えーと……そろそろはっきりさせておきたいんだが……
「な、何をよ。三年時間がズレてるのは、こないだの事故ではっきりしたでしょ?」
ああ、うん、それは解ってるんだ。そうじゃなくて……お前、本当は起きた後のことも覚えてるだろ。
「そ、そ、そんなわけないじゃない! コレは夢なのよ!? 夢で起きたことなんて、覚えてるわけ――」
……あのさ、いくら相手が女子とはいえ、見知らぬ誰かに付け回されたら男だって怖いぞ。
「うわっ、これだけ人の身体をもてあそんでおきながら見知らぬ誰かなんて――」
三年ズレてるって、さっき自分から確認しておいてナニ言ってんだ。ともかく……真っ昼間から俺のことを付け回してるストーカー、三葉なんだろ?
「ストーカーなんて人聞きが悪いわね。アレは、えーと……」
あーあーわかった。言い方を変えよう。お前は、一縷の望みを賭けて、今の俺をわざわざ探してくれたんだよな。
「ま、そういうことよ。感謝しなさい」
だが、残念ながら目が覚めた後の俺は怖がっている。何とかしてくれないか?
「そんなこと言われても……こっちだって大変な状況なのよ!」
大変なのは何となく分かる。制服で寝てるところを見ると、どうやら避難生活中みたいだし。でも、俺が言ってるのはその三年後の話だぞ。
「わかってるわよ! ……でも、その三年間、私が何もしてなかったと?」
……あ、あぁ……そうか。色々と手を回してもらっていたんだな。
「手を回していた、というか……ほら、現実の私は未来の瀧君の記憶を持っているワケでしょ?」
だな。三葉が起きた先の俺は、まだ中学生のはずだから。
「そんな状況で下手に接触すると……瀧君の頭の中がどうなるかわからないのよ。
怖っ!? さすがにそういう実験には付き合えないぞ。
「だから、こうして逢いたい気持ちを抑えて三年間待ってたんじゃない!」
その結果が、それがあのストーカー行為か……
「またそういう嫌な言い方する! 入れ替われなくなって、本当に寂しいんだから!」
……ところで、俺たち今まで、入れ替わるタイミングでこうして夢で逢えてたよな。
「まあ、そうね」
初めてその……裸になったとき、俺、三葉の身体で眠ったはずなんだが……
「え?」
なんかおかしくないか? 首尾一貫していないというか……
「だっ、大丈夫なのよ! そのー……二日連続で入れ替わりが発生すれば、結果的にそういうことにもなるでしょうし!」
そんなんでいいのかよ!?
「細かいことは気にしないの! こうして夢で逢えてること自体が裏技みたいなもんなんだから」
で、これまでだったら、目が覚めれば相手の身体に入ってたところなんだよな……
「ええ。でも、今ではお互い元の身体に戻されちゃってる」
それだけ、俺たちの繋がりが細くなってるってことか。
「だから何とかしなきゃいけないのに……!」
その糸口として尋ねるんだが、どうして三葉は記憶が残ってるんだ?
「それはもちろん、私が媒体となって夢接合を実現してるってのはあるけど……ふたり分の記憶はね、私の身体の中に宿ってるのよ。だから、現実の瀧君とも何とか繋がれれば、共有の記憶として繋ぎ止めることができるんだけど……」
繋がるどころか、警戒しちまってる。かなりヤバイぞ、コレは。
「……これは、家宅侵入しかないわね……。鍵の隠し場所、変えてないんでしょ?」
やっぱお前怖ぇよ!
「しっ、仕方ないじゃない! 記憶さえ取り戻してくれればオールオッケーよっ」
それはそうかもしれないけど……ただ、そんな強引にできるものなのか? 俺の協力とか必要だと説明するのに骨も折れるだろ。
「えーとね……先ず、ふたりの記憶がどこにあるか、知ってる?」
三葉が持ってるんだろ?
「そうなんだけど……実はね、私の、ココにあるの」
盲腸?
「卵巣よ、アホっ!」
ら……卵巣って……
「コレ、マジだから。で、子宮が精液に満たされたら、それを媒介にして瀧君の身体に記憶が逆流していくのよ」
なぁ……それって……
「ま、平たく言えば、セックスね」
何なんだよ、お前の魔術! そんなんばっかか!
「神聖なる祈祷よ! 変な呼び方しないで!」
つまり……俺は、どうすればいいんだ?
