多分これで1月は終了です。
そして独自世界観がここから始まります。なにせ、エロ小説なもので。
大型バトルシステム上に各々のガンプラを載せたヒデツグたちは、試合開始の合図を待つ。
やがて巨大な正八角形状の黒い台の上を、青い神秘的な光が満たしたかと思うと戦場となる荒野を作り出した。
仮の命が吹き込まれたかのように、バイザーやデュアルアイ、或はモノアイに灯を燈らせるそれぞれのガンプラ。
CPU音が試合開始を告げると、ヒデツグの行動は早かった。
「んじゃぁ、ちょっと頑張って参ります」
いうが早いが、カタパルトに設置されたジムの神様が射出されていく。
巨乳の第三者が居るからだろうが、ヒデツグの出撃合図は大人し過ぎた。何時ものヒデツグは、もっと自身を顕した出撃時の台詞なのだ。恐らく、先程の準選抜でも大人しかったのだろう。
まぁ、試合中に化けの皮は剥がれていくのだろうが。
「リカルド・フェリーニ、ガンダムフェニーチェリナーシタ、行くぞ!」
出撃の合図はこれくらい欲しいものだと思う。
「グロリア・チェンバレー、フリーダムで行きます!」
シーブックめいた出撃合図が気になったが、グロリアもフェリーニに続いて出撃する。
すると、そこには早速敵機を撃墜したジムの神様が見えた。
「早過ぎだろ!」
「相手が97体もいりゃこうなる」
ヒデツグはオートポンプのショットガン『燕反し』で複数のガンプラを纏めて撃墜していた。
撃墜とは言ったが、速射で強烈過ぎる衝撃は一瞬で相手ガンプラをバラバラに消し去ったのだ。
フェリーニがヒデツグのガンプラを『ジムスパルタン』と徒名したのは、相手に対して厳し過ぎる戦闘力を持っているからでもある。
「この辺り、早々一掃しちゃった?」
スライド移動しながら、ビームライフルと肩の追加ロケットランチャーで二機纏めて仕留めたグロリアが周囲の状況を確認する。
「見たところ他の機影なし」
「既定の数までは未だ遠いな」
1カ所に留まって他の参加者が潰し合うのを待つ……という手段もあるが、グロリアもフェリーニも安全策を選ぶという戦闘スタイルではない。彼等は常に攻めの姿勢だった。
バトルシステム上に拡がるのはミノフスキー粒子ではなくプラフスキー粒子だ。フェリーニが見る広域レーダーには、遠くに幾つもの反応が見える。
レーダー半径が一番広いのはグロリアのフリーダムだが、促成のチームを組んだ二機に情報を回しているのでヒデツグもフェリーニも確認することができる。
「よし、向かうぞ」
了解…と、返答したグロリアと飛行形態に変形したフェリーニのガンプラ、ウィングガンダムフェニーチェリナーシタは、ジムを置いてさっさと行ってしまった。
「………………乗せてって欲しかったんだけどな」
リナーシタをSFS代わりに使おうとしてたヒデツグだが、こうなれば性能の低いジムの足トボトボ行くしかない。
ヒデツグは小ジャンプを繰り返し、ジェネレーターの出力を極力節約しながら僚機の後を追ったのである。
* * * * * *
6発の弾頭が機動するの一団に撃ち込まれ、それをバスターライフルからの光弾が薙ぎ払った。
フリーダムのサブ兵装とリナーシタの主兵装による攻撃である。
促成のチームを組んでいるフェリーニとグロリアであるが、相手方もチームを組んで対抗してきているようだ。何しろ、フェリーニの使用ガンプラが有名過ぎる。
しかも、フェリーニとグロリアの連携が即成なのに対し、相手の連携には繰り返し練られたようなシステマティックな物を感じる。
「……ッ。これは……!」
フェリーニは以前にも似たような感覚を覚えたことが「何度か」ある。
しかも今は美女と言えるグロリア同伴だ。自分を狙う者達の心中は、穏やかではないだろう。
だが、負けてやる気はない。
「おっと」
突撃してきたエピオンのカスタム機をビームマントで翻し、マタドールよろしくサーベルで突き刺す……かに思えたが、続けて襲来するガルスJのワイヤーを回避して攻撃の機会を失ってしまった。
過去にあのワイヤーによる拘束で危ない目に遭っている。
だが近くにはグロリアのフリーダムもいて、善戦……というより、比較的楽に敵方を撃破しているのだ。
一時拘束されたとしでも、危機的状況にまではならなかっただろう。仮にフリーダムがリナーシタを支援することが出来なくとも、フェリーニの今の相棒には多少の危機なら逃れる術がある。
「次の集団、来た!」
グロリアが見たのはビギナ・ギナⅡ、ストライクダガー、アビゴル、ゲルググJ、ギラ・ズール、アヘッド、ジン、ハイ・ザック、ズザ、デナン・ゲー、シャッコー、ユニオン・フラッグetc....
