……足の指がくすぐったい。
ふうっ、と小さく息を吹きかけられた。それも指の間を。思わず引っ込めようと動くと。
ブンブン、と首を振ってセーレスが右足を掴んで握りしめていた。
「……なに、やってんの?」
セーレスはベッドからはみでているたくやの足を掴み、床に座り込んでいた。
いや――それだけならまだいいが。
彼女の右手に握られているもの。……果物ナイフ。
さあーっと青ざめた。
朝起きたら、にこやかな笑みを浮かべた妻が、右手にナイフを握って左手で足を掴んでいる。
「ななな、なにするつもりなんだぁっ?!」
「……♪」
「笑いながら不気味な挙動はやめてくれ!」
セーレスは片手でくるくると果物ナイフを回して、ジッとして、と言うかのようにたくやの顔を見つめた。
必死になって考える。昨夜、何か悪いことでもしたのか、俺?!
そりゃ何回も求めたけど、それ以上のことは何も……あ、そうだった、つい調子にのってアナルセックスを……。
嫌がったけどだんだん悦んでいくセーレスに夢中になって、つい何回も。
もしかしてそれが駄目でした?!
「悪かった、ごめん! もうお尻でやろうとか言わないから……!」
「……?」
「いや、でも、そろそろ臨月だからアソコはまずいんじゃないかと……わああっ、ごめんなさいごめんなさい、俺が悪かったからあ!」
セーレスがナイフを突き立てるように動かすのを見て、両手で顔を覆って必死に逃げようとした。
……が。
暴れる足を押さえつけて彼女が動かしたナイフは、……全然痛くなかった。
おそるおそる見ると。
セーレスはふぅふぅと息を吹きかけながら、たくやの爪をナイフで削っていた。
よく見ると小指から人差し指まで綺麗に研がれている。いま彼女が削っているのは親指だった。
「……(ニコッ)」
考えてみればセーレスが自分を傷つけるはずがなかった。――しかし肝が冷えた。
「お、おどかすなよ……」
「……♪」
「もしかして左足もやってくれたのかな。……ハハ、まったく気づかなかった」
セーレスは親指を撫で、少しずつ削りながら息を吹きかけている。時折、舌でぺろっと舐めながら。
……複雑だった。
素直に喜べないのは、昔、似たようなことを――されたから。
(美月さんが、ふざけて……)
彼女の部屋で目覚めると、足の指にペディキュアを塗られていた。
誰も見ないからいいじゃない、なんて言いながら楽しそうに塗る彼女にムカついて、力ずくで犯した。
そのときはバカにされているとしか思えなかった。年下だから。遊び相手だから。
苦い記憶だけど……。
こうしてセーレスが楽しげに男の指を弄っているのを見ると、もしかすると女性にとってこれは愛情表現のひとつなのかもしれない。
そういえば他にも膝枕をしてもらうと耳掃除をしたがったり、キスをすると歯磨きするように言ったり(仕草でわかる)、一緒に風呂に入ると決まって髪を洗いたがる。
男の世話を焼きたがるというのも、女性の持つ特性のひとつなのか。
そう思えば、悪い気はぜんぜんしなかった。
「…………!」
「お、出来たのか。ありがとな」
足の爪は十本すべて綺麗に整えられていた。別に爪なんてどうでもよかったが、セーレスの満足そうな顔を見れただけでいい。
だが、彼女の手はまだ足を掴んでいた。
「あの……セーレス?」
さわさわ、と撫でる彼女の手がくすぐったい。
セーレスはまだ物足りないといった様子でたくやの顔を見つめた。
「いや、そう言われても……。手の爪はこないだ切ったばかりだし。……違うの?」
「……」
「え? セーレスのを?」
コクン、と頷く。
そうか――とわかった。
彼女のお腹は産み月が近づいているのでとても大きく張っていた。そのせいで満足に靴も履けない。
靴が履けないなら爪だって切れるわけがない。
どれ、と彼女の足を見ると、確かに伸びていた。気になるほどでもないが……。
「たいしたことないから、このままでも。……え? 切りたい? いや、まあ、構わないけど。……なんで?」
「……」
「だって女の子って爪を伸ばしたがるものなんじゃ……。あ、俺のいた世界ではそうだったんだ。ここじゃ違うのかもな」
「……」
「……俺のため? なんで?」
セーレスは立ち上がると、たくやの背後にまわってぎゅっとしがみついた。そういえば全裸のままだった。彼女の吐息が背中にかかる。
「く、くすぐったいって。セーレス」
身を捩るが、セーレスは息を吹きかけ、指で背中を辿るようになぞった。その仕草だけで反応してしまう下半身が情けない。
だがそれに気づいてもセーレスはひたすら背中を撫でていた。次第にそれが特定の箇所だけを触れているのだとわかる。
