――神奈。
広大さん、あなたの言った通りでした。
――君の子宮を突く男は、やがてまた現れる。
わかっていたの……?
たくやくんがそうだって。
あの時から、あなたは……。
「……く、……っ」
校舎裏で膝が崩れ落ちて、立てなくなった。
木の幹に手を当てて子宮の奥の疼きをやり過ごそうとしたが、……もうダメだ。
――発情期。
あの人から聞いた話だ。
いま子宮の中で大量の催淫効果がある分泌液が出ている。男の精液が中和剤だ。それがないとこの疼きは永遠におさまらない。
一度発情期になると、このどうしようもない性欲は、やがて発熱と飢餓を齎す。
あの苦しみは、死ぬより辛い……。
「……言わないと」
たくやくんに、このことを。
だけど、……だけど、なんて言えばいいの。
彼ならこの疼きを鎮めてくれる。それはわかっている。おそらく言わなくても、彼なら……。
……言いたくない。
はい、神奈は言いたくないんです。
頭の中で、叱咤する声がする。
懐かしい――だけど、もう二度と会いたくない人の声が。
この境町から離れないのは、そういうことなのでしょう?
神奈をいったいいつまで、見張ってるつもりなの……。
目線が。
あの人の住む屋敷へと向いていた。
「有馬君……!」
準備室の扉を開けると、澪が胸の中に飛び込んできた。
スリスリと頬を胸板に擦りつけている。……猫か、おまえは。
「来てくれたのね」
「気が向いたからな」
「嬉しい……」
「あのな、澪。学校でこういうこと、おまえがしてもいいのか? 率先してとめるべき立場だろう」
バサッと上着を椅子にかけながら襟を外していく。
言ってることとヤる気のある態度が違うわけだが、澪はいそいそとズボンのチャックを外してきた。
「だって……。学校でしか会えないもの」
「あたりまえだ。あんな目立つ真似がもうできるか。誰かに見られでもしたらどうする」
この前はあやうくホテルに行こうとしたところを結城に見つかった。
うまく誤魔化したが、またあんなことがないとも限らない。
「……ふふ、有馬君の、おっきい」
「しゃぶるか?」
「いいの?」
「歯は立てるなよ。両手を使ってうまく愛撫しながらフェラするなら、また抱いてやる」
ポウッ……と、澪の頬が赤くなった。
盛りのついた猫だな、まるで。
髪を耳の後ろにかきあげて、そっと男根を優しく撫でてから口いっぱいに頬張った。
「……う、ぅん……ふう……あふ」
「そうだ、……もっと舌を回すんだ。くびれのところも、掬いあげるみたいに舐めろ」
澪の頭を抑えつけて喉の奥までペニスを押し込む。
こんなにフェラが好きだとは知らなかった。こいつ――筋がいい。美月さんほどじゃないが、必死にしゃぶってる姿が可愛く見える。こういうのも興奮するな。
じゅるるるっ……と唾液を使って吸い上げてきた。よほど精液が欲しいらしい。先端の割れ目を執拗に舌でほじくっている。
生憎だが、その程度の刺激で出すわけにはいかないんだよ。
あの神奈のすさまじい子宮を思い出しただけで……。
澪のフェラなど児戯に等しい。……だが悪くない。先走りくらいならくれてやる。
「ふぁ……んんっ……出してぇ……」
「おまえが下手なんだ」
「ひどぉい……うんっ……にが……ちょっと、出たわ」
「カウパーだ。感じると出るやつだな。少しはマシになったじゃないか」
「ほんと?」
「ほら、足を開け。……いや、俺の前でオナニーしろ」
「え……? ……えええええ?!」
「やったことないのか?」
「あ、あるわけ、ないでしょ!」
「意味はわかってるんだよな」
「……う」
耳年増というやつか。
知識としてはあるが、やったことはないらしい。
神奈はしたことあるのだろうか。
親父の前で、オナニーを……。
むか。
想像したら腹が立ってきた。
乱暴に澪を机の上に放り投げてスカートを捲った。
「あっ、……やん」
「なにがやん、だ。嬉しそうに笑うな。ほら、慣らす必要もないだろ、突っ込むぞ」
――ズッチュゥゥゥ……!
