですね」
「知らない場所だからね」
グロリアという女性、地理を知らない場所は事前に来て地域を知るという堅実派らしい。
「まぁ、暇だったから観光も兼ねてるんだけどね。前の仕事は思ったより早く終わったし」
堅実なのかと思ったら、暇を持て余しただけだった。折角の静岡だし……ともグロリアは言う。
駅から少し離れたスマイル公園の一角。顔を洗っていたヒデツグが水道の取ってを捻って水を止めた。その彼に、手拭いを渡すグロリアの格好は、1月に幕張でみた厚着怪人ではなく春先の装いで身を包む軽装なものだ。
軽装とは言っても、4月になった今でも朝夕は冷える。肌の上には下着を纏っているのだろうが、今はジーンズに黒いトレーナー、それに赤いカーディガンという装いだ。
まぁ、言っちゃなんだがやけにデカい乳が目立つ。臀部も大きくお尻の形が丸分かりなので、要らん獣欲を抱きそうだ。
流石に獣欲は抱くだけで実行には移さないが、ヒデツグが見ても魅力的女体である。普段であれば、お近づきになりたい女性だろう。
「グロリアさん、パレオみたいなスカートとか買った方が良いかも」
「えっ、なんで? その格好可笑しくない?」
「軆の線が出ているんですよねぇ…………」
しかし、出ない格好だと冬着になってしまうのでヒデツグの忠告は虚しくも却下された。しかしこのままというワケにもいかない。何か方策を考える必要があるのだ。
「じゃあヒデツグ、私の彼氏になってよ」
「俺もう結婚してますよ」
「えッ!!?」
グロリア、本当に驚いた。三ヶ月放っておいたら、気になる男が既に他の女の者になっていただなんて……。
「まぁ籍はまだ入れてませんし、以前から付き合っている彼女とは未だに婚約中ですが」
現在の日本は重婚OKである。それに彼氏と言っても一時的なものだから、将来のことを考える必要などないのだ。
「って、ただの虫除け。カモフラージュよ。それなら良いでしょ?」
道義的に、「ホントに良いのかなぁ?」と思ってしまうヒデツグではあるが、一人の魅力的な女性の安全に関わることだ。今日の予定などないし、「あぁそれなら良いですよ」と言って一時的なグロリアの彼氏になったヒデツグである。
「あぁ、お願いがあるんですがグロリアさん。コレとってもらえます?」
そう言って、ヒデツグは自分の背中にしがみ付いている爺さんの亡霊を彼女に見せた。
「これ、どうなってんの?」
「あぁ、普通に力づくで取れますから」
「取って大丈夫なの?」
「良いんじゃないですかねぇ。ミオには何も取る事に関して注意することは聞いてませんし、早めに取った方が良いとは聞いてますが」
なので、グロリアは寄生生物でも触るように恐る恐る、それはもうおっかなびっくり亡霊爺さんに両腰辺りを掴む。
「引っ張る時、後ろに注意して下さいね。転ばないように」
「判ったわ」
言うと、グロリアは亡霊爺さんは「フンヌ」とばかりに引き剥がした。
憑かれて一日足らずで除霊して貰えて本来は有難いはずのヒデツグなのだが、余りの呆気なさに身の処し方に困る。困るのだが、引き剥がして終わりというわけではなかった。
「コレ、どうしよ」
ヒデツグの背中から引き剥がして、グロリアが片手にぶら提げる亡霊爺さんをどうするかという問題が発生したのだ。
* * * *
ヒデツグは今日一日、何をする予定もない。無かったので、ヒデツグはグロリアの臨時彼氏として彼女とデートすることになった。期間限定の関係と割り切れば非常に好みな女性とデートするのは嬉しいのだが、子猫のように首の後ろの皮を掴んで運ぶ亡霊爺さんがいなければもっと嬉しい。
亡霊爺さんを道端に放置するのは、更なる犠牲者を生み出すことなので憚れる。
無縁仏なのだろうが、亡霊爺さんは既に言葉を失って久しい。もはやお寺などの宗教施設に持っていって供養してもらうしかないのだ。
