剣士も女
「氷牙の剣……?」
ゼファの視界に映る氷牙の剣は、袖から腕を抜きながら衣服のはだけを広げていく。
そうして邪魔なものを脱ぎ払うとでも言わんばかりの無造作加減で自身の体より脱ぎ捨ててしまうのだ。
ばさっ
腰に差している筈の剣の鞘を装着したベルトは既にゼファの手で外されており、元より脱げかけていた服を脱ぐだけにそれほどの時間を要することもなく彼女は己が肌を露わにしていくと両腕の装具を外した。
続き指をかけた白い薄布、股間部を隠す下着を静かに下ろしながら脱いでいく彼女は自分をただ見ているだけだったゼファへと促す。
「あたしのことばかり見てないでおまえも脱ぎな」
「えっ……!? あの……えっと、脱ぐって……なにを?」
次第に裸へと近付く氷牙の剣の肢体に見惚れていたゼファは決まり切った答えしかない疑問を浮かべて声に出した。
その目には脚からするりと引き抜かれていく純白の下着が映し出されており、普通の精神状態だった彼の心音と体の熱を速く高くと矢継ぎ早に上昇させていく。
「教えてあげなきゃ分からないのかい?」
一々訊く必要があるのか?
普通の精神から再び熱を帯びた精神と体の状態へと切り替わりつつあったゼファに氷牙の剣のさほど鋭くもない指摘が飛ぶ。
自分で分かるだろうそのくらいのこと。こっちが脱いでいる時に脱げと言った意味など態々答えさせるつもりなのか?
責め咎めるような声音ではないが有無を云わせない静かなその声にゼファは慌てて自ら衣服を脱ぎ始めた。
「で、でもなんで脱ぐの? あれ……? ……なんで?」
首に巻く黄色いマフラーを取り、袖の無い簡素な作りの衣服を脱ぎながら少年は女性へと訊ねる。
水浴みをしようにも浸かる水溜まりや泉などこの洞窟は疎か周囲にも無いというのに裸になる理由が無い。
なのに自分も彼女もどうしてこうするのか。
「それをあたしに訊くとは呆れるね。あたしの胸元をはだけさせて体を触ってた奴がよくもまあそう呆けられるもんだよ……精神が図太いのか単純に子供故か」
「あ、あれはさだからそのっ、氷牙の剣の無事を確かめようとしてただけであって──」
靴を脱いだところでの真実半分言い訳半分の下手な受け答え。だが直後に目に入ってきたそれにゼファは言い訳の言葉を失った。
「う、わぁ……」
それは均整の取れた美しい肢体だった。
剣士故に見掛けからは判別不可能であっても全体的に引き締まっているのだろう。しかしすらりと伸びるしなやかな手足は勿論のこと、なだらかな曲線を描く腹部にも、ほっそりしたくびれを形成する腰部にも、凡そ全身くまなく探したところで無駄な肉は付いておらず。ただ上半身の中央、胸部にのみ大きく盛り上がる二つの実りがその存在感を示していた。
(お、オレ、女の人の体見るのって初めてだ……)
腹部の下方、両脚の付け根との境界には髪と同じ色をした淡い茂みが生え揃い茂みの下部には縦に一筋の線が入っている。
さながら股間を薄く縦に切られたように開く傷跡のような生々しい淡紅色の肉が見え隠れする筋には、汗にも見える水が染み出し焚き火に照らされててらてらと妖しい輝きを見せていた。
“剣士として鍛えられていながらも筋肉質を感じさせない完成された女性の体”
氷牙の剣の肢体は正にそんな印象を受ける健康的な“美”その物であった。
その美がゆるりと歩み寄る、硬直した少年の傍へと。
「ちっ、ちょっと待って! こんな間近でおっぱい見られても平気なのかよっ!」
羞恥に染まる顔は火を噴きそうなほど真っ赤。
触っていたときは半分以上脳の命令による催眠が掛かっていた物の、いざ正気のままに向き合うと恥ずかしさが勝つ。
それも今は靴すら脱ぎ捨てた生まれたままの姿だ。胸処か氷牙の剣の大切な所までがさらけ出されている。
そこを視てしまったことで心臓はバクバクと音を立てては全身に血液を送り出し、体を火照らせた“男”へと“少年の状態を”仕上げていく。
「何度も言うがあたしは大人だよ。一回りも年下のガキに体を見られるのくらいなんてことないんだよ」
「うっうるせーっ、ガキっていうな!」
「ガキだよ。あたしの胸見て顔真っ赤になってるじゃないか。ガキじゃないってならいっそ吸い付くくらいのことしてみせな」
「すっ、吸い付くって──……」