「そうねぇ……ところで、今日、お義父さんは?」
会社に泊まっていってるはずだぞ。
「だったら、このまま寝てなさい。日付は私の方で覚えておくから、今日を狙って夜這いさせてもらうわ」
夜這いって……さすがにマズくないか……?
「仕方ないでしょ。初対面の相手に、私と
しかも、夢じゃないんだろ? その……妊娠とか……
「するかも。絶対責任取ってね」
じ……事後避妊は……
「嫌よ。身体の負担も大きいし。それに記憶さえ戻れば、お互い納得するでしょ」
す……するのか……?
「しなさい」
…………
「ホントのところね、瀧君との入れ替わりがなくなってからの方が、瀧君のこと考えてると思うの。だって、こっちの記憶だっていつなくなってしまうかわからないのだし」
そ、そうか……
「でね、入れ替わりの最中のこともそうだけど……やっぱりこうして顔を合わせてる間が、一番楽しかったな、って」
俺にとっては……入れ替わりだけが三葉との思い出だったんだがな。
「すぐに共有できるわよ。それで最近は、そのー……えっちばっかりしてたよね」
まあ。入れ替われなくなってからは裸で寝ることもなくなったから、シてないけど。
「そうなの。シてないのよ!」
…………
「記憶を繋ぐためでもあるけどね、どうやって瀧君とセックスしようかって、ずっと、ずっと……瀧君との記憶がある限り……」
お、おい……鼻息荒いぞ?
「荒くもなるわよ。興奮してるんだもの」
そもそも繋がるのは現実の三葉とだろ? お前がそんなに
「おそらくね、服は寝ているものがこちらにも反映されるみたいじゃない? だから、瀧君への夜這いが始まったら……」
脱がされる……のか……?
「多分ね。そしたら、夢の中からもサポートしてあげる。瀧君が少しでも早く
ど……どうやってだよ……
「あのね……確かに、制服着込んで寝てはいるけど……スカートの中は……」
おっ……おま……ノーパンかよ!?
「もしかしたら、何らかの事情で……せめて、下だけでも裸で寝てくれることもあるかもしれないかなー……って」
ということは、ここまでシてなかった間も……
「そうよ。ずっとノーパンだった」
…………
「興奮した?」
ま、まぁ……というか、今もまさにノーパンだろ。
「ええ。だから、瀧君がひん剥かれたらすぐに
って、もう充分テカってるじゃ――
「そゆこと言わないの! ほらっ、チンチン使えないなら、お口で舐める!」
わっ、わかったから……自分で広げるな!
「何でよ。そうしないと誘惑にならないでしょ。こっちはずっと……欲しかったんだから、ちょっとはサービスしなさいよ」
ぉ……ぉぅ……
「あ、ちなみに、私の方は何度
全力って……
「クリちゃんは舌で、
わ、わかったから! ……というか、今更なんだが……
「何よ。話なら舐めながらにしなさい」
無茶言うな。……いや、俺たち、起きたら忘れるから、って結構恥ずかしいこと口走ってきがして。
「そうね。チンチンマンマン言い放題だわ」
記憶接合されたら……俺もソレ、思い出しちゃうんだよな?
「…………いいから舐めろ!」
わっ、引っ張るな! ったく……ん……くちゅふ
「ん、あぁ……いい……やっぱりクリは舌が一番なのよねぇ……」
ちゅむ……む……ぷちゅ
「そ、そうっ!
む、む……むぅ……
「あー……やっぱチンチンじゃないと太さも足りないしねぇ……ま、いいわ。舌の方で頑張って♪」
……じゅぶ。ぶちゅぶるるる……っ
「あっ!? あ、あ、あ……そんなに強く吸ったら……そこ……そこぉ……!?」
む、むふ、むふぅ……むぅ、む……!
「いいっ、いいのっ! どーしよっ!? 久々だから……久々のクンニだから……! あ、あぁっ、いいっ、いい……
!?
な、何だよコレ……! ……マジかよ……俺、ズボンに触ってもないのに……
「そして、完全に身体から離れると、消えるのね……❤」
つまり……ベッドの俺は下半裸で、大学生の三葉に襲われている、ということか。
「それはそれでいいじゃない! 早くっ、夢の瀧君は私を犯してよ!!」
わかったから……! そんなとこにじゃれついてても
「ぅ……ホラ、久々のチンチンじゃない? つい飛びついちゃったわ。何より
わかった! わかったから……! ほら、仰向けになって足開けって。
「うん、うん……❤ もう準備しすぎなくらいだから……一気に
ぉ、ぉぅ……! それじゃあ――
「ん、あ、あぁ……はぁぁぁぁぁ❤」
三葉……もしかして……繋がっただけで……?