更には襲来してきたガウ航空空母からも複数の機体が発進し、こちらに……といういうより、リナーシタに向かっている。
「どういうことなの?」
と、グロリアは思考に巡らしかけたが、フェリーニとその使用ガンプラであるウィニングガンダムフェニーチェ・リナーシタを目標にしているようだ。
先ずは強敵のリナーシタから排除しようとしているらしい。
一方でフリーダムという機体……もといガンプラは、今後キット化される可能性が低い無名な代物だ。
個々の戦闘能力云々はともかく、見た目には無視されてリナーシタの撃滅優先ということは有り得る。
「ガンダムは回避優先で!」
グロリアは言うが、「ところがどっこい! レディに守られるというのは主義じゃない!」と、リナーシタは回避行動を取りつつもバスターライフルやブレストキャノンでの反撃は忘れない。
敵機が重なった瞬間にバスターライフルを撃ち、アヘッドとデナン・ゲーと同時に撃墜。
「おのれフェリーニィィィ!!」
断末魔めいた怨恨の言葉を遺して退場する相手ファイターに、フェリーニは若干ながら心当たりはあった。こういう賞金の掛かった大会や、世界選手権のような大きな大会になると良く起きる。
「またかよ……」
能動的に他人の彼女を取る気は更々ないのだ。無いのである。
向うから話掛けられて、盛り上がることがあっても自分には他人の彼女を取る気など全くないのである。
* * * * * *
蒼い炎が岩肌を焼くと、次の瞬間には岩肌を散弾が抉り取ってしまった。
「この、ガンダムチームがァ!」
回避しながら燕返しを撃ち返し、戦闘機動で移動しながらクレイバズーカでジムの神様を狙っていた百式の左脚部を吹き飛ばす。
フェリーニが4機余計に倒した枠に入ったリザーバーは、メガライダーを除くガンダムチームだった。
会敵一番でダブルゼータを吹き飛ばしたのは正解だっただろう。しかし続けて排除したのがゼータではなく百式でもなく、Mk-Ⅱだったのは拙かった。ガンダムチームの中で、敵にして一番組みしやすい相手がMk-Ⅱだ。
ゼータなんて改造もしてないくせにびゅんびゅん飛び回るし、百式なんかキラキラ光って目障りだし、残しておいて良いことない。
「死ねぃ」
中破した百式に照準を合わせて発砲。空中で胴体から頭部まで吹き飛ばされた金ピカは、そのままの勢いで地面に激突してクラッシュ。残りはゼータだけである。
ゼータは1機だけになると形勢を不利と見たのか、ウェイブライダー形態に変形して逃走を始めた。
「流石汚い。トワタ汚い」
トワタ側が用意したリザーバーでも、最後まで生き残れば規定の数と見なされるのだ。照準を合わせて燕返しの引き金を引くが散弾は出ない。弾切れのようだ。
「仕方無し」
ヒデツグは言うが、ゼータの撃墜を諦めたわけでは無い。コンソールを操作してジムの神様のパワーをブースターに集中させる。
ヘッドバルカン撃ちながら、敵の位置を確認して必要な距離を目算する。バトルが始ってから暫く経つ。「ジムの神様も温まっているハズ」みたいなことを考えるヒデツグは、精神を集中させた。
そしてカッ と目を見開くと、雄たけびを上げるように言う。
「行くぞォ!!!」
バックパックや脚部の裏から放たれるバーニアの炎は、ジムの神様を力強く空高くまで運んで行く。もう2メーター、1メーター、ゼロ。
ジムの神様の機影がウェイブライダーと重なったところで、その膝がウェイブライダーの船首部分を蹴り上げて捥ぎ取った。
ガンプラ心形流からヒデツグによって派生したガンプラ武道――二次元覇王流の業……「飛び膝蹴り」ある。
誰かが見てたら言うだろう。
「こいつ、ジムじゃねぇ」
* * * * * *
予備弾倉をシールド裏に(両面テープで)貼り付ける工夫を考えたヒデツグは、漸くフェリーニやグロリアと合流を果たした。
両機とも健在だが劣勢だ。何せ周りに居るガンプラが2機を集中的に攻撃している。
バトルロヤイヤルなのだから味方以外は全部敵なのだが、敵方の数が異常に多い。リナーシタが目立って集中攻撃を受けたのだろうが、グロリアにとっては大迷惑である。
