美月ルートといってもいいでしょう。
今回はたくや嫉妬編です。
美月さんの――正確には歴史学研究室の準備室だが。
ほぼ利用しているのは美月さんだけだった。なので彼女の私室みたいなものだ。
狭い部屋だ。資料が雑多に置かれて、足の踏み場など少ししかない。
だが中央にある教卓だけは立派で、重厚なマホガニーの机で据え置きの椅子まで皮張りの立派なものだった。
龍蔵寺が取り寄せたものらしい。――おそらくは美月さんと、するために。
その部屋で。
いつものように激しいセックスをしていた。
彼女を教卓の上に押し倒し、背後から貫いている。最初のセックスの時と同じ構図だが、違うのは。
あの時ほどがむしゃらにがっついていないことだった。
初めての女性の膣内に身体の芯から震えるほどの快感を覚えた。吸い込まれるその襞の一枚一枚を存分に味わい尽くした。どこを突けば感じるのか、どこを抉れば反応するのか、どうやって――イかせようかと。
手探り状態で動いていた。それを彼女はクスクスと笑いながら俺の動きに合わせていたのを覚えている。
今思えば。
彼女は童貞の俺に抱かれる快感を初めて感じていたのかもしれない。
誰だって初めてはそうだ。手加減も余裕もない。そうした反応に翻弄される自分に、彼女は酔っていた。
それでわかった。
この人は天性の淫乱だ。
だから俺なんかの誘いを受けたのか。
好きとか愛してるとか、そういう気持ちなどこの人には関係ない。
なら――なぜ?
あの男に執着するのはなぜだ?
むしろ依存してるといってもいい。あの男のどこにそんなに惹かれるんだ。身体か。それとも何か他の、俺にはうかがい知ることもできない何かが……。
――ガチャリ。
扉の鍵が反応した。
二人で視線を交差させる。この部屋に来る人物など限られている。
身体の下で美月さんが顔を上げて俺にどくよう言ってきた。言葉ではなく目線だが。
……あの男だ。
美月さんは俺との関係を隠している。こんなふうに慌てるのはあの男以外にいない。
このときの俺は、――おそらく嫉妬で狂っていた。
彼女の中から抜きながらも、心の中では激しい憎悪をあの男に向けていた。
抜いた直後、彼女の手を引き、教卓の椅子に座らせると。
俺は机の下に潜りこみ、椅子の下から彼女の膣内に――口を寄せた。
「……っ」
股を開かせ、指で中の精液をほじくりだす。
そうしながらも舌で精液を味わうように陰唇を撫でながら優しい仕草でクンニした。
彼女が机の端へと手を伸ばして耐えている。
知っている。こうやって優しく指と口で愛撫されることに弱いことも。激しくするより感じることも。
あの男の前でどれくらい耐えられるのか見せてみろ。
扉の鍵が開いた。
「……いつから鍵なんて掛けるようになったのかね」
不満そうな声で入ってきた、大人の声。
初めて聞いたその声に、――やっぱり聞き覚えがあった。
親父だ。
親父と一緒にいた男。確か同じ研究をしていた……。
「申し訳ありません。少し一人になりたくて」
「まあいい。この後すぐに大学に行くが、ついでに寄ったまでだ。美月君、運転を頼む」
「……はい」
「どうした? 汗が…」
「いえ、少し……なんでもありません」
龍蔵寺が近づいてきた。
バラされたくなければ大人しくしろ。
とでもいうかのように彼女の膣内へと指を深く挿入する。
弾みで潮が噴き出してきた。……感じてる。この状況で。どれだけ淫乱なんだ、この女。
「手が汗ばんでいるな」
机の下から男が彼女の手を掴んだのがわかった。
ビクッ――と膣内が反応する。音を立てないように愛液を啜ると、彼女が息を殺したのが伝わった。
これ……。
俺も興奮してきた。
バレたら最悪だ。退学どころじゃない。殺されるかもしれない。
なにせあんたの女を、俺がついさっきまで貫いていたんだから。
「具合が悪そうだ。運転はいい。早く帰りなさい」
「……申し訳、……ありません」
……おい。
どんだけ鈍いんだ、この男。
いや、美月さんの演技がうまいんだ。
それだけ表情をうまく隠してる。
「美月君、先日の件だが……」
コツコツ、と龍蔵寺の靴音が鳴り響いた。立ち去ろうとする間際に足を止めて声をかけてきた。
「妻との離婚調停に入った。弁護士に話を通してある。君の要求通りにするつもりだ。……ただし」
ガチャ、と取っ手を回しながら、男の冷たい口調が投げかけられた。
「世間体もある。冷却期間を設けるから、それまで当分会うのは控えるつもりだ。言いたいことはわかるね?」
「……ええ。仰る通りだと思います」
「今夜、アーバンホテルの1305号室に予約を入れておいた。軽い変装でもしてくるといい。それと、……これを」
パシッ――と龍蔵寺が何かを投げる音がした。
「部屋の鍵だ。先に行ってくれて構わない。後でフロントに連絡を入れておく」
「わかりました。……お伺いします」
「美月君。くれぐれも間違いを起こすようなことはないと思うが……私に子供など必要ない」
「…………」