間近に迫った氷牙の剣は身長差の関係で自分の胸とゼファの顔が同じ位置になると知りつつ彼の眼前で向き合い惜しげもなく乳房を見せてあげながらそっと屈む。
「さてと、後はこれだけだね」
「えっ?」
そうして屈んだ彼女は掴む、ゼファの残されていたズボンを。
「脱がせるよ」
「ちょ──!」
強引に引きずり下ろされストンと落ちたズボンの下は、氷牙の剣に彼の状態をつぶさに教えてくれた。
無論ズボンの下とは下着以外に無い。その下着がこんもりと盛り上がっているのだ。
なにかを入れているように前方へと、斜め上へと、テントを張った様相に近い下着の状態を視た彼女が笑う。
「あっはは、なんだいゼファ! おまえこんなかわいいのをおっ立ててなにしようってんだい!」
盛り上がりの意味はその物その通り。氷牙の剣の体に反応して立ち上がったゼファ自身の剛直であった。
否、剛直と呼ぶには少し幼いそれは、男として実に当たり前の反応をしていたのだ。
*
「わ、笑うなっ! 男なんだからこうなるに決まってんだろ!」
子供だろうと男は男。故に異性の体を間近にすれば性的な興奮を覚えて感情と共に肉体も相応の反応を示す。
最後に残る下着をゼファ自ら脱ぎ捨てたあとに現れた、想像したとおりの子供らしい彼自身。まだ女を知らず表皮から解放されて間もない小さな桃色の一物が背伸びをするように直立している様子は大人扱いを望む彼の分身として相応しい姿であった。
別段おかしなことではないだろう、その辺りは氷牙の剣とて十分承知していたし、嫌悪も蔑みもあらゆるマイナス感情が浮かび上がることなど微塵足りとてない。
だが、彼女は続くゼファの呟きに自らもまた感情を揺り動かされることになる。
「ひ、氷牙の剣の体っ……、綺麗なんだもん……。なにも感じないで居るとか、そんなの無理だよ……」
「……」
思うところ無くまた体も反応させず、それは不可能であると少年は述べる。
「見てたらさ……頭が熱くなって、下半身も……、綺麗だって思う物いっぱい見てきたけど、断然綺麗すぎて……」
あまりにも魅力的で、あまりにも美しい。
少年の言葉は自身を女として捉えているなによりもの証であった。
(女か……、半分捨ててる筈なんだけどね)
剣を取ったときより女としての自分など半分捨てたと言ってもいい。
男に媚びる生き方も、男を求めたことも、剣士となって以降は一切無く、またそれまでの人生においても異性に対する興味や出逢いが無かったために今を以ても未経験だ。
下卑た目で視られることこそ其れなりにあった。しかしそんな目で視る輩に心揺れ動かされることもあり得ない。
「こうして自ら肌を見せたのはおまえが──あんたが初めてだよ。飾らず考えず直情的な感情を向けてきたのも」
「そんなに綺麗なのに……」
「そうなのかい?」
「うん、綺麗だ。ひ、氷牙の剣の体を見てたらそれだけで悩み全部ぶっ飛んじまうなぁ~って、くらいに」
目は彼女の体に釘付け、頬をぽりぽりと掻いているのは照れ隠し。
子供故に稚拙かつ単純となってしまう物の、精一杯伝えたい思いがその言葉には載せられていた。
「あ、ははっ、調子狂うねえまったく……、あたしはあまり率直に女として見られるの慣れてないから、そこまでの目で見てくれるなんてちょっと恥ずかしいじゃないか──……」
子供に体を見られることは恥ずかしくない。胸を見られようと、尻を見られようと、股間を見られることすらさほど羞恥することもないくらいだ。
年齢が持つ感性の違いはやはり大きく、大人と子供を明確に線引きした形と言えなくもないだろう。
しかしながら心は違うのだ。真正面より女として見られたことは確かにあったが、こういった形で直接訴えかけられることは数えるほどで耐性が無い。
「でもね、あたしはそういう世界で生きてきたんだ。女扱いされることはないしされたくもない、そういう世界で生きてると自分が女であることすら忘れちまうもんさ」
そんな自分はいま飾り気なしに女として見られている。
「久しぶりだよ。女であることを思い出させられたのは」
「そう、なんだ」
「そうさ……」
氷牙の剣は共に生まれたままの一糸纏わず肌をさらけ出し合った少年の手を掴む。
「おいで」
「う、うん……」