バトルシステムの周りには当然、他のファイターもいてプラフスキー粒子が構成した擬似的なコクピットの中でガンプラを操作するのだが、プラフスキー粒子が構成するコクピットは半透明の青い空間で中が見える。
何年か前からは、欧米などのディープなガンプラファイターがコスプレしてガンプラバトルする者が少なくない。
「よくやるわぁ……」と思うヒデツグだが、今回の大会でも同じだった。
まぁ人の趣味だし誰に迷惑をかけるものでもない。
「うーし、リコ。助けに来たぞー」
ビームサーベルを抜いた状態のジムが、誰からも見える丘の上に立つ。
「あ、ちょっ……エネルギーの無駄遣い……」
グロリアはジムのビームサーベルの刀身を見て小さく口走った。
短剣程度のサイズの刃が、今にも消えてしまいそうだったからだ。
そしてジムに向けられた暴力の嵐。攻撃者は誰もが形も残さずジムは退場と思ったことだろう。ところがヘッドバルカンは砲弾やミサイル系の攻撃を撃ち落とし。バルカンに至っては素振られたビームサーベルに掻き消される。
それどころか、ビーム系の攻撃すらジムのサーベルが振られると粒子がぶつけられ、消え去ってしまうのだ。
オート・パワー・オン仕様のビームサーベルを持つヒデツグは、ことも無げに言う。「ベルトーチカ・チルドレンでアムロがやってた」である。
逆襲のシャアが題材の小説だ。Hi-νガンダムに搭乗するアムロ・レイが敵からの攻撃をビームサーベルを振った際の余波で掻き消した描写がある。
実際、過去にもニルス・ニールセンがプラフスキー粒子の技術を用いて粒子を変容させて戦国武者のような刀でビームを切り裂いていたが、ビルド技術が素人のヒデツグは「ビームにビームをぶつける」という単純な方法を取った。
高速で多方から飛来するビームにビームの刃をぶつけるのは、難易度の高いことだ。しかし、ヒデツグの長い経験と培った戦闘感がそれを可能にした。
同じ粒子で出来たエフェクトなら、同じ粒子で弾くか掻き消せるという理屈だ。
「おまえ強化され過ぎだろ!?」
フェリーニはヒデツグが“未だ”普通なのに驚くと共に半ば呆れるやら。グロリアに至っては言葉も出せない。
「まだまだァ!」
ビームに続いて突っ込んできたエピオンのカスタム機をすれ違い様に切り裂き、ゲルググJにサーベルを遠投して貫く。
「お残し多いよ!」
ショットランサーを構えて突っ込んできたデナン・ゲーの騎士槍を白刃取りしてヘッドバルカンを浴びせかけると、槍ごとガルスJに投げつける。
「すまん。これでも結構片付けたんだがな」
いうフェリーニが操って空中に陣取るリナーシタの下には、撃墜されたガウ航空空母の残骸があった。翼の他、船首部分が特徴的過ぎるのだ。
「OK、終わらせるぞ」
ゲルググに刺さり此れを撃破したビームサーベルを引き抜き、ヒデツグは次の目標を探す。
* * * * * *
バイアランを打ち倒し、戦うべき相手を失ったジムの神様ら3機とその操作をしている3人は途方に暮れる。
「好い加減、規定値まで減ったと思うんだが……」
「終わらんねぇ」
フェリーニの呟きにヒデツグは返す。
「まさか、宇宙ステージがあるのでは?」とグロリア。
そう言えば……とヒデツグとフェリーニは思い返す。自分達がガンプラをセットしたバトルシステムはかなり大型のものだった。ならば宇宙空間のステージと繋がっていてもおかしくはない。
「ええー、どうするよー」
「リコのガンプラって大気圏脱出能力は無いの?」
結構パワーがあったような気がするリナーシタだから、僚機を引っ張っていける性能はあるかも知れないとヒデツグは考える。
「俺と一機程度ならいけそうだが、二機連れて行くとなるとキツいな」
「ぬーん、そうかぁ」
「宇宙ステージの機体が淘汰されれば、向うから来るのでは?」
グロリアの言ったことは大体正しい。なのでヒデツグら3人は地上で待機し、エネルギーの充填や機体のダメージ確認をして控えておこうとした。
