※月¥日
捕虜というのは、一応は国際条約に基づいて手厚く扱われる……ということになってるんだけども、いかんせん戦争というのは、そういうモラルを突っぱねて存在している。
そしてそれは、彼女……魔女イゼッタも例外ではない。
敵国の重要(どころではない)人物を捕虜にしたわけだから、そりゃ尋問やら拷問やら始まろうってもんである。
色々な、有益な情報を持っている可能性も高い立場だ。軍関係・政治関係はもちろん……彼女自身がその力の強大さを証明している『魔女』関連についても。
まあ、魔女については、帝国は帝国で色々研究進めてるんだけども。
女だからと、子供だからと容赦はされまい。痛めつけるか、辱めるか……あるいは、僕なんかじゃ及びもつかないであろう方法で、口を割るまで責め苦が続くのだ。
哀れに思わないわけじゃないけど……これも戦争だ。
彼女だって、帝国の兵士やら士官やら、結構な数殺してるし、戦車や戦闘機を遠慮なくぶっ壊し、空母だって沈めた。……あ、あれは元々威力偵察のための囮なんだっけか。
そんな彼女は、立派な戦争の当事者だ。
情けをかけるなんてことはできないだろう……散っていった兵士たちに申し訳が立たない。
……ほかならぬ僕の父も、この子に殺されたんだ。
眼帯で覆っている僕の左目も、この子に永遠に光を奪われたんだ。
それは確かなんだけど……いざこうして、無防備に眠っている彼女を前にすると、憎しみとか恨みとか、そういう感情が出てこない。
……恨んでないわけじゃない。怒ってないわけじゃない。
……ただ、実感がわかないんだろうな。
目の前でこんな風に眠っているこのかわいい女の子が、帝国の戦線に大ダメージを与え続けた『魔女』であり……父と、僕の左目の仇だって、信じられてないんだ。
もうちょっと経って、彼女が敵だって僕が心の底から認識できたら、その時は……憎むようになるのかもしれない。
けど今は、普通にかわいくて、穏やかに眠っていて……まるで、普通の一般人みたいだ。
いや、そうなのかもしれない。彼女は案外……元々、『魔法が使えるだけの一般人』で、戦争とか政治とか、そういう物騒な領域には無縁の、1人の女の子だったのかも。
それが……何で戦争なんかに出てきたのかは……わかんないけど。
プロパガンダ映像を見る限り、何か姫様と特別に仲がいい、彼女と共にある魔女、ってのが宣伝文句みたいだけど……案外、ホントにあの姫様の伝手だったり?
……それらについても、聞き出せばわかることではあるけども……今日はさすがに無理だ。
というか、しばらく無理な気がする。
理由は簡単。負傷してボロボロだからだ。
捕獲作戦の時……ゾフィーがズタボロにしたからな……。
でっかい剣みたいな金属の塊ぶつけたり、至近距離で機雷爆発させたり、魔石でレイラインの魔力消失させて墜落させたり、鎖で縛って吊るして締め上げて、さらにその上打ち据えたり踏んづけたり蹴っ飛ばしたりひっぱたいたり……
その結果が、ベッドの上に寝ているこの姿だ。
身にまとっているのは、病人着1枚。それ以外は、下着すら身に着けていない。
そしてその体を……おびただしい量の包帯が覆っていて、点滴の管も何本もつながれていて、所々にギプスや、縫合の跡も見受けられる。
弱弱しい呼吸。顔色は蒼白。換えても換えても、包帯には血がにじむ。
かろうじて胸が上下に動いていることだけが、彼女の確かな生存を教えてくれる。
普通なら、捕虜として投獄しておく身分だけれども……この見た目からわかる通り、それ以上に医療的処置の必要性が認められたため、医務室のベッドの上に寝かせている。
ゾフィーの死体蹴りにも等しい暴行のおかげで、イゼッタは、全身打撲や骨折で、身動き一つできないレベルの負傷。しかも、傷や後遺症が残りかねないほどの傷も少なくない。
