――16年前
「……君が産んだのかね」
腕に抱えている赤ん坊を一目見るなり、顔を顰めて私の全身を舐め尽くすように見つめた。
……変わらない。この人は昔からこうだった。
「神奈が産んだわけではありません」
「……だろうな。産んだのは女だと聞いている。その子は男だろう」
やはり。
調べられていた。
ならば詳しく話す必要もないだろう。
「発情期になりました。薬をください」
「…………。またか」
「あなたでなければ調合できません」
「…………。神奈。あれは太陽フレアが活性化している時期でないと必要な粒子が抽出できない。それは君も知っているだろう。そして空気に触れた瞬間に組成が変化する。つまり」
「知っています。石の成分と同じです」
「ならばわかるだろう。あの時は君の性欲を抑えるためにやむを得ず作るしかなかったが、もう自制できるのではないのかね。あの男に可愛がってもらっているのではないのか」
「…………。広大さんは知りません」
「なに?」
「知られる前にイかせました。だから彼はあれに気づいただけです。その後広大さんとはまだ会っていません」
「……呆れたな。それはいつのことだ」
「……2週間前のことです」
「その間、ずっと耐えていたのか」
「薬が必要です」
「……君の後始末くらいはしてやる。身体を売るんだ」
「いやです」
「神奈!」
「いや……! 広大さんじゃないと、もういやあ!」
ギュッとたくやくんを抱きしめると。
腕の中で苦しそうに泣きだした。
いつの間にか。
目の前に黒い影が重なり、私の頭を撫でていた。
「……神奈。あの男を殺したくないのだね」
「…………」
「いま作ってもいずれ数年後には再発する。その場しのぎにしかならないが、それでもいいか」
「……それでもいいです」
「それと、商売は続けたほうがいい。以前ほど飢餓感はないだろうが、それでも男の精は必要だ。あの男だけでは相手にできる代物でもない」
「……いつ出来ますか」
「三日かかる。出来るまで待てるか」
「……待ちます」
「次に再発したとしても、私はこの世にいないかもしれない。いたとしても君を助けることはもうできないだろう」
「……わかっています」
「だがずっと君を見ているつもりだ。……またあれを繰り返さないためにも」
30年前の事件を、まだ――この人は後悔している。
だから。
本当なら頼りたくはなかったのに。
腕の中のたくやくんがむずがっている。お乳を欲しがっているのに気づき、男の目の前で乳房を曝け出して授乳をした。
「……そこまで身体が変化したか」
「出たのは数日前からです」
「あの男は海外にいると聞いている。……神奈、身体を売りなさい。もう極限状態なはずだ」
「薬が出来るまではもちます」
「強情な女だ。……母親そっくりだな」
「あなたの口から母のことなんて聞きたくない」
「私を捨てた仕返しだよ」
捨てたのはあなたでしょう。
そう言いたかったけれど、お乳を吸うたくやくんを見ているこの男の視線が――。
以前、広大さんを見たあのときと同じだった。
――4ヵ月後
「あ、は……」
身体の下で繋がったまま果てた男の胸を軽く押した。……心臓がとまっている。
セーブしたつもりだったのに。
膣内を強く引き絞ると、まだ残りの残滓が男根から滲み出てきた。それを残らず吸い上げて抜こうと――したが。
……足りない。
死んだのだからもう出ないかもしれない。だけどもっと欲しい。男の精がもっと欲しい。
ああ、もう……。
ちっとも薬が効いてないじゃない。
飢餓感が消えない。発情がいつまで経ってもおさまらない。やはり広大さんじゃないとダメなのか。そういえばもう、何か月もあの人と繋がっていない。
でも。
こんな状態まま、広大さんとは、とても……。
――ズッ……
死んだ男の身体にしがみつきながら男根を抜いた。……ああ。もう硬直が始まっている。はやく始末しないと。だけどこのペニスの硬さ……もっと味わいたい。
半勃起したまま硬くなりつつあるまだ温かい男根を頬張った。じゅるっと舌で吸い上げると尿混じりの精液が絞られる。口なんかではとても満たされないけれど、ほんのわずかでもいい、欲しい。
胸毛のある男の死体を見つめた。
……ごめんなさい。
あなたになんの罪もないけれど、神奈のごちそうになってしまってごめんなさい。
それでもだいぶ性欲は発散された。
なのにこの飢餓感は、いったい何――?
広大さんじゃないからなの?
