夢の続き~after the school idol~ 作:果樹 椿姫丸
それから約三日後の朝。ヤマアラシのジレンマとでも呼べば良いのか……先日の件もあり、ことりさんとの距離の取り方に困っていた俺の元に、その知らせは唐突に訪れた。
「えっ、今日………ですか」
「うん。……ごめんね?ほんとは昨日か……もっと早くに教えるべきだったんだけど」
「いえ、ここ数日ことりさん仕事忙しかったみたいでしたから」
それは、件の女子校のスクールアイドルプロデューサーの仕事見学へ行こう、というものだった。確かにアポが取れたという話は前に聞いていたが、まさかこんなに早くになるとは。
「………見学は楽しみ?」
「どうでしょう。………楽しみかどうかは分かりませんが、やっぱり興味はありますね。どうスクールアイドルを支えているのか」
「そっか………」
ことりさんはそっと視線を下げ、残っていたコーヒーを飲み干す。その表情は少し
「ことりさん………?」
「何?」
「あの、少し………暗いような」
「えっ………そう思う?」
思ったままの事を口にすると、ことりさんは驚いた顔で再びこちらを見据える。先程とは打って変わって、少し恥ずかしそうな表情だ。
「はい。………2日前くらいまでは明るかったので、余計にそう思います」
「そっか………」
「何か理由があるんですか?」
「………聞きたい?」
「はい」
「………ほんとに?」
……やけに勿体ぶるな。
「はい」
俺の二度の返事を聞くと、ようやく折れたのか、ことりさんは恥ずかしそうにその理由を語り始めた。
「ねぇ、虎太郎君………その、三日前に、その…………色々したの覚えてるよね?」
その話か………。
「はい、俺が押し倒したんですから覚えてますよ」
これで覚えてなかったら俺は最低の男だ。………いや、元スクールアイドルを押し倒してる時点で、俺は相当罪深い男なのかもしれないが………。
「その、…………えぇっと、それで、その………虎太郎君は大丈夫なのかなって」
………大丈夫?どういう事だ?
「すみません、話が………」
「だから………!えっと、その………三日前あんな事あったのに、虎太郎君平気そうだから、その、心配で、だから………えっと、あの………あぅ」
………そういう事か。
「ことりさん…………言いたくないですが、俺がそういう事にならないように、あの………”アレ”をしてくれたんじゃ…………」
…………アレのせいで余計に夜が辛くなったのはここだけの話だ。
「そ………そんなこと言って虎太郎君、が……我慢してるんじゃないかな!?」
「ことりさん顔真っ赤ですよ」
………大体分かってきたぞ。ことりさん、多分だけどこれは………
「~~~~!………う、うるさいなぁ………。えっと、虎太郎君が、嫌じゃなければ………じゃなくて、したいなら、その………してあげないこともないよ?」
………溜まっちゃってたのか。こういうの見ると少し意地悪したくなっちゃうのは、姉さん譲りかもなぁ。
「何をですか?」
「えっ………。き、キスだよ!前にしたの!!………虎太郎君は、したくないの?」
………てっきりことりさんは俺と体を交えるその日までキスとかをする気はないと踏んでいたのだが、どうやらその予想は外れてしまったらしい。
「どうですかねぇ」
「虎太郎君~……」
「そうですね、俺はキスよりも………」
椅子から立ち上がった俺はそっとことりさんを抱き締めた。彼女の体温が伝わり、整髪料の香りが俺の鼻腔をくすぐる。
「こっちの方が、今は落ち着きます」
より力を込めてことりさんを抱き締めた。改めて見ると、彼女の首や腕は細く、こんな華奢な体で仕事をして大丈夫なのかと心配になってしまう。………馬鹿かもしれないけど、そんな彼女は今にも消えそうだと錯覚してしまって、余計にことりさんを抱き締める手に力がこもった。
「虎太郎君………」
「ことりさん………」
ことりさんは可愛い。今朝のことりさんは特別魅力的だったし、俺は迷いなく唇を重ねてしまっていた。………俺は、いつかちゃんとこちらの準備が整うその日まで、ことりさんと体を交えない。………確かにあの日そう心の中で誓った。
「んっ…………あっ……」
けれど、確かにあの日お互いを”そういう対象”として認識してしまったんだ。………優柔不断だと思われるかもしれないけど、キスや前戯くらいはしてもバチは当たらないだろう。
「はぁっ…………こた、りょ―――んんぶっっ!?」