だがその時、空から降って来るものがある。見れば赤と青のカラーリングのウォドムだ。フェリーニはこのカラーリングに嫌という程、見覚えがある。
「地上部隊は全滅かァ――ッ!?」
勿論、その声色にもフェリーニは聞き覚えがあった。
「やっぱお前か! マシュー!」
その人物の名は、ヒデツグにも聞き覚えがある。
5年前の世界選手権のインタビューで、フェリーニをディスりまくっていた人物だ。数年前にフェリーニから直接聞いた話しでは、前年の大会で彼女をフェリーニに取られたんだとか。
その時の恨みか、或は新な被害の恨みかは定かではないがNTR被害者の会でも(ニュータイプ部隊に非ず)結成して今回の騒ぎになったのだろう。
買わないで良い怒りを買うフェリーニにもムカっ腹立つが、それで無関係な人間ごと倒そうという連中にも腹が立つ。
「そういうことか。つまらん感情で勝負に綾を付けよって」
ビームサーベルをバックパックに戻した状態のジムの神様が降下してくるウォドムに接近する。4門の発射口から続けざまに6本のミサイルが放たれると、ヘッドバルカンで空中で迎撃されたり回避されて地を抉った。
「そんなカカシみてぇなガンプラでなぁ!!」
跳び上がったジムが肉迫してビームサーベルを抜刀し。ウォドムの左脚部を膝上の辺りから切断する。降下中にバランスを崩したウォドムを空中で蹴倒し、完全に背後を取る。
「ジムの神様に勝てるワキャねェーだろォ―!」
突き上げた拳はウォドムの胴体に突き刺さり、爆砕する。二次元覇王流の業「爆殺正拳突き」である。
「で、でた。ヒデツグ・ギンガナムっ」と、フェリーニは言ったとか言ってなかったとか。
「ッシャー! 排除! まだ終わらんか!?」
ヒデツグのキャラの変容に驚き言葉もでないグロリアだが、後にフェリーニからヒデツグは「ハンドルを握ると人格が変わる」ならず「アームレイカーを掴むと人格が変わる人種」だという説明を聞いた。
そして、その時だ。
「ハーッハハハ!まだ終わらん。まだ終わらんぞォ!」
ヒデツグ、フェリーニ、グロリアの耳に響いたのは今し方倒したと思われるマシューの高笑い。ヒデツグなんかは「声がそっくりの兄弟?」説を考えたが、フェリーニは思わず「うげっ」なぞと呻いてしまう。
「マシュー。お前にゃボスキャラは似合わんぞ!」
その声に対して、元ドイツ代表は「うっさい!」とのこと。どうやら本人のようだ。
「しかしこの回線、ガンプラが健在じゃないと使えんよ?」
「あぁ、じゃぁウォドムは影武者?」
ヒデツグが言った情報からグロリアが常識的な結論を導き出す。
「そんっ通ぉりだー! フェリーニと一緒にあんたらにも潰れてもらうぞ!」
ライナ・マシューはそんな暴言を言いよる。今し方ウォドムが降って来た天を見れば、大きな影が見えた。
「そこまでやるかぁ!?」
最大望遠で見る宇宙ステージがある天から降ってくる塊、ガンプラというかステージそのもののような気がするが、あの機影は5thルナだ。
フェリーニ側の3人は思う。この男、住む場所とか売り払って復讐に注ぎ込んでる、と。
「リコ、一回ぐらい撃破されても良いんじゃないか?」
「……あぁ、俺も段々あいつが気の毒になってきた」
「ってか何回彼女を寝取ったんだよ?」
「俺に心覚えがあるのは一回きりだ」
謝罪……コレ大事。ヒデツグは心の底から他人のことながら身に染みて思った。そして5thルナが良く見える場所に移動すると、そこでジムを固定し脚部を広げ、腕を胸前にまで上げる。
「えっと…リコ、合流する前から反動のダメージを受けてるからさ、攻撃手段が無くなったり機動が停止したら安全地帯に移送頼むわ」
「あぁ、わかった」
「い、一体何を」
「グロリアさん、他の敵が来たら頼みます」
グロリアにはそれだけ言って、ヒデツグのジムの神様が構え直す。その構え、正に「流派東方不敗」の構え。
「いくぞォォォ!!」
ヒデツグが雄たけびを上げたかと思うと、ジムの周囲のプラフスキー粒子が渦を巻き5thルナへの透明な道を開く。