そしてその手を引き、岩肌のむき出す洞窟の壁際へと連れて行く。
「あんた……あたしを求めたいかい?」
「えっ──」
「あたしの胸を触って、唇を重ねてきたのは……、あたしを求めてたからだろう?」
手を引きながら問い掛けたのは彼の行いを批判してのものではない。
彼の行い、気絶していると思われていたときにされた口付けと胸への愛撫。
それらの女性にとっては本来屈辱的な行為ながら必死に求める少年に心を動かされ自ら受け入れ許した行為を肯定するものだった。
「あたしが生きてるのを喜びながらあんたはあたしを求めた……、あたしだってさ……女だよ。半ば捨てたと云っても女は女さ……。本心からあたしって女だけを見るような男があたしを求めてるなら、それも敵であるあたしの無事を喜ぶような優しい男が求めてるなら……応じてやりたいもんじゃないか……」
自らはその場で腰を下ろした彼女は戸惑う少年を振り返り岩肌に背を預ける。
「女であるあたしを求めてあたしが女であることを思い出させた……、そして曲がりなりにもあたしに勝ったゼファには勝者としてあたしを求める権利ってものを持ってるんだ」
掴んでいた手が放され、代わって立てられた脚を大きく開きゼファとの体ごとの触れ合いを彼女は求む。
「ゼファ……、どうするかはあんたが決めな。ガキんちょはガキんちょらしくあたしとお喋りだけするのか?」
挑発するように煽り言葉を交えながら。
「それとも、かわいいそいつをあたしに埋めて体ごとあたしを求めるか……、どっちでも好きにしな……」
好きにしろと宣いつつも、最後まで求められてみたいというメッセージを添えて。
*
「ガっガキって……いうなよ」
唐突なように見えて、互いに生まれたままとなった瞬間から少しばかり意識していたこと。
突き付けられたのはそれが現実で、彼女の側から申し出られたそれをいまゼファは逸りと焦りが不思議なくらい落ち着いてしまった心で受け止める。
「オレ、氷牙の剣が生きてて嬉しかった」
どうしてか分からないのはもう仕方のない事。
「なんか気づいたら胸、触ってた……。触りたいって思ったんだ……」
その答えを探したところでいまは意味のない行為でしか無く、心にとっても体にとっても邪魔なだけ。
「キスしたいなって思って、かわいいなって思って」
大人の女性に対してかわいいというのはきっと自分が子供扱いされるのと同じくらい嫌なことかも知れない。
だが感じた事を偽りなく伝えたいから敢えて飾らない、そも、言葉を飾ったりすることは苦手だ。
子供に多くを求めるなと、この時だけは無性に叫びたくなった。子供だから、子供の癖に、ゼファが一番嫌いな子供扱い。
きっとこれらを否定する気持ちがこの体を動かしてるんだろう。
頭の隅に浮かんだそれらを消し去って、体は脳の……いや心の命令を受けて動き出す。
開かれた脚、地面に立てられた脚、染み一つ無い綺麗な脚。
剣士として鍛えられた健脚、その間に少年の小さな体が進み来た。
「それはあたしを求めたい、交わりたいって返答だと受け取ってもいいんだね?」
「わ、わかんない、でも……、いっぱい、触れ合ってみたいなって思う……」
女剣士の胸ほどしかない背丈、小さな胴回り、細い手足。
少年の子供らしい体躯が、女剣士の大人の体躯に重なっていく。
「交わるとはどういうことか……それはわかってるんだろう?」
「う、うんまあね……。時々、泊まってる宿なんかで夜そんなことしてるんだろうなって声が、聞こえるから……」
とみに腰は、股間は、そこにある少年の男たる証は女剣士との触れ合いを求めて張り詰め、精一杯の大きさに膨らんでいた。
「仲良しだから、するんだよね……そういうの……。普通の仲良しじゃなくって、すごく仲良しだから……」
「さあ、どうだろう……。男女の情欲ってものはね、ひとたび火が付けば他人であっても交わらせる事、あるよ……」
「で、でもオレは違うっ……! オレは、オレは氷牙の剣とッ──」
最近になり漸く剥き出しとなった桃色が近づいていく。
女剣士の最も奥へと繋がる入り口へ、彼女の股間に花開く淡紅色の美しい花弁へ、少年の小さなモノが触れ高い熱を発していることを彼女に伝えさせた。
「友達とか仲間とか、そういうのよりも、もっと……ずっと仲良くなりたいから──だから」
