神奈の過去話です。続けて投稿します。
時系列でいうと、広大と岬の家で暮らしている頃の話です。
……おかしくないだろうか。
車の窓ガラスに映る着飾った自分を見つめる。必要最低限だと言われて身につけた宝石は、どう見ても似合っていない。本当は取り外したい。ピアス穴なんて開けたくはなかった。
だけど……。
「そう気構えなくていい。各国の名士が集うといってもほんの内輪のパーティだ」
運転する男は前を見ながら私の戸惑いを察したかのように呟いた。
ほんの内輪と言うけれど。
私を着飾らせて見せびらかせたいのは明らかだ。
ため息をついて男の横顔を見た。
「……どうして私なんですか」
「何回同じことをきくんだ。恵子を連れていくわけにはいかないと言っただろう」
「だからって、……広大さん。ちゃんとハンドルを握ってください」
片手でハンドルを握り、もう片方の手がスリットの中に忍びこんできた。
こんな身体のラインが際立つチャイナドレス……着るんじゃなかった。
「運転に集中してください」
「よしよし、ちゃんと用意したハイレグを着ているな」
「ほぼ紐みたいな下着ですけどね……」
「脱がせやすいやつを選んだつもりだ」
「脱がせるつもりなんですか」
「なんのために君を連れていくと思うんだ。パーティなんぞ退屈すぎるからだ。君といちゃつくために決まってる」
これだもの。
いったいいついちゃつくつもりなのか知らないけれど、人目を忍んで隠れてするほうが興奮するのだろう。
頼みこまれた時点で察しはついていた。
それで断れなかった私も私だが。
「綺麗だ、神奈。教授どもに見せるのがもったいないくらいだ。君のことは姪だと紹介するが、色目なんか使うなよ」
「誰が色目なんて……ちょ、下着を外さないで」
「神奈、駐車場でリクライニングを倒しなさい。少しだけいいだろ?」
ああ、会場のホテルに着いてしまった。
地下駐車場に入っていく。少しってどのくらいなんだ。コンドームは持ってきたっけ。
ダッシュボードを開くと一箱入っていた。準備がいいこと。
「使ってください」
「生でさせてくれないのか?」
「精液を溜めたまま行くのはいやです」
「仕方ないな。まあ、こんな綺麗な神奈とカーセックスできるしな」
停めたと同時に服の隙間から胸を揉みしだきだした。
……時間は大丈夫なんだろうか。
彼の肩越しに車の時計を見ようとしたが、許さず、激しく口づけをされてしまった。
車の窓ガラスに押しつけられた手を引き剝がす。
深い挿入に身悶える姿がなんともいえない。うなじを口づけながらまた深く子宮の中を抉っていくと。
ビクビクと喘ぎを押し殺しながら二度目の絶頂をやり過ごそうとしていた。そんなふうに煽るな。とまらなくなる。
「ん、ぅ……っ、ふぁ……」
「……神奈。車の中だ。声など漏れないから我慢しなくていい」
「でっ、でも……」
「さっきからなんだ、後ろばかり見て。……時間が気になるのか?」
「か、会場に、行かなくて……んんぅっ! いいん……ですか?」
「これを見なさい」
リクライニングを倒したときに動かした砂時計。
まだ砂は半分ほど残っていた。
「これが落ちきるまでは大丈夫だ」
「…………。最初から、するつもりだったんですね」
「狭い場所でするのもいいな。君の淫らな姿を堪能できる。さあ、足をもっと曲げてヒキ蛙のようにがに股になるんだ」
車の中とはいえ外が気になるのか、窓の外をチラチラと見ている。
そんな神奈の羞恥心を煽るような恰好をさせ、背後から再び突き上げを再開した。
「あっ……ぁうっ!」
……感じている。
いつもと締まりがまるで違う。襞がまるで蛞蝓のように這いまわる動きだ。
膣内の反応のよさにほくそ笑み、神奈の足を折り曲げ、下腹を叩きつけるように動かしていく。
ドレスは汚さないように下半身だけ露わにしているが、それが視覚的にも興奮をさらに煽った。
可愛い……。
恥ずかしがる神奈がこうも可愛らしいとは思わなかった。
外に連れ出したのは正解だ。本当はこの女を人前になど晒したくはないが。
パーティの招待状を見たときの神奈の反応。
一瞬だが眉が動いた。――名前に見覚えがあるのか。
列席者の名前を見て反応していた。主に著名人ばかりだが、その中の誰かを知っている。
しかも。
おそらくそいつは、神奈を買ったやつだ。
そいつが誰なのか確かめてやる。神奈を見て驚くやつが絶対いる。一目見ればわかるはずだ。なにせ神奈の見た目は何十年も変わらない。
……いいぞ。
早くイかせようと子宮が収縮しだしてきた。カリ首を捉える動きが淫らで微笑ましい。
