その後のセーレスとの結婚生活がメインになります。
例によって続きます。
今回は序盤ということでエロシーンはないです。すみません。
個人的な設定として、たくやはセックスの相手をイかせたくないという性癖があります。
「い、たたた……」
ユーノを抱きかかえながら浴槽の中へと入ったとき、お湯がとある部分に染みて思わず声が出た。
彼女に吸い上げられた乳首が……痛い。
もう正面には抱かない、と赤ん坊のユーノの背中を前にしてお湯につかった。
また吸われてはたまらないからな……。
それにしてもめちゃくちゃよかった。感じた。赤ん坊の乳首を吸い上げる強さに感嘆した。
あんなことを毎回されているセーレスは一体どれほど感じてるんだ。それとも感じてないとか?
ユーノを見下ろす。
無邪気なものだ、お湯をパシャパシャと指で跳ねて遊んでいる。
赤ん坊なのだから仕方ない。油断した俺が悪い。もう二度と彼女に乳首は吸わせない。
……いや。
またやってくれないかな。
できればセーレスがいないところで。
赤ん坊に乳首を吸わせるなんて、男親の特権みたいなものだろ。
……違う気がするが。
「だあ、だあ」
「よしよし」
こっちを振り向きそうだったので、頭を撫でながら大人しくさせようと抱きしめる力を強めた。
おまえのせいなんだからな。
セーレスにだってこんな恥ずかしいこと言えるか。
乳首を吸われて感じたなんて。
……なんて。
…………。
………。
……思い出した。
感じたことが、昔あった。
美月さんだ。
あの人に責められ続けたことがあった。
乳首ローターとサックをつけられ、バイブでずっと扱かれ続けた。
あのときの責め苦を思い出しただけで、……息子が勃ちはじめた。
なるべくユーノに当たらないように上に持ち上げる。
なんで今さら……。
あの時のことなんて思い出すんだ。
もう帰れやしないのに。いや、帰る気もなくなった。
なのに、――なんで。
「だあぁ、ぱぱぁ」
「そろそろ上がるか、ユーノ」
しかし、赤ん坊って……意外と重い。
湯からあげた途端にかかった重さで思わずよろめいた。
よいしょ、と声をあげて浴槽から出て、扉の外にいるはずのセーレスに声をかけた。
「おーい、セーレス。ユーノ終わったぞー」
声をかけるが。
ウンともスンとも言わない。いや、彼女は言葉を話せないのだが。
それでも扉くらいは開けるだろうと思ったが、――開かない。
仕方ないな、とユーノを抱きしめながら扉を開けると。
バスマットの上に二人分のタオルだけが用意されていた。
「……セーレス?」
どこに行った?
食事の支度でもしてるのか?
いつもは風呂から上がると、ニコニコとしながらタオルを拡げて出迎えてくれるのに。
「仕方ないな、ほら、ユーノ」
くしゃくしゃと髪を拭き、身体を拭いてやる。
産着と替えの服の用意はちゃんとしてある。
なのにセーレスの姿だけがいなかった。
「…………」
なにかが……。
直感のようなものだが。
なにかピン――と張りつめた空気みたいなものを感じた。
その意味を知るのは、わりとすぐだった。
夕食の間。
セーレスは一度も視線を合わせようとしなかった。
ユーノへの授乳を済ませると、そのまま寝室へと行こうとする彼女の手を引っ張って、胸の中に抱きしめた。
「なに怒ってるんだよ?」
そう、顔は穏やかなのに、なぜか怒気を感じる。
今まで感じたことのない静かな怒りだった。
こんな彼女を見たのは初めてかもしれない。
だが心当たりがまったくない。
だから聞くしかないのだけど。
彼女は――言葉が話せない。
こんなとき、意思伝達手段が他に何かあればいいのに。
前は筆談とかも試したが、この世界の文字は俺には解読不可能だった。
喋る意味は通じても、文字が違うのではどうしようもない。
「聞いても話せないのはわかってるよ。だけど理由を知りたい。理由もなく怒られても俺にはどうすることもできないんだ」
胸の中で。
セーレスは言いにくそうに唇を噛み締めている。
その唇を奪おうと顔を近づけた途端。
拒絶して、腕の中から逃げようとした。
「……なんで?」
なおももがいている彼女を見下ろして、少なからずショックを受けた。
ユーノが生まれた。
幸せな時間に包まれている。
三人で過ごすときが、このうえなく幸福で。
そんな日々なのに、――どうして。
セーレスが、腕から逃げようとするのをやめた。
そして……。
たくやの服をたくしあげて。
右の胸の乳首を吸い上げた。
「……っっ?!」
いきなりの愛撫に戸惑うが、これが返答だとでもいうのか?