……驚いた。ローションで濡らしている。この前ホテルで使ったやつの残りか。いや、あれはほとんど使いきったから、こいつまた買ったのか。
コンドーム越しなのに水音が凄まじい。これは相当入れたな。
「はぅぅん……」
「おい、どれくらい入れたんだ」
「ひゃぅんっ……な、なにが?」
「まんこから溢れてるぞ。ローション入れすぎだ、バカ」
「だってぇ……いっぱい入れたほうがたくさん動けるでしょ?」
「おまえ、俺の動きがクセになったのか」
「はぅ……あのズンズンって叩くようなのが、たまらないの……」
「この淫乱女。あれはおまえの子宮口をだらしなく咥えこませるためにやったんだ。ほら……っ! どう、だっ!」
「ひゃぁぁんんっっ」
亀頭で乱暴に孔をこじ開けると。
澪は両脚を背中にホールドして子宮口をくぱぁと開き咥えはじめた。
へえ……。神奈ほど強くないがカリをうまく刺激してくる。孔の動きが断続的に蠢いてきた。もうここは男の象徴を飲み込む快感を捉えている。
グリグリとそこを捩じるように何度も挿入を繰り返す。その刺激だけで澪が軽くイっていた。ローションだけではない暖かいものが股の間を流れていく。膣入口を捲ると痙攣したような動きで潮を噴き出していた。
こんなに濡らすほど感じるとは、こいつは面倒な……。セックスの快感を知った女ほど扱いが困るものはない。美月さんはそれを道具や拷問などで俺を虐めていたわけだが。
澪の場合は、――たぶん独占欲だろう。自分一人だけのものにしたいと思うようになる。
俺を虜にしようとこんなにローションを膣内に注いだくらいだ。こいつの俺への執着は甘くみないほうがいい。
こうなる気はしていた。
だがあえて澪を堕とした。……おまえにも俺と同じ思いを味わわせてやりたかったからだ。
「……澪。今日の体育、神奈いなかっただろ?」
「あうっっ、……んぁ? あ、……そ、そうだった?」
「クラス委員のくせに把握してなかったのか」
「あ、でも……なんか具合悪そうで、確か、早退したような……ひゃうんっ」
「俺とセックスしてたんだ」
「……え?」
「体育の授業をフケて、神奈とトイレでセックスしてた」
「……な」
「扉の内側で子宮の中をめちゃくちゃにかき回すほどの激しいやつをしてたんだ。人の気配がしても興奮剤にしかならなかった。コンドームは着けてやったけどな、おまえより数倍激しく吸い上げてきたぞ」
「…………」
「妬かないのか?」
「……有馬君」
「ん?」
「……子宮の中って、はいれるの?」
「は……?」
「私にも、それ……して?」
…………。
目をキラキラとさせて期待に満ちた顔でおねだりしている。
本当に興味津々といった様子だ。
おまえは。
今の話の何をどう聞いていたんだ。
「……おまえにはまだ早い」
「えー?」
「ここを突きまくってやるからそれで満足しろ」
「それ、いつしてくれるの?」
「気が向いたらな」
……拍子抜け。
こいつには嫉妬という感情がないらしい。
あるいは、俺に盲目すぎてそれどころじゃないのか?
再び、動きを再開した。
突き上げるたびに甲高い悲鳴をあげる澪を見下ろし、俺なんかのどこがいいんだろう、と呆れていた。
「おかえりなさい」
「ただいま、亜由美さん」
やっぱり、家に亜由美さんがいるとホッとする。
おかえりと言ってくれるだけで、帰ってきたという実感が湧いてくる。誰もいない家ほど味気ないものはない。
「ずいぶん遅かったのね」
「ちょっと補習をね」
嘘は言っていない。
澪とセックスが終わった後、一応既成事実を作っておこうと二人で宿題の答え合わせをしていた。
そこに結城が入ってきて、もう少し早くあいつが来ていたらヤバかった。
上着を脱いで亜由美さんに渡すと、なぜか彼女が躊躇うようにそれを受け取った。
「どうしたんだい?」
「あの……ね。お客様が来ていて」
「客?」
親父の関係者だろうか。
もう遺産譲渡の手続きは全部終わらせたはずだが。
「……あの子、……波多乃神奈さん」
「え……?」
「たくやくんのお部屋に通しておいたわ」
「神奈が来ているのか?」
「……ね、もう夜も遅いし。……話だけ聞いて、帰っていただいて」
俺の手をギュッと握りしめてキツい目で見つめてくる。
無言で制していた。……そういうことをするなということか。
「わかったよ。話を聞くだけにする。だけど神奈は送っていってもいいだろう?」
「え、ええ……。でも、ちゃんと帰ってきてね」
「大丈夫、別に外泊するつもりはないよ。夕飯もまだだし」
どうも、亜由美さんは……神奈が苦手らしい。
リビングで待たせていなかったということは、顔を合わせたくないということだろう。……無理もないか。あんな親父の日記を見たわけだし。
心配そうな亜由美さんに微笑み、手をぽん、と軽く撫でた。こうすると亜由美さんは安心する。
やっとホッとした笑みを浮かべ、途中だったのか夕飯の続きを作りはじめた。
……神奈が。
わざわざ家に来るほどの急用はなんだ。
亜由美さんがいるのだから、そういうことをしに来たわけではないだろう。
まさか。
身籠ったとか?