未だ未熟ながらそれは彼女の深奥へ続く花弁の中央に添えられた。
滲み出る粘り、色のない透明な蜜が触れた男根に付着していく。
「この粘っこいの、どんどん出てくる……なんていうの、これ?」
「愛液なんて、呼ばれてるよ……男を迎え入れるとき自然に出る女だけの体液さ……」
花弁を潤わせる彼女の蜜、それは受け入れる準備が出来ているということを意味している。
ゼファの熱がまた上がった。胸の音はもう耳にまで響いてきそうなほど大きく、彼の体に発汗を促す。
「こ、ここだよね……入れて、いいよね?」
「そのために添えてるんだろ、それを……あたしにさ」
「あ、ああ……そうだよオレ、氷牙の剣と一つになるって、決めたから──」
捕らえたまま腰を押し出し、宛がわれた桃色の頭を蜜の溢れる泉の中へゼファはそっと……挿入した。
「うっ──ああ!」
刹那に漏れ出る彼女の甘い声。
体がひとつになった瞬間。
知らないはずなのにこの花弁のココへ挿れる。最初からわかっていたかのようにくちゅりと水温を響かせて入り行く幼さを表す桃色の頭は、大人でありながらも未だ男を受け入れたことのない美しく咲く淡紅の花弁を貫き奥へ奥へ進んでいった。
彼女の声を、求めたいと思った女性の声を脳内に焼き付けながら。
*
「ふっァァ──……あ、う……入って……くるよ、あたしの中を、進んでくる……、強く、こすれて……、じんじんするよ……」
洞窟に響く氷牙の剣の声。壁に押し付けられた背が僅かに浮いて、すかさずその隙間に両手を入れた少年が体ごと抱きついてくる。
全身を以て感じたい、全てで交わり触れたい、そんな強い意思が彼女の心に届いた。
「そうか、そんなに触れ合いたいのかい……このあたしと──……ゼファ、あんたはあたしを……、あたしの全てを……求めてたんだね……」
「う、んっ……、だってオレ──……、氷牙の剣と、仲良くなりたいもん……っ」
問われて止まる侵入。竿は半分まで埋められたところ。
まだ余力はある、きっと奥まで届く、花弁を貫き入って来た歳相応の小さなモノは彼の思いを込めて内部を強くすりながら、閉じた肉を割ってきた。
裂かれゆく肉、進み来る肉、同質にして異なる粘膜の塊が抱き合い触れ合う。
「痛い、くらいに……気持ちいい……、オレの出っ張ってるとこがこすれるの……、気持ちいいのに、苦しい……なんで、だろ」
「さあ、ね……あたしも少し……痛いから……、似たようなものじゃ……ないのかい?」
一方は男、一方は女。こうして一つになるべく存在する異なる性は、そうであるからこそ此処で結びついた。
女である自分を求めてきたゼファ、氷牙の剣という女だけを見て求めようとする少年。
(敵もなにも関係無くあたしだけを……、このあたしを……こんなにも……)
自身の生を喜び、自身を求め来て、会話よりも深く仲良く成れる可能性を強く秘めた男女の交わりをこの少年は選んだ。
挿入されたからこそ改めて感じ取れる純粋な思いは女を抱きたいという男特有の感情ではなく、ただ一途に仲良くなりたいという子供らしい思いだった。
ただ、それは強い。今までに向けられたどんな感情よりも強かった。
「オレ、好きになっちゃったのかも……、ドキドキして熱いし……っ、こんなことになってっ、嬉しいって思ってるんだ……、でも、なんでかな……交わったからって、そんなのだけじゃ納得できねえ……っ」
交わりを持って熱いのは確か。挿入されたモノを感じる氷牙の剣自身も熱い。体の疼きは増すばかり、秘め所を貫かれ内側を圧迫しこすれる感覚が気持ちよく、そして痛い。
だがゼファが言うのは肉体的ななにかについてではなく、根源的な感情の問題なのだろう。
本来交わりだけで相手に特別な好意を抱くのは、それは一時的な偽りの好意でしかない。
交わる相手のことを考え、その相手だけを思い、肉欲に溺れながら催眠術にも似た力を作用させることがあるのだ。
無論交わりから始まる関係もあるにはある。だがそれも数々の過程を経、濃密な時間を過ごしてから漸く実るもの。
それまでは所詮可能性、段階までの話で本物になり行くのかどうかは当人たちの意思、接し方が鍵となろう。
故にこれは例外の中のひとつだった。
(あたしに惚れた──ってことかい……?)