さらに深く突き入れながら、味わい尽くすように縦横にめちゃくちゃに暴れるように動かしていく。その動きでますます膣口の熱があがっていた。
「……イきたいのか?」
「……っ、……はや、く……っ」
「神奈、本当はパーティになんか行きたくないんだろう?」
「ど、うして……?」
「知ってるやつがいるんだろ?」
「…………」
「君の悪い癖だ。そうやってシラをきろうとする。……罰として中に出してやる」
「っっっ!」
「ペニスバンドを持ってきてる。これを埋め込んでやるから精液が漏れる心配はない。さあコンドームを取るからな」
「広大、さんっっ!」
「なんだ?」
「黙ってたのは謝りますから、だから……!」
今頃気づいたのか。
俺が嫉妬で狂っていることに。
「君は俺の女だ」
「……っ」
「俺の神奈を買ったヤツを許す気はない。子宮の中に俺の精液をたっぷりと注入してやる。君は俺のものなんだ。それをそいつにも思い知らせてやる」
神奈が。
怯えと恐怖が混じった顔でこっちを振り向いた。
可愛い神奈。
怯えていても君は美しいな。
「よい、しょ……ふう、抜けた。ゴムを外すからな」
「……………………」
「神奈、そう怯えなくても優しく抱いてやる。遠慮なくイきなさい。車の中をいくら汚しても大丈夫だ、どうせレンタルだし」
「…………広大さん」
「うん?」
「神奈を買ったのは」
名前を言う前に、神奈の口を塞いだ。
答えを言うな。
知らないままでいい。どうせすぐにわかる。そいつの反応を見れば。
「んぅぅ……っ!」
そのまま子宮孔を突き抜けて腰を抑えつけた。
神奈の口をネクタイで塞ぎ、馬乗りになりながら動きを再開した。
「そ……それ」
「すごいだろう。特注で作ったんだ。色もできるだけ本物に似せて、俺の形をそっくりそのまま作らせた」
「…………」
男性器のシリコンを見て言葉もないのか、神奈はため息すら出なかった。
「足を開きなさい」
「…………」
「ほら、神奈。さっき注いだ精液をこれで塞いでやる。大丈夫、シリコン製だから痛くはない。勃起した状態より楽なはずだ」
「……広大さん」
「うん」
「こんなのつけて歩けません」
「歩けないなら抱いていくぞ」
「……っ」
「それが嫌なら自力で歩くんだ。手くらいなら貸してやる。ちなみにこれはバイブになってるから、これがコントローラな。必要なときに動かしてやる」
「……必要なときって?」
「君を買った男が近づいてきたら」
神奈の唇が震えている。
俺の怒りがようやく伝わったのだろう。そういうところだぞ、神奈。変なところで鈍いのだから。
神奈の両脚を持ち上げ、震える膣口にシリコン製バイブを捻じ込んだ。
愛液と精液でなんの抵抗もなく飲み込んでいく。息を殺す神奈を見つめながら、可愛いその唇を啄んだ。
「こんな卑猥な玩具を突っ込まれたまま歩くなんて、初めての体験だろう?」
「……変態」
「そっくりそのまま君に同じ言葉を返してやる。こうされて興奮してるのは君のほうだ」
唇を噛んできた。……なんとも可愛らしい。
そんなふうに睨んでも無駄だ。いつもより感じているのはわかっている。そう――変態なのは君だ。
全部埋め込むと、秘所を覆うようにバンドで拘束し、その上に紐状の下着をつけた。
これで見た目はまるでわからないが、子宮の入口にまで届くほど長い淫具が彼女を常に苛んでいる状態だ。
「さあ、行くぞ。……おっと、髪が少し乱れているな。ピアスも外れてしまったか。神奈、ほら、鏡と化粧品を持ってきたから直しなさい。準備できたら行こうか」
「…………」
「どうした、まだ物足りないのか? ……ほら、口紅も取れてるぞ。俺がつけてやる」
「……んっっっ」
貪るように口づける。
嫌がるように顔を背ける神奈の咥内を味わい尽くし、ねっとりと唾液を流しこんだ。
これで。
君は俺のものだとマーキングすることができた。
どんなヤツが近づいてこようと――。
この女からは俺の匂いしかしないはずだ。
「神奈、手を貸そうか」
「平気……です」
会場に入る前。
俺の手を振り払った神奈を見てほくそ笑み、そのまま彼女の肩を掴んで一緒に歩いた。
たどたどしい足取りだったのは、ほんの数歩。今はモデル並みの姿勢で素晴らしいプロポーションを披露している。
会場に入った途端、盛大な拍手と神奈に注がれる視線の数々を見極めた。
……どいつだ。
神奈の横顔も常に注視する。顔色をほんの一瞬でも変えるのを見逃すつもりはない。そうはいってもこの女は表情が掴みにくいのだが。
軽くスピーチを終えると壇上から降り、常に神奈の手を引きながら適当に挨拶を交わしていく。
