度々モビルスーツが出た時に名称の次に()に括って型式番号を付けてましたが
今回から辞めました。
っていうか前の夢戦から辞めてました。
これからは、同じ機体でも製造時期によって細かいタイプの違いを強調したい時とかに付けます。
それ以外は、ご興味のある方はググったりして調べて下さい。
今回、異常に長くなってしまいました。
観光案内所に行き、今日泊まる宿を予約したヒデツグはグロリアとミカムラ・レイが待つ車に向かう。
民宿は一泊で3500円するが、昼と夕飯はでない。ガンプラブームで静岡が人気観光地になったことに胡坐を掻いていた。もっと早くに来て探せば更に良い宿があったのだが、良いところは皆宿泊の予約客で埋まっていた。
「いやいや、すいませんね」
ヒデツグは苦笑いしつつ、車の傍で待つグロリアとミカムラに謝る。
「何してたの?」
車に乗りながらグロリアが聞いてきた。
「ちょっと今日の宿の在り処を聞いてまして、そのまま予約してきました」
静岡にいる間はグロリアと恋人契約だが、流石に夜は別の所で寝なければならない。そう思ったヒデツグである。
「ウチに泊まれば良いのに」
そんなことを、ミカムラ・レイ……日本語表記だと弥佳村・玲は言ってくる。初対面の男にそんなこと言って良いのか? というところだが、彼女は「グロリアが認めたんだから良い」とのこと。彼女の女友達は余程の信用があるようだ。
「いや、しかし……」
「静岡にいる間はグロリアと恋人なんでしょ? なら夜も一緒に過ごさなきゃ」
「そうよ。ヒデツグも節約しなきゃいけないんでしょ?」
それは恋人というより夫婦関係に近い間柄になってしまうが、今は実際に夫婦の約束をしている。ヒデツグは堪忍して「喜々として」自らのガラケーで予約した宿の取り消しをしたのだった。
* * * *
彼等が昼食でやって来た料理屋には、案の定鰻があった。そして、それは先程購入したジェスタやジェスタキャノンの総額よりは安い。もっとも、普段ヒデツグが食べているスナックパンの20倍以上の値段はするが。
「うーん、今日は……どうしよ」
5年前のフリーバトルのMCであった憧れの彼女と、外国から来た今限定嫁がいるのだ。期待してはいけないが、期待してしまう。
泊まる宿を別にしようかと思い、他の宿を取ったのにキャンセルすることになったのだ。期待するのは間違いだろうか? いや、しかし初対面の男とするだろうか?
そんなことをヒデツグが考えていると、料理を待つ間に話の
夜に何をするのであろうと、たまには贅沢したい。
「ニワさんも名古屋からいらしたんですか?」
研究室で休みを取っているレイは、ヒデツグの苗字が名古屋の地名にもなっていることから推測したのだろう。
「いえ、私は東京です。まぁ大昔の先祖は名古屋だったかも知れませんが、父は長野の出です」
そのヒデツグの先祖は越後で士族や侍の身分だったという話を聞いたことがある。これが中学と高校時代の彼の根性を捻じ曲がらせた原因でもあった。
「まぁ、ニワなんて名前、今は結構どこでもありますよ」
ヒデツグが思うに、弥佳村の方が少ないんじゃァないかと思う。
「それよりミカムラさん。彼氏が居たりしませんか? 彼氏や幼馴染がギニア高地で修業してたりとか……」
彼氏持ちの美女と屋根を同じくする訳には行かないというのが、ヒデツグの「常識」であり道義心だ。もしも彼氏なり心に決めた人が居るならば、同じ屋根の下で寝たとしてもヒデツグは寝る場所を考えなければならない。
すると彼女は軽く笑い「よく勘違いされますけど、居ませんよ。格闘家どころか彼氏だって居ません」なぞと言う。