「はぁ、はぁ、だってぇ……瀧君、すごい勢いで
でも……ここからが本番……だろ?
「そっ、そうよ! 今なら布団を濡らすこともないからね! 全部未来の
やっぱり三葉……凄いな……!
「うんっ、うんっ、だって……ずっとずっと欲しかったんだもの! 一回や二回じゃ……全然足りない……!」
俺の記憶が戻れば……何度でも、何度でも……っ
「夢から醒めたら……もっといっぱい色んなことしようね! 色んなところに行って、色んなもの食べて……それで、いろんなえっちもいっぱいして♪」
いろんなえっちって何だよ……
「だってほらぁ……玩具とか持ち込めないでしょぉ……? それに、面白いホテルにも行ってみたいし……あぁ、お外でするのもスリリングかもぉ……❤」
三葉って結構……積極的なんだな。
「何よぅ、今更気づいたの? 寝ても覚めても、瀧君のことばっかり考えてたんだからぁ……あ、あっ、はぁんっ、えっちなことだって考えちゃうわよ!」
う、あ……凄い締め付けだな……三葉……!
「うんっ! だって私、瀧君のチンチン大好きだもんっ! だからもっと……もっと撞いてぇ❤」
でも……もう……俺……
「
だ……だけど……三葉も……
「私のことはいいわよ。もうさっき
「同じ時間を生きている私と、早く愛し合って欲しいから……!」
ビュクッ! ビュルッ! ビュク、ビュク、ビュク……っ!
あ、あ……あぁ……
真っ青な空が……薄暗く遠ざかっていく……
入れ替わるように差し込まれてくるのは……確かに……俺の部屋の天井……か……
俺の……部屋……
そして……
「あ、あの……その……」
恐る恐る覗き込んでいる彼女が、ここ数日俺を付け回していた影の正体なのだろう。
見えない間は、恐ろしかった。
しかし、見えてしまえばこんなにも可愛らしい。
そんな不安そうな顔をさせたくないくらいには。
「三年経っても、相変わらずなんだな……三葉」
記憶を渡すだけなら、全裸になる必要はなかったはずだ。万が一失敗しても、その姿では逃げることすら叶わない。なのに、わざわざすべてを脱ぎ捨てて俺に跨っているのは……単なる趣味だろう。
彼女の、恥的好奇心というやつかもしれない。
結構、積極的だからな。
「瀧君……私……私のこと……思い出してくれたのね……!」
そしてもう、夢から醒めても忘れることはない。
俺たちが繋がりを取り戻したことが伝わったからこそ――彼女はみるみる破顔していく。
こちらからすれば、たった一瞬前のこと。
だが、彼女にとっては、とても、とても長い年月に感じたはずだ。
その日々を思い出し――三葉の瞳は安堵に濡れる。
「もうっ! ずっと……ずっと待ってたんだからね……!」
今にも泣き出しそうな彼女を、俺は抱き締めてやりたい。だが、できない理由がある。
「……なら、そろそろこの拘束を解いてくれないか?」
両手両足の手錠はベッドの四隅へと繋がれており、俺は大の字になったまま身動きひとつ取れない。仮に途中で俺が目を覚ましても、断固として最後までやり抜くつもりだったのだろう。
「あっ、うん。そうだね、ゴメン……」
俺に覆いかぶさるように、枕元の方へと手を伸ばす。すると……柔らかな片房が顔に触れ――ようやく右手が自由になった。
それで、おれはすぐさま彼女の背に腕を回す。
「……ぁ」
三葉は少し嬉しそうに喉を鳴らした。きっと、ずっとこれを期待したいたのだろう。
『同じ時間を生きている自分と愛し合って欲しい』
そのために、三葉はしがみつくように俺との記憶にすがってきたはずだ。
それはあたかも、こうしてベッドに縛り付けるように。
しかし、もうそんな必要はない。
俺の両腕は――
こうして柔らかく彼女を抱きしめることができるのだから。
ずっと、これからも、同じ時間を生きている三葉のことを。