「こんなもんかな……」
籠につめた木の実と野草、それに川で釣った魚を見て、そろそろ帰るかと腰をあげた。
この世界の季節があまり変化ないのが助かった。冬場とかだとこんな収穫は得られそうもない。自給自足がこれほど大変だとは思わなかった。
だけど。
一人だけならきっと生きるのにも日々が辛かった。
今は彼女と二人でいる。……少し前までは三人だったけど。
託されたのだ、あの人から――彼女を。守り抜くと誓った。だから。
もう二度と辛いなんて思わないことにした。帰りたいとも――思わない。
セーレスと二人で、生きていくと誓ったのだから。
「ただいま」
遠くから家の前の井戸で洗濯物を洗っている彼女を見ながら声をかけると。
洗っている衣服を地面に落としたのも構わず、嬉しそうにたくやの傍へと走ってきた。
「お、おいおい」
ほんの少ししか時間が経ってないのに、セーレスは待ちわびたような顔でたくやをぎゅっと抱きしめた。
匂いを嗅ぐような仕草をしながらしがみついてくる。……思わず胸が高鳴った。
荷物を置いて、彼女を抱きかえした。
「ごめん、待たせたかな。そういえば散歩に行くって言ったんだっけ。ついでにいろいろ採ってきたから、後で夕飯にでもしようか」
「……」
「え? なに? お腹はすいてないって?」
最近になってようやく、セーレスが何を言いたいのかがわかるようになってきた。
目元、唇、語りかけるような仕草。訴えかけるような微笑。
そして、……導かれる手の動き。
「……なんだい?」
セーレスは自分のお腹の上にたくやの手をのせた。そして撫でるように動かしていく。
しばらくその手の動きをじっと見つめていたが。――やがて。
彼女が何を言いたいのかわかると、信じられない思いで彼女の笑みを見つめかえした。
「え……ま、まさか……」
こくん、と頷くと唇を寄せてくる。
触れるだけのキスだが、その柔らかい感触に硬直したような身体の緊張がほぐされていった。
そう。
彼女は、身篭ったのだと言っているのだ。
「本当に?! 本当に出来たのか?! ……やったあっっ!!」
たくやは大声で叫ぶとガッツポーズをして、それからセーレスを高く持ち上げた。
急な所作に戸惑う彼女に構わず、そのままくるくると高くまわしていく。
「子供が出来たんだ! 俺の子供が! マジなのかよ、信じられない……! セーレス!」
高く掲げながら叫び、そして涙を流して彼女を強く抱きしめた。
……この世界に来て、やっと。
本当の居場所ができた。
家族ができた。
どうして喜ばずにいられるだろう。
「セーレス……ありがとう」
たくやのとめどない涙に、セーレスはただ申し訳なさそうに手を伸ばして涙を拭おうとした。
その手を取って彼女の唇を深く重ねた。柔らかい金髪に手を差し入れて愛撫しながら、ひたすら感謝の意をこめて口づけした。
暖かい吐息と、セーレスの微かな感じる声。
それだけでも幸せを感じていたのに、もうひとつ幸せを与えられるなんて……。
「名前、なんてつけようか。男でも女でも、どっちでもいいや。いや、待てよ。妊娠したんなら滋養を取らないと。セーレス、家事なんていいからゆっくり休んでくれ。ああ、でも、少しは運動したほうがいいってなんかの本に書いてあったような……」
まくしたてるようなたくやの言葉に。
セーレスはやっと安心したような微笑みを浮かべた。
その夜。
たくやはずっとセーレスのお腹を撫でて、擦っていた。
ベッドで横たわり、裸の彼女を抱きしめながら、寒くないようにシーツを寄せていく。
彼女の体温はとても暖かくて、こうして抱きあってるだけで先程の熱も溶けてしまいそうだった。
「いいのかな……妊娠したのに、こんなことして」
「……」
「ごめんな、嬉しくてつい……。できるだけ負担ないようにするからさ」
セーレスは首を振ってたくやを優しく見つめた。彼女も求めていた。それが伝わる。