特に足が酷い。筋肉はもちろん、骨、間接、神経に至るまでボロボロだ。
どうやら、ライフルにまたがって飛んでいるところから落下させられた時、変な姿勢で落ちたのが原因の1つらしい。そこからさらに色々された結果……治療には極めて長い期間を要する上、完全には歩行能力は元には戻らない傷になってしまった。
最早彼女は、健常な1人の人間としての生活を取り戻すことはできないだろう……
治療しても、元の肉体に戻ることは到底無理だろう…………
………………普通なら。
それじゃ困る。彼女にはまだ、色々とやってもらうことがあるし、聞きたいこともある。
だから……治してあげよう。帝国の……いや、僕の作り出した、新技術で。
……それが、彼女にとってプラスになる、とは言えないんだけど。
※月…日
『魔女』の力を研究した結果として発展し、様々な不可能が可能になった。
僕もそれに一枚かんでいる……というか、思いっきり中核の一員として研究している。
ベルクマン少佐……あ、今は中佐だっけ。彼が確か、戦闘分野への技術利用を進めていたのに対して、僕のは医療とか資源とか、そのあたりへの利用に特化した分野の研究だった。
無理やり区分して名前を付けるとすれば……『錬金術』だろうか。
そうなると僕は、それを操る『錬金術師』……胡散臭いことこの上ないネーミングだけども、学術分野の1つとして、インチキでもなんでもない革新的な効果をはじき出すことには成功している。
その証明として……『錬金術』を応用して治療を行ったイゼッタの体は、見る見るうちに傷をいやし、力を取り戻してきている。
出血は止まり、傷はふさがり、骨はつながりひびが消え……表面上は、主だった傷のほとんどが癒えたきれいな肌を取り戻すまでになっている。
まだ中の方はボロボロだけど……それも数日中には治ってるだろう。
包帯もだいぶとれて、血のにじまない、ちゃんとした肌色の部分がほとんどを占めるようになった。大怪我人だったのが、怪我人、くらいにまではランクダウンしたかも。
この分なら、今日明日中に目も覚めるだろう。
寝息の感じも、昨日より安らかな感じで眠ることができているようで何よりだ。
……このせっかく治った体が……また数日後には傷だらけになるのかと思うと、ちょっとやるせないというか……複雑な気分になる。
目の前のこの少女が、僕ら帝国軍の宿敵だとわかっていてもだ。
……ゾフィーがうるさいんだよ。尋問するから、さっさと引き渡せって。
※月&日
今日、イゼッタが目を覚ました。
正確には、昨日からうすぼんやりと意識はあったらしい。しかし、頭に霧がかかったような感じになって……起き上がることはできなかったそうだ。
でもその状態で一眠りして、今日になって、ようやくはっきり目覚められたと。
当然ながら、現状がよくわかっていないみたいだったので……簡単にだが説明しておいた。
ゼルン回廊における戦闘で、彼女……イゼッタは撃墜、我々帝国軍の捕虜となっていること。
イゼッタは生死が危ぶまれるほどの大怪我だったので、一応こちらで治療したこと。
それは大体終わっていて、放っておいても回復するくらいには治し終えていること。
君の敗北からすでに数日経っており、すでに陥落したランツブルックを含め、今やエイルシュタット公国のほとんどが占領下にあること。
あとついでに、僕の自己紹介も遅ればせながら。ソロモン・フォン・サンジェルマン少佐。エイルシュタットの占領統治の、暫定的な責任者である、よろしく、と。
イゼッタはベッドの上で、冷や汗を流して顔を青くしながら話を聞いていた。話の1つ1つがあまりにも衝撃的で、かみ砕いて飲み込むのに苦労していたようだ。
それでも、どうにか自分の中で認識して、理解したところで……逆にこちらに尋ねてきた。
姫様――フィーネ大公はどうなったのか、と。
そして、自分はこれからどうなるのか、と。
