――起きてきた。
もっとゆっくり寝ていてもよかったのに。
「おはよう」
「おはようございます」
トントン、と食材を切りながら振り返る。
匂いを嗅いだ途端、目が覚めたかのように顔が綻んだ。
「なに、作ってるんだい?」
「あり合わせですけど。茄の鴫焼と、出汁巻き卵、あと蓮根とオクラの和え物に、お味噌汁を」
「……これ、君一人が作ったの?」
目を丸くしてテーブルを見ている。
こんな貧乏くさい和食しか作れない。
普段の食生活が悔やまれる。
冷蔵庫にあるモッツァレラチーズとか、パプリカとか、イタリアントマトとか、ルッコラとか。
そういうのを使った料理がしたかった。
「すげー! 料亭みたいだ! なにこれ?!」
……え?
いただきます、と言ってさっそく食べ始めた。まだご飯もよそってないのに。
慌ててお茶碗にご飯をよそって置くと、勢いよく箸を運んだ。
「あ、あの、こんなものしか出来なくて」
「すげえ美味いよ。久しぶりだ、こんなまともな飯。ここんとこ亜由美さん帰ってこないからさ、食事は全部インスタントで済ませてた」
……なんだと。
じゃあ、あの冷蔵庫の食材は。
よく見ると。
消費期限が一週間以上経っている。
使わなくて良かった。
茄は……大丈夫、切ったときは新鮮だった。卵は大丈夫かな。
「神奈も食べろよ。めちゃくちゃ美味い」
「……はい、いただきます」
カウンターの隣に座ってボソボソと食べた。
いつもの、味気ない食事なのに。
隣にいる彼を見ていると、それだけで美味しく感じられた。
「あ……と、つい神奈って言っちゃったな」
「いいえ、いいですよ」
「でも学校では呼び捨てに出来ないだろ」
「もともと、あまり私に声をかけてくる人、いませんし」
そう、あなたくらい。
誰も私のことを気にかけていない。むしろそれがありがたいけど。
「じゃあ俺たちのこと、公認の恋人同士にするか」
「……え?」
「そうすりゃ君にちょっかいかけてくるヤツもいないだろうし」
「……いませんよ、そんな人」
ジ……と彼が見つめてきた。
「あの?」
「神奈、君には自覚がないんだな」
「はい?」
「いますげえ男子の間で君が注目されてるってこと」
「……私が?」
「とんでもない美少女が来たって、学園で注目されてるぞ」
……まさか。
そんな様子は感じられない。
出来るだけ目立たないように振舞っていたのに。
……あ。
そうか、それで。
女子からの嫌がらせがあったのか。
軽い悪戯だったから気にもとめていなかった。
くだらない。
いつの時代も、恋愛ごとにはみんな夢中になるんだから。
「否定しないんだな」
「え?」
「俺の恋人になってくれる?」
箸を置いて。
プロポーズみたいに両手を持って口元に翳した。
その様子に、きょとんとしたが。
心中はかなり怯えているのか、目の奥が泳いでいた。
……たくやくん。
広大さんの息子。あなたの成長をずっと見ていた。海外に連れて行かれたとき以外、ずっと。
私の生きがいのようなものだった。
それを昨夜実感した。
神奈はこのために生きてきたんだなって。
広大さんが言った通りになってしまった。たった一夜でたくやくんを虜にしてしまった。あんな途中で終わらせたセックスなのに。
……でも。
神奈はもうすぐいなくなる。
その前にたくやくんがいなくなるほうが先かもしれない。
本当に……神奈がたくやくんを導けるのだろうか。
「…神奈」
顔が近づいてきた。
応えて、口づけを交わす。
初めて貪るように咥内を荒されていく。……似てる。
口づけまで似てるなんて、残酷すぎる。
「は、……ふ」
「答えは?」
「は、……はい」
「いいんだな?」
「たくやさんの、……恋人になります」
嬉しそうに頭ごと抱きしめられた。
……そんなに嬉しそうにしないで。
いつか来る別れが辛くなるだけだから。
「…きゃっ!」
ひょいっと尻ごと持ち上げられた。
「昨夜の続きをしよう、神奈」
「で、でも学校に」
「一日くらいサボったって問題ないよ」
「ダメです。ちゃんと行ってください」
「……じゃ、学校が終わったら?」
「一緒に帰りましょう。夕ご飯、作ってあげますから」
