※この作品はR-18です。

とあるゲール将校の日記   作:破戒僧

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03.5 イゼッタ視点

※月&日

 

目が覚めると、知らない天井だった。

 

服も変わっていて、腕には点滴……その時、一体何がどうなっているのかわからなかった。

 

訳も分からず、とりあえずベッドから出ようとしたところで、体中に……思わずうめき声が出てしまうような、鈍い痛みが走る。

同時に、何日も寝っぱなしだったかのような、体のだるさも。

 

それにますます混乱していると……部屋の扉を開けて、誰かが入ってきた。

その服装は、なんとゲールの軍人のそれで……しかし、とっさに魔法を使おうとして……できなかった。

 

「目が覚めたか……エイルシュタットの魔女イゼッタ、貴様は今、我らゲルマニア帝国軍の捕虜となっている。じきにこの基地の指揮官が来る……それまで大人しくしていろ。それと、ここはレイラインが通っていない、魔法は使えないから、無駄な抵抗はやめることだ」

 

そう言い放ったゲール軍人は、そのまま扉から出て行った。

 

残された私は……その瞬間、全部思い出した。

ゼルン回廊に出撃して……あの、本物の白い魔女だっていう人に出会って。

 

魔法が使えるはずの場所で、突然飛べなくなって……墜落して……そのまま意識が……

 

ということは、私はあの後……ゲール軍につかまったということだ。

そして捕虜に……でも、この部屋は牢屋っていう感じじゃない。むしろ、医務室みたいな……あ、そうか、大怪我してたから治すために……

 

……見ると、体中にけがをしていたはずなのに……それがほとんどなくなっている。

つまり、それだけ長く、私は眠っていた……?

 

そんな、じゃあ戦争は……どうなったの!? エイルシュタットは!? 姫様は!?

 

そう思って、顔から血の気が引いた……その時、また部屋の扉が開いた。

 

「……お、ホントに起きてる。気分はどう……って、いいはずないか。敵陣のど真ん中だもんね」

 

来ていたのは、同じゲールの軍人……軍、人?

軍服を着てるけど……私と、同じくらいの年頃に見える、男の子だった。

 

すらっとした体格で、金髪に、ちょっとかわいい……女の子みたいな……中性的、っていうんだっけ? そんな感じの顔。なぜか左目に眼帯をしている。

眼差しは……敵であるはずの私を前にして……優しい感じだった。さっきの軍人さんみたいに、憎々しげな視線は向けられなかった。

 

でも……軍服についている階級章は、それに見合わないくらいの立派さだった。

姫様のところで勉強した、ゲルマニア軍人のそれの知識に当てはめると……

 

(階級……少佐!? ゲルマニアの……将校クラス……!)

 

さっきの兵士が言ってたことを鑑みれば……まさか、この人がこの基地?の責任者なんだろうか? 何度見ても、私と同い年ぐらいに見えるのに……

……そのくらいに、優秀な人だ、ってこと……?

 

「あー、っと。さっきの兵士から聞いてるかもだけど、一応もう一回言っとくね。イゼッタさん、あなたは負けてつかまって捕虜になってます。ゾフィーにやられてケガがひどかったんで、一応治しました。これから色々と取り調べとかさせてもらうのでよろしく……あ、ごめん自己紹介まだだったわ。僕はこの基地の指揮官で……あと、ここランツブルックの暫定的な占領統治のかじ取りもやらせてもらってます、ソロモン・フォン・サンジェルマン少佐です。よろしく」

 

内心ひやひやな私のそんな思いなんて知らず……同じように軽い感じの口調と、敵に対して言ってる感じのしない表情で、彼はそう言った。

 

 

 

※月?日

 

戦争で捕虜になった私は……敵国につかまったんだから、ただじゃすまない。

それはもちろん、もしそうなれば……って考えたことはあるから、覚悟はしてたつもりだった。

 

尋問……いや、拷問されても、姫様に関することは絶対に話さない。耐えてみせる……安心してください、姫様…………そう、私は、生意気なことを考えていた。

 

 

………………甘かった。

拷問のつらさ……その意味……どれだけ追い詰められるのか。そんなことを私は、全くわかってなかった。

 

本物の『白き魔女』……ゾフィーからは、鞭やそのほかの色んな道具……それこそ、見たこともないような道具を使って……経験したこともない、信じられないくらいの苦しさを味わわされた。

 

歯を食いしばって耐える、なんてことがそもそもできない。身を切られるような痛みに、私は……泣き叫んで、涙を流して……お、おしっこまで漏らして……

瞬く間にひどい有様にされて……それでも、何とか姫様に関することは話さずにいられている。

 

……その分、苦しみが長く続くんだけど……

 

ゾフィーは、エイルシュタットに憎悪を燃やしている……だから、その国も、そこに暮らす人も、何もかも滅ぼさないと気が済まない、許せない……って、言ってた。

もちろん……その国に味方している、私も……彼女を裏切った王族の末裔である、姫様も。

 

絶対に、彼女を姫様に近づけるわけにはいかない……そのためなら……

痛みだろうと、辱めだろうと……

 

 

 

……そんな風に、またしても甘いことを考えていた私は……今度は、ゾフィー以外のゲルマニア兵の手で……女としての地獄を味わうことになった。

 

裸にされて……拘束されて、床に転がされた。

そしてそのまま……下半身裸になった、男の人たちに囲まれて……そのまま……

 