どちらの問いにも、あまりいい答えは期待できないであろうことはわかっていたんだろう。動揺や恐怖を、必死で抑え込んで……でも、抑えきれなくて、わずかに体を震わせながらの質問だった。
そしてそれに僕が答えかねていることで、さらに不安感が増したらしいけど……僕が口を開く前に、最悪のインターセプトが入った。
無断で部屋に入ってきたゾフィーが、彼女を見て蒼白になるイゼッタを見てご満悦の表情を浮かべながら、あっさりとばらしてくれやがったのである。
姫様については、まだ見つかってないけど、時間の問題だ、と。
そして彼女……イゼッタについては、これから厳しい尋問にかけられることになる――というか、自分がそれを担当するから、覚悟して待っていろと。
撃墜して鎖でつるし上げた時よりも痛くて、苦しくて、惨い目にあわせてやる、と。
言いたいこと全部言ってゾフィーは去り、後には……この世の終わりのような顔をしたイゼッタと、僕だけが残された。
イゼッタは僕に、今のゾフィーの言葉を、一部でも撤回してほしそうな、すがるような目を向けて来たけど……僕には、黙って首を横に振るくらいのことしかできなかった。
彼女には……明日から、つらい日々が待っている。
※月Ω日
いよいよもって、彼女……イゼッタへの『尋問』が始まった。
僕の『錬金術』によって、ひとまず日常生活を送れる程度にまで体が回復したイゼッタは、病室から捕虜収容用の牢屋へ移され、そこで早速……ゾフィーによる責め苦が始まった。
というか、始まっていた。
朝起きたら、僕の了解なく勝手にゾフィーがそれらを進めていて……驚いて僕がその地下牢へ行ったら、すでに彼女が『尋問』を始めていたところだった。
病人着から、粗末な囚人服に着替えさせられたイゼッタは……彼女が捕らえられたあの日と同じように、両手を上に、手首を合わせるような形で鎖で締め上げられて……天井からつるされるようにして立たされていた。
そして、粗末なれども一応新品のはずの服は、すでにボロボロ、ズタズタになっていて……破れたその隙間から、血の滲んだミミズ腫れの痛々しい赤色が見える。
一応、顔にそういった跡はないみたいだけど……それ以外、腕、足、胴体その他には、まんべんなくそんな跡が。しかも、顔は顔で……平手で張られたんだろうか、微妙に赤くなってる。
そのイゼッタの体に、ゾフィーは手にした鞭を振るう。
パァン! と乾いた音とともに、革製のそれがイゼッタの色白の肌を無慈悲に打ち付ける。
その威力に、痛みに大きく震え、口からは悲鳴に近い苦悶の声。
耐えがたいほどの痛みなのだろう……目からは涙が零れ落ち、一拍遅れて、汗がどっと噴き出していた。それでも、滑って抜けることのないほどにきつく手首は縛られているようだった。
牢に入ってきた僕に気づいたイゼッタは、反射的にだろう、助けを求めるような視線を僕によこしてきて……しかしその直後、再び振るわれるゾフィーの鞭。
先程、太ももをとらえたそれは、今度はわき腹にあたり……イゼッタの息が詰まる。
二度、三度とそれを繰り返したところで……イゼッタの股間のあたりから、しょわわわ……と、水音が聞こえた。
涙を流し、失禁までしてがくがくと震えるイゼッタを見て、ゾフィーは楽しそうにしていた。
その笑みを見て、がくがくと震え、その身を縛る鎖をがちゃがちゃと鳴らすイゼッタ。
このまま発狂か精神崩壊するんじゃないかっていうレベルだったので、僕の方からゾフィーにそれとなく、やりすぎないように注意したものの――っていうか、『尋問』って言いつつ痛めつけるばっかりで何も質問とかしてないぞこいつ――しかしゾフィーは聞く耳持ってない感じ。
何、また僕が治せばいいだろうって? こないだの墜落の傷を治したみたいに? 時間もかけず、後遺症もなく治せるだろうって?
