※この作品はR-18です。

とあるゲール将校の日記   作:破戒僧

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はい、続きましてイゼッタのターン!

ちょっと今回、しんみりだったりシリアス?だったり、説教っぽかったり自己啓発みたいだったりする気が……やばい、純愛表現難しくて変になったかも。

人によっては合わないかもですが……どうぞです。


12-1 後日談 イゼッタ(前編)

E月T日

 

こないだ言った通り、僕は今、エイルシュタットの研究所に居を構えている。

基本、そこから離れることは……公務でもない限りはない。というか、許されない。

 

しかし、今日、というか今、僕は……旧ゲルマニア国内、現EU直管の国際特別中立領域にある……僕の実家というか、生まれた家に来ている。

 

毎年この日だけは……特別に用事ができない限りは、まあ当然護衛付ではあるけど……遠出してここに来ることが許されている。

 

今日……父の命日なもので。

 

ここには、今もなお『ゲールの軍閥の名門』という立ち位置だったころのサンジェルマン家の屋敷が残されていて、人も住んでいる。僕の母と……使用人たちが。

 

父が結構な階級の軍人だったことで、相応の額の恩給や年金が出るし、僕も今では立場に見合った高給取りなので、仕送りもしてる。なので、ここにいる人らが生活に困ることもない。

よっぽどの贅沢や浪費でもしなければ、普通に暮らしていける。

 

で、この屋敷の敷地内に……父のというか、サンジェルマン家の先祖代々の墓があるわけで。

そこに、僕はこうして墓参りに来ているわけで……連れと一緒に。

 

そして、まあ……その連れってのが……僕の隣で真剣に祈っている、イゼッタなんだけどね。

 

……うん、そう。ここに眠っている父を葬り去った……張本人である。

 

 

 

ついて来たい、と言い出したのは、イゼッタの方からだった。

 

どこから聞きつけたのかはわからないが――案外ビアンカあたりが口を滑らせたのかもしれない――僕が、墓参りでこの実家に帰省することを知ったらしく、その直前になって『連れてって!』と、僕の執務室に飛び込んできて直談判してきた。

ご丁寧に、自分に割り当てられた分の仕事、全部終わらせた上で。

 

こう言ったらなんだけど……最初、正気を疑った。

いや、だって……彼女だって、僕の父がどうして死んだのかくらいは知ってるはずだもの。

それで一時期落ち込んでたもの……自分が出た戦場で死んだって。

 

しかも、その死因ってのがまた……大槍にどてっ腹を貫かれて、ってもんだからね。

間違いなく、イゼッタがファ○ネルばりに暴れまわらせてたあの馬上槍が直撃した結果だからね……敵司令部の壊滅のために、一気に何十本も突撃させたうちの一つだったって。

 

……父の遺体を前にして、漫画みたいにきれいに腹部の肉や骨が消失して、ものの見事に空洞になっていたのを見た時の衝撃は……今もよく覚えてる。

まるで、体の中から爆弾で吹っ飛ばされでもしたかのような……しかし、焦げ跡なんかはなく、妙にきれいな円形になって貫かれていた。

 

いったいこれは、誰にどんな殺され方したんだよ、って、愕然としたもんだ。

 

せがまれて、そのことを一度イゼッタに話したこともある。途中から泣きそうになってた。

 

そんなイゼッタが……まぎれもなく、歓迎されない立場であろうことを理解した上で……ここについて来たいと言ってきた。どうしても、墓参りをして……父に、そして母に挨拶したいと。

 

『だって……これから結婚するのに、こっちの都合で挨拶もなしなんて、失礼じゃないですか……それに、これは、確かに私がやったことの結果なんです。だから……逃げたくない』

 

『恨まれてるだろうなって、わかってます。それでも……私、行きたいです』

 

で、墓参りってことで、喪服――持ってないそうなので新調させた――着用の上、案内して連れてきて……今、こうして手を合わせているところだ。

 

 

 

……ごめん、父さん。長いこと留守にして……今、色々忙しくてさ。

ろくにこうして実家に帰省するようなこともできない身の上になっちゃったもんでさ。……最後にこうして墓参りに来たの……まだ、戦争が終わってないころだったよね。

 