「その意味では君のように女の武器で引き留めるようなことはしないことに、感謝してる」
龍蔵寺が扉を閉めて出て行った途端。
机の下から這い出て、彼女を再び教卓の上に押し倒した。
「あいつとホテルに行くのかよ!」
そもそも、当分会うのは控えるとか言っておいて、なんだこの変わり身の早さは。
そう言葉には出さずにムカムカとした顔をしていると、
「公に会うのは控えるという意味よ。……裏ではこういうこと」
「それで? あいつと寝に行くのか」
「……だったら?」
「行かせない。俺とずっとここでセックスしてろ」
「子供みたいなこと、言わないで」
「どうせ俺は子供だよ。だったら俺の言いたいことだってわかるだろ!」
「……たくや」
美月さんの腕がギュッと首にまわされた。
耳たぶを優しく甘噛みして、息を吹きかける。その仕草に頭がクラリとした。
まるで媚薬だ。もしくは催淫剤。言い方はどっちでもいいが、彼女の誘うような仕草に脳の髄まで痺れてくる。
「時間まで続きをしましょう。……ね? いい子だから」
「……美月さん」
「なに?」
「どうあってもあいつの所に行くんだね」
「先生に誘われてしまったんだもの。女の武器――じゃないけど、彼を引き留めるにはこれしかないの」
「俺は……引き留めることができないのか」
「たくや。明日、たくやの傍にずっと一緒にいてあげる。同じホテルにいらっしゃい。違う部屋を予約しておくから」
「…………」
「ほら、拗ねないで。……挿れてちょうだい。さっきの愛撫、とてもよかったの」
かなわない。
こんなふうに譲歩されたら、もう従うしかなかった。
それほど美月さんに溺れていた。
「……んっ」
ゆっくりと……。
焦らすようにカリ首を捻じ込んでいく。
潤った蜜壺はザワザワと取り囲むように男根を一斉に締めつけて、なおかつ先端を吸い上げてきた。
こんな極上の彼女の秘所を、……あいつが踏み込むのか。
俺がここまで慣らすのに、どれほど時間をかけたか、あいつは知っているのか。
「た、……くや……んんっ」
熱い、と彼女が囁いた。そりゃさんざん嫉妬に狂って猛りまくっているからな。熱なんてとっくに暴走してる。
だけど――それがイイんだろ。
そう。
美月さんは、俺をわざと嫉妬させて、その反応を楽しんでいた。
性のスパイスくらいにしか思っていない。
俺はそんな彼女に……惚れていた。
「美月さん、……ほら、足でもっと俺を引き寄せて」
「あ、あん……そこ……いい……」
「知ってるよ、イイとこ全部。……俺しか知らないんだ。ざまあみろ」
「ふふふ……可愛い……たくや」
「もっと、もっと……感じてくれ。優しく抱いてやるよ。俺から離れたくないって、言うまで」
そんなの、言っても無駄なのに。
時間になれば彼女は離れていく。
あの男のものになるために。
だから。
今だけは――俺のものだ。
「あ、ぅ……っ!」
腰を持ち上げて深く挿入した。グリグリと奥の閊えを感じるように突きまわしていく。
彼女の腕が背中にしがみついて、足も腰を引き寄せてきた。
もっとだ。もっと求めてくれ。欲しいだけくれてやる。俺の精を全部吐き出してやる。
射精すると同時に、出しながら子宮口を穿つと、ビクビクと孔の周囲が震えて男根を締め上げてくる。
まるで……絞り取ろうとするかのように。
彼女の尻を鷲掴み、深く、深くへと奥を目指した。……あ。子宮の中を感じる。
残りを全部放出すると、美月さんがひきつけを起こしたかのように感じたまま気絶した。
「……美月さん?」
このまま起こさなければ……。
あいつの所に行くことはできない。
いや、無理だ。まだ時間はたくさんある。どっちにしろ彼女は行くだろう。
子宮の中――精液でいっぱいだ。
せめて。
これで妊娠してくれればいいのに。
俺って、着床率、低いのかな……。
今まで何度も中出ししてるのに、彼女はなかなか妊娠しなかった。
おそらく避妊薬を飲んでるのだろう。いや間違いなくそうだ。それでも受精してもおかしくないほど出してるのに。
一度だけ――中出しを拒んだことがある。
たぶん、龍蔵寺に出された後だ。あいつの精液を出したくなかった。だから……。
くそ……。
どうしたら。
どうしたらこの人の心を掴むことができるんだ。
俺なんて遊び相手くらいにしか思われてないのに。
「美月さん……」
尿道の残りをすべて彼女の子宮内に注ぎこみ、後ろ髪をひかれながら孔から出ると、そのまま。
孔の中央に亀頭を押しあてたまま、彼女に口づけした。
言わないけど。
絶対に言わないけど、眠っている今だけ言わせてくれ。
「愛してる……」
俺の恋人に……なってくれ。
こんな関係はいやなんだ。
遊びなんかじゃなくて、俺と真剣に……。
口づけを深めながら、言えない言葉を頭の中で繰り返していた。
嫉妬するたくやを書きたくなりまして。
肉欲に溺れているだけじゃなくて本気で好きになった頃です。
告白するのはもう少し先になります。(告白はするんだ)