「お痛みになるところはございませんか?」
「ありがとう、平気よ。続けて、ね」
しなを作ってみせようとして――
できなくて、途中でぶんぶんと手を振るう。
その腕を、彼に捕まえられて。
指圧を加えらたところから、じんわりと幸せが広がる。
それがキモチよくて、わたしは大きくまばたきをした。
「ん……っ」
「慣れない筋肉をお使いになると、思いもよらないところがお痛みになるでしょう」
「大丈夫って、何度も言わせないで」
ちょっと凝ってるかなって思うところもあるけれど、気にしないでいいわ。
そんな言葉さえ、素直には言えなくて。
「失礼致しました」
贈り物の包装を解くみたいに、着ているものをゆっくりはがされていく。
ガウンを脱がされ、上腕に触れたキスに肩をすくめれば、次はベビードールへと。
体を覆うものが一つもなくなれば、彼も身を軽くした。
向き合えば、彼のギリシャ彫刻のような優美な上体に
裸同士で二人きりになっても、彼の心なんて少しもわからなくって――
「ふ……ぇ……っ!」
足を大きく押し開かれた。
羞恥心よりも、触れられている温もりを、強く感じちゃってる……!
そして――彼の剣があてがわれて。
刺し貫かれて、一つになるんだわ――
彼は迷うことなくわたしの中へと雄芯の頂きを
「あっ……!」
あ、あれ?
すぽ、なんて間抜けな幻聴が聴こえるくらい、何事もなく収まってしまって。
痛くは、ない。なのに、確かにわたしの中に彼がいる。
なんともなかったのは、喜んでいいはずなのに。
まるで彼とわたしの関係みたいって思っちゃって、ずきりと胸が痛む。
男と女の関係どころか、セックスフレンドですらない、ただのタスク・フォースだものね。
「痛みはございませんか?」
「ん……ちょっと、痛いかも。けど、このくらいどうってことないわ」
彼に優しくしてもらったところは、痛くないけれど。
ココロとカラダが引き離されて、胸の中にぽっかりと穴が開く。
わたしの体なのに、わたしのものじゃないみたい。
現実味が薄れてきた頃に、
「ん……!」
「少し、動かしますよ」
こじ開けられたばかりの空洞を、彼の熱杭がゆっくりと行き来する。
痛いのか気持ちいいのかだってまだ分からないような、不可思議な感覚。
「ノワール様」
「ん……?」
「最も
「ふぇ……っ」
女神は、子どもなんて産めない――
なのに。彼の熱を、体の奥で感じたいと思ってしまう。
その奥には、きっと何も繋がってはいないのに。
「あなたを信じて調べてもらった結果だもの。任せるわ」
「私の全てを、ノワール様に捧げます」
欲しいのはそんな返事じゃない。
貴女の全てを私のモノにしたいってくらいの言葉、期待したって仕方ないじゃない、とさえ、思ってしまう。
代わりに与えられたのは、
「んぁ……っ!」
そんなに無理しなくたっていいわ。だって、なりゆきだけの仕方ない関係なんだものね。
「あ……は……!!」
乳頭にかぶりつかれる刺激に、蜜壁が
彼がきゅうと縮こまった愛器の狭さをものともせずに律動を続けるから、その熱で奥が溶け出していく。
つないだ手と手、見つめ合う目と目、重なる吐息のすべてで、彼にこの熱情を隠すことなんてできなくて。
離れた片腕は彼の残滓の残る敏感な突起へと伸びてきて、また余裕をなくさせられる。
「ひぁ……ぅ……ん……ん……!! あっ、は……んんぅ……はぁ、ね、あなたは、最後まで、でき、そう……?」
全部おまかせだけど、あなたも、気持ちよくなってくれてる……?
「ご満足なさるまで必ずやお付き合い致します。ノワール様のお体は温情と慈愛に満ちていて、大変心地が良い」
男の顔をした彼の目に、胸の奥を射抜かれる。
切なくて彼の広い背中へと腕を回せば、その肩を大きな腕で撫ぜられて。
とっても気持ちがいい。
愛されていると錯覚してしまう。勘違いしたいと、思ってしまう。
「ん……。ん……! あ……っ」
ねえ、キスしてよ……
胸や肩ばっかりじゃなくって、わたしによ……!
胸の中のきゅんとした気持ちが、媚薬で引き出されたものなのか彼への想いなのかさえ曖昧になってきて。
愛でるような彼の
「あっ……ふ……はん……!!」
手ばかりじゃなくて、心も繋がせてよ……!
