!月~日
とりあえず、エイルシュタットの皆さんは……僕の管理下にある別荘みたいな場所で潜伏してもらいつつ、準備を進めてもらうことにした。
これからやるのは……帝国の打倒。
そのためにやるべきことは多いけど、大きく分ければ3つ、上げることができる。
1つ目。魔女ゾフィーの打倒。
今や、全世界にとって脅威として認識されている彼女の排除なしには、ゲルマニアを打倒したことにはならないし……逆にこれを達成してしまえば、一番わかりやすい手柄になる。
2つ目。ゲルマニア帝国の、連合国軍に対する全面降伏。
これはただ負けを認めさせるだけじゃなく、ちょいと細かい条件があったりする。色々、多方面に手回ししておぜん立てをする必要がある。
これについては僕と……ベルクマン中佐にも働いてもらうとしよう。汚い部類の仕事になる。
3つ目。エイルシュタット、及び『新生ゲルマニア(仮)』の、国際社会における立場の確立。
これが一番面倒だ……というか、帝国関係ないのに必要な外交戦略だ。
主に、火種全部消そうとするであろう合衆国を黙らせるために。
これら全部を達成することで……初めて僕たちの望む勝利が手に入る。
犠牲は敵だけにとどめ、余計な手出し口出しが入らないように。エイルシュタットにとっても、僕みたいな一部のゲールにとっても、ヨーロッパの各国にとっても、都合のいい形に。
そのためには、言うまでもないけど、事前の周到な準備と、各自の連携・協力が重要になる。
ここにあたって僕が不安だったのは……協力することを約束したとはいえ、仮にもゲールの軍人である僕やベルクマン中佐を、最低限とはいえ、彼女たちが信じてくれるか、だったんだけど……それについては、イゼッタとビアンカが説得してくれた。
彼は確かにゲールだが、信頼できる男だ、と。
彼女たち2人が協力して言うことには――その説得自体も人を選んで行っていたけど――帝国軍にとらわれた自分たちは、日々辛く厳しい責め苦を受けていた。
しかし、それに加わらず、逆に自分たちをかばってくれたり、治療を行ってくれたのだと。
命に係わるケガを治してもらったこともある。彼がいなければ、イゼッタもビアンカも、生きていられなかっただろうと。
……大体本当だけど……一部、正確でない部分がある。
いや、言ってないだけなんだけど……僕は確かに、汚っさんたちのバカな行為に参加してはないけど、その後に別個に彼女たちにきちんと手を出してるんだけど……
しかし、うまいことビアンカが話を持って行って、そこには触れず、なおかつ嘘もつかずに……さらに、『確かに彼は、上層部による拷問の間は私たちを助けることはなく、見て見ぬふりをしていましたが』と、あえて負の側面を語ることで、評価に『底』を作り、それ以上下がらず、その後のフォローで押し上げるように弁舌を振るっていた。
結果……少なくとも作戦行動をとる上では信頼できる、との結論に落ち着いた。
まあ、それで問題はない。大公殿下も……イゼッタの恩人であることは確かだからって、過去の遺恨はお互い考えずに手を組む、ということを了承してくれたし、説得に難儀しそうだったジークハルト補佐官の方は、ベルクマン中佐が受け持ってくれた。
……似てるような似てないような2人だけど、だからこそうまくやれたらしい。
まあ、今はこれで問題ない。
というか、別にこれ以上親しくならなくても……繰り返すが、最低限、協力して作戦行動をとれる程度の信頼があれば、それでいい。
むしろ、無理して仲良くなろうとしない方がいいだろう。
どこかの第六天魔王も、『呉越同舟とかよく言うがな、危機が迫れば軋轢や不和がなくなるとか、んな事ァ絶対に無ぇ!!(中略)そして取り返しのつかないことになるのだ!!』って言ってるし。
変に無理して相手を理解しようとして考え方をきしませるよりは、あくまでビジネスパートナー、くらいに考えていた方がいいだろう。ジーク補佐官とか、ベルクマン中佐あたりは、呼吸をするように……とは言わないまでも、そういった割り切りは得意なようだし。
