他の客が出払い、隣の美少女は個室に移ったので、大部屋は中年男性たちが独占して、いつものようにどんちゃん騒ぎを始める。
「いや、リーシャちゃん、だっけ……あの子、すげえよなあ」
「だよな。特に胸とか……浴衣であれなら相当でかいよなぁ」
「たまんねぇ……」
酒を酌み交わしながらも、話題の的となるのは一つ屋根の下にいる美少女である。そんな折、障子の向こうから話題の少女の声がした。
「すみません、少し、いいですか?」
「は、はい?ど、どうぞ。」
話題にしたことを悟られたのかと、ビクビクしながら正座になる中年たち。想像に反して、障子を開けた彼女の顔は温和であった。
「あの、忘れ物をしてしまったみたいで、お邪魔してもいいですか?
「あ、ああ、勿論。」
少しばかり緊張した面持ちをみせる男たち。押し入れを捜索しはじめたリーシャのヒップが突き出される形になるとおお、と揃って鼻の下を伸ばす。
「胸もそうだけどこりゃ尻も……」
「馬鹿野郎、聞こえるっての」
小声でのやりとりをしながらももじもじしながら揺れる臀部に視線が釘つけになる。
「あ、私のことにはお構い無く……」
気を利かせた彼女なりの台詞だろうが、男たちにとってはそれは無理な話である。
「なあ、この民宿、今は俺らと彼女しかいないんだよな…」
「数日間はそうだけど……余計な期待すんなよ」
「だよなぁ。でもこんな目の保養だけでも……」
小声で淫猥な妄想に走りそうになるのを止める。
「あ、ありました。ありがとうございます。」
押し入れに顔を突っ込んでたせいで、少しばかり胸のあたりが着崩れて、谷間が覗く。リーシャ本人はすぐ着崩しを直したものの、男たちはそれを見逃すはずはなく、内心で拝んでしまった。
「お邪魔しちゃいましたね。盛り上がってたところなのに……」
リーシャから見ると、先程まで盛り上がってた彼らが静かなのは、自分が水を差す形になったからに見えて、ばつが悪かった。そんなことはない、と男たちは否定するものの、まさか胸や尻に見とれていたと本心を暴露するはずもない。
「その、お詫びといっては何ですが、お酌、させてもらっていいですか?」
「「「へ?」」」
浴衣の美少女が徳利に手を添えて、杯に酒を満たしていく。シャンプーの香りがわかるほどの近さに男たちは揃ってドギマギする。たわわな乳房も密着せんばかりで、触れてしまおうという自らの男としての欲望に抗いながら酌を受ける。一人、二人、三人と続々に酌を受けてる男たちの顔が緩む。
「あ、ありがとう。そ、それじゃ、もう一回乾杯といくか」
「でも、せっかくならリーシャちゃんも……」
「そうだな、お酌してくれたし、酒以外もあるから、リーシャちゃんが良ければ……」
「え?で、でも私なんかが……い、いえ、それじゃあ烏龍茶をいただきます」
決まり、と中年男がグラスに烏龍茶を注ぐ。それを受け取ったリーシャは微笑んだ。乾杯コールもお願いされれば、それを引き受ける。
「それじゃあ、乾杯……!」
各々の杯と乾杯を交わした後、ぐいっと烏龍茶を煽る。ほのかにグラスに唇のあとがつくのが艶かしい。
こうしてリーシャは、なし崩しで彼らの宴会に加わることになってしまった。
思いの外、中年男性たちとリーシャの話題は、この宿や周辺の穴場スポットに関することで盛り上がり、時間はあっという間に過ぎた。
「あ、もうこんな時間……」
「本当だ……リーシャちゃん、俺らの話しにこんなに付き合わせて悪かったなぁ」
「いえ、凄く私も楽しかったです。」
そうして向けてくる笑顔に嘘偽りはなさそうだった。
酒に酔って足元が覚束無い中年たちを尻目に、忘れ物を持って部屋を出ようとするリーシャ。それを呼び止めたのは、一人の男の声である。
「……ねぇ、リーシャちゃん、そのさ、おっぱい、いくつ?」
「おま……!」
その言葉を発した男は他二人に締め上げられる。
「ぐ、ぐぇ…!タップ、タップ」
「ごめんね。リーシャちゃん、酔っぱらいの言うこと聞かなくていいから……」
「あはは……そ、その、お休みなさい」
ぎこちない笑顔とともに障子が閉められる。恨みがましい男二人の目がセクハラ発言をした男に対して向けられる。が、それをやめさせる一声が障子の向こうから響く。
「……92、です」
「……へ?」
具体的な数値が示されると、男たちの煩悩は加速する。
「あの、明日もお邪魔して、いいですか?」
絞り出すような声に対して、男たちは勿論、と強く返答する。それを聞くとててて、と足音を立てて彼女が去っていくのがわかった。
「きゅうじゅうに、かぁ……」
セクハラ質問の男は一転して英雄となった。