唇に指を押し当て、約束するように片目を瞑ると。
ぎゅっと強く抱きしめて再び唇を塞がれた。
……なんて幸せそうに微笑むの。
あの人とどこまで似てるの。
ああ、……ダメだ。
このままだと。
またこの人を失ったら、今度こそもう。
神奈は生きていられなくなる。
「あーにきっ!」
……来た。うるさいのが。
「どーしたんスか? 噂の美人転校生と一緒に登校なんて」
纏わりついてくる後輩に、まてよ、と思いついた。
こいつを利用しよう。
「結城、おまえ、噂を流すのが得意だよな」
「人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。得意じゃなくて口を滑らせる…あわわ」
「それだ。(あちこちで口を滑らせてこい。)俺と神奈…チャンは、付き合ってるんだ」
「ええっ?!」
驚く結城の肩に両手をまわして内緒話のように話しかけた。
こいつはこういうマジもんの話に弱い。
「実はけっこう前に告白されてな。それで彼女とお付き合いするようになった」
「ほ、ほんとっスか?」
「今朝だって彼女の手作りの朝食をいただいたところだ」
これは本当のことだ。
結城はゴクリ、と喉を鳴らした。
「つまり……お二人は」
「同棲してる」
「えーっ?!」
「あんまり大っぴらに言うなよ。下手すりゃ退学処分になる」
「そ、そりゃそうっスね。でもたしか亜由美さんもいるはずでは」
「今は亜由美さん出張でいないんだよ。だからほぼ同棲だ。彼女が出張から戻ったら事情を話すつもりだけどな」
「ひょえー……。やりますねぇ」
「ああ、だから(あちこちで言いふらしてこい。)ここだけの話だぞ、いいな」
「わっ、わっかりました!」
敬礼して立ち去る後輩を見ながら。
あれはわかってないな、とほくそ笑んだ。
それでいい。
これで学園中に噂が広まる。
まあ同棲だと噂されても、家族がいるわけだから、同居とでも誤魔化せる。
これで神奈に告白しようとしていた連中は引き下がるはずだ。
伊達に俺が悪名を轟かせていたわけじゃない。
なんの自慢にもならんが。
「……ん?」
下駄箱に。
相も変わらず、またラブレターが入っていた。
いや果たし状の可能性もある。
どっちにしろ面倒な……と開けてみると。
『死ね』
たったこれだけの文字が書いてあった。
「なんだこりゃ?」
嫌がらせか?
質の悪い。
俺の下駄箱だと知ってのことか。
クシャッ、と紙を握り潰したが、……隣の下駄箱に。
紙のようなものがはみ出しているのが見えた。
神奈の下駄箱だった。
「……?」
中には……たくさんの紙と封筒。
見ると、他にも他にも、たくさんの罵詈雑言が連ねた紙が出てきた。
「…………」
この紙は。
隣の、神奈の下駄箱に入れるつもりが、間違えたものか。
普段からこんな嫌がらせをされていたのか。
気づかなかった。
それなのに、平然と彼女は靴を履き替えていた。
封筒に気づかないわけがない。
そのまま放置したのか。
まあそれが正しいけど。
……しかし。
面白くない。
美人で、スタイルがよくて、大人しい女の子を。
おそらくは同性の、女生徒が貶めている。
妬みか。……程度の低い。
転校してまだ間もないというのに。
あの噂。
俺の存在が、防波堤になるといいのだが。
玄関の扉を開けた瞬間。
背後から彼女に抱きつき、唇を吸い上げた。
「……っ、ふぁ、……っ」
同時に制服の下の下着をたくし上げていく。
安っぽい白い下着だけど。
どんな勝負下着よりも美しく見える。
恋って、……やっぱり盲目になるものなんだな。
「あ、……ちょ、……っ、や、やめっ」
そのまま。
彼女のショーツの下に指を潜りこませ、膣内を掻き混ぜた。
指だけなのに。
熱さが尋常じゃない。濡れ方も半端なかった。たったこれだけの刺激でもう準備が出来ている。
……売春のせいか。
やめさせよう。
俺と恋人になったんだ、やめると思いたいけど。
生活のために仕方なくするとも限らない。
「…神奈」
「こっ、……だ……さ……」
「……え?」
「や、やめっ……こ、こんなところで」
……いま。
誰かの名前を呼んだような。
気のせいか?