それとも……。
――3年後
「たくやくん、いらっしゃい」
走って胸に飛び込んできた男の子を抱き上げ、長椅子に座った。
……だいぶ大きくなった。
私の母乳を飲ませたせいだろう。この子は年齢よりもかなり大きな体格をしていた。
……やだ。
服の下に手を伸ばしている。いつの間にこんなことを覚えたの。
「こら。手を入れちゃダメ」
「おっぱい、さわりたい」
「ダメよ、こら……あん」
ブラの下の乳首を引っ張ってきた。
……勃っちゃった。可愛い指なのにすごく感じる触り方。摘みながら引っ張っている。
「ダメよ、出ちゃうでしょ」
「出るって、なに?」
「神奈の……」
――ジュワ……
乳腺から、……出てきた。
――嘘。まだ出るの。もう発情のピークは過ぎたはずなのに。
「あ……ちゅぅ」
「こ、こら……んんっ」
吸い上げてくる。
なんて……気持ちいいの。舌と咥内で乳首を転がしながら必死に吸い上げようとしている。赤ん坊のときよりも強い吸い上げ方。
自然と彼の頭を抱えた。
両方の乳房を曝け出してたくやくんに吸わせてみる。もう母乳はとどまるところを知らなかった。次から次へと泉のように噴き出してくる。それ以上に――股の間も濡れていた。
私、……発情している。
たくやくんにされてるだけで、頭の芯が蕩けそうなほど感じてしまっていた。
……欲しい。
彼の精が欲しい。どうしようもなく渇望した。まだ3歳児なのに、私、どうかしてる。
でも、見た目はもう5歳ほど。……やってみようか。もしかしたらいけるかもしれない。
「ね、たくやくん……神奈とお風呂、入らない?」
「んあ……?」
「気持ちいいことしてあげるから、……ね?」
……広大さん、ごめんなさい。
だけど神奈はもう、待つのに疲れました。
たくやくんを抱き上げてその小さな唇に唇を重ねた。……神奈を感じて。まだ幼いけれど、性感帯をすべて引き出してあげる。
「ママ、……どうしてそんな怖い顔してるの?」
「怖くないわ、ただちょっと……痛いかもしれないけど」
「いたいの?」
「痛くなんて感じさせないくらい、気持ちよくしてあげるね。……いい子ね、たくやくん」
――さらに3年後
「うっ、……うぅぅっ」
「……神奈。泣くのをやめなさい」
戻ってきた。
でも……たくやくんがいない。いるのは広大さんだけ。
たくやくんは、どこ……?
「息子は眠らせて先に空港に連れて行かせたよ」
「……っ」
「まだ時間はある。……神奈、聞きたいことがある。たくやに何をした?」
「な、……なにって?」
「この家には監視カメラがある。気づいていなかったのか?」
監視……カメラ?
まさか……。
それで、神奈のことをずっと、見張っていて……。
グイっと襟首を掴まれた。いつもの優しい表情の彼じゃない。険しい、――厳しい目。
「息子に手を出したな。……神奈」
「…………っっ」
「こうなると思っていた。君が息子を見る目は尋常ではなかったからな。もっと早く引き離すべきだった」
「くっ、くるし……っ」
「俺がずっと放っておいた腹いせか? それとも……本気で息子に心を奪われたか」
「こ、広大、さ……っ」
「……神奈。何度言えばわかるんだ。君は俺のものだと言っただろう」
「かっ、……神奈は……っ、あなたの、都合のいい女なんか、じゃ……っ」
「君はね、俺の都合のいい女なんだ。俺の好きな時に傍にいて、俺に傅けばいいんだ。他の男になど渡さない。君は俺だけの女だ」
「…………」
「どうもまだよくわかってないようだな。自分の立場を今までずっと勘違いしていたんじゃないのか」
「勘違い……?」
「なんのために君を愛人にしたと思うんだ。俺のものにするためだよ。すべてを捧げても構わないのは恵子だけだが、俺は君のすべてを所有する権利を持っている。……どういう意味かわかるか?」
「…………」
「君の心も俺のものだということだよ。息子に心を奪われたのなら、君のことなどあいつの記憶から消してやる」
「……広大さん」
「さて……。行く前に強烈なセックスでもしてやろう。君の子宮の中でまた惑わされたくはないからな、後ろの穴を使わせてもらうぞ」
「…………」
「心配しなくても息子は空港近くのホテルに押し込めている。一晩くらい放っておいても問題ないだろう。……息子にどう手解きをしたのか、その身体で教えてもらおうか」
ネクタイを解きながら獣じみた目で私を見下ろしている。
……忘れていた。
この人がとても嫉妬深いということを。
そして、その嫉妬がこの人の快楽を呼び覚ますということを。
「……たくやくんには、フェラチオで何度かイかせました。挿入は、――してないです」
「知ってる。あいつがまだ童貞なのが傑作だな。適当な娼婦でも見繕って筆おろしさせてやるよ。さ、……来るんだ神奈」
いつか見た浣腸器具を机の引き出しから取り出すのを見て、もう覚悟を決めた。
そして、――同時に。
この人に凌辱されたがっている自分に震えていた。
続けて投稿します。
次は、……察してください。まともじゃありません笑