「ジム・オンガンッ!!!」
ジムが突きだした両手から、プラフスキー粒子の塊が5thルナへ開いた道を突き進む。
「えっ? えっ!?」
グロリアは自分の見ている光景を疑った。まさか、徒素のジムが大気圏外への攻撃能力を持っているとは思わない。
「そ、そんな馬鹿なァ―――!!!?」
ジム・オンガン……所謂波動砲的な攻撃を受け、欠片一つ残さず消滅した5thルナを操作していたマシューの言葉が、グロリアの意見を代弁していた。
* * * * * *
「いやぁ、勝った勝った」
本戦の決勝トーナメント出場を決めたヒデツグたち3人は、予選突破の賞金20万円ずつを手にして大会施設から出て来た。
「そういやさ、リコ。そろそろ日本を離れるらしいけど、5月にまた戻って来るの?」
「いや、5月は地元にいる筈だが……」
なのでフェリーニは係りの人に申告して本戦の出場を辞退し、代わりに5thルナが爆砕した破片でガンプラが撃破されるまで生き残ったキュベレイ使いの女性が出場することになったのである。
フェリーニが係り員に申告している間、再びヒデツグはグロリアと共に残されることになった。
フェリーニがいるとフェリーニを通して話がし易いのだが、二人きりになるとどうも口が重い。しかも先程、グラマラスなグロリアの肢体を見てしまっているから、妙に意識してしまう。
「ヒデツグ」
先に口を開いたのはグロリアの方だった。
「なんすか?」
変に気取らないようにして言ってみるが、どうも良くない。やはり変に意識してしまって、言葉が若干上ずる。
「単刀直入に言うわね」
そんなことを言うものだから、ヒデツグはグロリアが気を害するようなことをしてしまったのかと考えた。施設内に入って上着を脱いでから、エロ目で見てしまったかも知れない。否、多分見た。ガンプラ心形流は目算でスリーサイズが大体分かる。
身長172cm程度。上から順に102・61・93である。
「あ、ハイ。すいませんでした」
「?」
「ん?」
「んんー?」
どうも違うようなので、改めて聞き直す。「どゆことス?」と。すると彼女は徐に言う。
「貴方……霊視る人でしょ?」
* * * * * *
「……なので父以外の家族全員が
「失敗って?」
「ネットで『霊が見れます』って商売始めたんですけど、その足代を請求したら詐欺とか言われちゃいましてね。しかもミリシャ漁業組合のサイトの一部間借りしてたから中傷でメンバーは辞めていくし……」
「普通の人には見えないものねぇ」
そうして溜め息一つ。しかしヒデツグは初めて会う同種の人間に会い、饒舌になっていた。
「あいつら何なんですかね。たまに生きてる人間のもいますし」
「ここにも一体居るものねぇ」
あぁ、分かります? と言ったところで、フェリーニが施設内から出て来た。
「よし、行こう。次は東京駅だ」
何か良いことでもあったのか、妙に気分が高揚しているフェリーニにヒデツグが問う。
「なんだ、妙にテンション高いな」
「トワタだから…と、思ってたんだが、賞金は没収されずに済んだんだよ」
世界的に有名なビルドファイターであるリカルド・フェリーニでも、20万は大きい。ウィニングガンダムフェニーチェとリナーシタの金型を模型屋に売って決まった稼ぎはあるが、それでも年収にしてみれば充分とは言えないのだ。
「さ、行こうぜ」
言うフェリーニが先陣切って駅の方に歩き出す。
「あ、ちょと待たっ」
ヒデツグとグロリアが慌てて呼び止める。フェリーニの進行方向に二人が見ていた生霊らしき影があったからだ。
「ん、なんだよ?」
返事はするものの歩みは止めない。そのフェリーニの右半身と生霊の影が重なった瞬間。
「た~のしぃー!」
フェリーニのIQが大幅に下がってしまったようである。ヒデツグとグロリアは理解した。この生霊は「楽しい思い出を幕張に強く残した」子供の生霊であったことを。
* * * * * *
赤の他人なら無視して進むところだが、ヒデツグにはチームメンバーだしグロリアには共闘した仲なので、アラサー男のイタリア人を放っておく訳にもいかない。