そりゃできるけど、それを必要とするレベルに痛めつける前提で話すな。
あくまでこの場での『尋問』の目的は、必要な情報を聞き出すための……え、皇帝陛下も黙認してくださってる? こいつ、臣従してるわけでもないのにこういう時だけ……
いや、まあ僕だって別にあのおっさんに忠誠誓ってるわけでもないけどさ。
言ってみれば、代々仕えてきた我が生家への義理立てと、将来楽できるだけの実績を積むために、エリートコースに乗る目的で従軍してるだけ、みたいなもんだし。
結局、しばらくやめる気なさそうだったので……せめてというか、僕も牢に残って、ゾフィーがやりすぎないように監視させてもらって……このままじゃ『尋問』じゃないので、質問はこっちで口頭でさせてもらった。
答えは返ってこなかったけど。意志の強い子だな。
……口を割らなければ、それを格好の理由にしたゾフィーが過熱するのはわかってたろうに。
結局、適当なところで、治療中なのを理由にドクターストップをかけ、その日の尋問は終わりにさせた。途中で止められてやや不機嫌そうだったけど、ある程度発散してすっきりしたような表情のゾフィーが出てったのを見送ってから……彼女の身柄をベッドに移し、治療に移る。
士官学校の特設クラスで講習受けて合格して、軍医師免許持ってるんでね、僕。
服を脱がせて裸にする。……若い女の子の裸体も、こうまでびっしり痛々しいミミズば腫れだらけになってちゃ、欲情ってもんも浮かんでこないな。
あらかじめ持ってきておいた軟膏薬を、全身の傷に塗り込むようにしていくと……見る見るうちに、傷が治っていく。
これには彼女も驚いていたけど……すぐに、拷問で体力を失ってた上、精神的にも限界だったんだろう。軟膏薬のおかげで、じんわりと熱を帯びて温まってきたであろう体が、その熱をちょうど心地よく感じたのか……とろんとした目になって、そのまま寝てしまった。
僕は気にせず、彼女の全身にきっちり薬を塗りこみ、さらに治療のための栄養分の補給のための注射を打ってやり、持ってきていた予備の囚人服を着せて、牢屋を後にした。
牢番の奴に、今日はもう誰も中に入れるな、と厳命して。
……これが明日からもずっと続くのかな……敵なのはわかるけど、気が滅入りそうだ。
※月$日
昨日とほぼ同じ。
朝起きる。
やはり何の断りもなく拷問が始まっている。
牢屋に急行。
今日もまた、ゾフィーはイゼッタを、完全にサンドバッグ代わりにしている。
もうすでに、昨日と同じようにイゼッタの体は傷だらけになってて……太ももの内側と床の水跡を見るに、また失禁もあったようだ。
そして、それと同じくらいはっきり、涙の後も……だから、痛々しいって。
それでも、同室にいる書記官――ゾフィーが来たら、どうせ無理だから止めなくてもいいから、記録はとっておけ、ってことで昨日のうちに配置しておいた――の、記録ノートがほぼ白紙であるところを見ると、どうやら今日もまだ何もしゃべっていないらしい。
というかそもそもゾフィーが、尋問だ拷問だと言いつつ、何も喋らす気がなかったりする。
だって、尋問に関係あるなしに関わらず、何か言うたびに『誰が喋っていいといったかしら!?』つって鞭をパァンと……じゃ、どうすりゃいいんだよって話になるよね。
しかし……話によれば、彼女ってまだ15歳なんだよね? それなのに、こんな目にあっても口を割らない忠誠心……かもしくは、友情か……。
どっちにせよ……見上げたもんだ。
もし僕が同じ目にあったとしたら……あそこまで黙ってる自信はないな。
僕はMではないので、普通に痛いのは嫌だし。さっさとしゃべっちゃいそうだ。
……いや、彼女も別にMじゃないだろうけど。痛そうにはしてるから。
今日は昨日のに加えて、ゾフィーが鎖で締め付ける拷問までやったもんだから……跡が残るどころか、締め付けや鎖が噛んで裂傷ができたり、骨がきしんだりして……
鞭の打撃によって出る、絹を裂くような悲鳴と違って、喉の奥から絞り出されるようなかすれた悲鳴。こっちはこっちで痛々しいのなんのって……
僕にリョナ趣味はあんまりない――皆無とは言わないが――ので、できれば目を反らしたい。
けどそうすると、なんかゾフィーが調子に乗りそうなので、耐える。鉄面皮死守。
……普通、父の仇+自分の左目の仇が目の前で痛い目にあってるんだから、喜んでもよさそうな場面なのかもしれないけど……そんな気にならないよ、やっぱり。