神奈は英語で話しかけられてもソツなく答えていた。……そういえば数か国語が話せると言っていたが、本当だったのか。
それにしても。
柔らかく微笑む神奈が、わずかに額に脂汗を浮かべているのを見て、まだ我慢できていることに感心した。
相当圧迫感があるはずだが。
表情は変わらない。まだ客だった男は現れていないのか。そいつが来たらポケットの中のコントローラをすぐさま動かしてやる。
……ぽん。
軽く肩を叩かれ、思わず振り向くと。
そこにいたのは、大学時代の恩師――俺にとってはこの学問に進むきっかけを与えた人物、桑原博士だった。
「桑原先生……!」
「久しぶりだな、有馬君。このたびは受賞、おめでとう。君の論文はたいしたものだったよ」
まさか師からそのような言葉を貰える日が来るとは。
恐縮です、と言うだけで精一杯だった。
「先生にお越し頂けただけでも嬉しいです。お名前は招待状にありましたが、まさかいらっしゃるとは」
「ところで隣にいる女性を私にも紹介してもらえるかね」
「もちろんです。――神奈、こちらは」
振り向くと。
神奈は軽くお辞儀をしていた。
「……え?」
「いつぞやは……」
「やはり君か。相変わらず変わらないな。今は有馬君のところにいるというわけか」
「……はい」
……な?
知己……。
そうとしか思えないやり取り。
神奈を知る人間は限られている。事実、ここにいる招待客のほとんどが神奈と初対面だ。
知っているとすれば、それは。
かつて、神奈を――買ったことがある人間だけ。
「ここでは話もできないだろう。少しテラスに行こうか」
夜風は冷えるからこれを、と博士が神奈にショールを手渡してきた。
その慣れたやり取りを見て、明らかに二人の間に親しみ以上のものを感じ取った。
……まさか。
だが桑原博士はいま70歳をとうに過ぎている。そろそろ80歳に近い。
……俺の知らない過去か。
神奈を見下ろすと、覚悟を決めたかのようにきつい眼差しで睨みつけてきた。
……なるほど。
確かに、言おうとしていたな。だが俺が変な嫉妬で名前を聞かなかった。聞かなかった俺が悪い。
しかし桑原先生が、神奈と……。
想像がつかない。
あとで詳しく聞き出してやる。だがいまは、大人しく話をきいてやるか。
神奈の肩を引き寄せ、その細い腰にも手を回した。ビクッ――と反応する身体に構わず、師の後をついていく。
バイブは勘弁してやる。
だが話次第ではいつでも動かしてやるぞ。
そんな意味をこめて身体の感じる部分をドレスの上から触りながら歩いていた。
「有馬君、……やめたまえ」
「え?」
「彼女に何を仕込んだのか知らないが、かなり辛そうだ。……あるいはその逆か。神奈、口の端が歪んでいるな。まだ快楽を抑えられんのか」
「……すみません」
……唖然とした。
神奈の性癖を熟知している。いや、これは……。
「先生……あなたは、まさか」
「彼女に性技を仕込んだのは私だ」
「……っ?!」
「40年ほど前だがな」
「……42年前です」
「そうだったかね。よく覚えているな。そうか、君は記憶力がいい生徒だった」
「……生徒?」
「セックスだけではなく、ありとあらゆる学問を叩きこんだのだ。いずれ私の跡を継いでくれると思ったのだがな」
「昔の話です。……いまさら何を仰っても無駄です」
「だろうな、有馬君ですら君をあしらいかねているようだ」
…………。
信じられない……。
俺が産まれる前の話とはいえ。
神奈が、師とこれほど濃密な関係だったとは。
ただの客どころか、これはもう……。
「先生、……あなたは神奈を囲っていたんですか」
どうしても聞かないわけにはいかなかった。
神奈の肩をギュッと掴む。……抵抗はなかった。
「君の想像通りだよ」
「なぜ、……神奈を」
「彼女の母親の葬儀がきっかけだ。
「神奈と関係を持った」
「そういうことだ。母親と同じ道を辿らせるつもりはなかったが、もともと売春で知り合った関係だ。その娘に手を出してしまうのは必然だった」
そういうことか。
母親も売春をして生計をたてていたのか。……神奈は幼い頃からそれを見ていた。
桑原先生は俺とは違って真面目なタイプだ。だが、神奈のせいで狂ったのか。
……桑原先生の研究は、まさか。
神奈の存在がそもそものきっかけだったのか。
「……神奈」
「広大さん、あなたの嫉妬は、……無意味なんです。私はこの人をなんとも思っていませんから」
「だが、40年以上前に、君は先生の世話になっていたのか。……淫らな関係も」
「違います、あれはただの……」
「手ほどきだよ。生きていく手段だと言うから、教えてやったまでだ」
な……?
