年上の恋人相談
「あ~ようやくテストばっかりの悪意に満ちた週間も終わりだよ~」
苦役から解放された囚人のように喜び両手を挙げて伸びをするのは十番中学校三年生の少女。
足首にまでかかりそうなほどの金の髪を頭の左右でお団子に結んだ特徴的な髪型をしたその少女は、自由の身になったと云わんばかりの明るい笑顔で周囲を見回してみた。
「うむ。やっぱあたしだけじゃないよねー同じ考えの子は、うんうんそれで普通なんだよ──なんだけども」
真実は普通であってほしい、そう願ってるだけ。
現実を振り返ったときそこには暗黒の二文字が待ち受けていることをなるたけ思い出さないようにしていたい自分といった悲しい事実がある。
「そうあたし達は三年生、三年生と云えば最終試練の年──高校受験が待っているのであった」
「うひゃあっ!」
「やっほーうさぎー、最終日だけど手応えどうだった?」
自己正当化、若しくは現実逃避を試みていたお団子頭の少女──月野うさぎは、叩かれた肩と降ってくる“現実”の厳しさを問う声に背後を振り返った。
「ありゃしませんよ手応えなんて。これっぽっちも」
声を掛けてきたのは肩上で切り揃えた短いウェービーヘアに緑色のリボンを留めた少女、親友の大阪なるだった。
「はいはいどーせあたしゃお馬鹿ですよ、毎度の如く赤点取って家でママに怒られて後から必死になるような落ち零れでござーますよーだ」
「な、なにもそこまで自虐的にならなくてもいいじゃない……」
「だってなるちゃんがさ、現実ってもんを突き付けてくるからさ、そりゃね、いつも明るいうさぎさんだって暗くなっちゃったりするもんですよ」
本当に現実は厳しい。うさぎ達三年生──受験生の現実は今の段階でもう始まっているのだ。
「まあまあそう腐らないでまだ時間はあるから。あの海野だって最近不調だったみたいなんだし」
「海野……海野かぁ。そいやそうだったね~、学年トップグループの一員がここ暫くの間落ち気味だったもんね~」
割とポジティブなぐりぐり眼鏡のクラスメイトでさえ飲み込んでしまうのが受験という魔物なのだろうか?
プレッシャーは心の安定を削いで平常心を失わせる。その結果力が入り過ぎたのか海野にしては珍しい勉強でのミスを引き起こしていた。
それでも学年の上半分をキープしている辺り土台立っている場所が違いすぎたが常が常だけにいつもと違うことはなんとなく分かろうというもの。
と、噂をしていたらなんとやら。
なるの後ろより難しい顔をした眼鏡少年が歩いてきた。
「ハア~、どうしたらいいんだろうか……」
深い溜息を付いて肩を落としながら歩を進める様は即ちダメだったということなのだろう、と思い女子二人は共に励まそうとする。
「な~に言ってんだか。あんた成績落ちたとか言ったってあたしなんかよりずっと良いんだろうし贅沢言うんじゃありません」
「そうそう、うさぎは全力疾走しても危ないけど海野はゴールまで半分切ってるよーなものだし凡ミス犯さなきゃ大丈夫よ」
「な~る~ちゃ~ん、あーたって人はそんな風に考えてたわけ?」
「あ、あはは~」
軽い感じで明るく。成績不審に落ち込みがちだった海野に対する二人なりの気遣いだ。
何だかんだで仲の良いクラスメイト同士。皆、受験戦争を戦う戦友である。力を合わせて勝利を掴もう。
といった励ましを受ける海野だったが。
「なに言ってるんです二人とも。今回はバッチリでしたよ僕」
「へ?」
「え?」
何のことはない、二人以上に余裕綽々であったのだ。
「回答欄全部埋めましたし、予習復習も家庭教師の先生のお陰で完璧。対受験への体制は着々と整ってきてます」
ぐっと握り拳を作りオーバーアクションを加える彼に受験への悲壮感は見当たらない。
しかしその直ぐ後にはふにゃっと力が抜けて溜息を付くのだ。
嘘を吐ける性格ではない海野がそう言うなら実際問題手応え大ありなのだろう。
だったらなんでこんな暗いの? というのが彼女達の共通意見であった。
「ほむ。つまりテストがダメな感じで落ち込んでたわけじゃないと」
「はい……落ち込むというか、悩んでるんです」
俯き加減で左手を見る海野に合わせて二人もふと彼の左手に注目する。
「はれ? あんたなに付けてんの?」