そそくさと幕張駅の方まで運び込んで待つ事10分。
「はっ!? 俺は今まで何を」
自分を取り戻したフェリーニである。
「生霊に当てられてコツメカワウソみたいになってたよ」
「えぇ!? まさか四つ足で歩いてたんじゃないのかっ?」
「それは無いんだけど、他人のフリはしたかったわ」
グロリアからの報告を聞いてフェリーニは息消沈。そのまま東京に向かう電車に乗って行ったのである。
「そういやグロリアさん。明日以降のご予定は?」
電車の中から日本の都市の風景を見ていたグロリアは、思い出したかのようにスケジュールを
「もう2カ所ばかり地方大会に出てから次はスペインね。ヒデツグも一緒に来る?」
何やら大胆なお誘いである。地方大会には一緒に行っても良いかも知れないが、外国には行かない内向き思考が今のヒデツグである。なにせ、ガンプラを修理する道具に事欠きそうだ。
何より、アイダの年度末試験が終わったらじっくりヌルヌル愛し合う時間が必要である。
「うぅん、ご一緒して地方を廻るのも面白そうなんですが、大会じゃ確実に食い合っちゃいますからねぇ」
「私がサブ・パイロットでもいいのよ?」
そして夜には旅館やホテルでねっとり愛し合う……そんな夢想をグロリアとヒデツグがしたかも知れない時、フェリーニが割って入った。
「勘弁してやって下さいよ。こいつ、今付き合っている彼女がいて、ちょうどそのコを迎えに行くところなんですから」
フェリーニに助けられて助かったような、残念なような、ヒデツグは複雑な心境である。
「へぇ……でも今の日本じゃ重婚とか認めてるんでしょ?」
「あぁ、それで良いじゃないか。上手くいきゃハーレムだ」
フェリーニは、無責任にもそんな事を言ってグロリアを後押しする。
自身の女癖の悪さが危機を招いた後だからといって、ヒデツグを同族にしようというのだ。
今から50年前、日本の人口が7000千万人を切ったのを皮切りに、当時日本の内閣は結婚して子育てを奨励するため、地域によっては一回の出産で30万円かかる費用を国の補助で無償化し、更には一人の子供に付き20万円の奨励金を出し始めた。
しかしそれでも人口の減少が止まることはなかった。対策が対処療法に過ぎなかったからだ。
そこで20年前、政府は苦肉の末に「多夫多妻制」を導入したのである。
当然の事ながら、当時は「日本の家族体系の崩壊」や「性の乱れ」といったような批判の声は、政界以外からも連日連夜起きていた。
だが、人口減少に悩む国は日本だけではない。海外から多数の移住者を招くという手段を執った国は、全体主義国家から民間人のペルソナを付けた少なくない便衣兵の流入で、完全に全体主義国の飛び地と貸している。
当時の内閣総理大臣のヒオ某は鐵の意思で当法案を通したのである。
……とは言っても、1世帯に二人以上の妻がいる家庭は非常に少ない。長年続けてきた一夫一妻制だし、世間の目もある。
何より、多夫多妻の家庭は一組の夫婦につき子供二人以上という制限がある。世帯の年収も夫婦一組につき400万円以上、二組なら併せて800万以上なければならないと法で決められている。
妻が収入を得ていたら、その収入を一家の年収に合算して申告しても良いのだが、妻が増えればそれだけ養育する子供も増えなくてはならないのだ。
だから、フェリーニが言うようにハーレムを目指すのであれば、800万円以上の世帯所得を目指さなくてはならない。
「だから調子が良くて半年で300万の私は無理。ガンブラバトルの人気だって何時下火になるか解らんし」
「もうサッカーみたいな物だと思うんだがなぁ」
スポーツとしての地位を野球ではなくサッカーに例える辺り、イタリア人である。
「でもホラ、また5年前みたいなことがあると、一家離散だし」
「あぁ、確かに。そうだな」
「だから、ちゃんとした仕事をしたいんだよ」
ヒデツグが直ぐにアイダと籍を入れない理由が解ったフェリーニだが、一連の会話から言葉の裏を読む。
