テレポートがあれば遅刻の心配はいりません
ある日の朝のこと、ベッドから飛び起きた海野が目にした時計の時刻は登校時刻の10分前となっていた。
「うぁぁぁ~~~~~っ、遅刻だぁぁぁぁぁ~~~~~っ」
叫んだところで何も解決しない。
急いで着替えたとして着替え終わるまでに1分で行けたとする。顔を洗い、朝食を食べてさあ間に合うのか?
間に合うわけがないだろう。
学校までの距離がこれに加算されるのだ。もう遅刻は確実である。
こういう日に限ってなぜかいつも隣で起こしてくれる愛しい年上の不思議な超能力を持つ恋人カオリナイトがいなかったのだ。
普段から彼女とは一緒に寝ている。一つの布団で一つの枕で身を寄せ合って寝ているというのに何故だか卿はいない。
ぱっと目に付く場所に彼女の姿があるにはあったが、それは引き延ばして大きくした彼女の写真だった。
ベッドの直ぐ隣に設置していた衣装ダンスの側面に貼り付けているカオリナイトの写る大きな写真は妖しく微笑みかけている物の、写真なのだから彼を起こしてくれるような事はない。
海野が撮った写真で、ベッドの足下側の隣には小物や衣服を仕舞う三段式の箪笥があり、その箪笥の上にもティッシュ箱やブラシ、口紅や香水と共に通常サイズの写真立てに入った彼女の写真がある。
「おはようございますカオリナイトさん」
ついその写真に向って寝起きの挨拶をしていた海野は余裕ぶっている場合じゃないと、急いで制服に着替えてはどたばたとリビングに駆け込んだ。
そのリビングに写真ではない本物の彼女はいた。
「おっ、おはようございますカオリナイトさん」
本日二度目の挨拶はとても焦りながらのものとなっていた。もう遅刻まで8分を切っていて平静ではありませんという彼の心情が表れている。
対してカオリナイトはといえば余裕を持って彼を迎えてくれた。実に彼女らしい冷静な表情で。
「あらっ、ようやくお起きになられましたのね」
服装は既に着替えたのだろう就寝時のネグリジェ姿ではなく、いつものVネックのワンピースと同じながら濃紫色という色違いの衣服だった。
同じブランドで同じデザインのこのワンピースを彼女はお気に入りのようで、色違いで数着持っている。
髪型も寝ているときにしている三つ編みではなく、髪の一部を編み込んで結い上げたいつものポニーテール風で、そしてエプロンを着けていた。
つまりそれは彼女が自分が起きるよりも、または起こしてくれるか抱きしめてくれているかキスしてくれているか、とにかく起きるきっかけをくれる瞬間よりも随分前にもう起きていたという事を意味している。
「ごめんなさいね、起こしてあげようとは思っていたのだけれど今日はお父様とお母様がお揃いでお出掛けの日だったでしょう? 早い時間に。ですから私も先に起きて朝食作りとお出掛けのお支度のお手伝いをしておりましたのよ」
朝食作り、お出掛けの手伝い。となればぐーすか寝ている坊やを起こす暇はない──ということでもなく、まだ起こすには早いからと彼女なりの優しさから寝かせていたのだ。ただそうこうしている内に時間だけが過ぎ……結果的には、というわけである。
それに彼女が家に来るまでは一人で寝起きしていたのだから当然自分で起きれるだろうという様に考えてもいたらしい。
しかしながらここ暫くの間海野はずっとカオリナイトに起こされていたので、彼女に起こされることに慣れきってしまっていたのだ。
時差ボケのような物である。
人間利便性や楽を覚えてしまうと頼り切ってしまうもの。
海野の場合は完全にカオリナイトに頼り切りになってしまっていたのである。
「どっ、どっ、どっ、どうしましょう完全に間に合いませんよ学校っ!」
焦る海野。しかしそんな彼を観てカオリナイトはというと、彼の為にと焼いていたエッグトーストを差し出してくるではないか。
彼の事情などまるで考慮に値しないとでもいうように。実際彼女は海野家住み込みの家庭教師であって学生ではないので遅刻には関係ない。
ただ今回ばかりは彼女にも考えがあるようだった。無論海野の手助けをするという。
「まあ落ち着きなさい、まずは朝食ですわ。わたくしが手ずから焼いたのですからお食べになって」
「そんな余裕ありませんよ~~~っ」
とか言いつつも、カオリナイトの料理を食べないという選択肢など海野にはない為に。
「はぐっ、はむっ、もぐもぐっ」
味わう時間こそなくとも彼はしっかりと食べていた。口の周りを油で汚しての自己ベストの早食いタイムで。
「ほらっ、こんな汚れていてはみっともなくてよ」
食べ終わったところで彼女はハンカチを手に海野の口の周りを拭う。
柔らかく良い匂いがするハンカチの生地に攫われる口周りが少々気持ちいい彼は、ぐるぐる眼鏡の下の頬を桜色に染めていた。
「あ、ありがとうございます」
拭い終えたハンカチを仕舞うと、カオリナイトはそれでは行きましょうかと海野の肩に手を置いた。
近所に買い物にでも行くような気楽さでそうしながら、続けざまに彼を抱き寄せる。
零れ落ちそうなほどの大きな胸が押し付けられて余計に慌てざるを得ない。
毎晩のように触らせて貰っていようが彼の性格上けして慣れることはできないようだ。