彼女のお腹を撫でてみる。
この中に、新しい命が……。そして、自分が注いでしまったものが、まだたくさん残っていた。
膣入口に指を差し入れてみる。
ドロリとした白い精液を見て、生殖にはもう意味のなさないその液体に苦笑した。
「まあ……いっか。出しても、きっと害はないだろうし。……なあ、もう一回いいかな」
答えるかのように、セーレスはたくやに唇を寄せた。
触れるだけのキスから次第に熱く激しい水音へと変わっていく。自然と腕がまわされ、お互いをきつく抱き締めた。
彼女の胸を愛撫すると。
ため息のような、小さな喘ぎ声が口づけの合間に零れてきた。
「セーレス……」
乳首を舐め、乳頭を吸い上げ、豊満な胸を揉みしだく。……気のせいか、サイズが少し大きくなったような。
形も、弾力も、柔らかさも、愛撫するごとに変化していっているようだった。
おそらく、身篭ったことで女性の身体が少しずつ出産へと切り替わっているせいもあるだろう。
それだけではなく、自分の手で変えられていくのだと思いたかった。
彼女を自分だけの女に変えているのは、紛れもなく……。
「もっと、……もっと感じてくれ。セーレス」
「……ぁ……っ」
「ここ……もっと舐めて欲しい?」
彼女の快感を引き出すように聞くと、恥ずかしそうに頬を染めて頷いた。それだけでたまらなくなる。
乳首を引っ張りあげるように吸うと、肌が粟立つように震えて軽く達したのだとわかった。
そのまま時間をおかずにイってる状態のまま勢いよく男根を挿入すると。
ずるい、とでも言いたげな顔で唇を尖らせた。
「ははは……。俺も、気持ちよくなりたいからさ。じゃあ……ゆっくり動くよ」
中は、先程出した精液と、再び染み出している愛液のおかげで、なんの抵抗もなくスムーズに動いた。
セーレスの中がたくやを迎え入れようと形を変えて、動きに合わせてうねりが強くなっていく。それに身を委ねるように動いた。
「ん、んっ……だいぶ、馴染んだよな……気持ち、いいかい?」
「……っ、…………」
「大丈夫、心配しなくても奥まで突かないよ。大事な大事な、我が子を驚かせたりしないさ。……ほら、こうして掻き混ぜるだけでも、気持ちいいだろ?」
感じる吐息を隠すこともなく、セーレスは口づけをねだりながらもっと、と求めていた。
――可愛い。
愛しさがこみあげる。かつて好きになった亜由美さんに抱いた想いとは、また違うものだけれど。
こうして抱いて、愛し合うたびに、どんどんセーレスのことが好きになっていった。
まして……子供まで身篭ってくれた。
どんな宝物よりも彼女を大切に思う。彼女のためなら死すら厭わないと本気で思った。
――行かせるものか。
彼女が帝都から逃げ出したのならいずれ迎えが来るだろう。だが何が来ようと彼女を渡すつもりなどない。
俺の妻だ。
ずっとここで暮らせれば、他に何もいらない。もう彼女のことしか考えられなかった。
「……セーレス。少し、激しくするけど……いいかい?」
それまでの穏やかな動きをずっと続けていてもいいけれど。
彼女をもっと貪りたい気持ちが溢れてきた。――だけど、もう肉欲でもなんでも構わない。
欲しいと心が求めていた。
「……」
「……うん。わかってる。妊娠初期が危ないってのも知ってる。だけど……君が欲しい」
「……」
「絶対に傷つけたりしない。ただ気持ちよくさせたいだけなんだ。……信じてくれるかな」
セーレスは不安げに瞳を揺らしたが。
仕方ないから信じてあげる、とでも言うかのように悪戯っぽい笑みを浮かべて。
大きく股を広げてたくやの背にしがみついた。
「サンキュ、…な」
ぐいっと彼女の脚を持ち上げ、腰を両手で掴む。
少しだけ自身を抜くと、……まだ膣口が広がりを見せたまま。
これが吸い上げる動きになるまで、ひたすら突き上げるつもりだった。