金色に輝く何かが付いていた。
「へ?」
「へ? じゃなくて、左手の」
「ああ」
腕を少し上げる海野は恥ずかしそうにそれを見せた。
「ブレスレット?」
「は、はい……」
二枚の羽を広げたようなデザインの金色のブレスレットだ。
女性物の。これを目にしたうさぎは声を震わせた。
「あ、あんた、何時の間にそっちに目覚めたの?」
「は──?」
なるも一拍遅れで海野の肩を叩く。
「いや、なにも言わなくていいから。あんたがそっちに目覚めてもあたし達は友達だからね安心して」
女性物のアクセサリーを身に付け始める=そっちに目覚めてしまった。二人はそう単純に結び付けて考えたわけだ。
これに慌てて海野は否定した。無論突然掛けられた疑惑について。
「ち、違いますっ、僕は至ってノーマルで健全な男子ですっ、断じて“オネエさん”じゃありませんっ」
「じゃあなんで女性物のブレスなんて付けてんのよ」
うさぎの至極当然な指摘にうんうんと頷くなるは「あっ」と別の可能性に気が付いて声を上げた。
「ひょっとしてビジュアル系でも目指してる? 似合わないから止めといた方がいいよ」
V系ともいうそれは、ある程度以上の色気が必要。さあ海野には……無い。
「違いますってば!」
勿論それも間違いで特に某かを目指しているわけでない彼はブレスレットの事情を語り出した。
「これはお付き合いをしている方から贈られた品なんですよ」
照れ臭そうに話すその頬に、朱が差し込む。
「初めてのプレゼントでして、その特別なブレスレットらしくどうしても僕にって……見ての通り女性物ですから僕も多少抵抗ありましたけど、やっぱり大切な方からの贈り物ですので付けないわけには」
聞いてみれば納得できる理由だった。恋人よりの品ならそれが何であれ身に付けない訳にも行くまい。
「な~んだそっか、お付き合いしてる人からのプレゼントなんだ。そうならそうと言いなさいよ勘違いするじゃないもう、そっかそっかプレゼントかーあたしもまもちゃんからいーっぱい貰ってきたし分かるよその嬉しさは、うんうん」
「分かる分かる。ネフライト様から贈られた物ならどんなものでも付けてくるもん。男性用の物だって関係無くね」
アクセサリーなら身に付け、食べ物なら残さず食べる。それは彼氏彼女として当たり前のことだもの。
合点いった女子二人はうんうんと何度も頷きながら海野の話を聞いたその後、声を揃えた。
『────って、お付き合い~~~~~っ!?』
海野に彼女っ!? あり得ない物を目撃したとばかりに身を乗り出すうさぎとなる。
快晴だけど雨が降りそう、聞き間違い? 失礼極まりない反応ながら誰も二人を責められないだろう。
なにせ女っ気がない、浮いた話の一つもなかった非モテ男子にもついに彼女が出来たとなれば驚きもする。
「なんですかそのネッシーでも発見したみたいな感じ……」
「にゃははっごめんごめん。なんか想像しづらくってさ。でも何時の間に彼女が出来たのよ?」
「ひと月ほど前です、十番街の交差点で信号待ちしてるときに出逢いまして」
「一目惚れってやつ?」
「厳密には違いますが、それに近い感じでしょうか。振り返ってみれば運命的な出逢いと云えなくもない状況でしたし」
早速の質問攻めにも照れた様子で話すところから幸せオーラ全開な模様。
これについてはうさぎもなるも良く分かる。
自らの目的に利用する為に近付いてきた青年三條院正人ことネフライトをひたむきに愛し続け、辛い闘いの果てにその愛を勝ち取ってきたなる。
前世の悲劇を乗り越えての再会、運命に抗い切り開いてきた末に地場衛と結ばれたうさぎ。
共にその出逢いは運命的であった、少なくとも自らはそうであると確信していた。
恋人となる人との運命の出逢い、初めての邂逅、経験者であるから我が事のように理解出来たのだ。
「どんな子か訊いてもいい?」
「ええ、構いませんよ。でも子じゃないんですよ。子っていうのはどちらかと言えば失礼なようにも、しかしそういう言い方もまた逆に失礼だったりするかなぁ?」
「ほうほう、となると年上ですなぁなるさんや」
「みたいですなーうさぎさん」
色恋の話となると俄然女子は盛り上がる。それが友人であれば尚更に。