この子は優しくそして純粋だ。純粋だからこそ偽りではないとも云える。
交わりを以ってというのが納得できない。そこから沸き起こった感情ではない。
(嘘が言えそうもないこの子がそういうなら、そうなんだろう……)
全ては切っ掛けなのだろう。出逢ったことも、追い掛けたことも、ここでの出来事を経てこうして交わってしまったことさえも。
「それを確かめるためにも……、ほら、もっと奥まで……あたしの奥まで、入れてみな……。仲良くなるにも、まずはしっかりと……、触れ合わなきゃ……ね」
もしそうなら、その強いひたむきな思いを──切っ掛けを、本物に育て共有してもみたい。
(女、か……、あたしも、こんなあたしでも……惚れられること、あるんだね……)
女を捨てた自分に女を思い出させ、生を喜び求め来る……、なにより自分の為に涙を流してくれるだろうそんな少年に惚れられるのならば、女として本望だろう。
「ゼファ、あたしを惚れさせてみせな……、女としてのあたしをあんたは求めた……、だったら、頑張ってみせなよ……」
惚れさせてほしい。もし、ゼファの抱いた……ゼファの零した感情が嘘偽りのない本物であるならば。
大人と子供、剣士とシーフ、殺そうとした者と殺されそうだった者、立場や違いを乗り越えてゼファという男に氷牙の剣という女を惚れさせてみせてほしい。
「うんっ……オレ、頑張る……。男とか女とかじゃなくって、仲良くなるためにもいっぱい触れ合って……」
途中までで止まっていたモノが、氷牙の剣に背中を押されたことで動き出す。
半ばが見えていた竿は幹までが入り込み、愛液に満ちた空間を圧迫することで泡立つ液を外へ溢れ出させ、繋がる二人の股間を濡らしながら下腹部を隙間無く重ね合わさせた。
「──―ッッああぁ!!」
刺し貫いたモノはその切っ先が触れた膜を容易く破る。瞬間体を突き抜けた激痛に彼女の首が反り、両耳横から胸へ垂れ落ちる鬢が大きく揺れ少年の体に触れた。
初めてを示す痛みに氷牙の剣は処女を喪ったことを思い知らされ、捧げた相手がこの少年であることに心から歓喜する。
(はっああ──、あ、あたしを求める男に……あたしは破瓜の痛みを与えられたわけだ……。これは、理想的……なんだろうね)
戦乱の世、敵国の捕虜となり、或いは間者の疑いを掛けられて、恥辱に塗れた拷問の末に処女を喪う者もいる。
敵に胸を見られようと気にすることはない武人である自身ならばそういう初めての喪失があったとしても憎しみを抱くのみで精神的なダメージは少ないかも知れない。
だからといって、この理想的な痛みとでは比べるべくも無い差だろう。この痛みには悦びしか感じないのだから。
甲高い声を上げた彼女は破瓜の痛みを堪えようと、奥まで挿入されたことで密着しているゼファの体を力いっぱい抱き締めていた。
*
耳にまで聞こえてきそうな程のぶちっとしたなにかが切れる感触。
その直後にずるりと飲み込まれた自分のモノ。
小さい、かわいいと云われても、それが女の人の中に全部入ってしまうなど思いもしなかった。
「は、入っちゃった……っ、す、すご、い……ぬるぬるして温かくて、ぎゅって締まって……交わるって、不思議だね……」
狭い場所に入り込んだモノは奥の行き止まりに届いていた。
小さな一物、子供の幼い一物、大人への脱皮を終えたばかりの一物は他の物質に触れると感じやすいようで、快感と苦しさの二つを一緒に味わわせ来た。
「痛いのに……気持ちいいや……」
「大人になるんだ……、そりゃ、痛いことだって……あるさっ──」
重なる股間は陰嚢すらも溢れ出す氷牙の剣の蜜に濡れてべっとりしていたが、ゼファはその中に赤い血を見つける。
「だ、大丈夫なの?」
