※この作品はR-18です。

ノワール様の神房   作:櫛笥 紫月

2 / 2
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とりわけ電機メーカーとは一切関係ありません。


後編 ※初体験他

「お痛みになるところはございませんか?」

 

「ありがとう、平気よ。続けて、ね」

 

 しなを作ってみせようとして――

 できなくて、途中でぶんぶんと手を振るう。

 その腕を、彼に捕まえられて。

 指圧を加えらたところから、じんわりと幸せが広がる。

 それがキモチよくて、わたしは大きくまばたきをした。

 

「ん……っ」

 

「慣れない筋肉をお使いになると、思いもよらないところがお痛みになるでしょう」

 

「大丈夫って、何度も言わせないで」

 

 ちょっと凝ってるかなって思うところもあるけれど、気にしないでいいわ。

 そんな言葉さえ、素直には言えなくて。

 

「失礼致しました」

 

 贈り物の包装を解くみたいに、着ているものをゆっくりはがされていく。

 ガウンを脱がされ、上腕に触れたキスに肩をすくめれば、次はベビードールへと。

 体を覆うものが一つもなくなれば、彼も身を軽くした。

 向き合えば、彼のギリシャ彫刻のような優美な上体に見惚(みと)れて。

 

 裸同士で二人きりになっても、彼の心なんて少しもわからなくって――

 

「ふ……ぇ……っ!」

 

 足を大きく押し開かれた。

 羞恥心よりも、触れられている温もりを、強く感じちゃってる……!

 そして――彼の剣があてがわれて。

 

 刺し貫かれて、一つになるんだわ――

 

 彼は迷うことなくわたしの中へと雄芯の頂きを埋(うず)めると、終(つい)に。

 

「あっ……!」

 

 あ、あれ?

 

 すぽ、なんて間抜けな幻聴が聴こえるくらい、何事もなく収まってしまって。

 痛くは、ない。なのに、確かにわたしの中に彼がいる。

 

 なんともなかったのは、喜んでいいはずなのに。

 まるで彼とわたしの関係みたいって思っちゃって、ずきりと胸が痛む。

 男と女の関係どころか、セックスフレンドですらない、ただのタスク・フォースだものね。

 

「痛みはございませんか?」

 

「ん……ちょっと、痛いかも。けど、このくらいどうってことないわ」

 

 彼に優しくしてもらったところは、痛くないけれど。

 ココロとカラダが引き離されて、胸の中にぽっかりと穴が開く。

 わたしの体なのに、わたしのものじゃないみたい。

 

 現実味が薄れてきた頃に、繋(つな)いだ彼の手でやわやわと水かきをくすぐられて。

 

「ん……!」

 

「少し、動かしますよ」

 

 こじ開けられたばかりの空洞を、彼の熱杭がゆっくりと行き来する。

 痛いのか気持ちいいのかだってまだ分からないような、不可思議な感覚。

 茫然自失(ぼうぜんじしつ)のわたしは、ただ彼の整った顔立ちとその奥の天井を眺めていて。

 

「ノワール様」

 

「ん……?」

 

「最も善(よ)くシェア(信仰)を捧げられるのは、ノワール様の奥に射精することです。貴女の中に出しても、宜しいですか?」

 

「ふぇ……っ」

 

 女神は、子どもなんて産めない――

 なのに。彼の熱を、体の奥で感じたいと思ってしまう。

 その奥には、きっと何も繋がってはいないのに。

 

「あなたを信じて調べてもらった結果だもの。任せるわ」

 

「私の全てを、ノワール様に捧げます」

 

 欲しいのはそんな返事じゃない。

 貴女の全てを私のモノにしたいってくらいの言葉、期待したって仕方ないじゃない、とさえ、思ってしまう。

 代わりに与えられたのは、パンドラの匣(わたしの体)の奥底に隠されていた甘やかで淫らな絶望――

 

「んぁ……っ!」

 

 隘路(あいろ)の中で、彼の幹が太く根を張り始めて。

 そんなに無理しなくたっていいわ。だって、なりゆきだけの仕方ない関係なんだものね。

 

「あ……は……!!」

 

 乳頭にかぶりつかれる刺激に、蜜壁が孕(はら)んでいた痺れをはっきりと感じて。

 彼がきゅうと縮こまった愛器の狭さをものともせずに律動を続けるから、その熱で奥が溶け出していく。

 つないだ手と手、見つめ合う目と目、重なる吐息のすべてで、彼にこの熱情を隠すことなんてできなくて。

 離れた片腕は彼の残滓の残る敏感な突起へと伸びてきて、また余裕をなくさせられる。

 

「ひぁ……ぅ……ん……ん……!! あっ、は……んんぅ……はぁ、ね、あなたは、最後まで、でき、そう……?」

 

 全部おまかせだけど、あなたも、気持ちよくなってくれてる……?