無論そんな初心なところがある海野をカオリナイトはカオリナイトで愛しているのだが。
「へっ、ちょ、ちょっとなにをされるのですかカオリナイトさんっ」
彼女の腕の中で藻掻く彼だが、このまま甘いなにかをされる様な事ではないくらいの空気は読めた。
その実その通り、カオリナイトは顔を寄せては海野のぐるぐる眼鏡の向こう側の瞳を覗き込むだけで。
「学校へ行くのでしょう?」
なにをするとは、遅刻すると自分で騒いでおいてなにを言っているのかこの子は? とでも言いたげだった。
彼女が手助けしてあげようと考えたのはまさにこの事なのだから。
「い、行きますけどなんで抱き締める必要が──ってそもそもですね抱き締められて学校へ行けるわけが──」
「こうするからよ」
一言告げたカオリナイトの姿は次の瞬間リビングより消えてしまった。
シュウン──静かな空気音を残しながら、彼女が抱き寄せた海野も共に。
◇
一瞬の後に視界は学校の近くを映し出す。
再び聞こえたシュウンという音と共にその場に現れたのは二人。
無論、海野と、そしてカオリナイト。
「へ、ここって……あれ?」
さっきまでリビングにいたのに。
キョロキョロして当たりを確認する海野に、彼も既知であるはずのことを彼女は伝えた。
「お忘れでして? 私がテレポートを使えること」
「あっそういえば──……!」
簡単に説明すると海野の家のリビングから十番中学校近くまでテレポートしたのだ。
彼女はそういう能力を持っているのでこの程度のことは朝飯前。
もちろん普段からこんな事ばかりしていては海野の為にならないので今回は特別だった。
「はい学校に到着ですわよ。いってらっしゃいぐりお」
抱き締めていた海野を腕から解放した彼女がいってらっしゃいと手を振る。
家から一瞬で学校前まで送られてしまった彼は彼で狐に摘まれたように頭を掻いて首をかしげ、手を振るカオリナイトにどうもどうもと頭を下げて。
「……い、いってきます」
遅刻まで残り三分と少し。
時間内にへっちゃらで辿り着ける距離だ。
「行けちゃうものなんですねぇ抱き締められただけで学校に」
事も無げに送り出してくれる彼女に海野は思った。
「とっても助かっちゃいましたが、テレポートってすごいんだなあ」
出してほしいキャラは誰ですか?本当はもっと書きたいですデマンドとかちびうさとか(期待に応えられるかは分かりません)
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カオリナイト
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海野ぐりお
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ユージアル
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天野ぐりかず
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地場衛
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月野うさぎ
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ネフライト様
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大阪なる
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テルル
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ビリユイ
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シプリン
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プチロル
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水野亜美
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浦和良
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火野レイ
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木野まこと
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愛野美奈子
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天皇はるか
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海王みちる
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冥王せつな