彼女自身にもレイン・ミカムラと似ているという自覚はあるのだろう。きっと方々で言われたに違いない。
実に勿体ないことである。世の男の正気を疑う。まぁ「出来る女は異性から敬遠される」とも聞いたことがあるし、それかも知れない。
次に、ミカムラから聞いてくる。
「グロリアに聞いたけど、ガンプラバトルが凄く強いんですってね」
「えぇ、まぁ。流石に世界を相手に試合できるレベルかは分かりませんが」
このことに関してヒデツグは謙遜をしなかった。否定したらそれこそ嫌味だが、世界レベルの選手を相手に試合したのはリコことリカルド・フェリーニとパチ組み機でハンデマッチしたくらいだ。
あれでは本当の自分の実力が判らないし、リコは片手のみの操作だったから世界レベルより大きく実力を下回ることになるだろう。
「そんなに気になるんだったら、後でバトルシステムがあるところ行ったら?」
ライス大盛りにコース料理を注文し、九条ネギのゴマ和えを食べていたグロリアが言う。
女性が1人で食べるにしては異常に量が多いのだが、それが既に半分以上平らげれている。恐らくあの爆乳を作ったのもこの健啖家ぶりの為だろう。「食べる」という行為は大事である。
* * * *
昼の後は車にてバトルシステムが置いてある遊興施設、或はスポーツ施設まで移動する。
移動しているのだが、信号があるごとに停められてしまうのでレイが運転し、ヒデツグとグロリアが同乗する車は中々進めなかった。
「こんなに赤信号に停められるなんて、中々ないわね」
レイが言ったことは誰に聞かせるでもなく、独りごち出てしまった言葉なのだが、ヒデツグにとってみれば「運が悪い」とか「信号が悪い」ということとは思えなかった。
「すいません。私のせいです」
「なんでっ?」
どうやら愛の精霊は死神対策はしてくれても、亡霊爺さんの悪影響は阻止できないらしい。
事情を知るグロリアが苦笑していた。
「そういやヒデツグ、妹がモモカ・ミオって……」
「えっ!?」
ことりとグロリアが述べたことに反応したのはレイだ。自動運転とは言え、ヒデツグは自動運転の事故に巻き込まれた記憶が新しいので確り前を見ていてもらいたいと思う。
「苗字違うけど、やっぱり重婚とかの事情で?」
外国人のグロリアはモモカ・ミオがグラビアアイドルであることすら知らなかったらしい。レイに「最近テレビに出始めたグラビアアイドルよ!」と言われて、ようやく知ったくらいである。
どうも「お前の家も色々あるんだなぁ」的な同情めいたものをされちゃったらしい。
「いえ、「モモカ」ってのは芸名ですよ。「ニワ・ミオ」って本名だと語呂が悪いんで」
「えっ、ごめんなさい」
「っていうかニワさん、モモカ・ミオのお兄さんなんですか?」
ちゃんと進行方向を見ながら聞くレイの言葉は、テレビや雑誌でミオのことを知る日本人らしい質問である。
「えぇ、はい。でも、こっち来る前に仕事の最中に迷惑かけちゃって、どうも嫌われたみたいです」
「あららぁ……。じゃあ東京に帰ったら仲直りしないとね」
レイの言う通りだ。しかしどうしたら赦して貰えるのだろうか? 下手に連絡して仕事の邪魔しても火に油を注ぐようなものである。
これは、時間が解決してくれるのを待つ他ないのだろうか……。
その後、どうやらレイが以前に行ったことのあるスポーツショップに向かう事が判明したのだが、それまでに時間が掛かることからグロリアが今朝の話を出して来た。
と言っても、「ヒデツグが路上生活してて驚いた」ということではなく、見た夢の内容を聞いて来たのである。
「ヒデツグ。朝ガンダムが何とかって、どういう夢見てたの?」