そんなヒデツグとグロリアは浜松湖にいた。東静岡から在来線で浜松まで行き、ベイストリートを歩いてここまで来たのである。
宗教施設に行かなくて良いのか? というところだが、グロリアには先にすることがあるらしい。「お寺に持っ行っても、そこでどうにか出来るか判らないでしょ?」とのこと。
ヒデツグは知らないのだが、浜松には恋愛スポットが点在する。グロリアはそれらを回ろうとしているのだ。
ベイストリートを歩いていると、やがて湖にせり出した彫像物が見える。どうやらアーチが形作られ、それをくぐったところにある台座にボールをお腹の上に抱えた少女の像が座っている。
「これ、夜に見たら怖いっすね」
幽霊やその他の超常現象は平気なヒデツグだが、人間が作ったものはやたらと怖がる。歩みを止めたところを見ると、どうやらグロリアはここに来たかったようである。
「グロリアさん、これなんですか?」
「幸せの星のアーチだって。貴方が今一番必要なんじゃない?」
幸せとは他人から恵んでもらう物ではなく、自分の手で掴みに行くものだと思っているヒデツグだが、神頼みで完全に亡霊爺さんが除去出来るなら有難い。
「そうっすねぇ……」
「じゃあ、ちょっとこの子が持ってるボールに触って」
「触るんすか?」
「私みたいにすれば良いの」
グロリアは、触るというより掌全体で包むようにして触れている。ヒデツグの本音はグロリアの胸をそうして掌全体で摩りたいのだが、心に決めた彼女が居るので自重するのである。
ヒデツグはグロリアがしているように、掌で少女が抱えたボールに触れた。
すると驚くべきことが起こる。
2人が触れていたボールから目映いばかりの光が溢れだし、2人を包む。
「何の光!?」
T様信者であるヒデツグのリアクションは、ガノタとしては二重丸である。
* * * *
「見つけたぞ、イオリ模型店の入り口だ。こののぼりが無ければ見過ごしてたところだ」
それは3年前、ヒデツグが俗に言う賞金稼ぎ……公に言うガンプラファイターとしての生活が軌道に乗り始めた頃の話である。
ヒデツグはガンプラショックが起きた大会で優勝したビルダー、イオリ・セイの生家である模型屋を訪れていた。
まさか駅に近い訳でもなく、商店街にあるわけでもなく住宅街の一角にあるとは思わなかったが、噂を頼りにここまで電車と徒歩で来たのである。
水泳部使いらしく、水泳部のガノタらしいセリフを吐いて店に入る。
新幹線や飛行機に乗るわけでもなかったが、分かり難い場所にあるので疲れてしまった。しかし疲れた甲斐はある。イオリ模型店はガンプラしかない模型店だったのだから。
他の玩具屋の模型コーナーは、大概利益を確保するためや一部のファンの為にガンプラ以外の模型が詰まれていることが多い。しかしイオリ模型店は開業した店主がガンダムファン…或はガンプラファンということもあり、ガンプラしか売ってなかった。
ここまでガンプラしかないと、圧巻である。
ヒデツグはすぐにお目当てのガンプラを探す。RGMシリーズなのだが、ジム系としてはνガンダムくらい強いらしいので人気があるRGM-96X・ジェスタだ。
ジェスタ系のガンプラは、現在ジェスタとジェスタキャノンの2種類が売られている。100分の1のサイズであるマスターグレードだとジェスタのみが販売されている。
が、ここの店には何れも売っていない。やはり、人気があるせいか既に買われていたのだろう。
「あらあら、駄目じゃない貴方。学校サボっちゃ」
振り返ると、蒼髪で豊満な実に魅力的な熟女がそこにいた。「結婚して下さい!」という言葉は言わずに呑んで、ヒデツグは身分証としている免許証を出して自分が20代半ばであることを伝える。
「えっ、ごめんなさい。何を探しているの?」
イオリ・セイの母親らしいその女性は、ヒデツグに問う。「貴女のような美しい人妻を探していました」と言いたいところであるが、素直に「ジェスタ」というジム系のガンプラを探していることを伝えた。