だとしてもなおさらわからない。
しかもその吸い方……。
まるでユーノと同じ。
小さな舌で捩じ切るように乳首を吸い上げ、口全体がまるで性器みたいな……。
なんで……。
娘と同じ吸い方なんて、するんだよ!
「やめろっ!」
彼女の身体を突き放すと、右の頬に乾いた音がした。
引っぱたかれた。
まったく痛くはないが、あまりの挙動に唖然とする。
どういうことだ。
話してくれないとわからない。だけど――!
セーレスは言葉が話せない。
完全に詰んでいた。
セーレスを見ると。
泣きそうな顔でこっちを見ている。どう見ても俺が悪いような、そんな表情。
そんな泣きそうな顔をしないでくれ。わけがわからない。いったい何をそんなに悲しむんだ。
ユーノみたいなことしなくても……。
みたいなこと……?
ひょっとして……。
「見てた、のか……?」
俺がユーノに乳首を吸われて感じている姿を。
だが、彼女に助けを求めたときは、ユーノを胸に抱きしめている姿しか見えなかったはずだ。
セーレスにだってそんな姿見られたくなくて、服を合わせて隠していた。
それより前を、……ずっと見てた?
――だとしても。
怒る理由がわからない。
相手は赤ん坊だ。嫉妬する対象ではない。
見ても笑い話になるだけのことだ。
もう一度セーレスをよく見てみる。
まだ……怒っていた。
涙目の向こうで、静かな怒りを感じる。
……違う。
ユーノにされたことでこんなふうに怒っているわけじゃない。
それはわかるが、他の理由が思いつかない。
そもそもいつからこうなっていた?
ユーノをお風呂へと託されたときは、こんな感じじゃなかった。
いつも通りの、普段とまったく変わらない、穏やかな彼女だった。
変だと思ったのは、突然浴室前から消えたことだ。
いつも扉の前で待機していた彼女がいなくなっていた。
別に変わったことがあったわけじゃない。いつもと同じようにユーノを洗って、自分もついでに洗って、風呂につかっていた。それだけだ。
そりゃ美月さんのことを思い出して、勃ったりはしたけど。
本当にそれだけの……。
「…………」
セーレスの顔が、また――。
泣き顔から純粋な怒りへと変わっていく。
――え?
……まさか。
そんなはず……。
だけど……。
もう、そうとしか……。
「――俺の考えが読めるのか?」
セーレスは。
目を見開いて、――明らかに。
失敗したといった顔をして、口元を押さえ、その場から逃走した。
思い返してみると。
そうとしか思えない挙動がいくつかあった。
あれが欲しいな、と心の中で思っていたら、セーレスが後ろから釘を手渡してくれて、サンキュ、と言いながら家の修繕をしたり。
疲れてへとへとで家に戻ると、セーレスが温かい蜂蜜酒を用意してくれて、気がきくなと感謝したり。
あんなの家に戻った時点で作ってもおかしくないのに、なぜかすでに作って待っていてくれた。
他にも他にも、――思い浮かべるだけでたくさんある。
なんで今まで気づかなかったんだ。
むしろそうじゃないとおかしいだろ、と思えることがこんなにあるのに。
……つまり。
彼女には、俺の心の中が筒抜けだったということか。
そのことについては別にどうとも思っていない。むしろそうじゃないとここまで深い仲にはなれなかったかもしれない。
結ばれて、子供まで生まれた。
会話もできないのによくケンカもせずここまで……。
ケンカか。
いまがまさにその状態かもな。
はあ――、と深くため息をついた。
そうと知っていれば。
美月さんのことなんて思い出すんじゃなかった。
ユーノにされたことから連想するとか、間違っても連想なんてするべきじゃなかった。
むしろ今の今まですっかり忘れていた。
セーレスが怒るのも当たり前だ。
まさか俺があんなことされていたとか、考えも及ばなかっただろう。
どうしたら。
どうしたら誤解が解けるだろう。
いや誤解もなにも、本当のことだから、誤解じゃないんだが。