その後、僕、祖国裏切ってこうして戦争終わらせたわけだけど……その時、もしかしたら草葉の陰で、父さん怒ってるかな、とか言ったっけね。

 

……今回の報告は、もっとあんたを怒らせるかも。

何せ……あんたの仇と、今度結婚することになったからね、僕。

 

ほら、今僕の隣にいる……あ、ごめん、

本人、直接……あんたに話したいって。

 

 

「……えっと……は、はじめまして。その……こういう時、何から言い始めたらいいのかわかんなくて……その、すいません。口下手で。

……そう言うの関係なく、聞いてて不快かもしれないですけど……それでも、どうしてもお話ししたくて来ました。

 

……イゼッタといいます。

エイルシュタットで、その……魔女、というか……姫様……あー、オルトフィーネ大公殿下の下で、戦ってました…………あなたを、殺してしまった……者です。

 

その、今度……息子さんと、結婚することになりました。

多分、もう……お腹に、赤ちゃんもいて……えっと、いきなりですよね。すいません。

 

……自分でも、無茶苦茶だって思います。

 

あなたの祖国と、戦争して……たくさん、戦場で戦って、いっぱい壊して……命も奪って……それなのに、こんな風にのうのうと生きてるばかりか……敵国の軍人だった彼と、結婚するだなんて……しかも、それを、自分が殺したあなたの墓前で、報告とか……。

 

……それでも……ごめんなさい。私、彼のことが好きなんです。

 

出会いは、なんていうか……お世辞にもロマンチックとか、まともな関係が成り立つような感じじゃなかったですけど……それから色々ある中で、私、彼にいっぱい助けてもらいました。

 

彼にとって、私は敵で……あなたと、自分の左目の仇で……。私にとっては、姫様の祖国を占領した上、自分を閉じ込めて、国の占領もしている敵で……。

それでも、私たち……一緒になります。なろうと、思ってます。

 

……命を奪ってしまったこと、許してなんて言えません。

もし……そうですね、私が死んで……天国に行くか、地獄に行くかわかんないけど……もし、その時会えたら、何と言っていただいてもいいです。

 

けど……

 

……今だけは、私……これから幸せになります。ならせて、いただきます。

あなたの息子さんと結婚して、あなたの孫も産んで……家族や、友達に囲まれて……。

 

……最後の最後まで、幸せな人生を全うして……それだけでなく、たくさんの人を幸せにして……これから先、ずっと生きていくつもりです。

 

……私は、イゼッタ。

姫様の……エイルシュタットの魔女です。

 

でも、エイルシュタットだけじゃなく……世界全部を、幸せにします。

姫様と……彼と、協力して……『皆が選べる明日』を、作ります。

 

それが……この戦争で散っていった人たちのために、そして、これからこの世界を生きていく人たちのために……私がこの手で、この力で、できることだから」

 

 

☆☆☆

 

 

意外にも、屋敷の使用人たちや……僕の母は、イゼッタを前にしても、邪険に扱ったり、恨み言をぶつけるようなことはなかった。視線でにらむことさえしなかった。

 

武家の名門だってことが逆に幸いしたらしい。『勝敗は兵家の常』っていう言葉通り……もたらされた戦の結果を受け入れて割り切ることについては、皆、僕なんかより心得があるようだ。

 

もちろん、全く何も思うところがないわけじゃないようだけど……それでも、互いに全力を出した戦いの結果としてそうなったのなら、そして、それを礎にすでに国が、世界が動き始めているのなら、自分たちからは何も言う気はないとさ。

 

そう聞いて、ぽかんとするイゼッタと僕に対し……締めくくるように、母からこんな言葉が。

 

『あえて、私があなたたちに望むことを述べるなら……あなたたちが、此度の戦で犠牲にした者達の命が、決して無駄ではなかったと……新しい時代を作る、確かな役に立ったのだと言えるような、素晴らしい時代を作りなさい。それが……勝者の務めです』

 

そして、イゼッタに向き直り、

 