そう思ってたんだけど……ビアンカとイゼッタが間に立ったからか、大公殿下やメイドのロッテちゃんは、多少なりこっちを気にかけてくれてるような気配があるかも。
……まあ、それならそれで、悪い気分じゃない。
少なくとも、彼女たちの信頼や期待を裏切る気はないし……仲良くできるならしとこうか。その方が……こころなしか、イゼッタも嬉しそうというか、気が楽そうだし。
……とりあえず、準備進めるか。
時間的余裕はあまりない。あのおっさんが火力演習をやらかす予定の、ヴェストリアでの会談の日までに……全部済ませないと。
E月F日
……日記をつけるのも久しぶりだな。
随分、間が空いてしまった。
まあ、色々忙しかったからな……。あれから、今まで。
もう現実の世界では、皆が知ってることであり……改めてこうして書く必要があるかは微妙なところではあるけども……一応、あれから起こったことをまとめておこうか。せっかくだし、最後まできちんと『日記』にしておこう。
結論から言えば、周到な準備の甲斐あって、全てうまくいって、丸く収まった。
まず、イゼッタVSゾフィーの方は、2つの新兵器を見事に使いこなしたイゼッタの大勝利。
一つは、僕が錬金術で作った人造魔石……その名も『賢者の石』。
オリジナルの魔石より出力では劣るものの、こちらには副作用がない。命も削られないし、激痛も起こらない。
そしてもう一つは、超がつくくらいに高性能の対戦車ライフルと……それと連動させて、出力不足を補うために用意した仕掛けだ。
これが上手いこと機能して、見事ゾフィーに勝つことに成功した。
その仕組みは……簡単に言うと『よし、月が見えた!』……これに尽きる。月だけに。
……まあ、早い話が、足りないなら外部からエネルギーを送ってやりゃいいだろってことだ。
某二連衛星砲にエネルギーを供給するマイクロウェーブみたいにして、あらかじめ抽出したエネルギーを超圧縮してイゼッタに送り届ける。このエネルギー加工にも『錬金術』を使った。
照射する施設は、さすがに月に作るわけにはいかないので……戦闘機に機材を搭載して僕が乗り込み、状況に応じて超高高度から行った。
その際、操縦桿を握ってくれたのは……ブリタニア軍のエースパイロットである、グローマン中佐である。イゼッタと、空母ドラッヘンフェルスの一件で知り合いっぽかったので、手伝ってもらった。
個人的に、声がシブくていいひとだな、と思った。
この人のおかげで、ゾフィーがこっちに攻撃を向けてきても、撃墜されることなくイゼッタに魔力供給を続けることができた。
イゼッタが外部からのエネルギー供給で自分に対して優位に立ちまわってると知ったゾフィーは、供給元をつぶすべくこっちを攻撃してきたものの……さすがのゾフィーも、エースパイロットの操る最新鋭の戦闘機に、イゼッタの猛攻をかわしながら攻撃を当てることはできなかったのだ。
加えて、この圧縮エネルギーを受け取るには、専用の設備が……具体的には、イゼッタの対戦車ライフルに組み込まれている受容システムが必要。これがないと……圧縮を解凍できない。
正しい手順での解凍ができないとどうなるかは……僕らを排除できないと見るや、自分がイゼッタと僕らとの間に割り込み、供給されるエネルギーを横取りして使ってしまおうとして……圧縮されたエネルギーが暴発してゾフィーが自爆したことから読み取れる。
あまりに一度に大量のエネルギーが流れ込んだために、ゾフィーは魔石の副作用の激痛なんかも加わって完全に隙だらけに。
そこに、改めて僕らからのエネルギーを受け取ったイゼッタが、対戦車ライフルという名のサテライトキャノンから放った、メガ粒子砲ばりのビームに、ゾフィーはなすすべなく飲み込まれていった。
次に、ヴェストリアで行われた秘密会談……という名の恫喝外交については、大公殿下が殴り込みをかけて、ゾフィーを倒したことと、イゼッタによって『エクセニウム』による兵器全て……もちろん、ランツブルックに向けて飛んでいるミサイルも含めて、ある方法でたった今をもって無力化したことを告げて、議場の流れを一気に変えることに成功した。