 

「ご満足なさるまで必ずやお付き合い致します。ノワール様のお体は温情と慈愛に満ちていて、大変心地が良い」

 

 男の顔をした彼の目に、胸の奥を射抜かれる。

 切なくて彼の広い背中へと腕を回せば、その肩を大きな腕で撫ぜられて。

 とっても気持ちがいい。

 愛されていると錯覚してしまう。勘違いしたいと、思ってしまう。

 

「ん……。ん……! あ……っ」

 

 ねえ、キスしてよ……

 胸や肩ばっかりじゃなくって、わたしによ……!

 

 棹(さお)で突かれて波に揺さぶられれば、甘い毒に踊らされて右も左もわからなくなってく。

 胸の中のきゅんとした気持ちが、媚薬で引き出されたものなのか彼への想いなのかさえ曖昧になってきて。

 愛でるような彼のしぐさ(・・・)にただただ身をまかせると、惑いも快楽の渦に飲まれていった。

 

「あっ……ふ……はん……!!」

 

 手ばかりじゃなくて、心も繋がせてよ……!

 

 彼の話のとおりなら、彼ばかりが気持ちよくなってくれたっていいはず。

 それなのに弱いトコロばかりくすぐられて体中疼(うず)かせられるから、キモチよくならなくちゃって思ってしまう。

 「キモチいい」じゃなくて、「キモチよくならなくちゃ」って。

 これってきっとかわいくない考えかたね……。

 

「ん……んぁん……!!」

 

 胸の中で彼の存在が大きくなりすぎて、それでキモチよくなりきれなくて。

 熱に茹だりながら細く目を開ければ、欲のこもった綺麗な瞳と少し苦しそうな息遣いに、とくんと胸が鳴った。

 わたしの中で彼が気持ちよくなってくれていることがこんなにも嬉しくて……苦しい。

 気持ちよくなることくらい一緒だっていいじゃないって思えれば、急激に体が高まってく。

 

「あ、やぁ……ん、あ、まっ、あ、いい、そこ、イキそ、イッちゃう……!」

 

 彼に教えてもらった通りに言ったのに。

 なのに、それを合図に時間が止まった。

 わたしの中にいかり(・・・)を下ろしたまま、彼は睦言(むつごと)を止めにして。

 与えられるままに甘えていた熱情が行き場を失ってくすぶる。

 

 わたし、何かいけないことした!?

 

「んっはぁ、はぁ……、ね、イカせて、おねがい……!!」

 

 きっと勝手に与えられるものだと思っていたものが得られなくって。

 なのに、媚薬に酔った頭じゃ何の反省もなしに彼に強請(ねだ)ってしまう。

 彼に見捨てられることがこの世の終わりみたいに不安で。

 

 ゆっくりと体を撫でられて、ようやく心が落ち着く。

 

「良く出来ました。私も限界を迎えそうです……。今日は最後にひとつだけ、ノワール様に覚えて頂きたいことが御座います」

 

「なに……?」

 

「ノワール様自ら『中に出しなさい』と宣告してください。信徒が勝手にノワール様の身を汚すことは出来ませんから」

 

 ぴくりと動いた彼自身に、ふ、と息を漏らしそうになる。

 これ以上焦らされたらおかしくなりそう……!

 迷っている余裕なんてもうなくて。

 

「お願い、一緒にイッて! 中に出して欲しいの、あなたのもの、全部わたしの中に出して!!」

 

「承知しました」

 

 再び動き出した彼に体の中を激しく掻(か)き混ぜられて。

 やっぱりまだ痛いのか気持ち良いのか分からないような感覚なのに、胸の隙間が埋まるようで。

 感じ慣れた秘芯への愛撫に身を焦がしながら、一つになるような錯覚で心を慰めた。

 

「あっ、あっあっ、いいの、そこ気持ちいい! もっとして、出して、中に、いっぱい出して! はあ、ぁ、イッちゃう、イッちゃいそうなの……!」

 

 何もしないのもわたしらしくないかなって腰を踊らせてみせても、すぐにされるがままになって。

 めいっぱいに大きくなった彼自身が、弱いところとこれでもかってくらい擦(こす)れ合う。

 ぐちゅぐちゅという水音だって生易しく感じられるような嬌声が、喉からこぼれてく。

 キモチいい。何も考えられなくなることが、こんなにもキモチいいなんて――!