「ガンダムUCの夢でしたねぇ」
まさかヤクザ機で荒ぶるとは思わなかった明晰夢である。
「じゃあアレ、あの人出た? スキンヘッドの人」
ガンダムUCでスキンヘッドというのは限られてそうだが、ヒデツグは白T様信者で宇宙世紀と主にジムしか知らない似非ガノタである。一応UCは視聴したが、真剣には見て無かった。
「ほら、何とかチャンっていう……」
「あー……ガンダムっぽい奴に乗ってた人ですねぇ」
ヒデツグが言おうとしたのはシルヴァ・バレドである。ガンダム頭だがネオ・ジオンから接収したドーベンウルフの改修機でだ。
「あー、私もその人知ってる。なんとか・チャンって言いましたよね」
会話に入って来たのはレイだが、彼女も記憶には残っているものの鮮明ではないようだ。
「あっ! そうだ、カ○イ・チャンじゃありませんでしたっけ?」
「そうそれ! あぁいう渋い人好きなんだよねぇ……」
似非ガノタが3人集まり、間違った情報を確定化させ邁進することの恐ろしさの証左であろう。レイも訂正しようとしないところを見ると、3人の中では○ワイ・チャンが正式名称になってしまったらしい。
「今度作るガンプラはシルヴァ・バレドみたいに、腰にビームサーベルを帯刀させる形にしたいんすよねぇ」
「えっ、シルヴァ・バレドって腰だっけ?」
「違いましたっけ?」
やんややんやと、似非ガノタ達の間違った知識によるガンダム談義は目的地に着くまで続く。
それから暫しして、ヒデツグ達は市内のスポーツショップに来ていた。
ガンプラバトルが世の中に生まれ、もう20年近く経つ今ではスポーツの一種として認識されているのは以前にも説明したと思う。
そういう意味ではヒデツグも世の中から遊び人と見られることがないのが有難い。その代り、ガンプラバトル廃人的な見られ方をしていて釈然としない思いをしているが。
ヒデツグは使用するガンプラを模索する。ゴッグ先輩も良いのだが、素ジムも良い。しかしグロリアだけではなく、ミカムラ・レイも大会には出場するのだ。美しい方々だからと言って手の内を教える訳にはいかない。
そこでヒデツグはサイコカプルを使用することにした。この火力と機動力なら手の内を知られたところで対策の立てようがない。
サイコカプルが入っているガンプラの箱には、陸戦ガンダムに付いて来たコンテナユニットに移動用の車を付けて牽引できるようにしている。
サイコカプルのオプション装備が入っているのだが、今は純粋にカプルの戦闘力とヒデツグの操作技術を見せれば良い。
黒カプルたんが犬の散歩のようにコンテナユニットを牽く姿は実にほっこり可愛らしいのだが、それはまた今度にしよう。好みというのは万人にあるし。
バトルのステージは、衛星軌道上のディビニダド×2……とも思ったが、シチュエーション戦は新宿独自のシステムなので、対モック耐久戦を選ぶ。
モックというのはPPFEが対CPU戦用に作ったガンプラモドキと言える機体で、シミュレーション戦であるから相手はデータのみの仮想の存在だ。ベーシックタイプがガンプラとしても販売されているのだが、耐久戦ではこれが何体も出てくる。
まぁ何だかんだ能書き垂れたが、バトルスタート。
黒い機体カラーのサイコカプルは徒党を組むモックの集団に閃光の如く突き刺さった。
「さ、刺さったぁ!?」
∀ガンダムの萌え担当機を使うとは思わなかったグロリアだが、あの男のことだから何かしてくれるだろう……そう考えたが単調な突撃攻撃を意外に思う。
しかし見ていると黒カプルがモック集団の中から飛び上がった。両腕を広げ、片膝を上げ、そのポーズ……正に荒ぶる鷹のポーズ!?