「あ……っはぁ……、だ、大丈夫だよ……」
「で、でも怪我して……っ」
「ああ、この赤い血は……、怪我じゃない……っ、あたしの初めてをっ──ゼファが刺し貫いたっていうその証……、みたいなものさ……」
女性が初めて男性を迎え入れるとき初めての証が破られ出血することがある。
激しい動きなどの要因で元より膜が破れていることもあれど自分はそうではなかったようだ。それをいま、ゼファが破ったのだ。
流れ落ちる一筋の鮮血に悦びを覚えたという彼女の説明の意味を彼は子供ながらに理解した。
「ゼファ……あんた初めて、だろ……。あたしも、初めてなのさ……、わかるかい、あたしの中に入ってること……あたしは感じるよ、あたしの中にいるゼファを……小さいけど、硬い……女を求めようとする……立派な、男だ」
「う、うんわかるよ……、オレいま、氷牙の剣と一つになってる……」
感じ合えるお互いの深い場所。そこに入り入られる悦び。
ゼファは氷牙の剣の背中に回した腕に力を入れて、目の前にある彼女の顔を見つめた。
「あたしとあんたはいま“女と男”になったんだ……、初めて同士を与え合うってのは、そういうことらしい……」
「そうなんだ……、でもらしいってことは氷牙の剣も知らないって、こと?」
「詳しくは、ね……、あたしは色恋や男と女の情事にゃ縁がないから……“なかったから”ね」
挿入に潤む瞳、赤らんだ頬、少しばかり荒い呼吸。
全てが新鮮で、全てが綺麗。
「だけど、交わったオレ達は……違うんだよね?」
「ああそうさ、あたし達はもう“なかった”から“ある”になったんだよ」
もうなかったじゃないのだ。
氷牙の剣は“女”になった。
自分は“男”になった。
初めてを与え合って……男と女に。
「これが、交わるってことなんだね……、氷牙の剣の心が、感じられる」
引き付けられる顔は引き合いの力。
互いが互いを引き寄せ合う、必要とするそんな力に導かれて少年と女性の唇は静かに重なる。
「んん──……」
くぐもった声は彼女のもの、女を捨てたと言っていた、しかしいま新たに女となった剣士のもの。
唇を味わう。自分が初めてを貰い、そして男として初めて交わった女剣士の唇の味を堪能するように啄みながら背に回した手を彼女の髪に絡めて愛撫し、体ごと強く抱き締めた。
大人の体に対し小さな自分の体をそれでも目いっぱい駆使して、ゼファは氷牙の剣を大切に抱く。
やがて静かに離された唇には一筋の糸が架け橋の如く彼女との間を繋いでいた。
切れまい、切れてなるものか、そう云わんばかりに粘り強く口付けの名残を残すのだ。
「また、キス……しちまった」
「構いやしないよ。今回は、あんたが勝手にやったことじゃない……、あたしとあんたでキスをしたんだ。なにも……悪い事なんか無いさ──……」
謝るゼファの頭を彼の背に回していた彼女の手が撫でる。優しく、言い聞かせるように。
「好きなように動いていいよ……、あたしを求めようとしたときの気持ちのままに……あたしを抱いてみな……。子供といったってあたしと交わり男になったんだ、どうすればお互いを感じられるかってのは感覚でわかるだろ?」
「あ、あの、でもさオレ……、実は入れる場所わかんなかった……、さっきのは、当てずっぽうで、さ……」
「あははっ、なんだい……それは。一歩間違えりゃ……どこに入れられてたかわからないってことかい」
「だ、だって初めてなんだしそんなこといわれたって──」
「わかってるよ。でもね、こうして体は結ばれたんだ。だからさ、やってみな、あたしを女にしちまったように」
『ガキんちょはガキんちょなりにしっかりと惚れた女を……“このあたしを”抱ける男になってみせなよ』