「と、年上です……、女性のお歳を軽々にお話しするべきではないのですが、二十代後半の冷静で知的な方ですよ」
「二十代後半っ!? お、大人なんだね~っ」
驚くうさぎは年上ということで自分の恋人を思い浮かべた。
衛は年上だ、大学生で正に大人の男性。ちょっぴり意地悪なところもあったりするがとっても優しい自慢の恋人。
「まもちゃんより年上とは中々にやりおるではないかねぇ海野くん」
年上と付き合う、それも中学生という世間的には子供といった見方が大勢を占めるお年頃の自分と、まず間違いなく大人のカテゴリーに分類される大学生。
ときに子供扱いされたり、ときに付いていけない話があったりと年齢差による違いを実感せざるを得ないところがあったりするのが年齢差の恋模様だ。
おそらく海野も同じ様な恋なのだろう、そう考えると何故か仲間意識が出来てしまった。
「あ──っ」
そしてその情報からなるが何かに気が付いたように手を打つ。
「ねえねえ、もしかしてその人、色白で背が高くて髪の長い女の人だったりしない?」
「あれ? ど、どうしてなるちゃんが……、いや合ってますけど、なんで?」
「あ~やっぱりアレそうだったんだ」
確信めいたものでもあった様子で納得顔のなるは会った事もないはずなのにと不思議がる海野にわけを話し始めた。
「いやね、この間ネフライト様と商店街のカフェで待ち合わせしてたときにあんたがその女の人と歩いてるの見たのよ。年齢離れてるみたいだったしそういう関係だとは気付かなかったけど、人の良いあんたのことだから道尋ねられて案内でもしてるのかなって。でね、さっきあんたが年上で二十代後半だって言ってたからひょっとしてそうなのかもなぁ~ってピンときたわけ」
「な、なるほど。世間って狭いんですねぇ……、あ、その人ですよ僕の彼女さん。時々二人でお出掛けしてるんです」
照れる海野は俯き加減になって頭を掻く。デートしているところを見られていたということだ。
では既になるは彼の恋人を見ている、となればその特徴を訊きたくなるのが人情だろう。うさぎは早速訊いていた。
「なるさんや、どんな感じの人だったの海野の恋人さんって」
「背の高いかなりの美人さんだったわ。モデルって言われても納得できるくらいの、出て引いて出て」
胸を盛る仕草、腰を搾る仕草、そして尻を表すだろう丸く描くような仕草。
俗に言うボンっキュっボンっというやつだった。
「ふむ、つまり海野の彼女さんは美人でスタイル良くて年上で冷静で知的な背の高い女性と……」
話を聞いて組み立てていくと男子の求める理想の女性像が浮かび上がる。
そしてここまで聞いてしまえば更に先が気になるのも女子というものだ。
「ね、ねえ、因みにだけど……どこまでいってんの?」
「どこまでって、どういうことです?」
「や、やぁねぇ~、ほら、どこまでっていったら、ほらあれじゃない……ね、ねえうさぎ?」
「そ、そうそう、アレだよアレ、ほら……Aとか、Bとか」
ガールズトークでは定番だが相手が大人だと余計にいけないことを想像して止まらなくなる。
もちろん男子の海野には男同士の間なら未だしもといった一歩引いた感じも見て取れた物のお構いなしだ。
「い、言いたくないなら別に言わなくってもいいんだけど~……、どうせなら、聞きたいなぁ~って」
「で、どこまで?」
ネフライトや衛より年上と付き合っているのならもしかして? 妙な期待感が先走っていた。
「そ、それはぁ~、う、うう~、そのぉ……」
言いにくそうにもじもじとする海野。いつもなら気持ち悪いよなんてツッコミを入れたいところ。
しかしうさぎもなるも全くそんな気が起きないのはその反応に期待以上の物が見えてしまった所為だろう。
そしてその実、他に聞こえないよう口元を隠しながら小さな声で呟いた言葉は期待以上の物だった。
『し、C……ですぅ』
消え入りそうな声ながらきっぱり言い切られたのはアルファベットのC。
C、しー、シー……。それはつまりナニを、ナニに挿れて、そしてナニをした──ということを指していた。
「「う、うっそォォ~~ッ?!」」
進んでいるとかいう話ではない。たった一ヶ月と少しでCとは。