このネタが解る人間は、今はもう少ない。アザディスタン国内では結構有名なネタだが、恐らくレイは解らないだろう。
カプルが回転しながら2丁のハンドガンから火を噴き出す。すると周辺のモックが一掃された。
「はやっ!?」
タイムアタックというゲームモードがあれば高得点だろう。しかしこれは耐久戦。モックはステージが始まった時の8体だけではなく、まだまだ出続けるのだ。
それを空中で、地上で、シャイニングフィンガーならぬシャイニングネイルで次々とモックを溶断していく。
次々と撃破していく黒カプルだが、打ち止めのないモックの出現も早かった。
ステージ上がモックだらけという凶悪難易度に、ヒデツグの黒カプルはシャイニングネイルと速射ハンドガン祭で応えていく。
「ヒデツグ、ちょっと見てみろ」
半透明のピンクのオッサンがギャラリーの方を示すと、そこには数名の若者がいた。如何にも柄の悪そうな無精髭が生えたオッサン(?)を中心に見た目触るモノ全部傷付けそうなニット帽の男や鼻ピアスをしているモヒカンめいた男が居る。
「まぁ人は見た目じゃ解らないっていうしさ」
ジャギ様の教訓である。しかしピンクのオッサンも人を見た目で判断するとは、意外と保守的な考え方をするのだとヒデツグは思う。
「そうじゃない。あいつらは明らかにヤバイぞ。性根から敵意を抱いてるぞ」
ピンクのオッサンの声はヒデツグとグロリアにしか聞こえない。
「そういうこと言うんじゃないよ」とヒデツグは言うが、相手には聞こえないのである。
「腕試しも程々にしてここらで退いた方が良い」
そう言うオッサンの忠言に、ようやくヒデツグも耳を貸す気になった。考えて見ればオッサンは人間じゃない。動物とも違うが、動物的本能が無精髭の危険性を感じ取ったのかも知れない。
「うし、じゃあここらで!」
終わりを決めると黒カプルは全ての敵機が見える位置に移動。そしてコマネチ! コマネチ! コマネチ!
「ま、待て! やめろっ!」
ピンクのオッサンの制止も虚しく、ビッグキャノンは50機以上のモックを光に包み、破砕した。それと同時にミッションフェイルド。ヒデツグが任務を強制停止したのである。
スコアは8600ポイントで第3位。上を見れば1万や3万代がいる。ヒデツグとしては消化不足だ。
「お疲れ様ぁ。ヒデツグ、ジム使わなくても強いのね」
バトルシステムを停止したヒデツグにグロリアはそんなことを言ってくる。
「まぁ、俺が持ってる中で一番の機体使いましたからね」
気が付けば、無精髭とその仲間達の姿は見られない。何処かに行ってしまったらしい。
「もっと見てたかったな」
「それはまぁ、明日以降のお楽しみですよ」
レイの言葉にヒデツグはそう答える。まぁレイも出場者ならヒデツグと共闘できてもバトルを見ている暇はないのだが。
「今日はあっさりしているわね」
「ちょっとピンクのオッサンに止められまして」
ピンクのオッサンが見え、声が聴けるのはヒデツグとグロリアだけである。レイには疑問符である。
* * * *
バトルが終わった後、3人はレイの車を泊めている駐車場に向かう。
レイが短期で借りているアパートの部屋までは、ここから歩いて行ける距離なのだが車を置いていく訳には行かない。
「撃破スコア、ヒデツグより上の人ってどんな人だろうね?」
ここにいる誰も解らないことをグロリアは聞いて来る。ただ、ヒデツグもそのことは「程々に」疑問には感じていた。
ピンクのオッサンに止められなければ、2位はもちろん1位だって抜いていただろう。
レイは名古屋から来たようだが、レイのような巨乳美人だったら是非お逢いしてみたい。可能なら愛の精霊が言うように一晩お願いしたいところである。
「それはオレだよ」
突然の声が3人と(ヒデツグとグロリアにしか見れないが)2体に投げかけられる。
見れば、先程見た無精髭とその仲間達だ。ヒデツグの第一声は「鼻ピアス、痛くないの?」とも思ったが、変なことを言って目を付けられたら敵わないので黙っておいた。