『夫に……挨拶してきたそうですね。私は、確かに、あなたに夫を……生涯の伴侶を奪われました。それについて、思うところがないわけではありません……しかし、残された息子が、あなたという強い女性を受け入れ、愛し……手を取り合って未来を共に紡ごうとしているのなら……そして、あなた自身が罪から逃げず、受け止め……それでも未来を強く生きようというのなら、私からは何も言いません。我が義娘として恥ずかしくないよう……この判断が間違っていなかったと、夫の死は決して無駄ではなかったと、後で私が安心できるよう……立派に生きてみせなさい』

 

我が母の懐の深さ、器の大きさに……改めて驚かされ、イゼッタに至っては……説教とセットとはいえ、罪を赦されたばかりか、義娘として受け入れまでしてもらったことに、感激して涙をぽろぽろと流していた。ついさっきのことである。

 

そして今、僕とイゼッタは……僕の寝室、ベッドの上にいる。

少し早くはあるけども……夫婦としての営みのため、どちらも生まれたままの姿で。

 

ちなみにこのベッド、キングサイズもかくやっていう大きさの、作りもしっかりした超高級品なわけだけど……僕が物心ついた時から、ずっと使っているものである。

シーツとか、そういう交換する必要があるもの以外……土台とかはずっと同じだ。

 

母からは、子供のころから……ずっと使えと、それこそ、妻を迎えて初夜に臨む時にもここで、これを使えと、その後も夫婦2人でこれで一緒に寝ろ、とまで言われてきた。

 

理由は……今まで自分1人で使っていて、その広さをよく覚えているところに、誰かを迎えて一緒に使うことで……自分以外の誰かが、それまで自分一人だけの領域だったところに、これから加わるんだと、しっかり体感してわかるように、だとさ。

 

……なるほど、効果的と言わざるを得ない。

 

ずっと使ってきたものだから、この大きさは頭でも体でも覚えている。

その広さは、今まで自分1人だけのものだったところ……今はそこに、自分以外に、これから一緒に生きていく大切な人がいるんだと、考えるまでもなく感じる。

 

目の前で、生娘みたいに顔を赤くし、気恥ずかしそうにして……しかし覚悟を決めて、裸体を隠そうともせずさらしているイゼッタ。

 

これから僕のものになるその体を、心を、イゼッタという存在すべてを目の前に差し出されている感覚。もう何十回、いや何百回と抱いているはずなのに……不思議なもので、改めてこうして彼女の裸体を前にすると、初めてこの身に抱くかのようにドキドキする。

 

……ある種の、魔性の女、傾国の美女、って奴なのか……それとも、ただ単に僕が、篭絡されるレベルでベタ惚れしてるだけか……

 

……まあ、いいや。やることは変わらない。

 

いつの間にか、自主的に避妊薬飲むのをやめていて……ひょっとしたらすでに、その胎に僕の種がついているかもしれない彼女……数か月後には妻になっている彼女を、改めて僕のものにする。

 

そのために、僕は、乱れそうになる呼吸を整えつつ……伸ばせば手を触れられるところにまで行って、彼女の肩に手をやり、ぐいっと抱き寄せて……抱きしめて……

 

最初にまず、唇から奪って……そのまま、ゆっくりと押し倒した。

肌を合わせて、じゃれつくように……しかし、ゆっくりと手を、お互いの恥ずかしい部分に伸ばして、さすったり握ったりしながら、徐々に、徐々に体が火照っていく感覚を楽しんでいる。

 

じんわりと、体の中からあったかくなっていく。同時に、相手もそうなっているのを感じる。

しっとりと、汗で湿っていく肌が……互いに吸い付くように感じて、これもまた心地いい。

 

時折、どちらが、あるいはどちらからともなく、首元や頬、唇に吸い付いたりして……

手と手を、足と足を、指と指と絡めたりして……密着した体と体がこすれて、むにゅ、とか、たぷ、とかいう感覚が伝わってきて……それがすでに気持ちいい。

 

性的な快感とも、似てるけど違う。もっとこう……本能的?な部分で……愛しい人とふれあっているっていうこと自体が、喜びになる……そんな感じ。

 

……僕、ロマンチストでもなんでもないはずなんだけど……これ以外に表現、見つからないんだよね。だから仕方ない。

 