彼の話のとおりなら、彼ばかりが気持ちよくなってくれたっていいはず。
それなのに弱いトコロばかりくすぐられて体中
「キモチいい」じゃなくて、「キモチよくならなくちゃ」って。
これってきっとかわいくない考えかたね……。
「ん……んぁん……!!」
胸の中で彼の存在が大きくなりすぎて、それでキモチよくなりきれなくて。
熱に茹だりながら細く目を開ければ、欲のこもった綺麗な瞳と少し苦しそうな息遣いに、とくんと胸が鳴った。
わたしの中で彼が気持ちよくなってくれていることがこんなにも嬉しくて……苦しい。
気持ちよくなることくらい一緒だっていいじゃないって思えれば、急激に体が高まってく。
「あ、やぁ……ん、あ、まっ、あ、いい、そこ、イキそ、イッちゃう……!」
彼に教えてもらった通りに言ったのに。
なのに、それを合図に時間が止まった。
わたしの中に
与えられるままに甘えていた熱情が行き場を失ってくすぶる。
わたし、何かいけないことした!?
「んっはぁ、はぁ……、ね、イカせて、おねがい……!!」
きっと勝手に与えられるものだと思っていたものが得られなくって。
なのに、媚薬に酔った頭じゃ何の反省もなしに彼に
彼に見捨てられることがこの世の終わりみたいに不安で。
ゆっくりと体を撫でられて、ようやく心が落ち着く。
「良く出来ました。私も限界を迎えそうです……。今日は最後にひとつだけ、ノワール様に覚えて頂きたいことが御座います」
「なに……?」
「ノワール様自ら『中に出しなさい』と宣告してください。信徒が勝手にノワール様の身を汚すことは出来ませんから」
ぴくりと動いた彼自身に、ふ、と息を漏らしそうになる。
これ以上焦らされたらおかしくなりそう……!
迷っている余裕なんてもうなくて。
「お願い、一緒にイッて! 中に出して欲しいの、あなたのもの、全部わたしの中に出して!!」
「承知しました」
再び動き出した彼に体の中を激しく
やっぱりまだ痛いのか気持ち良いのか分からないような感覚なのに、胸の隙間が埋まるようで。
感じ慣れた秘芯への愛撫に身を焦がしながら、一つになるような錯覚で心を慰めた。
「あっ、あっあっ、いいの、そこ気持ちいい! もっとして、出して、中に、いっぱい出して! はあ、ぁ、イッちゃう、イッちゃいそうなの……!」
何もしないのもわたしらしくないかなって腰を踊らせてみせても、すぐにされるがままになって。
めいっぱいに大きくなった彼自身が、弱いところとこれでもかってくらい
ぐちゅぐちゅという水音だって生易しく感じられるような嬌声が、喉からこぼれてく。
キモチいい。何も考えられなくなることが、こんなにもキモチいいなんて――!
「
「いいわ、ぜんぶわたしの中に、出しきってよね! ……あっ……あ、あ、イく……っ!」
花芯を揉み潰されれば、熱が弾けて体の隅々へと波打っていた。
彼の固い幹が、ひきつく蜜壁を跳ね返してなお奥を
少し体を起こされぎゅっと抱きしめられれば、その剣が奥深くまでを貫き、脈動して――
「ん……熱い。なんだか、とっても熱くて……」
出ちゃいそう、なの……。
もっと繋がっていたいのに体の違和感がすごくなってきて、彼に身を寄せたまま愛器を離した。
中に出されたところが
漏れる、漏れちゃう……!
「……っ!」
愛蜜なんかとは全然違う、熱い流体が蜜口から噴き出してく。
漏らしちゃったかしらと焦って目をやれば、それは青っぽく固まっていて。
一つ、手にとってみる。
「これは……シェアクリスタル……?」
「書には書かれていませんでしたが、ノワール様に捧げた
そう言うと彼は、小さな欠片を一つ一つ
わたしの心の中のわだかまりとは正反対な、青く
彼の信仰心が素なのだから、当たり前かもしれない。少し、寂しい。
「……ん」
想いとともに吐き出された白濁とわたしの蜜を
さっきまでは頭の中が真っ白になるくらいで、全然気にならなかったのに。
綺麗に
こんなにも苦しいのに、なんでその腕は暖かいの……!