するとガンプラの棚の影から、髭面のオッサンが姿を現す。ガノタなら見れば分かる砂漠のゲリラ屋で青い巨星、ランバ・ラルだ。このランバ・ラル、ファイターなら知らない者は居ない。
アニメキャラが模型屋に来てるってどういうことなんだ? ってところだが、ビルドファイターズはそういうものなので気にしてはいけない。
勿論、ヒデツグもファイターではあるので知っている。
「ラル大尉!?」
この場合の大尉は本当の階級ではなく、ファイターとしての称号みたいなものらしい。
「いらっしゃい」という店主の声に、非常に照れながら柔らかくなって挨拶を返すランバ・ラル。
ガノタが見るととても新鮮である。
するとラルはヒデツグに急接近。言われたのが「良い目をしているな」だった。
ちなみにこの時のヒデツグの目は、寝苦しいネカフェのオープン席で一夜を過ごして充血中だった。
このランバ・ラル、ファイターかビルダーと見れば、取り敢えずこの台詞を言うらしい。
その後、ラルやイオリ・リン子という店主にも手伝ってもらって探したが、普段ヒデツグがガンプラバトルに使っているハイグレードのジェスタやジェスタキャノンは見つからなかった。やはり、以前に別の者が買っていったらしい。
「注文することも出来るけど、どうする?」
「いえ、偶然出会える己の幸運を待ちます」
ジェスタを探して玩具屋に行き、ジェスタを見つけて買うのは余り偶然とは言えないのだが、細かいことはどうでも良かった。
新宿を離れた地で、美熟女を見つけることが出来たのだからこれ以上ない収穫である。美熟女は見て愛でるだけでも幸福になれる……と、ヒデツグは思っている。
その後、ヒデツグはラルに誘われて商店街のジオニストが集うガンプラバーで中尉の称号を手にすることとなる。
ただ、イオリ模型店には電車賃が掛かるので、この時以降は行ってない。
そんなことが3年前にあったが、ヒデツグの手には正に今、ジェスタというガンプラの箱がある。更に、棚に目を移せばジェスタキャノンの箱まである。
「これは……買いだね!」
思わず、ヒデツグは言ってしまった。
浜松のデパートの玩具コーナーで、ヒデツグとグロリアはガンプラを見ていた。
最初にグロリアの用事でヒデツグを引っ張り回したから、次はヒデツグがガンプラが売っている場所を探したがったのである。
「ほう、ヒデツグはそれを買うのか」
ヒデツグの肩越しから、半透明のピンク色のオッサンが顔を出した。
明らかに人間ではないのだが、本人が言うには「愛の精霊」らしい。幸せのアーチの下にある、少女が抱えるボールを触った時の光と共に呼び出されたとも言う。
ピンク色なのはともかく、メタボ体系のオッサンが愛の精霊だと言うのはヒデツグにもグロリアにも受け入れがたかった。というか、そんなオカルトが有って良いのかと聞きたい。
で、実際に聞いたらヒデツグが子猫のように掴んでる亡霊爺さんのことを言われた。
今更何を……ということらしい。
それだけではなく、メタボ体型のピンクのオッサンはヒデツグに忠告する。
死神にとり憑かれていると。前世で何をしでかしたんだが、産まれた時から死神が常に憑いて回っていると。
「ヒデツグ。お前、死ぬぞ。ノルアドレナリンの出し過ぎで死ぬぞ」
「そんなに身体に悪いの!?」
「いや、直接の死因は別のだろうけど」
精霊のオッサンからそんなホルモンの名称が出るとは思わなかったが、ヒデツグは困ってしまう。
「ってか、あんたホントに精霊?」
グロリアも
「じゃあヒデツグ。お前最近アサクラの髭オヤジに復讐するためにパラさんに改宗したろ」
1つ、ピンクのオッサンにヒデツグが秘かに心に決めたことを言い当てられた。
「あと、その前後に昔の彼女であるシーマ・ガラハウ似の爆乳女と結婚したろ」