「何だか、もう何回もこうしてるはずなのに、慣れないです……やっぱり、恥ずかしい」

 

僕の下で、顔を赤らめながら、そうつぶやくイゼッタ。

その両腕は、僕の背中……肩甲骨のあたりに伸ばされ、回されていて……さするように動いて、触れたところに、彼女の吸い付くような柔肌の感触がある。

 

ぎゅっと力を入れて抱きしめられれば……僕の胸板が、イゼッタの乳房に押し付けられて……柔らかさの中に、きれいなピンク色の先端の硬い感触が。さらにその状態で、足を絡めてぎゅっと……体全体でくっついてくる。なるべく触れる面積を多くするかのように。

 

直接感じる、彼女の体温が、肌のしっとり柔らかい感触が……ビアンカとはまた違った角度で、僕の心から余裕というものをガリガリと削り取っていく。

いやむしろ……溶かしていく、といった感じかもしれない。

 

彼女に触れるたび、触れられるたびに……なんていうか、初めて肌を重ねた時から変わらずそうなんだけど……どんどん、引き込まれるというか、彼女という存在に溺れていくというか……そういう、なんとも言えない感触がある。

 

そしてそれをさらに助長するのが……性格に裏表のない彼女の口から紡がれる、耳に優しくとろけるような……素直な言葉だったりする。

 

ぎゅっと、体全体で僕にくっついて抱き着きながら、僕の肩に顎を乗せる感じにして、

 

「……本当に、何度やっても……恥ずかしい。けど……とっても素敵で、幸せな気分……」

 

……いつも思うんだけど……イゼッタって、こういうの好きだよね。

健全な意味でのスキンシップというか、ふれあいというか……いや、ベッドの上で全裸同士で抱き合ってる時点で『健全』も何もないかもだけど……

 

何ていうか、性的なところが絡まない、純粋に『愛』からなる交流というか……そういうのを、イゼッタはすごく好いてるように見える。

 

「今まで、私……誰かに愛されることが、こんなに心地いいなんて……知らなかった。ずっと、ひと所にとどまらず、旅して生きてきて……お母さんも早くに亡くなって、おばあちゃんと2人で……もちろん、おばあちゃんも私のことを大事にしてくれたけど……」

 

語りだしたイゼッタは……そこで、一度切って、

 

「こんな風な気持ち、今まで……あなたに出会うまで、知らなかった。あの時、あなたに出会わなければ……多分、一生、知らないままだったと思います」

 

一旦、僕の背中に回していた腕をほどいて、顔を真正面から見据えるように。

絵にかいたような、幸せそうな微笑みを浮かべ……行為の最中であるがゆえに、しっとりと汗の滲んだ顔で……イゼッタは、僕と目を合わせて、また無防備ににっこり笑う。

 

「……私、正直……姫様の……フィーネのために、エイルシュタットのために戦うことに、何の迷いもなかったんです。あの日……フィーネに助けられたあの時から、彼女のために何でもしよう、それこそ……私の命で、フィーネの望みがかなうなら、命だってさし出せるって。でも……」

 

そこで、ちょっとだけ笑みが陰る。

 

「……今、同じことを聞かれたら……正直、そうは答えられない。もちろん、今でもフィーネは大事です。彼女のために、力を尽くしたい、って、今でも思ってます……でも…………なんていうんだろう、私も……ちょっと、欲張りになっちゃったんです」

 

欲張り、って?

 

「私が戦って、敵を倒して……それで、姫様やエイルシュタットの人たちが幸せになってくれるのを見てきました。だから、私の力で人を幸せにするとしたら……こういうことなんだ、って思ってた……そのほかに、違った形があるなんて、思わなかったんです」

 

「あなたに出会って……あなたとこうして、愛し合う関係になって……私が私でいることで、誰かが幸せになるなんてことがあるんだって……初めて知ったんです。バカですよね、私……他でもない私が、姫様が笑っていることで幸せになってたのに……それでも、まさか私のために幸せになってくれる人がいるなんてこと、思いもしなかった……あなたに、そう言ってもらえるまでは」