うさぎは海野のことだから健全なお付き合いとでも主張してA──キスもまだと期待感を裏切る可能性も考えただけに衝撃だった。
「ぼ……僕がというか、流されたといいますか……、その、最後まで……」
それも聞けばCの一番上。なにも付けることなく最後の瞬間まで愛を育んでいるらしい、謂わばC+とでも呼ぶべきところまで行っている。
この先はもうD以降しか残っておらず、それ即ちゴールイン……。
同じ衝撃はなるも受けていた。
「ま、マジなの──?!」
「ま、マジなんです……、も、もちろん僕は健全なお付き合いをと申し出たのですが、あ、愛し合う事もまた健全な男と女の関係だと……、それで」
押し切られたということだ。
「で、でもですねっ、結果的に強く心を一つにしてお互いに愛を深めることが出来たと言いますかっ……、し、幸せな気持ちになれまして……愛って、素晴らしいなって」
愛し合う事で気持ちを高めて互いの愛を一緒に育てる。
一つになるのは体のみにあらず、心も一つにして愛を共有する。
それは大人の恋という名の、一つの正しい交際の形だった。
「し、将来的なことも、考えたり……、お、お父様やお母様も認めてくださってるんです」
親も公認でいずれ結婚する事を決めているから、生涯添い遂げる相手とお互いが誓っているのならどこまで進もうと不純の無い健全なる純愛。
「そ、そこまで……。私も、その気持ちは分かるけど」
聞けば聞くほど自分と同じ、なるは海野の話を聞きながら青年実業家三條院ことネフライトと自分も似たような恋愛事情、ただしC+までは行ってないが、近い部分があると考え、自身に負けないくらいにしっかりと将来を見据えた恋をしている海野が少し格好良く見えてしまった。
「い、一緒に……住んでます」
更には現在同棲中。どういった過程を辿ってそうなったのか不明ながら、親公認でC+で婚約状態に近くて一緒に住んでいるとなれば、それはもう殆ど夫婦関係といっても過言ではない。
しかもC+は現在進行形でのC+らしいのは話の端々に感じた言い淀み、口籠もりからも明白だ。
『キャ~~~っ』
事実を確認して声を殺しながらの黄色い悲鳴を上げてしまったうさぎとなるは、次に互いを見つめ合うと自分たちは何処までいったかを確認し合った。
「う、うさぎは?」
「び、Bの真ん中、くらいかな。な、なるちゃんは?」
「お、同じく……」
ソフトに答えるB。さすがに中学生だとこれくらいまでだろう。それでも自分たちの年齢では進み過ぎなくらいなのに。
まさか海野がCまで行って、Cその物を進みきっているとは思わなかった。
うさぎは未だ見ぬ海野の恋人と彼がベッドで一つになるところを想像してはきゃあきゃあと赤くなり。
なるは自分が見掛けた件の美女に海野が可愛がられている場面を想像しながら自分とネフライトに置き換えて両手で顔を覆う。
「て、てゆーか……え、エッチ~っ……」
そんななるの指摘に。
「ぼ、僕も、自分でそう思います……じ、純愛なんですけどね、一応……」
海野も進みすぎていると認めていた。
*
「ん~、でもさ、そんじゃあ今は幸せの絶頂期なんじゃないのって感じるんだけど」
大人で色っぽくて知的な美女──。そんな彼女が居て、付き合い始めてまだひと月ほどなら“あっつあつのら~ぶらぶ”な筈。
その状態で同棲して肉体関係まで進んでいて更には親公認ともなれば毎日が幸せの連続なんじゃないのかな? うさぎの疑問は尤もだった。
何が言いたいのかと言えば、悩む要素なんてこれっぽっちも無いということ。
「だからなにを悩んでたのかなーってさ」
「言われてみればそうよねぇ」
うさぎの疑問になるが続く。
「順風満帆って感じたけど、もしかして実はもう倦怠期とか?」
聞いた限りではほぼ夫婦状態な海野と彼の恋人。敢えて当て嵌めるならば新婚さんが適当なところか。
にも拘わらずたったのひと月で崩れ始めているとしたなら危ないよ、注意を促すなるに海野は違うと言った。
「仲は良好ですよ、とっても。い、いってらっしゃいのキスまでしてくださいますし……」
朝起きればまずおはようのキス。朝食を食べて学校に行くときは玄関まで見送られながらまたキス。
帰宅時にはお帰りなさいのキス。そして就寝前には愛を深め合う。