「まだまだ、ベッドの上のことって難しいわ。また、レッスンしてもらえるかしら」
「ノワール様の
* * *
それからしばらくして、ラステイションのシェアはV字回復を果たした。
ゲイムギョウ界を飛び越えビィツゥビィギョウ界を巻き込んだVRデバイスの大ヒットによるものだ。
わたしの公務というよりケイのプライベートビジネスが爆心地だったけど、とにかく窮地は脱した。
だから、もう、シェアのために体を重ねる必要もない。
けれど、わたしは彼を離れられないままでいて。
ううん、きっとそんな綺麗な言葉じゃ
わたしは彼を縛ったまま、公務のためとたびたび二人きりの時間を過ごしてもらっていた。
――結局、彼以外の男には誰にも気を許せていない。
関係が続けば続くほどに苦しくなるばかりなのに。
ただ一時、愛されてるっていう錯覚ばかりが心地よくて、その関係を止められないでいる。
男にハマるなんてバカみたいって思ってたのに。ユニにだってきっと怒られるわよね。
こんなのわたしじゃないなんて思えば思うほど、心が沼に沈んでいく。
「は……ん……っ! いい、う、いいわ、すこ、いいの……!」
彼に
こんなことは恥じらいもなく求められるようになったのに、欲しい言葉は何一つ
だから、彼の頬に差すわずかな赤み、吐息の乱れや先走りさえ嬉しいと思ってしまう。
「あ、んっ……や……そこ、そこなの……ふぁ……!!」
愛したくたって愛せない。
彼って真面目だから、わたしが口に出せば彼自身の想いに関係なくその身を捧げるかもしれない。
彼が大事だからじゃない。
こんな関係に甘んじているのに、心の底から愛されたいと思ってしまって。
そうじゃないなら、関係がこじれるくらいなら、今のままでいい――
「やぁ、あ、あ、いく、いいの、あっあん……!」
なのに、せっかくの真っ白なキャンバスもすぐに心の内のわだかまりで塗りつぶされていく。
体ばかりが満たされて、スキっていう気持ちが行き場を失ってわたしのなかに詰まっていく。
別れればいつも通り、満たされない気持ちが目元から
ねえ知らないでしょう? あなたと逢った夜はよく泣いてるのよ。
でもきっと、そんなわたしは嫌いよね……。
「次は私が奉仕致します」
「任せるわ」
体を入れ替えて、月明かりの影がわたしに被さった。
ゆっくりとしたペースで撫でられるのをうっとりと感じていると、確かな質量が打ち込まれて。
「んっ……いいわ……。いつでも、好きなときに出してね」
これぐらいはいいよねと思って、恋人みたいに手を繋ぐ。
ただそれだけなのに、彼と絡め合った指先はキャラメルみたいに甘くとろけて。
「はぁ、ん……あん……っあ!」
二人の欲望が合い混じった淫らな水音。
体ばかりの重なり合う、乾いた音。
そして彼の精神誠意尽くす姿に耐えきれないベッドがぎしぎしと
「ああ! いく、またイッちゃう、きて、出して、欲しいの、あなたの
ぷくりと熟れた上と下の
だるい。意識が戻れば、すぐに鬱屈とした気分に
前はもう少し幸せでいられたのに。
彼はずっと変わらず、大切にしてくれている。ただ、女神として。
また体を流してもらってマッサージでもしてもらえば、少しは気も
けれど、今日はちょっと違って。
いつもならお風呂のお誘いのタイミングに、彼は改まった様子で言った。
「ノワール様。今日はお伝えしなければならないことがあります」
どきりとした。嫌な予感がする。
聞きたい。聞きたくない。どっちなのか自分でもよく分からなくって。
「何かしら?」
「私には心に深く想った女性がおります。このままノワール様のお相手を務める事はできません」
言葉を失った。
動揺を隠しきれない。みるみる顔が青くなっていくのが、自分でも分かる。
そんな……どうして……!
どうして今、そんなこと言うの……?
どうしてそんなひどいことができるのよ……!?
出すものを出しちゃったら、用済みなんだ。
やっぱり、男なんてろくなものじゃないじゃない……!
「愛しています、ノワール様」
えっ……。
情事の温もりの抜け切らない体に、抱きしめられて。
イヤよ、もう流されるものですか。男なんて。男なんて……!
とん、と押し返そうとしてみても、力が入らなくて。
自然と彼の名前の形に唇が動いていた。
「そそそそんなこと言われたって困るわ! 今までこういうお付き合いしかしてないのに。そうね、セフレからなら、考えてみてもいいわ」
のわーーーーーっ!
お友達からなら、と言おうとしたのに、間違えてセフレからなんて。
「それは私が欲しいという事で宜しいですか?」
彼の瞳を通して見えた熱情に、息を詰めた。
気がつけば、体はベッドに沈んでいて。
あとはひたすら焦らされ
職場じゃおとなしい人だと思っていたけれど、彼も相当肉食系よね。
けれど自分から素直になるのって難しいし……少しくらい強引なほうが合っているみたい。
好きよ。大好き。
さて、趣味のコスプレはどうやって話せばいいかしら……。
仕事が全ての女なんて思われてるのもイヤだけど、趣味の話って難しい。
けれど、彼だったら受け入れてくるはずって思える。
もう、「女神様」じゃないものね。
(終)