「ふぅ……」
ようやく父親が部屋を出て行ってため息をついてベッドから立ち上がったそのとき。
お尻の下で「んごっ」という豚の鳴き声のようなものが聞こえた。
「きゃっ」
もぞもぞと動く物体。――しまった、忘れていた。
しかもずっとお尻の下に隠していた。幸い羽毛布団だから多少膨らんで見えてもパパには怪しまれなかったけれど。
慌てて布団をはがしてみると。
気絶したように意識のない有馬たくやが横たわっていた。
「ちょ、ちょっと……大丈夫?」
まさか息をしていないとか……と思って鼻元に手をあててみる。
苦しそうに眉間に皺を寄せているが、どうやらただ眠っているだけらしい。
なあんだ、とホッとしたが、同時に少しだけ腹が立つ。
いくら非常事態だったとはいえ、仮にも女の子のベッドで眠ってしまうなんてどういう神経をしているんだろう。
「ちょっと、有馬君! さっさと起きて……んっ」
引き寄せられた。
ものすごい勢いで腕ごと絡みつかれ、そのまま彼の胸の中に抱きしめられた。
(な……っ?!)
いきなり、なに?!
澪は慌てて腕の中から逃れようとしたが、きつく抱きしめられて離れられない。しかも……。
ちょうど胸の谷間に彼の顔が埋まってしまって、動こうにも動けなくなってしまった。
「ちょ、あ、ありま……っ!」
「……さ、ん……」
「え……?」
「かあ、……さん」
胸の中で……呟く彼の声に。
澪は、言葉を失ってしまった。
たくやは澪の胸に顔を擦りつけて匂いを嗅ぐ仕草をしていた。……それが。
まるで本当に母親の胸を求めているような、切ない姿で。
思わずぎゅっと彼を抱きしめた。
「有馬……くん」
彼の母親――有馬博士の前妻はずいぶん前に亡くなったのだということを、澪は知っている。
今の彼の義母は、彼とそう年の違わない若い女性だということも。
だけど……本当はずっと寂しかったのに違いない。
代わりになどなれないかもしれないけれど。
せめて夢の中だけでも……。
「仕方ないわね……。今晩は泊めてあげる。こんなサービス、有馬君にだけなんだからね」
口では仕方ないと言いつつも、顔がつい綻びそうになる。
こんな彼を見れるのは、きっと私だけ。
そう、私だけ……。
一条先生にだって誰にだって見せたくない。渡したくない。
こんな甘えるような、縋りつくような、子供みたいな姿……私だけのものなんだから。
「…きゃっ!」
いつの間にかたくやの手がお尻のほうにまで回ってさわさわと撫でてきた。
眠っていても本能のまま動く手に思わず引っ叩いてやりたくなったが、――くすっと小さく笑った。
「有馬君……」
抱きしめる。
彼の匂い。彼の身体。……彼の仕草。
そのすべてが澪をたまらなくときめかせていた。
……口の中が、甘い。
澪は薄目を開けた。キス――されていた。
ああ、そうか……と口づけに応える。彼から教わった。キスってこんなふうに口の中を掻き混ぜ、絡み合わせるものだと。
最初はこんなの変よ、と言ったけど。
されるがままに流されていたら、なんだか本当にだんだん気持ちよくなっていって。
……キスがこんなに激しいものだなんて知らなかった。
なんでも知ってるんだから。私が知らないいろんなこと、なんでも。……でも。そんな彼が好き。
……でも。
こんなに甘いものだっただろうか。甘いというか、これ……。
「ん、……ぅむぅっ?」
「駄目だ。……飲んで」
口の中をこじあけられるように飲み込まされたそれは。
小さな飴玉だった。
グレープ味の。舌にわずかに残る味でわかった。
こんなの、どうして持って……。
「ズボンのポケットに入ってた。……ま、一個しかないから澪にやるよ」
「だ、……駄目よ! ごほっ、ごほっ」
「おい、大丈夫かよ」
無理やり飲まされたせいで気管につまりそうになったが、なんとか唾で飲み込んだ。
……飲んでしまった。
涙目でキッと目の前の男を睨みつける。
「どうして!」
「どうしてって?」
「たった一つしかなかったんでしょ? どうして私なんかに飲ませてしまったのよ!」