言い当てられたのは2つ目だ。ヒデツグが籍を入れずに結婚したことはグロリアも聞いているが、志摩がシーマ・ガラハウ似の爆乳とは知らないし言って無い。
「それとお前の妹のモモカ・ミオ……」
「ちょ、ちょ待って。判ったからそこまでにして」
ヒデツグは慌てる。近親相姦を白日の下に言い当てられては敵わない。
「しかしそれは困ったな。自分で言うのもナンだけど、面構えは良いと思うから女性にはモテる方なんだよね」
「私もそう思う。ヒデツグは子供みたいな顔してるけど、実際に覚悟はあるしガンプラバトルも強いし」
どうやら、グロリアの出身地はガンプラバトルで強いことが社会的ステータスになるらしい。何処の出身なのか非常に気になるヒデツグだ。
「まぁ、そういうのは全部受けろとか、躱せってワケじゃない」
そんなことを言うピンクのオッサンであるが、ヒデツグはどうすれば良いのかという疑問の答えは次に言われた。
「受けられる全ての愛を全うすれば良いんじゃない?」
「無理言うんじゃないよ!!!」
そうなると、ヒデツグはどれだけ稼がなくてはならないのだろうか。見当もつかない。
「寄せられる全ての愛ではない。お前が受けられる範囲だ」
取捨選択はヒデツグがして良いらしい。こらならば今まで通りだ。
今まで通りなのだが、グロリアの輝く瞳をヒデツグは見てしまった。
「なあ、そこの姉ちゃんともう結婚すれば良いんじゃない?」
ピンクのオッサンが推す。グロリアも「籍は入れないで良いから」と乗り気だ。
愛の精霊とは、こんな適当な仕事してて良いのだろうか? ヒデツグに精霊業界の事など知る術はないが、愛が成就しさえすれば良いのではないか? ヒデツグはそう推測する。
ヒデツグはグロリアのことが嫌いではない。寧ろ好意を持っているが、それは表面的な所しか見てないからで、共に生活してみれば幻滅するようなこともあるかも知れない。
「まぁ夫婦関係ってそういうのを乗り越えるものだから」
ピンクのオッサンには、ヒデツグが考えることが筒抜けらしい。それに短期間の交際関係であることは、グロリアも承知だ。この静岡大会が終わったら、すぐに別の都市か国に行かなければならない。
今ヒデツグとグロリアが結婚すると言っても、籍を入れないままごとみたいなものだろう。
ヒデツグもそのことをグロリアに確認する。
「じゃあグロリアさん。少しの間ですが、結婚して下さい」
余り健康的な方式ではなさそうな気がするのだが、グロリアは少し頬を紅潮させながら「喜んで」とヒデツグのプロポーズを受ける。
グロリアとヒデツグは、幸せの星のアーチで熱くはないが口付けを交わした。
……というのが先程の出来事である。
ちなみに今現在日本にある寺等の宗教施設には、本当の意味で除霊し死者を冥土に導ける高僧は稀有らしい。
ヒデツグはピンクのオッサンに助言され、浜松のデパートへガンプラを買いに来ていたのだ。
ノルアドレナリンと対照的なホルモン、βエンドルフィンを出す為の手段としてガンプラが選ばれたのである。
ガンプラを作ってβエンドルフィンが出るわけではないが、スクラッチしたカスタム機を作ることで自分の成長を感じられ、当該のホルモンが分泌されるというわけである。
ピンクのオッサンは、ヒデツグに運動や筋トレをするように言っている。筋肉を付けることで起きる不幸は、やはり死神の呪いらしい。ピンクのオッサンはそれを抑える力を持ち、ヒデツグがオッサンを具現化するのを待っていたのだと言う。
「静岡に来てグロリアさんに会わなければ、具現化出来ないまま死んでたってことか!?」
「いや、ヒデツグがソレっぽいアイテムに触れば出て来れるんだけどな」
精霊業界の謎は深まる一方である。
* * * *
メタボリックシンドロームとは、旧世紀に先進国を中心に問題になった内臓脂肪型肥満のことで、成人病リスクを高めるものであるが、現在はメタボや成人病などというものは世界から消え去った。