可愛い女の子……しかも性格が悪いわけでもなく、普通にいい娘が、いじめられてんだから。
それに……今だからいうけど、父は父で、結構裏で色々やってたっぽいしな……。
代々帝国に使える古参の家だし、軍部に影響力も強いから重用されてたといっても、その過程で敵を作らなかったわけじゃないようだし。その地位に調子に乗って、暗愚とは言わないまでも、バカやってた部分はかなりあるみたいだった。
それに、僕が従軍中に色々と仕上げた新兵器・新戦術理論なんかも、実家の手柄にして、本来なら僕に入るはずの儲けをピンハネ……というかほぼ横取りしてたりもしたし。
ナチュラルに、子の手柄はすなわち家の手柄、とか言ってたな。まあ、別にいいけど。
恵まれた環境で、何不自由なく育ててもらったことに、恩は感じている。だから、その分の義理立てとして僕は家に、ひいては帝国に仕えているのであって、別に『愛国心』とかはない。
現代日本で育った記憶のある僕にとって、どっちかっていうと祖国はあの日本だし、そもそも今日び『愛国心』て……ぶっちゃけ僕の中で、旧時代のカビの生えた考え方だと思ってたり。
何を信条として、何のために力を尽くすかなんて、人それぞれだろう。
それを、この国に生まれたからこの国のために生き、この国のために死ぬことこそ誉れ……なんて考え方は、少なくとも僕には、到底理解できるものではない。
別に、そう考える人を否定する気はないが、だからといってそれを他人に押し付けたり、そうしない人を糾弾するようなやり方は嫌いだ。愛国心がないってことは、愛国心を持たれないような国の状態があるっていう見方もできるだろうに、そこに目を向けないで何をバカな。
……そこ行くと、エイルシュタット公国は、よく考えると……すごいな、と思う。
統治者は国民みんなから好かれ、粘り強くタフな心根や、相互に助け合う絆の強さが国民性として根付いている。……一朝一夕でこうはいかない、長きにわたって続けられてきた、確かな善政が打ち立てた、まぎれもない大公家の功績だろう。
しかも、軍備も小さく武器も旧式のものが多い小国でありながら、正確無比な戦争機械たるゲルマニア帝国相手に、一時とはいえ進攻を耐えて見せていた。
それだけ士気が高かったってことだ。兵士たちの誰もが愛国心を持ち、後ろにいる家族を、仲間を、国民を守って戦い抜いてみせるっていう自負と決意に満ちていた。
……愛されてるんだな、あの姫様とやらは。
まだ戦争が始まるよりずっと前の国際式典で何度か見かけたことがあったけど、真面目さと誠実さに手足が生えてるような印象を受けたのを覚えてる。
中身も見た目通りだったようで……だからこそ、国民に慕われてたんだろうな。
……こうして、絶え間ない責め苦に遭いながらも、何も話すことなく耐えている少女もまた……そんな姫様もとい、大公殿下を慕うがゆえに、これだけ強いんだろうか。
……うらやましいな。
そういう感情……僕は、抱いたことないや。
とか思ってる間に、ゾフィーが調子に乗ってきた。これ以上は危険だ。
はい、ストップそこまで。やめやめ。それ以上は骨が死ぬから。
え、治せるだろうって? ばーか、強力な薬は反動とか副作用もそれなりにあるの。そんなに頻繁に使っていいものじゃないの。いくら『錬金術』使っても負担の軽減にも限度があるの。これ以上のペースでの使用は後遺症につながります。というわけではい終了!
―――嘘だけど。
ゾフィーを追い出し、昨日と同じように彼女の傷を治す。
あと、後から部屋の掃除をさせる人員を手配しておいた。
2日連続で失禁してる上、血しぶきとか飛び散ってるからね……衛生的に、うん。
イゼッタはだまって僕にされるがままで……しかし今日は、気を失わずに最後まで起きていた。
その結果、僕が薬品と『錬金術』の組み合わせで彼女の傷を全部きれいに治すところまで見てて……それで、何か聞きたそうにしてたんだけど……結局最後まで黙っていた。
いや、最後の最後、治療が終わったって伝えた時に、一言『ありがとう』って言われた。
ただし、僕も帝国軍人だからだろう。態度は、怯えたそれだったけど。
……ちょっと悲しい。いや、敵なんだから当然だけど。
※月@日
本当に……あのバカ女……捕虜を殺す気じゃなかろうか?