拳を握りしめて起き上がる。
その拍子で肌の上に掛けられていたワンピースが床にはらりと落ち、全裸で彼を見下ろす格好になったが構わない。
たくやは落ちた服を再び澪に掛けてやろうと起き上がったが、その手を振り払った。
「こら、澪。素っ裸のままじゃ風邪ひくぞ」
「誰が脱がせたと思ってるのよ」
「……俺でした。いや、それとこれとは。とにかく、服を着てくれ」
「嫌よ」
「澪」
「なんで飲ませたのかって聞いてるの!」
はあ、とたくやは小さくため息をつくと、澪の身体を引き寄せて背中から抱きしめた。
嫌がってもがく澪に構わず、包み込むように手で優しく撫で擦る。
「ちょ、ちょっと……!」
「ほら、少し身体が冷えてる。汗が引くまでは裸のままでもいいけど、このままの格好だと本当に風邪ひくぞ」
「ごまかさないでよ!」
「……澪。身体、どこか痛いところとかないか? 疲れただろ」
「……う、……」
「痛むんだろ?」
「ちょ、……ちょっとだけアソコが。だって有馬君が何度もするから……」
「……悪い。ちょっと興奮して加減できなかった。だからわずかでも糖分が必要なんだよ。俺も少し舐めたから大丈夫だ」
「でも……ほとんど私が」
「いいんだ。……顔、少しだけ元気になってきたな」
頬と額に優しくキスされる。……気遣ってくれている。それが伝わった。
――バカ、なんだから……。
ぎゅっと抱きしめると何か固いものがお腹にあたった。……また膨らんできてる。さっきしたばかりなのに。
呆れて彼の顔を見上げると、バツが悪そうに目を逸らした。
それを見て可愛いと思えてしまうあたり、――惚れた弱みというものなのだろうか。
「ね、もう一回、して?」
反応している彼の男根をズボンの上から撫で擦りながら可愛らしくおねだりしてみる。なんだか、誘ってるみたい。自分が信じられない。
でも、こうお願いすると……。
「バカ、……知らないからな」
固い石の床に横たえられると同時に激しく口内を貪られた。
そう、さっきもこうやっておねだりするたびに、どんどん熱く激しくなっていった。
そのたびに身体の奥から何かが弾けて、彼とひとつに混ざり合って溶けていってしまうみたいで。
生きて出られるかもわからない、こんな閉じ込められた洞窟の中で。
今まで生きてきたなかでこれ以上はないほどの幸せを感じていた。
(バカなやつ……)
恍惚とした表情でキスに応える澪を見つめながら、――憐れみを感じていた。
こうして抱くごとに彼女の顔に生気のような、生きる喜びのようなものが溢れていくのがわかる。だから応えている。でもそれ以上の意味はない。
それを知ったら、きっと……。
(俺のこと、軽蔑するんだろうな……)
澪のことは可愛いと思う。好きだと――思う。
でも彼女への想いは極限状況下で子孫を残そうとする本能と密接に絡みついたものだ。
だからこうして何度も何度も繋がっている。
それでいいと思う。今は。
こうして彼女を死と絶望の淵から救いあげることができるなら。
澪の身体は、抱くごとにどんどん変化していった。いい意味で言うなら――女の身体に。
腰の丸みも、胸のふくよかさも、そして……。
子宮がどんどん重みで垂れ下がってきているのも。
……まあ、それだけ注いでしまったせいもあるけど。
「澪。……なか、少し出すよ」
耳元で低い声で囁くと、意味がわかったのか顔を真っ赤にして唇をとがらせ、ドン、と軽く胸を叩いてきた。
そんなこと言うなと言いたいらしい。
そんな彼女を見てからかいたくなる気持ちを抑えて真面目に言った。
「気持ち悪いだろ?」
「そ、……そんなことないもん」
「みーお。もう一回したいんだろ? 掻き出すから、掴まって」
澪の手を首にまわしてしがみつかせ、両尻を掴んで膣内に指を忍ばせた。
ほんの少し入れただけでドロリと熱い精液が大量に零れてくる。それに苦笑しつつ、恥ずかしさと快感に震える澪の目元に唇を寄せた。
できるだけ気持ちよくさせたかった。
中を掻き出すだけではなく、指の腹で膣入口の裏筋を撫でるように触れていく。次第に彼女の愛液が滲み出てきた。