……そうか。
彼女が触れているのは、傷が塞がりつつある場所。セーレスが爪を立てて、瘡蓋になっている部分だった。
そのため手の爪は常に手入れしているようだが、最近、行為がどんどんエスカレートしているので、しがみつく彼女が足の爪で身体のあちこちを引っ掛けている。
そういえば太股とか、背中にまで足の爪を立てていた。
「…………。いや、その、……俺のせいです。だからセーレスのせいじゃないから。こんなの痛くもなんとも……いてっ」
セーレスが太股をつねった。
そこもつい昨夜、彼女の足の爪で引っ掛けられた場所だった。
「……っ、……!」
「怒るなって。わかった、切るから。……いや、俺が控えればいいのか。じゃあ、子供が産まれるまではしないってことで」
「……!!(ブンブンッ)」
「いや、あのね。こういうことはもう本当にやめないと子供によくないだろ。産まれたらいくらでも抱くから。それでいいだろ?」
「……っ!(ブンブンッ)」
「駄目? やめるなって? ……あのな、どんだけしたいの君は。俺も大概だけど」
「…………」
セーレスは自らのお腹にたくやの顔を引き寄せ、抱きしめた。
マタニティ服(セーレスがアイリアの服を仕立て直した)の下にたくやの手を差し入れ、そのまま撫でる仕草を導いた。お腹の中で、もぞもぞと動くような感触が伝わる。
まだ七ヶ月だけど、お腹の子はすぐにでも出たがっているようだった。セーレスによるとこの世界ではこれで正常らしい。だいたい八ヶ月で出産するのだとか。
さすがにここまで大きくなるとセックスなんてとんでもない行為だと思うが。
セーレスはたくやの手をそのまま膣入口へと導き、求めるように促していた。
「……だから。ここはマズイって。だいぶ子宮が広がってるだろ」
「……っ」
「そんな泣きそうな顔しても駄目なものは駄目だ。第一、赤ん坊にだってよくない……え?」
「……」
「赤ちゃんが欲しがってるって? そんなバカな」
セーレスの手が、お腹と膣入口と、両方を触るように手を動かしていく。
何かを必死に伝えたがっていた。どうやらお腹の子供がたくや自身の感触を気持ちよく思っているとかなんとか……。
……なに、それ。
わけがわからない。というかそんなの聞いたこともない。それとも知らないだけなのか。
セーレスを見上げる。
ニコッ、と微笑んでたくやに行為を促していた。普段めったにセーレスから求めてくることなどないから、思わずドキッとする。
そりゃ……したいけど。
彼女の身体を思って、ここ最近――昨夜を除いて――ほとんど彼女をイかせるだけにとどまっている。
三ヶ月くらいまでは普通にセックスしていたが、ここ四ヶ月ほどは繋がっていない。昨夜我慢できずについアナルセックスをしたけれど。
もしかしてそれがマズかった……?
彼女を刺激してしまったのか。そういえばものすごく感じていた。触らなくても何度も潮噴きしたし、膣にしきりと手を伸ばして、そのたびに離してやったけど。
もしそれが原因なら。
「……セーレス。あのさ。またお尻を使うってのは……」
「っっっ!!」
「……駄目ですよね。いや、どっちにしろセックスだから子供にはよくないし。……え? そんなことない?」
「……」
「いや、俺、妊娠プレイってよくわからん。……ああ、違うって。別にプロポーションを気にしてるわけじゃなくて。むしろ興奮するけど。ただその、本当に身体に影響はないのかと」
「……」
「そう微笑まれても……困ったな」
セーレスは問題ないと言っているが。
考える限りのエロゲ知識を思い起こしてみても、……そういう嗜好はありませんでした。
年上とか巨乳とかコスプレとか、そういうのばかりだったような気がする。
本当に問題ないのであれば、――多少、興味がわいてくる。
やってみようか。
彼女の奥がどうなっているのか興味もある。赤ん坊は羊水の中で守られているし、激しく突かなければ大丈夫かもしれない。
セーレスのお腹を擦ってみた。
時折足で蹴っているのか、元気そうだった。セーレスはにこにこと微笑みながらたくやと一緒にお腹を撫でている。
「……じゃあ、その、少しだけやってみるよ。言っておくが、ちょっとでも辛かったらすぐにやめるからな。それでいいかい?」
「……(ニコッ)」
「あ、そうか。足の爪……。ま、そんなに激しくするつもりないし。ああ、うん。わかった、後で切ってあげるよ。……じゃ、横になって」
彼女の服を脱がしながらベッドに寝かせる。
窓の外から明るい陽射しが入りこんでいた。まだ朝だというのにこんなことしていいのだろうか。
