また番外編となります。
時間軸はたくやが美月と別れてすぐの辺り。
なおこの⑤はエロがありませんが、続きの⑥ではエロとなります。
続けての投稿となりますが、よろしくお願いします。
ところで。
神奈は出てきません(苦笑)
ホンマに神奈ルートかって感じですが、すみません。
「…………奈っっ!!」
目が覚めた。
手を伸ばして何かを掴もうとした動きのまま止まっていた。
時刻は――4時前。
辺りを見回して思い出す。……そうか、昨夜はここに泊まったから。
神奈の夢なんかを――。
ハア、と深く溜息をつく。
……未練だ。
まだ思いきれていない。
計画は順調だ。なのに、神奈のことを思い出しただけで身体の芯が熱くなる。
少し頭を冷やそう。
酔えないが、昨夜飲んでいた酒を手にテラスへと向かった。
……ここで。
神奈を泣かせたんだった。
調子にのってかなりマニアックなプレイをした。それに逆らわずついてこれたのが神奈だった。あの女は俺が何をしても怒ったりしなかった。
……酒を使ってセックスもしたな。
酔い潰したくて膣内に酒を注ぎ込んで腸内にも入れて急性アルコール中毒……にはならず、なぜかは知らないがかなりタフで、俺の方が先に酔い潰れた。
陰茎で味わう酔いというのを神奈の身体で堪能した。……あれは凄まじい快楽だった。
……ダメだ。
頭が冷えるどころか、思い出すだけでまた勃ってきた。
亜由美の豊満な肉体を味わい尽くしているはずなのに、神奈とのセックスを考えただけでこうだ。性欲は満ち足りているはずなのに渇望が消えない。
そろそろ旅立ってもいい頃だ。
亜由美のおかげで準備はできた。あとは……。
気持ちの踏ん切りをつけるだけ。
――神奈。
君に罰を与えに行くぞ。
俺を狂わせた罰だ。君のおかげで生き甲斐を貰ったが、このやり場のない嫉妬も君から貰ったものだ。
もしくは。
君にとっては福音となるかもしれないが。
「……ここにいたのか」
いつの間にか窓が開いて、そこに息子が立っていた。
まだ夜明け前だ。寝ていていいのに。
「それ、なんの酒?」
興味本位というより、朝から飲んでいるのを呆れているような顔だった。
こいつは酒に強いが、あまり好きではないらしい。
「日本酒だ。飲むか?」
「……未成年にすすめるなよ」
「何を今更。子供の頃から浴びるほど飲んでいただろう」
「飲ませたのは親父だ」
「おまえはいい飲み仲間になると思ったんだがな」
すすめると、なんだかんだ言いながらも一口で飲み干した。
可愛いやつだ。俺に対抗しているつもりらしい。これしきで酔うかといった挑発する目だった。
「……うぷ。こんなの何がいいんだ」
「女をこれで落とすのに使うんだ」
「酒で落としたのかよ、亜由美さんを?」
「いや、亜由美はいきなり押し倒してアナルセックスをしたな」
「…………。最悪だな」
「どう考えてもレイプだが、亜由美は拒まなかった。つまりはそういうことだ」
「……そういうことって?」
「俺に惚れてたんだ」
たくやの顔が引き攣った。
なんとも微笑ましい。亜由美に好意を寄せているのを分かっていて煽っている。それに気づいて誰が嫉妬するかとでも言いそうな顔つきだった。
「……なんで俺なんだよ」
「なんだ?」
「久しぶりに帰ってきたのに、亜由美さんに会おうともしないでこんな所に引きこもって。俺じゃなくて彼女を連れてくればいいだろ」
……痛いところをつく。
まあ言われるだろうとは思っていた。
もう帰国して3日経つ。なのに家にも帰らず岬の家から離れずにいた。
なぜなら、――たくや。
おまえを観察する必要があったからだ。
何年か置きにこの家に連れてきてはいるが、確信が持てたのは昨日だった。
こいつは。
無意識で並列世界を渡り歩いている。
というより取捨選択を無意識で行っている。おそらくは識域下のさらに深層領域で座屈現象を起こしているのだろう。
何度もこの家から逃げようとしたが、そのことを忘れている。いや、忘れているんじゃない。
そんな記憶はいまのこいつには存在しない。
転移していた。……本人も気づいていない。だが間違いない。こいつは俺の行動を探っていた。
……亜由美か。
いまこいつにとって最も気になっている女。
その亜由美に対する屈折した想いが、こいつを動かしているのか。
嫉妬が原動力になるとはな。
さすがは俺の息子といったところか。
「……この家は亜由美には教えていない」