「鍵は、閉めたよ」
「…っっ」
「防音だし、音だって外に漏れない。ここでしても問題ないさ」
「そっ、そういう問題じゃっ」
「家に来たからには、こうされるってわかってただろ?」
一緒に帰りながら、夕飯の買い出しに付き合った。
レジ袋をその辺に置きっぱなしだが。
先に一発やらせて欲しい。
「我慢、できない」
「……っ」
「食べてからなんて無理。君を先に食べたい」
「~~~っっ」
「神奈、……ほら、照れないでこっち向いて」
顔を向けさせる。
神奈はおずおずと胸に手を当てて身を預けてきた。
……可愛い。
美月さんはこういうシチュエーションを好んだ。だから抵抗しても演技だけだ。
でも。
神奈の、本当はしたいけど、チラチラと床に置いたままのレジ袋を見て気になってできない様子が。
たまらなく可愛いかった。
「ここじゃ……いや」
「俺はここがいい」
「わが…まま……んんぅっ」
両尻を指で割り開いて、挿入していく。
立ったまま貫いた。
だが神奈の柔軟でしなやかな身体は、俺のペニスを素直に飲み込んでいった。
「は、ぅぅんっっ」
「すぐ……濡れる、んだな……」
「あ、あ、あぅ……っ」
「しかも……この姿勢でも……感じやすいのか」
「……っ、け、……軽蔑、……してください」
「どうして?」
「し、……仕事、……だから。……仕方、……ないの」
「しないよ、軽蔑なんて」
「…………」
「これからもするっていうなら、軽蔑どころか怒るけど」
「……え?」
「身体を売って欲しくないって言ってるんだ。金が必要なら俺がなんとかする」
「…………」
「そりゃ、自分の自由になる金なんてないけど、事情を話せば亜由美さんだって」
「……売春を、……やめろと?」
「あたりまえだろ」
「……今夜も、……あるんですけど」
「行くな」
「でも」
「退職しなさい」
「そう簡単には」
「俺が……行かせない!」
――ズンッ!
シューズラックの扉に神奈の身体を押しつけた。
両脚を持ち上げ、俺の男根を突き刺した状態でグリグリと体重をかけて深く突き挿していく。
内部が異常なほどよく締まった。
「ああぁっっ!!」
「くっ……」
神奈の子宮がおりてくる。
そこを目指して亀頭の先端を叩きつけるように突き込むと、痺れるほどの吸引力に思わず息がとまった。
こんな……。
こんな名器、他の誰にも触れさせるものか。
「あっ、だ、だめ、……そこっっ」
ここか。
子宮口の入口の裏側をカリで引っかけると、一際強く締まった。
そこを捲りあげるように捩じり込む。
「んんぁぁっっ…!!」
ギシッ、と扉の隙間から異音がした。
あまりに強く押しつけたから立てつけが壊れたらしい。
構うか。
神奈さえ壊れなければいい。
「は、はあ、……ふう、……か、……神奈」
力をなくしかけた神奈に息を吹き込むように口づけ、彼女の腕を自分の背に回させた。
そろそろ限界が近い。
彼女の唇を貪りながら、窺うように子宮口に先端を咥えこんだ。
「し……締めて、……くれ。ここを」
「あ……う……」
「もうすぐ、……出る。……出そう、だから」
神奈の子宮口が。
応えて、思いきり強く締めつけてくれた。……痛い。痛いけど。
気持ちいい。
このまま味わっていたいが。
場所が場所だ。もう終わりにしないと。
「……さ、ん……」
神奈が。
名前を呼ぼうとしてくれている。
顔を近づけて唇を啄んだ。
「なんだ?」
「神奈の……なかは……気持ち、いい……ですか?」