 

「膣内(なか)に、射精(だ)します……ッ」

 

「いいわ、ぜんぶわたしの中に、出しきってよね! ……あっ……あ、あ、イく……っ!」

 

 花芯を揉み潰されれば、熱が弾けて体の隅々へと波打っていた。

 彼の固い幹が、ひきつく蜜壁を跳ね返してなお奥を穿(うが)って。

 少し体を起こされぎゅっと抱きしめられれば、その剣が奥深くまでを貫き、脈動して――

 

 

 

「ん……熱い。なんだか、とっても熱くて……」

 

 出ちゃいそう、なの……。

 もっと繋がっていたいのに体の違和感がすごくなってきて、彼に身を寄せたまま愛器を離した。

 中に出されたところが温(ぬく)んでいて。

 漏れる、漏れちゃう……!

 

「……っ!」

 

 愛蜜なんかとは全然違う、熱い流体が蜜口から噴き出してく。

 漏らしちゃったかしらと焦って目をやれば、それは青っぽく固まっていて。

 一つ、手にとってみる。

 

「これは……シェアクリスタル……?」

 

「書には書かれていませんでしたが、ノワール様に捧げた信仰(しんこう)はシェアクリスタルに成る様ですね」

 

 そう言うと彼は、小さな欠片を一つ一つ慈(いつく)しむように集めていった。

 わたしの心の中のわだかまりとは正反対な、青く澄(す)んだシェアの輝き。

 彼の信仰心が素なのだから、当たり前かもしれない。少し、寂しい。

 

「……ん」

 

 想いとともに吐き出された白濁とわたしの蜜を拭(ぬぐ)われて、恥ずかしくて。

 さっきまでは頭の中が真っ白になるくらいで、全然気にならなかったのに。

 綺麗に拭(ふ)かれていく体に、胸の内まで見透かされないか少し不安になる。

 こんなにも苦しいのに、なんでその腕は暖かいの……!

 

「まだまだ、ベッドの上のことって難しいわ。また、レッスンしてもらえるかしら」

 

「ノワール様の御心(みこころ)のままに。御身(おんみ)に染み入るまで、何度でもお付き合い致します」

 

  * * *

 

 それからしばらくして、ラステイションのシェアはV字回復を果たした。

 ゲイムギョウ界を飛び越えビィツゥビィギョウ界を巻き込んだVRデバイスの大ヒットによるものだ。

 わたしの公務というよりケイのプライベートビジネスが爆心地だったけど、とにかく窮地は脱した。

 

 だから、もう、シェアのために体を重ねる必要もない。

 

 けれど、わたしは彼を離れられないままでいて。

 ううん、きっとそんな綺麗な言葉じゃ赦(ゆる)されない。

 わたしは彼を縛ったまま、公務のためとたびたび二人きりの時間を過ごしてもらっていた。

 ――結局、彼以外の男には誰にも気を許せていない。

 

 関係が続けば続くほどに苦しくなるばかりなのに。

 ただ一時、愛されてるっていう錯覚ばかりが心地よくて、その関係を止められないでいる。

 男にハマるなんてバカみたいって思ってたのに。ユニにだってきっと怒られるわよね。

 こんなのわたしじゃないなんて思えば思うほど、心が沼に沈んでいく。

 

「は……ん……っ! いい、う、いいわ、すこ、いいの……!」

 

 彼に跨(またが)り腰を落として、その雄(おす)に擦(す)りあげられる快感を味わって。

 こんなことは恥じらいもなく求められるようになったのに、欲しい言葉は何一つ強請(ねだ)れない。

 だから、彼の頬に差すわずかな赤み、吐息の乱れや先走りさえ嬉しいと思ってしまう。

 

「あ、んっ……や……そこ、そこなの……ふぁ……!!」

 

 愛したくたって愛せない。

 彼って真面目だから、わたしが口に出せば彼自身の想いに関係なくその身を捧げるかもしれない。

 彼が大事だからじゃない。

 こんな関係に甘んじているのに、心の底から愛されたいと思ってしまって。

 そうじゃないなら、関係がこじれるくらいなら、今のままでいい――

 