……いや、いい。反対の反語。
脱がせた彼女の裸体は、目を奪うほど綺麗で艶があった。胸は大きくなって乳輪も広がり、張り出したお腹にとても興奮する。
こんな嗜好などないと思っていたが。
これはこれで、――アリかも。
ゴクッ、と喉が鳴った。いかんいかん、あんまり興奮するとセーレスに手加減できなくなる。
あくまでこれは彼女を満足させるためなのであって……。
でも癖になったらどうしよう。
ぐるぐると思考がまわっていると、セーレスが腕を伸ばして瞳を潤ませてきた。その誘いに抗えず、激しく口づける。
できるだけ彼女のお腹の負担にならないよう、体重をかけないようにした。身体を横向きにして首に手をまわし、胸を優しく愛撫していく。
乳頭を引っ張ると、……じわりと。何かが染み出してきた。
そう、彼女の身体はやがて産まれてくる赤ん坊への準備で、母乳が出始めていた。
セーレスはそれを飲んで欲しいといつもねだるが。
「それは、ちょっと……勘弁してくれ。胸が張って苦しいんだろうけど、俺じゃなくてそれは赤ちゃんのだし」
「……」
残念そうな顔をする彼女の頬にキスをする。宥めようとしても物足りない顔をしていた。
吸い上げたいけれど。
それを先に飲むのは産まれてくる子供だ。
それに、……それをしてしまうと。
泣いてしまいそうな気がした。母親を知らずに育ったが、かすかな記憶の中に母の乳をねだっていたような気がする。それをオヤジが嫉妬して。
覚えてもいないはずなのに、泣きたくなる。
セーレスを愛しているが、母の面影までは重ねたくなかった。
「……セーレス、足、広げて」
彼女の身体の下に枕を入れて、腰を高く持ち上げた。両足を大きく広げさせると、最初は恥ずかしがったが、やがておずおずと股を開いていく。
大きなお腹の下、……膣がぽっかりと口をあけていた。
そこは準備の必要もないほど潤っている。彼女がすでに感じているのが伝わったが、それでも念には念を入れておきたい。
ふうっ、と息を吹きかけると、ビクッと大きく足が揺れた。
「ハハッ、さっきの仕返しだ。たく、ナイフなんて持ってるから寿命が縮んだぞ。……セーレス、挿れる前に少し慣らすからな」
濡れている蜜壷の中に舌を差し込む。
セーレスがビクビクと感じ入る声をあげた。ずっと待ち望んでいたのか、たくやの頭を抱きながらもっと奥へと誘う。
そんな彼女に微笑みながら舌で入念に膣内部を掻き回し、吸い上げ、舐めた。
……いつもとやはり違っている。
中はとても広がっていた。産道が出来つつあるのか。ここから赤ん坊が出てくるのだから、広がらないととても人間など通れない。
これならどれほど膨張しても大丈夫かもしれない。むしろあらゆる角度から突くことが出来る。
彼女の感じる部分を舌で吸い上げると、それだけで痙攣して達した。いつもより感じやすくなっているようだった。
「セーレス。……気持ちいいかい?」
「……ッ(コクコクッ)」
「早く挿れろって? わかってるけど、もうちょっと。君の中、明るい場所で見るの初めてだから……もっとよく見たい」
セーレスが腰を突き出して激しく身悶えていた。感じすぎて涙を流している。中のうねりが目に見える形で蠢いていて、それがより興奮を煽った。
両手の指で大きく広げて奥まで覗きこむと、――息づいている入口が見えた。
……そうだ、ここには医者がいない。
取り出すのは自分しかいないのだ。妊婦の出産などわからないが、そうもいってられない。
家庭の医学の本で少しは読んでいるが、確か……膜が破れて、中から羊水が出てきて……。
必要なのは布と、鋏と、お湯と、あと何がいるんだったか。
ブツブツと呟きながら奥の子宮を覗きこんでいると、セーレスがポカポカと頭を叩いてきた。見上げると顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「ごめん、ごめん。……ちょっと考えてた。あと少し経ったら出産だろ。俺がついててやるから、大丈夫だ」
「……」
「まあ、その、俺も初めてだけど。経過は順調だし、こんなによく動いて元気なんだから、きっと五体満足で産まれるさ。……じゃ、そろそろ」
膣入口に亀頭をあてる。
入口付近で何度もキスしながら、セーレスの唇の中を味わい、片手でお腹を撫でる。早く挿れて、とせがむ彼女に愛しさがこみあげる。
入口の襞が欲しがって纏わりつく感触が気持ちいい。
こんなに欲していたのか……。なんだか、それだけでたまらなくなる。
そういえばずっと生理がないし、膣内は普段より感じやすくなっている。ずっと発情していたのかもしれない。