いや、さすがにそれはないか。
でも、……もしそうだったら。
どうしよう、嬉しさのあまり叫び散らすかも。
いかん、頬が緩む。想像しただけでこれだ。本当に妊娠したらこれでは目も当てられん。
自室の扉を開けると。
ベッドにちょこんと座っている神奈がこっちを振り向いた。
「……おかえりなさい」
――ドクン……!
なんだ、いまの鼓動は。
まるで結婚したかのような錯覚に陥った。神奈におかえりと言われただけなのに。
「……どうしたの?」
「いまの、もっかい言って」
「え?」
「俺に、おかえりって」
「…………。……おかえりなさい。……きゃっ!」
耐え切れず、神奈を抱きしめた。
ベッドに押し倒し、そのまま口づけて頭ごと覆うように彼女の細い身体を隈なく撫でていく。
……自分でもこれほど神奈に溺れていたとは。
今さらすぎるが、もう神奈のことしか考えられなかった。亜由美さんに釘をさされたわけだが、知るか。このまま――。
「ま、……待って。んんっ」
「待てない。このまま抱くぞ」
「ちょ、……んぁっ!」
「肌がもう粟立ってる。……俺で感じてるんだろ?」
「……っ、か、……神奈の言うことを聞きなさい!」
――え?
ピタッと動きがとまった。
聞いたことのある言葉……。
な、なんだ……? この妙な懐かしさ。この声、この響き……聞いたことがある。
神奈は。
しまった、とでもいうような顔をして俺を見た。
「…………」
「神奈、今のって……」
「忘れて……ください」
「俺に……言ったんだな。昔」
「…………」
「なんか聞いた気がするよ。……風呂かな。女の裸……あれ、神奈か。母親かと思っていたけど」
「…………忘れて」
「俺、吸ってたんだな、神奈の乳首。それを身悶えて感じていたのが」
「思い出さないで!」
「無理やり、頭を抑えつけられていた。思い出したよ。息苦しくて、胸の谷間からなんとか逃れようとしていた。だけど離してくれなかった。もっと吸ってくれって、……あれは」
「……………………」
「俺で、感じていたのか」
「…………はい」
「ガキの俺に、欲情してた?」
「…………そうです」
「なんで今まで忘れていたんだ」
「忘れて、……いいです」
「なんでだよ。俺で興奮してくれたなんて、こんなの最高だろ。いまの言葉で思い出したよ。俺、神奈に調教されてたんだな」
「……ごめんなさい」
「なんで謝るんだ。むしろ嬉しいよ。親父ですら知らない、神奈と俺の秘め事だろ。……それで? 吸わせたのは乳首だけかい?」
「…………」
「怒らないから、言ってくれ。あとはどこを?」
「……たくやくんの、……指を、……膣内に」
「……それで?」
「かき回して、手首ごと……入れて……言われた通りに、動かしてくれて……」
「うん。……それで?」
「たくやくんの、おちんちんを……剥きました」
「そうか。神奈に剥かれていたか。……それで?」
「挿入は、できない大きさでしたから……神奈が、口で……そうしたら、すごくたくさんの、……」
「よかった。俺の右手が最初じゃなくて、本当によかった。神奈が貰ってくれてたのか」
「精通は……痛かったみたいでした。でも、神奈が口で、舐めてあげたら、気持ちよさそうにまどろんでくれて……」
「なんてうらやましい……子供の俺。それで、神奈はイったのか?」
「…………」
「神奈。俺で抜いてくれたんだろ?」
泣きそうな顔。
俺に言いたくないのだろう。幼児に欲情したなんて、普通ならそんな性癖は知られたくなかったに違いない。
神奈の身体を持ち上げて胸の中に抱きしめた。
「……たくやくん?」
「小さな身体だったんだな。俺……子供の頃の記憶ってさ、親父の後催眠でほとんど覚えてないんだ。あいつは、俺の精神状態が不安定だったから、とか言ってたけど、……いま思うと神奈のことを忘れさせようとしたんだな。だけど暖かいぬくもりと、いつも包み込んでくれた柔らかい胸のことはぼんやりとだけど覚えている。こんな小さな身体だったなんて、思いもしなかった」
「…………」
「……神奈。ひとつ聞きたいんだけど」
「……はい」
「親父と俺と、どっちが好きなんだ?」
腕の中で。
神奈の身体がビクッ――と慄いた。
いつか聞こうと思っていた。答えが訊くのが怖くて、今の今まで訊けなかったが。
神奈の腕を両手で掴みながら顔を覗きこむと。
唇をキュッと噛み締めて、覚悟を決めたかのような顔で俺を見た。
「言っておくけど、両方ってのはナシだからな」
「…………」
「親父はもう死んだが、それを含めての意味だ。……恋愛感情で正直な気持ちを言ってくれ」
……どう答える。
俺はもう覚悟が出来ている。どっちの答えでも、動揺などしたりしない。
「神奈の好きな人は……」
神奈は。
指先を俺の唇へと当て、ツゥ――と優しく辿ると、そのまま自分の唇へと指を軽く押し当てた。
「あなたです」
「……いつから?」
「最初に、広大さんからあなたを手渡された時から」
「……それって、いつ?」
「あなたが産まれてまだ数週間しか経っていなかった頃です」
「そんな赤ん坊にどうして?」
「……広大さんに、頼まれたんです。あなたを育てて欲しいって。そのときの神奈は、自分のことで手一杯で、とても赤ん坊の面倒なんて見れる状態ではなかったんです。……だけど」
神奈の手が。
俺の手を取り、服の中……ブラジャーの中へと導いた。
「……神奈?」
「これ、……わかります? 触ってみて」
……え?