子宮口は避けなければならない。だから、深くは挿れられない。
でも彼女の感じる部分はわかっていた。
「じゃあ、掴まって……」
ズルッ――と一度全部引き抜くと、そのまま。
固い状態を保ったまま折り曲げるように腹部を突き上げる動きをした。
「……っ!」
セーレスの顔に一瞬痛みのようなものが走ったが。
内部の締め付けがきつくなった。感じている証拠だった。
そして抉り回す様に、膣裏を外側に向けて突き上げていく。
彼女は自分の状態が見えていないから気付いていないけれど。
秘部の上――土手から少しあがった部分が、目に見える形で突き上げる男根で盛り上がっていた。
その卑猥な姿に興奮がさらに煽られていく。
「セーレ……ス……っ!」
辛いのだというのはわかるが、とめられなかった。痛いほど激しくしないと快楽は得られそうもない。
それに、ここを突くとセーレスは嫌がって避けていた。きっと感じやすい部分なのだろう。彼女のGスポットなのかもしれない。
だから、――感じて欲しい。
もうこれなしではいられないほど、淫らに求めて欲しかった。
「セーレス……怖がらないで、いい……感じてくれ、もっと……」
ズンズンとひたすら突き上げていく。しがみつく彼女の手が爪を立てて背中を傷つけていた。だけど痛みなど感じなかった。
膣内が熱くてたまらない。棹全体が溶けてしまいそうなほど激しく蠢いていた。
気持ち、いい……。
頭の芯がふわふわとなって身体がバラバラになりそうだった。このまま死んでもいい……。
セーレスは感じすぎて涙を流して声もなく喘いでいた。そんな彼女に優しく口づけながら、下半身の動きだけをどんどん激しくしていく。
……やがて。
引き抜く動きに、物足りないとでもいうかのように、膣口が吸い込む動きをしてきた。その吸引の強さに腰が砕けそうになる。
もうセーレスは痛みも感じていないようだった。涎を流しながら感じ入った表情をしているのを見て、奪うように深く口づける。
快楽の極みを味わっていた。
それはお互いに、同時に――だが。
耐え切れずに吐き出した精がその時間を壊してしまった。……もう少し長く感じていたかったのに。
とめどなく弾けていく。お腹の上のほうで射精を味わっている彼女は、まだ絶頂を感じているようだった。
「……ん、……ぁ……」
「……熱い?」
「……、……」
「男とは、違う感覚なんだろうな……。でも気持ちよさそうだから、良かった」
「…………」
「どうした?」
ようやく正気に戻ったセーレスが、たくやの胸に指で何かを書いていた。……読めないが。
たぶん、……ありがとう、とか? そういうことを言いたいのだろうか。
そんな仕草だった。
「いや、まあ……その。……どういたしまして。……ていうか、大丈夫か? 痛みとか」
「……っ」
「ほら、動くなって。……腕、貸してやるよ」
セーレスの頭を腕の中におさめて抱きしめる。
すると穏やかな吐息を零して、すぐに眠りへと陥った。
ちょっと……疲れさせたかも。
さすがに反省した。だが、こんなに彼女を求めたのも久しぶりだった。
「よっぽど嬉しかったのかね、……俺」
子供、か――。
父親になるなんて実感がまだわかない。だけど生まれたらきっと自然と自覚していくものなのだろう。
「オヤジも……そうだったのかな」
今まで考えまいとしていたのに。
こんなときにその顔を思い出す。
妻のことだけを考えよう、とたくやは眠るセーレスを見ながら深い眠りへと落ちていった。
異世界編を我慢できずに書いてしまいました。
ちなみにこれ、シリーズ物にする予定なのでそのうち続きを書きます。いつになるかはまだわかりませんが。
セーレスとの新婚生活話は妄想がふくらんでとまりません。
まあ、それも悲しい結末へとなるんですけど……。
また書きたいです。今度は香織と神奈のどちらかになりますが。