医療技術の進歩で「デブ」というものが居なくなり、現在「肥満」と言える体型の者はは中年太りの福々しい人間しか見られない。
ヒデツグやグロリアがメタボの存在を知っていたのは、近代史の中にメタボが問題視された一例があるからだ。
そんなメタボのピンク色の半透明のオッサンは「気軽にβエンドルフィンを出すならセックスとか良いと思うよ」とか言う。
当然、世の中には「気軽にセックス」できない者も多くいる。
「彼女いない奴だっているんだぞ」
ケルベス教官の台詞を引用したヒデツグだが
「お前が言っても嫌みにしか聞こえんよ」
と言われた。
「っかピンクのオッサン!あんた愛の精霊じゃなくて愛欲の精霊だろ!」
「愛欲とは言い換えれば独占欲のことだ。そういう意味で言えばヒデツグ、お前がアサクラから志摩を寝取ろうとしてた時は愛欲の塊だったぞ」
「シーマ様はアサクラに騙されてたんだろうが」
「それは後から結果として知ったんだろ」
実際のところ、ヒデツグは自分でも解っていた。解ってはいるのだが、改めて他人から言われると腹立たしい。それに足して、ピンクのオッサンは言う。
「だから寝取られても文句は言うな」
それは、人間として男としての感情的にちょっと難しいのだが、それは他人の道義心を信用するしかない。
「あと好き過ぎて酷いことしちゃうのも駄目」
まぁヒデツグにとって女性は大切な存在だから、そんなことは思ってもしない。
「あぁ、でも相手と示し合わせたプレイの一環なら良いとは思う」
SMプレイを推奨されても困る。
「ってか、ホントに愛欲の精霊じゃないの!? いやに説得力あるけど」
「違う違う。本当に愛の精霊だって」
今の時点でヒデツグには好ましい存在のようだが、未だに謎だらけのピンクのオッサンから警戒を解くことは出来ない。霊体や思念体の一種であることは確かなのだが、その考えが未だに解らない。
その時、スマホで電話をしていたグロリアがヒデツグ達に言う。
「ヒデツグ、静岡に戻って良い?」
ヒデツグも浜松には用は残ってない。というか、この後も用などない。明日の大会に間に合い、美女に付いていけるなら何処だって良い。
流石に女の尻を追いかけるのが本望…みたいなことは言わなかったが、静岡に戻ることに同意するとグロリアは言う。
「今日のお昼、大会の間に宿の世話になる友達と食事する約束があるのよ。ヒデツグもどう?」
食べる場所、食べる品にもよる。静岡だからと言ってウナギという贅沢は金が掛かりそうだ。
ヒデツグという男、千葉で仕事をした時に眼鏡の男から5万円を巻き上げているが、未だに倹約指向にある。
だがまぁ、美女と食事できるのはそれだけでも有難い話だ。そんな精神的幸福を優先するか、物質的幸福を優先するかでヒデツグは迷う。
「良いですとも」
ヒデツグの迷いは早々と結論が出た。
どのような飯屋であれ、まさか一品で商売する訳がないのだから美女と食事することを選んだのである。仮に高い店だとしても、その中の安い料理を食べれば良いのだ。
2人は在来線に乗って再び東静岡まで移動する。
現在は恋人であるグロリアとイチャイチャしたい気もするが、昼間の衆人観衆の中で破廉恥なことをする訳にはいかない。それに、ヒデツグはあくまでも虫除けでカモフラージュだ。調子に乗る訳にはいかない。
駅の構内から出ると、そこには見慣れた人物が居た。グロリアの友人らしいが、ヒデツグが良く知る人だ。
と言っても、確実に初対面である。
5年前の世界選手権で、決勝の前夜祭に行われたフリーバトルのMCをやっていたその人物は……。
「久しぶりね。レイ」
レイン・ミカムラと瓜二つの美女だったのだ。
以前に静岡編が長くなると言いましたが、
PIXV版でも5月下旬までありましたのでそこまで続けます。