ことりさんが何か言おうとするのを唇で塞ぎ、舌を絡める。その度にことりさんの口はグチュグチュと下品な音を立て、酸素を失ったことりさんの苦しそうな表情は、俺の
「んっ………んんっ……はっ―――ジュルルル………んんっ………」
唇を重ねていると、相手が酸素を求める瞬間というのが自然と分かるようになる。その瞬間に無理矢理唇を塞ぎ舌を絡める度にことりさんの目は虚ろになっていった。
………そろそろか。
「ンジュルルルッ………はっ――――んあぁっ!?」
ようやく息が出来る。そうことりさんが確信し空気を吸おうとしたその瞬間を狙い、今度は唇でなく首にキス――――でもなく噛みつく……これは意外だったのか、ことりさんは驚いた顔でこちらを睨んだ。
「虎太郎君~………」
そんな可愛い顔で凄まれても正直怖くない。
「んっ………。キスで誤魔化さないでよっ!」
軽く唇を重ねると、俺は再びことりさんの首を狙った。今度は首を傷つけないように、優しくキスをする。
「…………んっ」
………今日は俺が頑張ろう。……そう密かに胸に誓い、俺は首から徐々に下へ、唇を這わせていく。
「あっ…………んんっ」
どうやらことりさんは首が弱いらしい。噛みついた時怒ったのもそのせいか。…………唇を鎖骨のあたりまで這わせた所で、俺はことりさんの寝間着のボタンを一個ずつ外し、中に着ていたシャツは本人に脱がせた。
「虎太郎君………変態っ」
「元々はことりさんが期待してたんじゃないですか。………どっちが変態ですか」
「………馬鹿」
どうやら今日のことりさんなら、俺でも言い負かせる事が出来るらしい。
「終わったよ………」
脱ぎ終わり、Tバック一枚になったことりさんは、未だに恥ずかしそうにこちらに背を向けていた。………前に洗濯する際に俺が扱いに困っていた、例の下着だ。
「こっち向いてもらえませんか?」
「やだ………」
………少し拗ねてる?
「ことりさん………」
「あっ…………」
後ろから首に噛みつく。………少し汗ばんでるか?
「もうっ……………あっ、あっ………んんっ……」
そのまま間髪を入れずに乳房を下から触り、乳頭に少し刺激を与える。
「はっ…………はぁっ………んっ………あぁんっ……」
それから五分も弄るとことりさんは声を抑えられなくなった。
「あっ!…………あっ………んんっ、あっあぁんっ!………はー………はー…………」
二回ほど絶頂に達したことりさんは肩で息をしていた。……やるなら今のタイミングだろうか。
「ことりさん、今度は俺が………」
それから約二時間後。疲れ果てた俺とことりさんは、まとめてシャワーを浴びていた。
「すみません、朝から………」
「ううん………」
結局、あの後ことりさんの下半身に色々施して………その…………この前の俺みたいな感じに出来た。ことりさんは満足出来ただろうか?
「気持ち良かったよ、ありがとう!」
満面の笑みと共に、ことりさんは俺の頬にキスをした。………くっそ。
「すみません」
再びことりさんを抱き締める。
「どうしたのー?」
「大好きです…………」
知らず、俺は本音を口にしていた。………ほんとに馬鹿だ、俺。これはちゃんとしたタイミングで言うつもりだったのに。
――――なんて考えていると、ことりさんは再び優しく微笑み、返事をくれた。
「………私も、大好きっ!」
俺は、まだこの人と体を交える事は出来ない。………それは、俺はまだ自分の力でことりさんの元へ来れていないからだ。ここに来れたのは全て姉さんのお陰だし、ここで暮らせているのは姉さんとことりさんのお陰だ。……俺は本当に何もしていない。………それじゃ駄目なんだ。いつか、自分一人の力でことりさんの元へ来れるような男にならないと。………人の力に頼りきりの今の俺には、ことりさんと体を交えて良い権利なんかないんだ。
それは残酷なことかもしれない。好きな人はほとんど毎日隣にいて、それなのに体を交えることが出来ない。………でも、その苦しみや痛みは、俺は当然の事として受け入れるべきなのだろう。
俺はことりさんが好きだ。顔も、仕草も、優しいところも、俺なんかよりずっと遠くを見てる大人なところも、全部好きだ。………その気持ちに気付いて、そしてあの夜を越えてからは、より一層その気持ちは強くなっている。正直、ことりさんと体を交えたい。一つになりたい。…………でも、駄目なんだ。もし俺がこんなことを考えてるって、そう気づいててこんなに魅力を振り撒いているのなら、ことりさんはこの世のどんなものよりも残酷な人かもしれない。
セッ○スしてないし18禁じゃない気がしてきた。