魔女のみならず、あてにしていた秘密兵器が全部だめになったことで、ゲルマニアは一気に窮地に立たされたわけだ。
その上さらに追い打ちがかかる。僕の方で調べて大公殿下に渡しておいた、この戦争に関わるゲルマニアの悪逆非道な、国際法どころか国内の法にてらしても違法である行為の数々をその場で告発。ゲルマニアはさらに立場を悪くした。
そしてそれらに団結して対処する、という目的で、参加していたヨーロッパの各国は結束を新たにし、ゲルマニアに対して改めて徹底抗戦する旨を確認したのである。
……その件を介して関わることのできない合衆国を、ごく自然に蚊帳の外にして。
なお、ゲルマニアがすでに生成し、兵器に加工あるいは保存していたエクセニウムについては……あれは物質化したとはいえ、元は魔力であるため、タンクの中に入ってるとかミサイルに搭載されてるとか、そういう状況関係なく、外部から干渉して蒸発させることが可能だ。
例えば、魔石でレイラインの魔力を吸い上げるように、エクセニウムを魔力に還元して吸い上げることで、結果的に蒸発させて奪うとかもできる。負担でかいからやらせないけど。
なので、ここでもマイクロウェーブ風魔力照射装置を応用し……波長を変えて圧縮した魔力をイゼッタが超広範囲に拡散させ、帝国全土のエクセニウムを連鎖的に蒸発させることに成功した。蒸発したエクセニウムは魔力に戻り、また再び空気中に散って、レイラインに戻るだろう。
そして最後に、魔女を危険視して排除を図るであろう合衆国への対処だけど……これについては、僕が保護する形で、手を出させないように守ることに成功している。
ただしもちろんそれは、ゲルマニアの軍人とか名家として保護したわけじゃなく……『二つに分かれたゲルマニアの、正義側の代表』として保護したのである。
武器をなくし、魔女を失い、国際社会共通の悪者一直線だったゲルマニアだが、その状況を利用し、僕とベルクマンは情報戦略でこの国を二つに割ることに成功した。
雑な言い方だが……『良いゲルマニア』と『悪いゲルマニア』に。
要は、今まで非道な行為を数々行ってきたゲルマニアは、悪者の皇帝や高級官僚たちによってかじ取りをされてきた結果であって、それを知って正義に立ち上がった者達が、祖国を正しい国に戻すべく立ち上がった。ならば国際社会はこれを支援し、悪の国として滅びそうになっているゲルマニアを生まれ変わらせて、そこに住む無辜の民を、国そのものを救おうじゃないか!
……ってな感じの建前を、連合国で示し合わせて作り出したわけである。
もちろん、こんなものは民衆向けのストーリーに過ぎず、各国首脳がこんな茶番に付き合ってまでゲルマニアの再生に手を貸してくれたのは、ゲールほどの大国が滅んで分割統治されるようなことになれば、その規模から色々と問題が出てくるとわかっていたから。
形だけでも国が残っていれば、簡単になんとかできる問題はかなり多く、面倒を事前に回避できるわけだ。
そしてもう1つ……僕が、各国首脳に提示した……『魔法』というものの、産業分野での有効活用の可能性について、ある程度国として機能を残しておいた方が、そこで継続的に研究を進めるのに好都合だったからだ。
資源、エネルギー、薬学、医療……様々な分野にこの力の応用が利くであろうことを知った各国首脳は、さらにこちらが戦争にかかる賠償の一環として、当事者となった国々にこの技術を公開すると宣言したことで、ならば保護しようってことになった。
こうした理由から、悪の敗戦国としてのゲルマニアは、皇帝や高級官僚たちをスケープゴートにする形で滅び、『新生ゲルマニア』が発足、そのかじ取り役の1人に、僕が就任することができた。
で、この国における研究の重要なパートナーとして、エイルシュタットを、そしてイゼッタを名指しで指定して保護することとし、その『新生ゲルマニア』を、ヨーロッパの連合国が、『我々の仲間である』と認めて保護し、さらにこちらが提供した技術で武装すれば……合衆国も手出しはできなくなる、というわけだ。
強引な上に物騒だって?