……初めてだったのに、って……悲しむ暇もなかった。

まるで私を、物でも扱うみたいに、乱暴に……何人も、何度も、いつまでも……

 

硬くなった、男の人のアレが……私の中に、無遠慮に突き入れられて……そのまま、体の内側をえぐられる。痛みと……認めたくないけど、快楽で、泣き叫んだ。

 

もちろん、そんなことでやめてもらえるはずもなく……私はほとんど毎日、ゲールの軍人たちの慰み者にされている。拷問して情報を話させることなんて、考えていないんじゃないか、っていうくらいに……毎日、執拗に。

 

……私だって……旅をしている間、幸福な結婚について、夢見なかったわけじゃない。姫様に仕えるようになってからも、いつかそういう風に……って、考えたりもした。

 

それなのに、こんな形で……初めてを奪われた上……何回も、中に……

辛いだけならまだしも……ひょっとして、これだけされたら……子供が、出きてたりしたら……

 

毎日、恥ずかしくて、つらくて、悔しくて、情けなくて……泣きたくなって……そのまま、結局こらえきれずに、泣いている。

こらえずに泣いた方が、少し楽になるって知った。どっちみち、恥ずかしいところをもっとさんざん見られてるんだし、今更気にしない。

 

……いつまで耐えられるか、正直わからないけど……

 

 

 

……そういえば、拷問以外にも、一応気になることがある。

辛いときは、わざとそっちのことを考えるようにして……気を紛らわしている。いや、本当に気になっていることでもあるんだけど……

 

拷問では、痛みか、辱めかに関わらず……ケガを負うことが結構多いんだけど……そのたびに、どれだけひどいケガをしても、たちまち直してしまう人がいるのだ。

 

……目覚めたその日に会った、あの人なんだけどね。少佐さん。

 

本当に『たちまち』だ。ものの数秒で、切り傷も腫れ物も。

 

あの人が、薬を塗って……あるいは、飲ませたり注射したりして、

 

その後、変な手袋をはめて、ケガしている部分に手をかざすと……そこから青い電気っていうか、火花や光みたいなのが出て、

 

けど、全然痛みとかなくて……むしろ、それが当たると、すごくあったかくて、気持ちよくなって……見る見るうちに、傷はふさがり、腫れは引き、痕も残さず治ってしまう。

 

こんな魔法――薬の効果とかには見えなかったし……あんな治療法があるなんて、聞いたこともないし、魔法だと思った――私は知らない。見たことも聞いたこともない。

 

驚いて聞いてみたら……軍事機密だっていうことで、詳しくは教えてもらえなかったけど……どうやら、ゲールの軍が、というかあの少佐さんが、魔女の力を応用して作り出したものなんだ、っていうことはわかった。『錬金術』っていうらしい。

 

それを使って、いつも私の傷を癒してくれる。

 

その時に、時々……他愛もないことを話したりする。

 

あの少佐さんもゲールの軍人であり、敵だっていうことはわかってる。

けど、その時間が……私にとっての癒しに、心が休まる時間になっている。

 

それに、なんていうか、あの人は……ゲールの軍人っぽくない気がする。

まるで、普通の友達と一緒になってしゃべってるみたいな安心感があるし、敵である私にも普通に接してくれる。

 

気のせいじゃなければ……少佐さんも、私との会話を楽しんでくれてる、みたいな気もする。

 

 

この間なんて、エイルシュタットのことや、姫様のことを褒めてくれたし……気のせいじゃなければ、うらやましい、とまで言ってくれた。

繰り返しになるけど……敵の、ゲールの軍人なのに、すごく自然に。

 

……どうしてこの人が敵なんだろう、と、最近よく思う。

 

なんとなくだけど……この人なら、私たちと仲良くなれそうな気がするのに。

 

もし、この人が味方になってくれたら……どれだけ心強いだろう。

いや、今からでも……話したら、ひょっとしたら……

 

……いや、さすがにそれは無理かな……? いや、でも……もしうまくいけば、今は苦しい戦いを続けているであろう姫様にも、喜んでもらえるかも……

 

特に、少佐さんの『錬金術』……あっという間にケガをいやしてしまう力は、軍の人たちにも喜ばれるだろうし……

……仲間に、なってくれないかな……?

 

 

 

¥月>日

 

……だめ、かもなぁ……

甘い、考えだったのかな……仲間に、なってほしいなんて。

 

優しい微笑みの裏で、ひょっとしたら……私のこと、憎んでるのかもしれない。

そんなこと考えたくないけど、でも……

 

 

 

まさか、あの少佐さんの……あの目の、あの眼帯……私が、やった傷だったなんて。

 

……しかも、あの人のお父さんが……私が出た戦いで、戦死してるなんて……

 

 

 

今日、食事を持ってきてくれた、兵士の人に聞かされた話だ。

憎々しげな視線と、吐き捨てるような言葉と共に。

 

……『よりによって少佐殿が、命令とはいえ貴様の世話をしなければならないとはな……!』って。

 

そのこと、少佐さんは知ってるのかな? 知ってるだろうな……

知ってて、私にあんな風に接してくれてるのかな……

傷を治して、心を気遣ってくれてるのかな……?

 

……どんな、気持ちだろう?

辛いのかな、悔しいのかな、憎いのかな。

 

……明日から、どんな顔して会えば……

 

 

 

 

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