感じる吐息にこっちも下半身が疼き出したが、澪の中を指だけでイかせたくなった。
「気持ちいい?」
「んっ……は、ぁ……ん」
「エロい声、出すようになったよな……」
「ば、バカ……あんっ……そこ……」
「わかってる、優しく触るよ」
触らずとも膨らみつつある陰核周囲を軽く撫でると、それだけで澪の身体がビクビクと震えて痙攣した。
感じやすくなっているのだとわかり、さらに奥深くまで指を根元まで差し入れた。……届くだろうか。
あと少しのような気がする。口づけに夢中になっている澪をちらりと見て、隙を見計らいながらさらに指を四本同時に押し込んだ。
「……っ!」
さすがにキツかったのか澪の目が見開く。にっこりと微笑んで出来るだけ優しく言った。
「ジッとして」
「な、……なに? まさか」
「大丈夫、触診したことがあるんだ、昔」
「い、いつの話よそれ!」
「親父とカンボジア行ったとき、現地の妊婦が道端で産気づいてさ。二人で子供を取り上げた。俺が子宮を開いて、親父が子供を引っ張って」
「う、そ……でしょ」
「子宮口ってけっこう広がるんだよな」
「それって妊婦の話でしょ!」
「さっきかなり出したからさ……中の、出さないと」
「い、……いい。遠慮する。します」
「痛みはないと思うから。指より太いの、入ったし」
「ちょ、……っと! ……あっ、……っっ!!」
垂れ下がっていたせいで容易に届いた。指の先端に吸い込み口が当たる。
澪がガクガクと震えて膣内を波立たせた。……ごめん、それ逆効果。
どっちにしろ少し出さないとこれ以上は彼女の身体の負担になる。
澪の身体を優しく抱きしめながら、指を二本、先端の穴に差し込んだ。
「……ぁ、……」
衝撃で言葉もないのか、小さく声を篭らせてる。
だがそのまま指を出し入れしていくと、……中から少しずつ掻き出されていく精液とともに。
澪の顔が快楽に染まっていった。
「…………」
……改めて、魅入る。
澪が美人だと気付いたのはわりと最近のことだが、これほどの美女だとは思わなかった。
わりと本気で好きになりそうだ。
ここから出られたらまず彼女と恋人になろう。
そして結城の奴に見せつけよう。……それはさすがにかわいそうな気が。
「あ、……有馬、くん……おね、が……ぃ……」
ハッ――、と気付いた。もうだいぶ子宮の中を掻き混ぜてしまった。澪は震える声で助けを求めていた。
そんな彼女に口づけながら、十分に固くなっている自身を膣入口に押しあてた。
彼女の太股やら性器周囲は真っ白に染まってしまったが、そんなのは後回しにする。
「悪い、後で洗うから」
「いいの、早く……!」
澪の足が背中に回されると同時に深く最奥まで突き挿れた。
その瞬間、内部がぎゅうっと締まってジワリと熱いもので包まれていった。挿れただけでイったらしい。
もう可愛いとしか思えなかった。
澪の頭を抱えるように抱きしめ、腰を動かしていく。最初から飛ばしているのに澪は疲れた様子もなく動きを合わせてきた。
「は、うっ……、あっ、あ……ありま、くんっ……!」
「澪……名前で呼んで……」
「んんぅっ……有馬、くん……あぅっ……」
「俺の名前、……たくやって」
「あっ、……たく、……や……」
澪に名前を呼ばれただけで、――熱く膨れあがる。
その状態のまま子宮口に押し込んで熱い飛沫を注ぎ込むと、澪が幸せそうな顔で微笑んだ。
そんな彼女に微笑み返す。
「生きていたい?」
「……うん」
「じゃ、諦めないって約束な。俺も最後まで足掻くから」
「うん。……最後まで一緒にいて」
澪の声は、いつの間にか。
嬉しそうな涙声に変わっていた。
澪ルートの洞窟えっちでした。
一回しかやってない感じでしたが、何回も何回もやった設定にしてみました。あんな生きるか死ぬかの状態でそれはないと思いますが。
澪の気持ちはわかりやすいルートなんですが、たくやはどうだったのか……。
結論:えっちして恋しちゃったと思います。
セーレスに対してもえっちして好きになったような感じがしたし。