確かにそれは認めるけど、互いにバカやらないよう、できないように監視するような形で平和を保つのは、前世の地球でもあったし……かの有名な『天下三分の計』だってそんな感じだ。
ともあれ、こうしてすべての問題を解決しつつ、戦争を終わらせることに成功した僕らは……国際社会において、魔法技術研究の最先端国家という立場を確立し、その中枢人物として末永く幸せに暮らす人生を手に入れましたとさ…………おしまい。
☆☆☆
「さて、こんなとこかね」
ことり、とペンを置いて、その場でのびをする。
デスクの整理をしてたら、奥の方に紛れ込んでた日記を見つけて……久方ぶりに書いてみた。
せっかくなので最初の方から読み返してみると、まー色んなことがあったもんだとわかる。
自分の文章力のなさゆえに、その時その時の場面の緊迫感その他が伝わりにくい駄文だったけども……まあ、本として誰かに見せるために書いてるわけじゃなかったわけだし、仕方ないだろう。
しかしこうして思い返すと、ホントに色んなことがあったもんだ。この数年ばかりで。
といっても、戦争中の出来事だけあって、あまり愉快とは言えない事柄も多かったし……中には、自分自身の醜さや不甲斐なさが見てとれる、あんまし眺めていて気分の良くない記録もあった。
それがわかってたから、これを見つけたとき、読まずに捨てようかとすら思った。
幸いにして、今、僕の人生は……所属している国等全て含めて、順風満帆と言っていい充実したものとなっている。
わざわざ嫌なことを思い出してもな、と。どうしても一瞬思ってしまった。
しかし、ここに記してある事柄もまた、僕が歩んできた人生に他ならないのも事実だ。
それはもちろん、彼女達との出会いや……ここに至るまでのあれこれも含めて。
彼女達とは、出会いは最悪だったし、それ以降もしばらくは、友好的とは程遠い関係だったというか……ぶっちゃけ、今のような形になるとは、あの時は想像も出来ていなかった。
戦争していて敵同士……しかも、そのうち一人は身内の仇なんて間柄だったわけだし。
……まあ、それが逆に、遺恨を乗り越えて平和な世界を作るために尽力しているっていう、プロパガンダ向けの感動エピソードになってた部分もあるし……ホント、この世は何がどう転ぶかわからんね。
なんて、感傷的な気分に浸っていると、机の上の電話機がやかましく鳴った。
取ってみると、出たのは……今まさに、ここに至るまでのアレコレを思い返していた、あの子だった。
『あ、サンジェルマンさん! イゼッタです!』
「おう、どうしたの? 会議、午後からだったと思うけど……」
一時期は戦場で、傭兵か非正規兵みたいな扱いというか認識を受けていた彼女も……魔法・魔力がひとつの資源となり、それを扱う技術がひとつのきちんとした学問となった今では、れっきとした公人である。
僕が中心となり、あれから発足した『EU』の後見を受ける形で発足し発展した、魔法関連技術の研究機関の顧問として、彼女自身が社会的な地位を持ってるし……もちろん、エイルシュタット公国やフィーネ大公との付き合いも、元通り続いている。
というか、エイルシュタット公国そのものが、魔法関連の牽引国になってるし。
大公殿下も、それ関連で戦後は一時期大忙しだったらしい。
そして僕は、『錬金術師』として……その分野の第一人者として活動しているので、必然的にイゼッタ達とは関わる機会も多い……ってわけだ。
…………もっとも、
それによらない関係も……続いてるんだけど。戦争中から。
「じゃあ、その時間、会議室開けておくから。資料はこっちで用意するから、参加者への声かけだけ頼むよ。急な話だから、出席率には期待できないかもだけど」
『ありがとうございます! そ、それで、その……』
「うん?」
『……その後、お時間って、ありますか? その、出来れば……朝まで、とか』
「……いいよ、待ってる。足はどうする?」
『ビアンカさんに送ってもらいます。なので……ふ、2人一緒に……に、なっちゃうんですけど……』
「いいよ、もちろん。……明日もしかしたら、疲れて仕事にならないかもしれないけど。あ、僕じゃなくて、君らがね?」
『大丈夫です! 明日一日は、私もビアンカさんも休みとってありますから!』
「そりゃ周到なことで……なら、泊まっていけばいいよ。……こちらも遠慮なく、2人そろってメチャクチャにするから」
『……はい♪』
―――ガチャッ。
これにて閉幕です。
……書きたいようにだけ書きまくってたらこんな感じに……勢いだけで突っ走ったので、ストーリーとかあってないようなものと化した気が……
プロットもなしに衝動的に書き始めたのでそれも当然か……。
かなり好き放題書いたので、『こんなのイゼッタじゃない!』とか思われる方もいるでしょう(確信)その時はすいません。所詮は素人が書いた駄文だと思ってお忘れください。
そしてもし、面白いと思ってくださる方がいたら……ありがとうございます。
以上、失礼させていただきます。破戒僧でした。
P.S.
ひょっとしたら番外編やIFルート、あるいはもっと他の形でまだいくつか書くかもです。その時はまたどうぞよろしくお願いします。