「ほう。じゃヒデツグはアイタちゃん以外にも嫁を持つ気が合あるのか」
ヒデツグは答えない。だがそれは沈黙という名の肯定とも受け取られた。
「で、お前はどんな女が好みだ?」
フェリーニが続けて話しかけるが、ヒデツグも沈黙していたことを肯定の意と捉えさせた不作為を自認するので答えなくてはならない。
ヒデツグも今は健康な男だ。異性との色恋話は興味あるし、なにより実際のところ異性には積極的になりたいというのもある。
今は収入が不安定な身の上だが、もしも安定したら気になった女性に言い寄る積極性を「本来の」彼は持っているのだ。
しかし、答えようにもグロリアが如何にも「興味津々」といった感じでヒデツグの答えを待っている。
朝は寝ながら歩いていたが、ちゃんとした人だ。
まさか「会ったその日に子作りセックス」しちゃうような人には見えない。
「まぁ料理が上手くて優しくて面白い人かなぁ。美人で巨乳なら尚善しだ」
と、外見ではなく技術や性格に逃げたヒデツグである。
「なんだそりゃ。そりゃお前の母親じゃないのか」
「それ、なに情報だよ」
「オダから聞いたんだよ。しかも滅茶若くて美魔女モデルのカリン似だって」
実はヒデツグの中では美魔女モデルより若く艶っぽいイメージがあるのだが、それを言うと明らかにマザコンなので隠す。
「若いっちゃ若いけど、親父様より年上だから大分劣化していると思うんだが……」
「写真とか持ってないの?」
グロリアが聞いてきたが、27歳の男が懐に母親の写真を持っている筈もない。ないのだが、ケータイの写真には写っているかも知れない。なんだか気恥ずかしいので隠すが。
「お、そういやお前のケータイに写真残ってるかも知れないじゃん。見せてみろよ」
隠した瞬間にフェリーニに暴かれた。仕方ないのでガラケーを出して写真フォルダを操作する。この時代、スマートフォンの上位機種であるユニバーサルフォンも世に出て、巷の人々は立体映像の動画すら楽しむほどなのだが、それだけに基本使用料も高い。
一方でヒデツグが使うガラパゴス携帯の基本使用料は、ワンコインで御釣りが来るほどに安くなっていた。
ヒデツグが操作すると、長い黒髪の女性が実家で飼っている茶色い毛並みの中型犬をあやす写真を見つけた。
「はいよ。電池が劣化してバッテリーが尽きるの速いから早く見てくれ」
ケータイをフェリーニとグロリアに手渡すと、二人とも軽く驚きの声を上げた。
「おわ、すっげ。30代かよ」
「えっ、ヒデツグが27歳だよね?」
フェリーニの感想通りだと、ヒデツグは母が10歳になる前に産んだ子ということになる。もっとも、ヒデツグの上に兄と姉もいるのだが。
「300歳って言ってた」
「そのボキャブラリーセンス、完全にお前の好みだろうが」
「うーん、せやろか」
ヒデツグは完全にすっとぼけ決め込んだ。だがその時、グロリアが進み出てヒデツグの手を取る。
先の法令が施行されて以降、気になる異性はとりあえず(性的な意味で)食っとく? 産どく? みたな者が現れる弊害が出たが、グロリアは外国人のようだし大丈夫だと思いたい。
昨今の日本は多人種化著しいが……。
まだ
「解るよ。解ります。心からの好みを言ったら、それがたまたま母親と同じだったってことが解るよ。男は誰しも心の中の理想の女性像を母親に重ね合わせるってこと……よく解るよ」
なんだかんだいって、酷いディスり具合である。
「マザコンみたいになちゃったけど、本音を言っただけなんだってことも良くわかるよ」
なにも外で言わなくても良いじゃないかっ!みたいなことを考えるヒデツグ(+フェリーニ)だが最後にグロリアはこう言った。
「でもこの人、私そっくりじゃない? っていうか寧ろ、私じゃない?」
グロリアの、残念過ぎる猛烈アピールを見ることになったヒデツグとフェリーニであった。
ママンが出てくるのは6月辺りからだと思います。
急な予定変更があった場合は別ですが……。
pixvに投稿した時は3月終盤からスタートだったんですよねぇ……。