 

「それを知って、私……すごく、うれしくて……私自身も、それまでより何倍も幸せな感じになって……それで、思ったんです。こんな素敵なこと……何で私は、今まで知らなかったんだろう、って。なんて、もったいない人生を歩んできたんだろう、って」

 

「もっと、知りたい。こんな風に、誰かと一緒に幸せになるってことを……いや、きっと私が知らないだけで、もっと他にも幸せの形があるんだって思って……それを、知りたいと思ったんです。そして、幸せになりたい。今よりも、もっともっと……色んな幸せが欲しい」

 

「どんな形のそれがあるのか……全然、見当もつかないですけど……。できるなら、私、皆と一緒に幸せになりたいんです。私が皆を幸せにしてあげるんじゃ……足りない。皆に私が幸せにしてもらうのも……違う。……皆で、一緒にです」

 

「あなたともそうだし……姫様や、ビアンカさん、ロッテちゃん、エルヴィラさん、ジークさん、ベルクマンさん、それに……ゾフィーさん。私、皆と一緒に幸せになりたい」

 

「戦争で、敵とはいえ、人をいっぱい殺してしまった私は……きっと、幸せに何かなれないんだ、って……あの牢屋の中でひどい目にあってた時は、そう思ってました。それでいいんだと、仕方がないんだ、とも思ってました」

 

「でも……あなたに愛してもらって……こんな、こんな幸せなことを知っちゃったら……私、もう戻れない。あの頃に戻りたくない……それどころか、もっと欲しいって、もっと、もっと……そう、思っちゃうんです。寝ても、覚めても……」

 

「求めて、求められて……愛して、愛されて……与えて、与えられて……捧げて、ささげられて。人とつながって、笑いあって……そんな、1日1日の、一時の、ほんの一瞬のふれあいから生まれる幸せを……私、もう失いたくない……もっと、もっと……ずっと、ずっと……! 今日よりも明日、明日よりも明後日……幸せに、なりたい! だから……」

 

 

 

「……私と一緒に……幸せになってください。これからも、ずっと……そばにいて……」

 

 

 

……ああ、だめだ。

本当に、この娘ってば……僕にはもったいないくらいにいい娘だ。

 

けど、だからこそ……あらためて思う。もう、絶対この子を放すもんか、と。

 

もともと、約束してたことだ。フィーネの作る、皆が明日を選べる世界。

そこで、明日を選べる皆が幸せになるなら……その立役者である、イゼッタが幸せにならなくてどうする。イゼッタを、幸せにしてあげられなくてどうする。

 

「あなたの、左目を奪って……お義父様を奪って……お義母様を悲しませて……最初から最後まで、迷惑をかけっぱなしで、お世話になりっぱなしな私を……こんな、どうしようもない私を……私と……どうか、幸せになってください。フィーネが、いえ、フィーネと一緒に作る、皆が明日を選べる、素晴らしい世界を……どうか、こんな私と一緒に……生きて、ください」

 

とろんとした目で……しかし、どこか不安を声音に滲ませたイゼッタの、そんな言葉を、僕は黙って聞いていて…………気が付けば、抱きしめていた。

 

……言われなくたって、放すもんか。

意地でも、幸せになってやる。幸せにしてやる……君も、君の周りの皆も。

 

……もちろん……君のお腹の中にいるかもしれない、あるいはこれから宿る……小さな命も。

 

……けれども、今は……ひとまず、僕らがいるのは、ベッドの上だ。

この期に及んで、どうしても……優しくて人がいいからこそ、消えることなくイゼッタの中にある、罪の意識とか、そういう後ろ暗い感情……

 

今日、今くらいは……忘れてもいいだろうさ。

忘れさせてあげる。そして……代わりに、君の好きな『幸せ』で満たしてあげる。

 

まずは今日、ここで……男と女の、夫と妻の幸せから……ね。

 

抱きしめていた体を放し、再びイゼッタを、ふかふかのベッドに押し倒して、その上から覆いかぶさる形になって……うっとりした表情になったイゼッタと、もう1度唇を重ねた。

 

 

 

 




つづく。

エロシーンメインは次回で。
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