「やぁ、あ、あ、いく、いいの、あっあん……!」

 

 火照(ほて)った体に急かされてわがままなくらいに愛器を擦り合わせればまた目の前が真っ白になって。

 なのに、せっかくの真っ白なキャンバスもすぐに心の内のわだかまりで塗りつぶされていく。

 

 体ばかりが満たされて、スキっていう気持ちが行き場を失ってわたしのなかに詰まっていく。

 別れればいつも通り、満たされない気持ちが目元から零(こぼ)れていくんだろう。

 ねえ知らないでしょう? あなたと逢った夜はよく泣いてるのよ。

 でもきっと、そんなわたしは嫌いよね……。

 

「次は私が奉仕致します」

 

「任せるわ」

 

 体を入れ替えて、月明かりの影がわたしに被さった。

 ゆっくりとしたペースで撫でられるのをうっとりと感じていると、確かな質量が打ち込まれて。

 

「んっ……いいわ……。いつでも、好きなときに出してね」

 

 これぐらいはいいよねと思って、恋人みたいに手を繋ぐ。

 ただそれだけなのに、彼と絡め合った指先はキャラメルみたいに甘くとろけて。

 

「はぁ、ん……あん……っあ!」

 

 二人の欲望が合い混じった淫らな水音。

 体ばかりの重なり合う、乾いた音。

 そして彼の精神誠意尽くす姿に耐えきれないベッドがぎしぎしと軋(きし)んで。

 

「ああ! いく、またイッちゃう、きて、出して、欲しいの、あなたの精子(シェア)、奥に全部ちょうだい、んっ……あ‥…!!」

 

 ぷくりと熟れた上と下の蕾(つぼみ)をめいめいに震わせられれば、奥の熱が膨(ふくれ)れ上がって弾け散った。

 痙攣(けいれん)する肉襞(にくひだ)の中に、彼の白濁した欲望が脈打って――

 

 

 

 だるい。意識が戻れば、すぐに鬱屈とした気分に苛(さいな)まれる。

 前はもう少し幸せでいられたのに。

 彼はずっと変わらず、大切にしてくれている。ただ、女神として。

 また体を流してもらってマッサージでもしてもらえば、少しは気も紛(まぎ)れるかしら――

 

 けれど、今日はちょっと違って。

 

 いつもならお風呂のお誘いのタイミングに、彼は改まった様子で言った。

 

「ノワール様。今日はお伝えしなければならないことがあります」

 

 どきりとした。嫌な予感がする。

 聞きたい。聞きたくない。どっちなのか自分でもよく分からなくって。

 

「何かしら?」

 

「私には心に深く想った女性がおります。このままノワール様のお相手を務める事はできません」

 

 言葉を失った。

 動揺を隠しきれない。みるみる顔が青くなっていくのが、自分でも分かる。

 

 そんな……どうして……!

 どうして今、そんなこと言うの……?

 どうしてそんなひどいことができるのよ……!?

 

 出すものを出しちゃったら、用済みなんだ。

 やっぱり、男なんてろくなものじゃないじゃない……!

 

「愛しています、ノワール様」

 

 えっ……。

 情事の温もりの抜け切らない体に、抱きしめられて。

 イヤよ、もう流されるものですか。男なんて。男なんて……!

 とん、と押し返そうとしてみても、力が入らなくて。

 自然と彼の名前の形に唇が動いていた。

 

「そそそそんなこと言われたって困るわ! 今までこういうお付き合いしかしてないのに。そうね、セフレからなら、考えてみてもいいわ」

 

 のわーーーーーっ!

 お友達からなら、と言おうとしたのに、間違えてセフレからなんて。

 

「それは私が欲しいという事で宜しいですか?」

 

 彼の瞳を通して見えた熱情に、息を詰めた。

 気がつけば、体はベッドに沈んでいて。

 あとはひたすら焦らされ啼(な)かされてヘトヘトになったところで素直なキモチを暴き出されたのだった……。

 

 

 

 職場じゃおとなしい人だと思っていたけれど、彼も相当肉食系よね。

 けれど自分から素直になるのって難しいし……少しくらい強引なほうが合っているみたい。

 好きよ。大好き。

 

 さて、趣味のコスプレはどうやって話せばいいかしら……。

 仕事が全ての女なんて思われてるのもイヤだけど、趣味の話って難しい。

 けれど、彼だったら受け入れてくるはずって思える。

 もう、「女神様」じゃないものね。

 

  (終)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。