夢の続き~after the school idol~ 作:果樹 椿姫丸
翌日。昨日と同じように見学をさせてもらっていた俺は、素直な疑問をことりさん達にぶつけてみる事にした。
「ことりさんと花田さんって、どういう繋がりなんですか?」
花田さんはスクールアイドル部のプロデューサーで、ことりさんはファッションブランドの社長だ。いくら元スクールアイドルとはいえ、ことりさんと花田さんの間に何か接点があるとは考えづらかった。
「ああ、そうか………。南さん、話しても?」
「はい、別に隠すような事でもないですから」
「わかりました。………実はね、虎太郎君。南さんにはスクールアイドル部への衣装提供をしてもらっているんだ」
「衣装………提供?」
どういうことだ?
「………続きは私が話しますね。………虎太郎君、スクールアイドルとステージ衣装は切っても切れない関係立っていうのは、当然理解してるよね?」
「はい………」
これでも今まで様々なスクールアイドルの活動を見てきたから、それくらいは知っている。ステージ衣装、オリジナル楽曲…………ラブライブ出場は正直中々敷居が高いイメージがある。
「でも、どのスクールアイドルも衣装作成技術があるわけじゃないの。………ラブライブに出場したくて、だけどオリジナルの衣装を作れる人がいなくて。……そんなグループも沢山あるんだ」
「成る程………」
「この高校のスクールアイドル部もその一つで、私はその衣装を提供してあげてるの」
「スポンサー……ってことですか?」
「うーん………それは少し違うかな?そこまでやっちゃうとスクールアイドルじゃなくって、プロのアイドルになっちゃうから。私がやってるのは衣装を揃える予算がなくて、衣装を作成出来る人材がいなくて、そのせいでラブライブへの出場機会を失ってしまっている………そんな子達への衣装提供だから。………ただの自己満足みたいなものだから、お金は貰ってないよ。……勿論、衣装にはウチの名前も付けてないし」
「本当に南さんには助けてもらっているんだ。………彼女の存在がなければ、ウチのスクールアイドル部はラブライブを目指せなかっただろうね」
仕事だけでも忙しいだろうに……。俺の知らないところで、ことりさんは頑張ってたんだな。
「………この高校以外の高校にも提供してるんですか?」
「うん。条件をクリアして、審査をパスすれば提供を受けれることになっているから、他にも何校か……。でも、実際に私が練習風景見学したのはこの高校が初めてだよ」
「ここにいる皆は、ことりさんのデザインしたステージ衣装を着てラブライブに出場するんですね」
「うん♪私はその日が楽しみだよ。この高校だけじゃない、私のデザインした衣装を着て、皆優勝を目指して輝いて………」
未来の彼女達の姿を思い浮かべているのか、ことりさんは優しく微笑む。………ことりさんにとっては、自らがデザインした衣装を着てくれる彼女達は、娘のような存在なのかもしれない。
「素敵な未来ですね」
「うん♪私はもう精一杯、やれる限り全力で輝いたから、これからは輝ける可能性のある子達を、未来の可能性を支えてあげたいんだ!」
力強い言葉と共に、ことりさんは胸に手を当て、満面の笑みを見せる。にこ姉さんとやり方は違うけれど、ことりさんにとってはこれが“今の自分に出来ること”なのだろう。どっちが正しいとか、そういうのじゃないんだ。ただ、それぞれに新しい道を見つけたというだけで。
「やっぱりことりさんには敵わないです」
「?……何がー?」
「悔しいので秘密にしておきます」
「えー!いつもなら何でも素直に言ってくれるのにー!」
「今日はそんな気分じゃないんです」
「えー!!」
………だって、言えるわけないじゃないですか。ここ数日で花田さんやことりさんのカッコいい姿を見て、憧れて、どうしようもない劣等感を感じているなんて。
………それは、無い物ねだりのようなものなのかもしれない。でも、今の自分はただアイドルが好きで、何かしらの形でスクールアイドルを応援したくて、だけど何の努力も出来てなくて…………。そんな空っぽな自分と、夢という大きなもので満たされ、そしてそれを実行し努力していることりさんや花田さんを比べてしまうのは、仕方ないことなんだ。
…………この気持ちを払拭するために、俺はこれから何をすれば良いのだろう?
とにかく今は、考えるのを止めたくない。スタートを切るには遅すぎたかもしれないけれど、この時ようやく俺は自分の意識を改変出来たのかもしれなかった。
「何勝手に終わってるのかなー、虎太郎君?」
それからざっくり半日経過し、時刻は夜10時過ぎ。この時間になるとことりさんの寝室からは綺麗な夜景を見れるのだが………今夜はカーテンで遮られそれを拝むことを許さなかった。
「ことりさん……どうかしました?」
「どうかじゃないよ!ばかっ!」
可愛らしい罵声と共に、ことりさんは愛用している枕を俺に投げつける。……正直全然痛くない。
「昨日せっかく良い雰囲気だったのに、こころちゃん達に邪魔されちゃったし……」
?昨日の長電話のことか?
「でも、ことりさん楽しそうに電話してたじゃないですか?」
「それはそれ!別なの!」
そのままことりさんは俺をベッドに押し倒す。抵抗しようと思えば出来たけど、たまにはこんなのも悪くないなと思った。
「ね!虎太郎君!ほら!いつもの!………ね?」
うるうるうる。
う~ん………
「俺が言うのもアレですけど、雰囲気も何もあったもんじゃないですね!」
いやことりさん可愛いけどさ!
「だってさ、もう仕方ないじゃん!だってだって…………あっ」
「――――」
「………ほんと虎太郎君きらい」
ぎゅうぅぅ………。
言葉を続けようとするその唇は、酷く乾いていて、お世辞にもロマンチックな
「言ってることとやってることが違いますよ?」
「………生意気っ」
えいっ。
挨拶をするように優しく唇を重ねると、ことりさんは体温を確めるように俺を抱き締めた。
「ことりさんってほんと体細いですよね」
「………それは褒めてるのかな?」
「すみません」
堪えきれなくて、少しだけ強く、存在を確めるように俺はことりさんの腰に手を回し、抱き締める。近付けば近付くほど分かる。多分健康的な痩せ方なんだろうけど、でもやっぱり男の俺にとってその細い体は不安で、だから守らなきゃって――――気持ちがぐちゃぐちゃだ。この感情を、人は何と言うんだろう。
「何で謝るの?」
「俺………まだ自分のことすら
「ほんとに馬鹿だなぁ虎太郎君は」
ことりさんは抱き締めていた手を離すと、今度は俺の頭を胸に抱き寄せる。………それは、子どもを宥める母親のような姿だった。
「普通そんなこと、口に出して言ったりしないんだよ?………それに、それって多分……私のこと愛してくれてるってことじゃないのかな?」
「ことりさん……」
「多分、愛するってそういう事なんだと思うよ?自分のことなんか二の次で、その人のために尽くしたいって気持ち。………私はその事を分かった上で貴方に愛を伝えてたつもりなんだけど、貴方はどうなのかな?」
「俺は………」
久しぶりに時間が空いたので更新しましたー。
本当に更新遅れに遅れて申し訳ありません!定期更新出来ればそれがベストなのですが、これからもまったり更新になりそうです。本当に申し訳ない………。
見捨てないで下さいいいいいいいい(スライディング土下座