海野の一日のサイクルは愛に始まって愛に終わる、そんな感じだった。
「いいな~っ、あたしだってまもちゃんと同棲してたらいーっぱいキスしてもらえるのにな~っ」
「つきあい始めのアツアツな時期ってそういうものよねー。デート中のキス、お別れのキス……。愛する人からのキスってどんな時であれ嬉しいもの」
とにかく仲はとてもいいらしい。
「お勉強等も好きな人が見てくれると捗りますよね。好きな人の声って頭の中に残りますから受験対策の一つとして恋人に教えて貰うのも良いかも知れません」
覚えたところを忘れたとしても恋人の声は思い出せる。
その話の内容が勉強についてだとしても恋人との出来事や会話、過ごした時間はしっかり記憶に残っているのだから。
「僕の成績も見事V字回復しましたし、うさぎさんも是非恋人さんに見て貰ってはどうですか?」
「え、あんたの成績って家庭教師のお陰とか言ってなかった?」
「その家庭教師さんが僕の彼女さんなんですよ」
「そ、そう、なんだ」
また一つ衝撃だった。家庭教師の先生が恋人というわけで、そこはかとないいけなさを感じたのだ。
「な、なんか、エッチなお話しとかにありそうな展開……」
「うさぎ、ありそうじゃなくてもうしちゃってるんだって」
「あ、そうだっけ。メンゴメンゴ」
しかし現実は小説以上に進んでいるから冗談も通じない。
「なんか思いっきり脱線しちゃったね~、と、いうところでぇ、本題にいこっか」
「は、はあ……」
本題とは無論海野が何を悩んでいるのか、である。
「ええっと、実はですね。その悩みというのはさっきの話に関係しているんです、この」
話ながら海野が掲げたのは左手のブレスレット。
「彼女さんから贈られたこのブレスレットのお返しに、何かプレゼントを贈りたいと考えてまして」
元々考えていた恋人への贈り物を決める前に渡されたというそれ。
本当ならば男として先にプレゼントをしたかったけど迷っている間にこうなったらしく、一刻も早くお返しがしたいという。
「相手は大人の女性ですのでなにを贈ればいいものかと……」
海野らしい悩みだった。
事情を把握したうさぎは数度頷く。
「な~るほどなるほど~、よ~く分かったよ」
これはそんなに難しいことじゃないだろう、恋人さんの趣味思考は分からなくとも同じ女として何を贈られれば嬉しいのかについては深く考えるまでもない。
「海野、それってそんなに悩む事じゃなかったりするんだよ?」
「ど、どうしてです?」
要領を得ない海野に今度はなるが引き継いだ。
「簡単じゃない、要するになんでもいいの」
「なんでも、ですか?」
「そっ、な~んでもいいのよ。海野が悩んで、悩みきった今の段階でコレだっと思う物を贈ってあげればそれでね」
うさぎの言いたかった核心部分だ。なるは続ける。
「大切なのは海野が心を込めて贈ること。大人の人だからって言ってたけど恋する女って幾つになっても女の子なのよ。年齢なんて関係ないの」
小学生の頃、中学生の頃、高校大学、大人へと進んでいく中でも女は常に女の子。
その時に心の込もった贈り物を送られれば、それが最も嬉しいプレゼントとなる。
「海野はずっと悩んでたんでしょ? それって今の時点でもう想いは一杯溢れ出してるってことじゃない。その想いをこれから選ぶ品物に込めるの。きっと彼女さん喜ぶと思うよ」
「僕の想い……ですか」
高いか安いか、ありふれた物か希少な物か、それはそんなに重要な要素ではない。
唯一、愛する人の真心が込められているのならば他になにも要らないのだ。
「カオリナイトさんへの僕の想いはいつも心を満たしてますが、確かに今は爆発的に溢れ出しています……そうっ今日の僕のお弁当に入っていたお好み焼きのように──っ!!」
鞄を天に持ち上げる海野、中には弁当の空箱が入っている。
「ああそういや今日のお弁当お好み焼きだったね~」
「そうですッ! 昨日の夕飯としてカオリナイトさん、僕の彼女さんがいっぱい作ってくださって家族で食べたんですが余っちゃったので詰めてきたんですッ!」
「へぇ~海野の彼女さんカオリナイトさんっていうんだぁ」
力説する様子を見ながらあのお好み焼きは美味しそうだったと思い出し、彼の恋人の名を復唱していたうさぎ。