たくやが、なぜ、といった怪訝な表情で俺を見た。
「おまえが産まれる前に、この家を建てた。……ある女を囲うためだ」
「ある女?」
「前に話したことがあるだろう。俺を虜にした娼婦だよ」
「…………。その女とここで暮らしたのか?」
「いや、実際は半年もいなかった。恵子がおまえを身籠って、そっちにばかり構っていた。そうしたらな、……逃げたんだ」
「逃げたって……どこへ」
「方々探したよ。どこへ行ったのか、心当たりは全部探したが、痕跡はまったくなかった。もともと雲隠れするのがうまい女だったんだ。まっとうな生き方をしていないからな」
「……それで? 見つかったのか?」
「…………。見つけたが、手遅れだった」
「死んだのか?」
「死んではいないが……まあ、似たようなものか。それ以来、彼女とはほとんど会えなくなった。だからな、この家は……おまえとその女しか入れないことにしてるんだ」
「……俺も?」
「おまえは息子だからな。それに覚えてはいないだろうが、おまえも彼女とこの家で過ごしてるんだぞ」
「え? …………。ぜんぜん覚えてないけど」
「俺が搔っ攫って海外に引きずり回したから、すっかり記憶消去されたか」
「……っ! てめぇ、わざと……っ!」
「おまえ如きに彼女を奪われてたまるか。俺の大切な女だったんだ。愛おしそうにおまえを見る彼女を見て、嫉妬で殺してやりたかった」
呆れたような、悔しそうな、複雑な顔だ。
こんなことまで話してしまっていいのだろうか。……まあいいか。もうすぐこいつとも会えなくなる。いつかどこかの世界では再び巡り会えるかもしれないが。
「……親父みたいな移り気の多い男なら、逃げられても納得しかしないな」
「どの女にもこの上なく優しくしてるつもりだがな」
「なら亜由美さんに会いに行ったらどうなんだ」
「会うとも。一週間後のフライトまでにはな」
「また行くのか?」
「今度は長くなりそうだ。たっぷりと亜由美を可愛がってから行くことにするよ」
「……早く帰って来いよ」
「なんだ? おまえも寂しいのか?」
「誰がだ! ……そうじゃなくて、亜由美さんをあんまり長く放っておくなってことだよ」
可愛いことを言う。
俺がいなくなれば、嘆き悲しむ亜由美をこいつはどうするのだろう。
やはり手を出すだろうか。いや……違うな。亜由美はいい女だ。別の男につけ狙われてもおかしくない。まごまごしているうちに奪われてしまう可能性が高い。
たくや、おまえなら。
亜由美を守る未来も選べるだろう。あるいは……。
神奈を救う未来も掴めるかもしれない。
「……たくや」
「うん?」
「この家の鍵を渡しておく。好きに使え。女を連れて来て囲っても構わんぞ」
テーブルの上にマスターキーを置いた。
もうひとつの鍵は神奈に渡している。いつでも使っていいとは言ったが、ついに一度も訪れることはなかった。
……たくやが呼べばおそらく来るだろう。
彼女が生き甲斐になっているのは、もはやこの息子だけだ。
鍵を手に取ったあと、複雑そうな顔で俺を見上げてきた。
「……もっと早くくれよ。遅いよ。もう囲いたい女がいなくなったタイミングで……」
「別れたのか」
「フラれた。……俺の性癖についてこれなくて」
「まあおまえにはかなり刺激のあるセックスを見せつけてきたからな。性癖が狂うのも仕方ない。だが女の味を知ったわけだから、そう悪いものでもないだろう」
「……親父のそういうところがムカつくんだ」
「たくや。……すべて意味があることなんだ。おまえに教えてきたのはその意味を掴むまでの足掛かりにすぎない。別れたのも巡り巡ってまた別の結果に繋がる。……女を見つけろ。命を捧げても構わないほどの女を探すんだ。いつか必ず、そういう女がおまえの前に現れる」
「…………」
少し呆然とした顔をしている。
今はわからなくても、もうすでにこいつは心の奥底でそれを求めている。
たぶん……。
それが見つかるのは、そう先のことではないだろう。
「……親父は?」
「ん?」
「親父は見つかったのか? ……それは亜由美さんじゃないだろ」
「……そうだな。亜由美には感謝しているが、同時に申し訳ないとも思っている。利用するような形になってしまったからな」
「それは亜由美さんに言ったのか?」
「…………。たくや。男と女の間は、言葉では伝わらないものがあるのだよ。身体を繋げてようやくわかることもある。いや……余計にわからなくなるかもしれないな。おまえの悩みもそういうことなのだろう」