触ってみて……乳首から……何かが。
まさか、と神奈を見ると、苦笑して俺を見つめていた。
「これが、あなたに吸われて出たの」
「……母乳? ……いや、だって、……妊娠したのか?」
「ううん。……これはね、神奈が発情した証なの」
「発情?」
「神奈の……病気みたいなものです。これになると、男の精が欲しくてたまらなくなります。こうなるともう、性欲に歯止めが利かなくなります」
「……なんだって?」
「仕方ないことなんです、そういう身体だから。……たくやくん、あなたが必死に神奈のお乳を吸ってくれたときに、神奈はね、この病気が治まったんです。ううん、正確に言うと、治ったわけではないけれど……満たされたの」
「…………」
「本当は広大さんを求めていたけれど、……性交しなくても満たされたのがわかったときに、気づいたんです。この子が産まれてくれて本当によかったって」
「…………」
「小さなあなたの唇を、何度も何度も吸ってあげました。赤ん坊のあなたの舌を、柔らかく絡めて、もっと飲んで、と授乳しました。……すごく気持ちよかったんです。そのときから、あなたを欲していました」
「…………」
「成長する日々がとても愛おしかった。数年後に広大さんに取り上げられるまで、ずっと性的な触れあいを続けました。挿入こそは、しなかったけれど……。神奈の手で快楽に染まっていくあなたを、ずっと見ていました」
「…………」
「おかしい、ですよね……。自分でも分かっていました。でも止められなかった。……広大さんは、そんな神奈にたくさんの罰を与えました。あの人は、とても嫉妬深い人でしたから……」
「親父に何をされたんだ?」
「……あなたの、お父さんはね。あなたとそっくりです。性格も、顔も、声も、……なにもかも」
「……そんなこと」
「ただひとつ違うのは……最初の出会いのときだけ」
「え?」
「神奈の手を引っ張って、路地から連れ出してくれました」
「それが……?」
「同じように広大さんも、売春してる神奈を見て、手を引っ張ってくれたけれど……その後、どうしたと思います?」
「……買ったのか?」
「はい。……その場で」
「あいつらしいな」
「たくやくん。……見ていたでしょう?」
「……っ」
「いいの、わざとだから。まさか最後まで見るとは思いませんでしたけど」
「……気づいてたのか」
「広大さんに、頼まれてたというのもあるけれど……あなたに、見て欲しかった」
「…………」
「神奈のイき顔を、あなたの脳裏に焼き付けてほしくて、……んっ」
神奈の腕を引っ張って、貪るように口づけた。
もう、……わかった。
神奈の想いが伝わった。
俺はバカだ。
あんなに何度も抱いておいて、何もわかってあげていなかったなんて。
「ん……ふぁ」
「神奈……正直に言うとな、俺もあのとき、あわよくば君を買おうかと思っていた」
「……ほんとに?」
「強烈なセックスを見せつけられて、興奮のままに君を家に連れてきたんだ。……俺も親父のことがいえないな」
「親子ですから」
「今は親父の息子でよかったと思っている。……だって君に会えた。親父が君を引き合わせてくれた」
「……たくやくん」
「神奈、君を抱きたい。……ここではなくて」
「どこで……?」
「それは明日、学校で話すよ。一緒に行きたい場所がある。来てくれるかい?」
こくん、――と頷く神奈を背中からギュッと抱きしめた。
次も続けて投稿しようかと思ったんですが、もう少し推敲します。
早く次の展開に移りたいのに、なかなか進まない。
まだ迷ってるというのもありますが。