「なるほどなるほどカオリナイトさんねカオリナイト──―…………」
“カオリナイト~~~~~~~ッッッ!?? ”
彼女は何度も復唱する内にいつしか叫んでいた。
「ええカオリナイトさんです。本名は黒峰カオリさんというんですけど愛称ですね」
「へぇ、ネフライト様みたい♪」
ネフライト様は三條院じゃなくてネフライトが本名だけど──ボソッとうさぎだけに聞こえるよう呟いたなるの声だが彼女の耳には入らなかった。
うさぎはカオリナイトという名に聞き覚えがあったのだ。
聞き覚えがあるどころかつい最近まで自分自身も口にしていた名だ。
(カ、カオリナイトって、まさかあのカオリナイト!?)
彼女が焦るのも然もありなん。カオリナイトとは彼女のもう一つの顔、愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーンとしてのうさぎが闘っている敵デスバスターズ、その第一の敵だった女と同じ名前なのだから。
いまは姿を消し新たな敵ユージアルが立ちはだかっていたが、思い返せばカオリナイトが姿を消したのはひと月ほど前。
(確か、裏切り者に代わってって、言ってたよね……。ユージアルが初めて現れたとき)
初めて相見えたときユージアルは確かにカオリナイトを差して裏切り者と述べていた。
ついさっき海野が話したひと月と少し前からという話と時期的に重なっている。
ただの偶然だと思いたい、でもカオリナイトという名。愛称だとしてもそうそう無いだろう名前の女性が同じ時期に消え、同じ時期に現れる。
考えすぎだろうか?
(でも、もし本当にあのカオリナイトだとして狙いはなに? 海野のピュアな心?)
デスバスターズの目的はピュアな心を奪う事。正確にはそこに隠れたタリスマンを。
(でもユージアルはカオリナイトのこと裏切り者って──)
しかし同時にカオリナイトと名指しだったわけでもない。
ユージアルが言ったのは“裏切り者”だ。
これでは裏切り者=カオリナイトかどうか分からない。状況だけを鑑みればそれしかなくても確実じゃないと……。
それにデスバスターズを裏切っていたとしても良からぬ企みを抱いていないとは限らない。
そうならそうで放って置くことも出来ないのだ。
(よし、ここはこのうさぎちゃんが調べるっきゃない!)
分からないなら確認するしかなかった。
出してほしいキャラは誰ですか?本当はもっと書きたいですデマンドとかちびうさとか(期待に応えられるかは分かりません)
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カオリナイト
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海野ぐりお
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ユージアル
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天野ぐりかず
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地場衛
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月野うさぎ
-
ネフライト様
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大阪なる
-
テルル
-
ビリユイ
-
シプリン
-
プチロル
-
水野亜美
-
浦和良
-
火野レイ
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木野まこと
-
愛野美奈子
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天皇はるか
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海王みちる
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冥王せつな