日に日に苛烈になる拷問。それに加えて、新アイテムまで持ち出しやがって……
どこから、誰に頼んで手配したんだ――
――電気ショックと催涙・嘔吐ガスなんて!
おかげで、尋問終わりの治療の時、体に焦げ跡はできてるわ、毛細血管が切れて粘膜から出血してるわ、さらには嘔吐はもちろん、多量に吸い込んだ影響でお腹下して、失禁どころかそれ以上のことまで……僕にはリョナもス○トロも守備範囲にはないって何度言ったら!
加虐趣味……っていうかエイルシュタットへの恨みはわかったから、衛生面考えろっての! 血飛沫、尿失禁、ガス充満、その他もろもろ……殺菌消毒終わるまで使えないよこの部屋!
イゼッタも虫の息だし、完治させるまでいつもの倍以上時間かかったわ! ガスの影響で上から下からいろんなもの垂れ流して、それらの処理も必要だったし!
その後も牢屋には置いとけなくて、また医務室に運んで経過観察することになったわ。無論僕がな。僕以外に錬金術使える奴いないから!
今回のことはさすがに見過ごせる範囲にない。何せ、あんな処刑や軍事作戦にも使われるような物騒なもんを黙って持ち出すのは、陛下の黙認云々以前だ。
持ち込み、および使用には管理担当者の決済……すなわち僕の許可がいるわけだが、当然僕はそんなものを許可した覚えはない。もしも書類の偽造でもやらかしているなら、それを根拠に更迭……は無理だろうけど、この基地からご退場願うくらいはしてやろう。
そう思って調べさせたんだが、違った。
厄介なことにあのドS魔女、僕を通さない正規の手段でアレらを手に入れてやがった。
というのも、本国から昨日付で赴任してきた査察官――ここ占領地での立場・権限では僕の方が上だけど、向こうは皇帝の息がかかってる上に階級では向こうが上――が持ってきた『差し入れ』らしいのだ。
僕を通すルートとは別ルートできちんと手続きを済ませ、許可を取り、あれらを持ち込んで……『よかったら役立ててくれ』ってゾフィーに……。
しかもそいつは確か、今日の『尋問』に立ち会っていた。
牢屋の隅で椅子に座ってニヤニヤと笑っていた、脂ぎった中年太りの男がそれだったはずだ。
イゼッタが責められ、苦しむ様を、笑いながら見ていたのを覚えている。
……あろうことか、その股間に……ズボンに、テントを張らせた状態で、だ。
……こいつ確か、陛下の……皇族の遠縁で、その権威をかさに着て色々と好き勝手やることでも有名だった気がする。しかも、陛下が面白がって放任してるもんだから、放っておくと欲望のままに、どんどんひどいことをやらかすって……
大方、査察その他の任務は名目で、帝国を予想外に手こずらせたこの国の、主力も主力だったイゼッタを見物に来たんだろうけど……ここにきて、また厄介な……。
……どうしよう、こいつがこのまま調子に乗るルートしか見えない。
その場合……イゼッタの身には、これ以上の地獄が降りかかることに……
※月*日
……早速か。
早速現実になったか、胸糞悪い予想が。
発端は、昨日。本国からゾフィーに命令が入った。
他の土地を進行する軍事作戦を再開するから戻れ、って。
ここ数日、ゾフィーは、午前中にイゼッタをいたぶり、午後になってからエイルシュタット領内の抗戦地域に赴いて、爆弾やら機雷やらを景気よく飛ばして爆発させて蹂躙、というのを繰り返している。物騒な日課だよホント。
ゾフィーはこの国、エイルシュタットに底知れぬ憎悪を燃やしているので、まだまだ足りない、って感じで……今回の帰ってこいコールにも難色を示してたんだけど、復活させてもらった義理か、あるいは帝国の協力下でまだやりたいことがあるのか、最終的には従う決断をした。
で、そのゾフィーがいなくなった途端……彼女に変わって捕虜の尋問を買って出やがったのがいる。
言うまでもなく、あの査察官共である。