……なんて。
幸せそうに微笑むんだ。
あまりに眩しいその笑顔に、思わずつられてこっちも微笑んだ。
「……ああ、とても」
「……よ、……かった」
「君は……?」
「い、い……です……とても……あ、熱くて……」
「……うん」
「……せ……せい、……の……お、ちん……ちん……が……あ、暴れて……動き、が……すごく……つたわ……」
「…………」
神奈が。
卑猥な言葉で誘っている。
顔を見ると。
半分目がイっていた。
これは……。
感じすぎて、自分でも何を言ってるのかわかってないのか。
「神奈……」
これは応えてやらないと。
ここまで言わせて黙ってられるか。
「ほら……足をあげるんだ、神奈」
「は、……い……」
自ら足を開いて飲み込もうとする神奈の身体を、思いきり。
壊すほどの勢いで上下に激しく動かした。
途端にあがる悲鳴に、彼女の顔を肩口に預け、神奈が服を噛み締めてくる。
その痛みすら快感になり、ひたすら激しく突き上げた。
もうここがどこだろうとどうでもいい。
彼女をイかせることしか考えられない。
「くっ、……ぅぅっっ」
子宮口が。
今までの当社比3倍くらいの強さで締めだしてきた。
こんなに食らいついてくるものなのか。
たぶん神奈だけだ、こんなの。
女の器官がこんなに強く動けるはずがない。
だが構わない。
それが快感に繋がるのなら。
「は、……んぁぁ……っ」
神奈が……やっと。
絶頂を迎えた。
床に落ちる大量の潮、それを見ながら。
俺も。
限界とばかりに精液を迸らせた。
「……っっっ」
……避妊、していない。
だがとまらない。
そうか、昨夜出さなかった。……それでか。この量は。
ゴム、……つけるべきだった。
だがもう遅い。
この射精はとまらないだろう。
……いい。
神奈と結婚したい。
子供が出来たら、そうしよう。
いや、出来なくても、プロポーズしよう。
二人で家庭を築くんだ。
そう考えると、この射精も悪くない気がしてきた。
「か、……神奈?」
放心している。
少しだけ罪悪感を抱いたが、繋がった部分を見下ろして、その泡立った愛液と精液を見つめた。
罪悪感が一瞬で消し飛んだ。
二人が愛し合った証だ、これ。
脳裏に刻みつけた。……絶対に忘れない。
「神奈、……ダメか」
気絶していた。
そのまま彼女を抱き上げ、玄関を上がった。
そういえば、やっと靴を脱いだ。
今まで俺たち、靴も脱がずに、玄関でまぐわっていたのか。
……これも思い出になるかな。
「いて……」
今さら、ペニスが痛いくらいに腫れているのに気づいた。
射精しすぎた。
何日分だろう。……いや。
それを全部注がれた神奈は果たして大丈夫なんだろうか。
少し心配になってきた。
「風呂、……入るか」
タイマーで沸かしておいてよかった。
帰宅時間に合わせてある。保温になっているから今すぐ入れる。
神奈の身体を洗って、少しいたわってあげたい。
「……あとで、謝るけど。……告白もするよ」
眠っている神奈に呟いた。
……俺は。
もう神奈なしでは生きていられないのだと自覚していた。
なんとなくお分かりいただけたでしょうか。
神奈は抱かれながら広大と重ねてみてます。
神奈を責めちゃいけません。
彼女は寂しすぎて気が狂ってます。
人格分裂症一歩手前です。
1人でいる時間が長すぎました。
冷蔵庫の食材はピザの材料でした。
マルガリータ、食べたい。
作れませんけど。(高くて買えん)