つまり、神奈を売春婦にしたのは、この人なのか。
神奈に快楽を植え付けたのも……。
「君も気づいているだろう。彼女は普通の人間ではない。石の力がなければ生きていけないのだ。その力を増幅させるには、性の快楽が必要だ」
「……え?」
「神奈、話していなかったのかね」
「…………。必要、ありませんでしたから」
「……なるほど。ほぼ毎日されているということか。よほど君に憑りつかれたらしいな」
神奈が。
初めて憎悪を剥き出しにした顔を目の前の男に向けた。
こんな顔もできたのか。……知らなかった。
「あなたとこの人は違います」
「だろうな。私は君をただの研究対象としかしていなかった」
「待ってください、先生。今の話は本当ですか」
「詳しくは彼女から聞くがいい。……有馬君、一言だけ言っておく。いずれ君は私と同じことをするだろう。神奈は……」
「――言わないで!」
――バサッッ……
悲鳴のような神奈の声がホテルの庭園にいた鳥たちの羽根を動かした。
こんな……。
こんな神奈を初めて見た。
この二人はもう関係を絶っている。だが。
俺にはわからない、確かな繋がりのようなものを感じさせた。
「私はもう必要ないようだ。有馬君、彼女を頼む」
振り返ることなく立ち去る師の後ろ姿を、ただ見つめることしかできなかった。
神奈は――。
俯いたまま、唇をキツく噛み締めていた。
パーティ会場に戻った。
スピーチがあるというのもそうだが、そんなものはどうでもいい。……神奈だ。この女、まだ何かを隠している。
俺の知らない過去。――猛烈な嫉妬で気がおかしくなりそうだ。しかも相手はあの尊敬する師だったことが、なおさらやりきれない嫉妬で渦巻いていた。
「――皆さん。私の研究を共にしてくれるこの女性を紹介します。名前は波多乃神奈。まだ女子高生ですが、学力は博士号を取得できる程のものです。彼女がいてくれたお陰で論文が完成したともいえるでしょう」
会場から大きな拍手が湧き上がった。
神奈を見ると――恐縮そうな笑みを浮かべているが、こめかみの脂汗が言っている。そろそろ限界らしい。
だがまだ解放してやるものか。
神奈の手を引き、檀上から降りると、彼女の背中を押して皆の前に立たせた。
隠し持っていたコントローラーを起動させる。
「――っっ!」
内部で神奈の子宮に食い込んだディルドが蠢く。
だが微動だにしない彼女にむしろ感心した。握手を交わしていく神奈に、さらに激しく振動を与えた。
「……っ」
「神奈、こちらは共同研究者の今川教授だ。ご挨拶しなさい」
「は、……い。……はじめまして、波多乃、神奈です」
「あなたが広大さんに多大なインスピレーションを与えたという方ね。ぜひお会いしたいと思っていましたの。……どうかなさいました? 顔色が」
「い、いえ……大丈夫です」
「きっと会場の熱に煽られたのでしょう。今日はここのホテルに予約してるので、神奈を連れて行こうと思います」
「ま……、そういうことですか。可愛らしい方ですものね、広大さんも手が早いこと」
「言われたぞ、神奈」
「……違います。私はただの、……助手です」
「そういうことらしいです。では、……神奈、そろそろ」
「あら、うふふ。仲の宜しいこと」
神奈の肩を抱き寄せ、見せつけるように歩くと、よろよろと神奈が身体を傾けてきた。
それを見た皆がクスクスと小声で笑う声が聞こえる。これでこの女と関係を持っていることが知れ渡った。もし神奈に目をつけていたやつがいれば、思い知らせることができただろう。
――ビクッ……!
神奈がイった。こんな道具で立ったままイかせるなど、面白くないが、――これは罰だ。
聞き出してやる。
俺の知らない過去を。
神奈がどう言おうと、あの師の瞳の奥には――俺への憎しみが宿っていた。