ズチュッ――……
カリまで押し込み、一度引いて、また内部へと潜りこんだ。……熱い。それに、柔らかい。
彼女が断続的に喘ぎを漏らして腰を必死に動かそうとした。だが、両手で膨らんでいるお腹ごと腰を押しとどめる。
「動かなくていいから。できるだけ、赤ん坊を刺激しないようにしないと。俺が動くから……セーレスはそのままで」
「……(プルンプルン)」
「一緒に動きたいって? 気持ちはわかるが、妊娠してるんだから、もう少し身体を考えてくれよ。……じゃあ、せめて」
枕をもうひとつ腰の下に入れた。
結合部が目の前に曝され、足をさらに広げて折り曲げる。これなら彼女がほとんど動かなくても自分だけ腰を振ればいい。
セーレスは両手でベッドの端を掴み、すべてを任せるかのように身体の力を抜いた。
「サンキュな。……じゃ、動くよ」
動かずともさっきから膣内のうねりが激しくなって、勃起を促していた。……これは早くしないと持ちそうもない。
探るように中を動かしていく。どこを突いてもセーレスがビクビクと跳ね上がった。きっと膣全体が性感帯のようになっていて、とても感じやすくなっているのだろう。
奥の閊えに先端が届く。
子宮をいつもより近くで感じた。リング状の入口が吸い上げる動きをずっと繰り返している。この中に……。
「……っ」
興奮が増した。
セーレスの腰を強く掴み、自分の方へと引き寄せて膣内を抉っていく。コツコツと奥を突くとお腹が目に見える形で波打った。子供にも伝わっている。
(早く、出てこいよ……)
彼女の子供を待ち望んだ。抱きしめて、キスをして、自分だけのものにしたい。
セーレスへの想いとはまた違う想いがこみあげる。どちらも同じくらい愛しかった。
何度も子宮口を突くと、応えるかのように吸い上げる動きを繰り返した。先端が愛撫されているみたいで下半身が砕けそうなほど気持ちよかった。
「……くっ、……は、ぁ……セ、セーレス……だめだ、もう……」
反則なほど気持ちいい。
柔らかい膣内と奥の子宮口の動きが、これ以上はないくらい快感を導いた。締め付けはほとんどないが、そんなの問題にならない。膣全体が悦んでたくやを迎え入れていた。
――ズッ、……ズリュッ、――ズッ……
いつの間にか噴いていた彼女の潮が、股の間とシーツを濡らしていた。その助けもあって摩擦はほとんどない。次第に動きが早まった。
グリグリと彼女の感じる膣入口の上の部分を押し込みながら回すと、足がたくやの下半身に纏わりつくように絡みついてきた。
少しだけ爪があたる。……切りたがっていたのはこのせいか。
だけど。
この痛みすらも快楽になるほど、もう何もかもが気持ちよかった。
「セーレス……ごめん、もう、無理……
コクコクコクッ、と激しく頷いていた。こんなふうにお互い無我夢中になるのも、久しぶりかもしれない。
彼女の奥の動きに促されるかのように、亀頭の先を穴へと潜りこませた。中の子供に当たりませんように、と心の中でそっと呟き。
そのまま勢いよく射精した。
「……ッ、…………!!」
「セーレ、ス……っ!」
出しながらまた動かしていく。彼女の膣内がより激しくうねりを増したからだ。中全体を味わうかのように子種を内部に染み渡らせていく。
長い射精の間、彼女は何度も快楽の極みを昇りつめた。
そんなセーレスになおも愛しさが募り、深く口づけしながら彼女のお腹を撫であげた。
「……赤ん坊、びっくりしたかな?」
「…………」
「平気だって? ……ハハ、それじゃまるで3P……いや、こっちの話。……セーレス、すごく気持ちよかった。君の中、いつもより激しくて。……え? 俺もそうだって? ……悪い、手加減するつもりだったけど。なんだ、それ。遠慮なんてしてないって。わかって欲しいけど、本当に、君と君の赤ちゃんが大事なんだ。早く産まれて欲しい」
「……(ニコッ)」
「うん。……きっと可愛いよ。君に似てるといいな。……ふわ、ちょっと疲れた。悪いけど、二度寝する……」
「……」
「後始末、……後で、する……から……」
意識を手放すかのように眠るたくやを。
セーレスは感謝でもするかのように、優しく抱きしめ、頬や唇に何度もキスをしていた。
新婚シリーズ第二弾でした。
その前に砂漠えっちを書きたかったのですが、妊娠プレイが書きたくて。はい、調子にのりました。ノリにノってしまった。
ちなみにこれはフィクションなので実際こんなことやったら間違いなく問題あります。
≪デラ=グラント≫の人間だから大丈夫、ってことでひとつ。
あとセーレスだったら丈夫そうなので、どんなプレイでも平気そうです。