「えッ!?」
この「えっ」は「お前ホントにそんなに強いんかい?」という意味もあるし、「何でいきなり外野が喋ってんの?」という不快感に近いものがある。
そして近くで見れば何やら肌が黒い。日サロで焼いているのか、或は肝臓を病んでいるかのどちらかだ。後者であれば現代の医療技術で(時間は掛かるが)治せるので、心配してやる義理はない。
「えー……っと、塗ってんの?」
第3の選択肢として、靴墨を塗ると言うのもある。昔のコメディアンはそのようにすることがあったと母から聞いている。
「あ゛ッ!?」
無精髭は如何にも「不機嫌です」という意味を持つ声でヒデツグを威嚇すると、突然グロリアの軆を抱すくめた。
「!!!?」
「ちょっ! オイ! 半分にされるよ!?」
突然のことに声も出ないグロリアと、とりあえず自分がされて嫌な刑罰を言うヒデツグ。準強姦はナニをハーフカットされてしまうのだ。
「ちょっとアナタ! いきなり何してんの!!」
突然のことに暫し狼狽えていたレイだが、彼女の見ている前で無精髭はグロリアの豊満な胸をまさぐり始めた。
「っ‥! お、おぉい!? 何やってんだオメーは!」
「イイ女を可愛がってんだよ」
「阿呆ぬかすな!」
正直、怖くて余り関わりたくはないのだが、午前中にグロリアから「覚悟がある」と褒められているヒデツグは逃げる訳には行かなかった。臨時とは言え今は妻なのだし、ちゃんと美しい妻を守らなくてはならない。
そう思い、グロリアを拘束する無精髭の腕を掴もうとすると当の無精髭に一発で殴り倒された。
「ああ!!?」
危険な倒れ方と見たのか、レイは悲鳴を上げる。それに対してニットも無精髭もヒデツグの余りの弱さを嘲るようにニヤつきながら見ている。
「あんた、アザディスタンの人間だろう? 知ってるんだよ。貧乏だから出稼ぎしてるって」
言いながら、無精髭はグロリアのトレーナーの下に手を伸ばす。グロリアは抵抗するが、相手は思いのほか力があるらしい。
倒れてから起きるまで、暫しもたついていたヒデツグだが起きた後に再び無精髭に掴み掛かろうとした。
「完全に犯罪だろうがオイ!」
ヒデツグは、良いと悪いの区別が出来ないという人間以上に、損得の解らない人間が嫌いだ。
現在の刑法に照らし合わせれば、獣欲で同意を得ずに他人を襲って自身を満足させれば、ほぼ確実に社会から抹殺される。
復帰できたとしても、男として抹殺されているのは間違いない。
それに比べれば、多少臭くとも正義を掲げて生きた方がマシである。
そう考えるヒデツグだが、彼は虚弱過ぎた。今度はニットに阻まれて殴られる……かに思われた。
ニットが振り上げてヒデツグを殴らんとしていた腕を掴んだ者がいる。
「お前ら、また捕まる気か」
ニットとヒデツグの間に入ったその人物は長い黒髪をお下げにした……言うなれば2Pカラーのマリーダ・クルスという女性だった。
静岡に来て以来、そっくりさんの女性に続けて出会えて草生えるヒデツグである。
言葉振りから無精髭らのことを以前から知り、損得というものを暗に教えてやってるのだろう。
「ムコウダ……!?」
女性の姓と思われる言葉を呟く無精髭。それが次に「お前、むね……」
何か言いかけると、ムコウダという女性は一気に無精髭の場所まで踏み込んで、薄汚い髭が生えてる顎を掴んだ。
「黙れよ……」
言葉では表せない迫力に、ニットの腰を抜かして地面にへたり込み、鼻ピアスに至っては明らかに震えている。
どうやら、この女性はリアルバトルの猛者らしい。
「ま、まだ何も言ってないのにっ」
「お前の顔が不愉快なんだよ!」
理不尽な暴言を投げつけられ、突き飛ばされて塀に叩き付けられた無精髭は一目散に駐車場から逃げて行った。
その光景に、ヒデツグもグロリアもレイも言葉が出ない。
やがてグロリアがマリーダ似のムコウダという女性に向き直り、礼を言う。
「いや、お前らも災難だったな」