朝一番……それこそ、イゼッタに何かする暇もないくらいに早いうちに、ゾフィーはこの基地を去った。しばらく帰ってこないだろう。少なくとも、数週間単位で。
それを見送った後、最近また増えた書類仕事に戻った僕だけど……その数時間後、血相を変えた部下から、また新しい面倒ごとが始まった報告を受けることになる。
牢屋に走っていってみれば、そこには……悲しきかな、予想通りの光景が。
裸に剝かれ、査察官と、その子飼いの兵士共によって……見るも無残に凌辱されているイゼッタが、そこにいた。
いつもの鎖ではなく、手錠によって拘束され……囚人服は、乱暴に破り捨てられている。
上も下も、隠すべき部分は、全く無防備にあらわになっている。形のいい、豊満な乳房も、毛の生えていない、ぴったりと閉じた1本筋の陰部も。
どちらもすでにさんざんに嬲られたようで、体中に白濁の粘液がべっとりとこびりついていた。
そして今も、床に仰向けに押し倒され、怒張した男性器をその股間に突き入れられて、苦痛と快楽がまじりあった悲鳴を上げている。それに興奮した兵士が、さらに腰を振るのを加速させ……おそらく、何度目かになるだろう射精を……遠慮も何もなしに、イゼッタの体内に放っていた。
脈打つように体を震わせながら、『あ、あぁ……』と、悲壮感に満ち満ちた声をこぼしつつ……女としての地獄を味わっているイゼッタは、ぼろぼろと涙をこぼし……満足した様子の兵士が肉棒を抜き取って手を放すと、そのまま力なく崩れ落ちた。
無理やり蟹股に開かれた足はそのままに……股間からは、ドロドロと精液が漏れ出ている。
部屋の隅にいる書記官は、生ごみを見るような目でその光景を見ながら、居心地悪そうにしている。記録することでもないからだろう、ノートは閉じられていた。
いくら何でも、と抗議しようとして……気づく。
この光景を見て……自分のアレが、どうなっているかということに。
……目の前のこの光景は、言うまでもなく、凄惨なものだ。
昨日までのゾフィーみたいに、痛みを主軸にした凄惨さはないとはいえ、かわいい女の子がズタボロに犯されて、床に転がされているこの光景は……正直、きつい。
本心として、僕はそう感じている。できれば、目を背けたい。
……だというのに、僕の股間は……雄としての本能に、実に正直に変形していた。
とっさに僕は踵を返し……うつろな様子で、おそらく僕が来たことにも気づいていないだろうイゼッタを一瞥し、
イスに座って一休みしつつ、部下にイゼッタを犯させてそれを見物している査察官――自分はもう済ませたらしい。下半身裸で、ペニスがテカテカと光っていた――から、『何だ、混ざらんのか?』なんてからかい気味に言われたりもしたけど、極力気にしないことにして『終わったら教えてください』とだけ言い残して、足早に歩き去った。
自室に帰ってから、副官に銘じて、査察官共の『尋問』が終わった後に、女性の衛生兵に彼女の世話と後始末をさせるよう言いつけておいた。
……ゾフィーのそれと違って、傷の治療なんかはいらなそうだから、大丈夫だろう。もし必要なら、僕が行くけど。
それと……アフター用の避妊薬の投与も。
『錬金術』で作った特性の奴だから、アレ使っとけばまず安全だろう。
そしてその後しばらく、あの凌辱の様子が頭から離れず……僕の下半身も元に戻らなかった。
このままじゃ、仕事が手につかない。
仕方ないので……軍付きの娼婦を手配して、部屋に呼んで抱いて発散した。
……自慢するわけじゃないが、僕は童貞じゃない。従軍してしばらく後には、上官に連れられて行った娼館で、大人の階段を上っている。
こういう施設は立派に必要なものとして認知されてるので、別に誰にも何も言われない。
……それでも……今日は、どうも……かつてないくらいに、熱くて……
追加料金まで払って、娼婦のおねーさんに『お盛んね』ってからかわれる羽目にまでなりつつ、何度もやって…………ようやく収まった。