今は彼女しか見えていないのだと、そう伝えたくても、出ていったきり戻ってこない。
探しに行こうか。
だけどなあ。
顔を合わせるだけで逃げられそうだ。
――コトリ。
背後から、扉の締まる音がした。
振り返るとそこに、……今にも泣きそうな顔のセーレスがいた。
戻ってきてくれた。
ホッとして肩を落とした。ともあれ、怒りはもう解けたらしい。その気配は感じられなかった。
手招きする。
なにか声をかけたいが、声をかければまた逃げてしまいそうな気がして、手招くしかなかった。
セーレスは、……おずおずと。
申し訳なさそうな顔で近づいてきた。
「……ごめん。俺が変なこと思い出したせいだよな」
ふるふる、とセーレスが首を振った。
「君が怒るのも無理ないよ。……言いたくないけど、昔、付き合ってた人がいたんだ。別れたけど」
言い訳みたいに語り始める。
だけど正直に告白することしか、今の俺にはできない。
「その人に、よく虐められていた。俺のほうが年下だったからさ、いいように弄ばれたよ。だけどそれが俺にはたまらないほど魅力的で……」
ダメだ。
言えば言うほど彼女を傷つけかねない。
これ以上傷口を広げるべきではない。
セーレスは……。
また少しずつ怒りの沸点が近くなっているように見えた。
「だ、だから! もう昔のことで! 今は君とユーノがいるだろ? 俺は今がすごく幸せなんだよ」
それはそうと。
これはちゃんと聞いておきたかった。
「俺の心の中って、どれくらいわかってるの?」
セーレスの表情が固まった。
彼女がずっとそのことを隠したがっていたのはわかってる。
そりゃ人の心の中なんて、知りたくもないだろうし、それを知ってしまったら苦しむことだってあるだろう。
だけど。
今の俺にとって、それはむしろありがたいことなんだ。
そう思った途端。
セーレスは不思議そうな顔で見つめてきた。
「だってさ、俺がどんなふうに君を想ってるか、それもわかってるってことだろ?」
だからこうやって君を……。
君のことを力いっぱい抱きしめることができる。
腕を引っ張ってセーレスを引き寄せ、彼女の腰や背中を撫でながら、優しく抱きしめた。
「それが伝わってるなんて、嬉しいとしか言えないよ。そりゃエッチなことばっかり考えてたりするけど、それでも君が応えてくれるってことは、つまり」
君だってエッチなことがしたいってことだろ?
そう心の中で呟くと。
セーレスは。
ずるい、とでも言いたげに胸をぽんぽんと叩いてきた。
可愛い。
もう可愛いとしか思えない。
「……セーレス」
顔を近づける。
すると、自然と、彼女も目を瞑った。
気持ちが伝わる。
こんなキス――今までしたことがなかった。
「ん、……んぅ……」
彼女の小さな呻き声が聞こえて、やる気のスイッチが完全に入った。
今夜はもう、――離さない。
セーレスの腕がかすかに震えていた。
「……怖い?」
俺の本気が伝わったんだろう。今までとはわけが違う。
そう、……もう彼女にどう思われようと構わない。
彼女にあれをすることしか考えられない。
今まで嫌われるのが怖くて避けていた。
だけど、もう無理だ。
彼女と心と身体も深く繋がりたい。
「俺の考えがわかるなら、逃げてもいいんだ。だけど」
逃がさない。
そう心の中で呟くと。
セーレスは目を見開いて驚いた顔をしたまま固まった。
今回からセーレスとのセックスがメインになります。
ここからどうやって彼女が耐えてきたのか、明らかにしていきたいと思います。
ユーノと違って言葉を話せないので、かなり難しいのですが。
それもあって今まで書きたくても無理かと思ってました。
この作品を読んでいる友人の一人が、無理じゃないからセーレスを読みたいと言ってくれたので。
背中を押される形で書いてみることにしてみます。
どこまで書けるかわかりませんが、お付き合い頂ければ嬉しいです。