ヒデツグもグロリアもレイも、初対面の相手から「お前」呼ばわりされるのは初めてである。ちょっと難のある娘さんなのか……。
と、思ったら、女性かと思いきや胸が有るべき場所は真ッ平ら、いわゆる無乳である。先程の無精髭はそれを指摘しようとしてたのかのではないかと思われるが、怒られたら怖そうなので、オッパイスキーのヒデツグもグロリアもレイもそのことには触れない。
「しかし助かりました。唯一の男なのに弱いからどうしようかと」
帰ったら早速筋トレだなと、ピンクのオッサンが言う。
「それよりお前、キンタに殴られなかったか?」
「無精髭のことスか?」
肯定するムコウダと大丈夫だったのかと聞く今妻とレイ。
「あぁ、実は結構殴られ馴れていまして……」
無精髭…もといキンタの拳が当たるか否かのタイミングで自分から倒れていたヒデツグである。
5年前に宿無し生活が始まってから、トラブルに巻き込まれて練り上げた二次元覇王流のダメージコントロール術だ。
これにはマリーダ似の女性も目が点であった。そして何やら笑っているのかニヤけている。
「いや、悪い悪い。怪我してたらキンタの奴を傷害罪で警官に引っ張ってもらおうかと思ったんだが……」
損得を教えるフリして、最後は牢屋にブチ込む気だったらしい。
「とんでもない新人に当たったんだなって」
ヒデツグは新人どころかベテランの域である。ガンプラバトルの黎明期からやっているのだ。
小さいかも知れないが、それなりにプライドもあるのだ。逆ギレされたら怖そうだから怒らない。
「まぁ、今の静岡はあんな奴がたまにいるから、外から来た人間なら注意して」
「いつから静岡がそんな世紀末なことに!?」
今の静岡が世紀末になっていようとは、外国人のグロリアは勿論、ヒデツグや5年前にMCをしていたレイも知らなかったことだ。
* * * *
それからヒデツグはムコウダに腕を掴まれ「細いな」とちょっと気にしていることを言われたと思ったら筋トレを推奨された。今の静岡では弱者はキンタのような似非ギャングめいた連中に揺すられたり
そして、キンタはヒデツグの86000点を上回ってはいないそうだ。ズゴックのカスタムガンプラを使い、決して弱い訳ではないが別に強いわけでもないらしい。
ヒデツグが目を付けられたのも、自分を上回る実力を持つ者をリアルバトルで打ちのめして明日から始まるガンプラバトルに出れなくするためであろうと推測された。
グロリアが準強姦に遭ったのは、ムコウダが言うには世界の大会を回る外国人ビルダーなら被害届は出せないだろうという思い込みから狙われたのではないか。
そのようにムコウダは話す。
「あぁいう卑劣漢に言いようにさせないために、ちゃんと筋肉を鍛えろ」
ヒデツグだけでなく、グロリアやレイまで言われてしまった。今の静岡では筋肉を付けて何者にも負けない力が必要なのだろう。
ガンプラ工場があり、バトルシステムの生産ラインがあるのでヒデツグには聖地のように見えていたが、とんでもない修羅の国であった。
「これ以上のことは私も知らないが、ヤクザだのガンプラマフィアだのが根を張ってるって噂もある」
「ガンプラマフィアってまだ生きてたの!?」
イオリ・セイに鈍足GMをぶっ飛ばされ、その勢いのままに構成員が逮捕されかと思ったが釈放されたのか逮捕されたのが一部だったのか未だに活動を続けているらしい。
「まぁ、噂の域を出ないがな。正確な情報は警察にでも聞かないと解らないし」
長野北部には身内まで居るが、静岡に警察の知り合いは居ないヒデツグである。
今夜から筋トレを始めよう――――ピンクのオッサンやムコウダの忠告を聞き、心にそう刻み込むヒデツグであった。
夜から次の日はまた次回に書きます。
1日でこの長さですが、二日目からは1日1話とかそれ以下になる…………予定です。
あぁ、でも2日目は解らんかも……。
ところで、シルヴァ・バレドがビームサーベル付けてるのって腰でしたっけ?
GP02だと確実に腰なのですが……。