「…………。どうすればいいのか、よくわからないんだ」
「ひとつ……教えてやろう。おまえの母親を口説いたときのことだがな」
「……なに?」
「出会ったその日にセックスしたんだ」
「…………。…………。それで?」
「それで彼女を手に入れた。あとな、彼女と付き合いだした頃のことだが」
「うん」
「道端で女を買った。男に絡まれていたのを助けたんだが、余計なお世話だったらしい。代わりに払ってくれと言うからその場で払ってセックスした。青姦だな」
「…………。…………。お袋は?」
「ちょうどその日が恵子とのデートだったんだが、無視して買った女をホテルに連れ込んでしけこんだ。あとで恵子にはたっぷりと可愛がってやったが、それからは買った女とずっといちゃついていたよ。嫉妬する恵子がたまらなく可愛くてな」
「…………。……あのさあ」
「凄かったぞ。コンドームを5箱使いきって、あげく最後のゴムが破裂してもまだ足りなかった。さすが商売女だけあって男の性欲を煽るのがうまい。そんな女を恵子の目の前で犯して見せつけたことすらある。3Pもしたかったけどな。……その娼婦を、俺はまだ想い続けているんだ」
「……え?」
「嫉妬が消えない。この嫉妬はもうきっと永遠に消えないだろう。俺から逃げたその女を、いまもずっと想い続けている」
「お袋じゃ……ないのか?」
「もう死んだからな。生きている限り、俺はあの女をずっと想い続ける。なぜなら、たくや――おまえがいるからだ」
「俺?」
「彼女が好きなのは、おまえなんだ。子供のおまえを、彼女は深く愛していた」
「……覚えてない」
「俺が忘れさせたからな。だから会わせるつもりもない。俺の女だ。俺がここにいる限り、絶対に会わせない」
「……もうずいぶん年を取ってるだろ」
「そうだな。……10年以上か。俺も彼女も、かなり年を取ったな」
「別に会おうとも思わないよ。親父の2号なんて、どうせろくな女じゃない」
「どうかな。俺の手で染まったあの女を、果たしておまえがどうやって口説くことになるかな」
「だから……! 親父の愛人になんか興味は!」
「さて、……そろそろ行くか」
「え?」
「おまえの言う通り、亜由美に会いに行く。かなり激しく抱くつもりだ。なんなら覗いていくか?」
「誰が……!」
「たくや。……そろそろ戻れ」
「え?」
「揺らぎがまだ収まっていないぞ。俺の観測は終わった。おまえも早く安定させろ。亜由美のことはもう大丈夫だ」
その言葉で。
たくやのまわりの空気の流れが変わった。
一瞬、目の光が変わったと同時に、きょろきょろとあたりを見回している。……戻ったか。
「……あれ? なんでここに……」
「まだ5時だ。もう一度寝たらいい」
「……親父? なんで外に……さむっ! あっ、酒! ずりぃぞ、自分ばっかり!」
ほら、と残りを全部渡すと、一気に飲み干して睨みつけてきた。
……やれやれ。
こんな調子で本当にやれるのか不安になってくる。
もっとも子供の頃に比べるとだいぶマシになっていた。あの頃はいつも不安定で系が歪むほどだったからな。
「いつ帰ってきたんだよ?」
「ついさっきだ。帰る途中でおまえを連れてきたのに、覚えてないのか」
「またこの家かよ……。ここ、潮風がきつくて海鳥が煩いんだよな」
「ほら、ここの鍵だ。いつでも使っていいぞ。俺がいなくなったらな」
「親父、また行くのか?」
「行く前に亜由美といちゃついてくる。おまえも女でも連れてくるといい」
「くそ……当てつけかよ。別れたよ。もう美月さんとは……」
――ポン。
肩に手を置き、見上げてくる息子を優しく見下ろした。
「――を頼む」
「え? ……ごめん、聞こえなかった。いまなんて?」
「最初で最後の願いだ。――。を、おまえが救ってやってくれ」
「だ、……誰だって?」
おい! という声を背後に聞きながら。
振り向かずに岬の家を後にした。
もうこの家に戻ることはないだろう。
……神奈。
あいつが君を選ぶかどうかはわからない。
ただ、いろいろ仕込みはしておいた。あとは君次第だ。
最後にもう一度。
君を思いきり抱かせて欲しい。
やらなければならないことがあるが、それ以上に……。
君が欲しい。
たくやに奪われる前に、もう一度君を貰いにいくからな。
追記
たくやが名前を聞き取れなかったのは、まだこの時点でヒロイン√が定まってないからです。