心配です…… え? 天井ですか?
女はとある高級マンションの最上階より地上を見下ろしながら呟いていた。
「ふっ、なんてことかしらね。ごらんなさい、まるでひとが蟻ん子のようだわ」
まるでテレビに出て来る悪役の台詞そのままに。
或いは高慢ちきなお金持ちがそうするかのように。
センター分けにした背中から腰まで届く真紅の髪。
後ろ髪は真ん中で分けて先をピンク色の髪留めで結び、一部の房を左肩より前に流してやはり毛先をピンクの髪留めで結んでいるその女性は、机に片肘を突きながら高笑いをしながら件の呟きを放っていた。
「白衣着てその台詞って、悪の科学者そのまんまじゃないですかそれじゃあ」
その姿を見て、トレードマークのぐるぐる眼鏡をぐいっと上げたのは、彼女と同じ部屋で遊んでいた少年。
「僕のうちは悪の組織のアジトか何かですか……」
「うっさいわねェ。あんたが買ってきたゲームのキャラに似せてあげたってのに文句ばっか言ってんじゃないわよこのおたくお坊ちゃまは」
「あのですねーユージアルさん、一応説明しておきますがこのキャラ味方側なんですから、やってくれるならお上品にやってくださいよ。なんかいきなり蹴り入れられそうで怖いですよぉ」
「ゲーム如きにマジになれるかっ。だいたい私のキャラじゃないっての! 蹴り入れるのはキャラだけどあんたそんな趣味あるんじゃないでしょうね?」
言いながら立ち上がりかけてローキックの態勢に入ろうとしたユージアルを、天野は彼女の服を引っ掴んで強引に必死に座らせた。
「無い無いっ、無いですからローキックしようとしないでくださいってば!」
「格ゲーでローキックだからそんなに変でもなさそうなんだけど、まあ悪ふざけはここまでにしといてあげるわ」
「そうしてください……」
「──ああそうそう、一個訊いておきたい事があったの忘れてたわ」
「……? なんですか?」
「いやほら、あんた前に三條院の車の弁償できるくらいの金はあるとか言ってたけど、中坊の分際でよくそんな金持ってたわねってね」
「ああ、あのことですか。あれはまあ僕の将来のためにって母が別途貯めてくださってるお金でして、切り崩せばなんとかなるなあって」
「……1日の小遣いと合わせて幾らもらってたのよこのオタ坊ちゃんは……ああ~っ、頭痛くなってくるわ」
女性の名はユージアル、本名を有村ゆう子という。
少年の名は天野ぐりかず。中学生で高級マンションに住むお坊ちゃまであった。
ユージアルはそんなお坊ちゃまの家に住み込みの研究員などをやっていたりする。
研究費は天野の御両親が出してくれ、幾つかの薬を開発し(中には男性が男性的に強くなる薬もある)見事特許まで取得。売り上げの60パーセントを天野家に譲ることで、ただでさえお金持ちの天野家が更にお金持ちになる結果を築き上げていた。
実はそんな彼女はある組織、というか、デスバスターズの幹部候補だったのだが地位を追われて組織を追い出されてしまった元よろしくない職業に就いていた女性でもある。
地位を追われそうになっていたその時、実に生意気な後輩に殺されそうになったのだが、運良く偶然にも天野と他2名によって命を救われていたのである。
以来、人の良い天野が家へと連れ帰り、彼女の事を誤魔化しも交えながら教育ママさんに説明して滞在させてくれることとなり、なりゆきで天野と恋仲となってしまっていた。
ただ世間的に言う甘い仲、というよりも、ユージアルが天野を尻に敷いた仲である。
甘いときはそれは甘くあっても、殆どいびりいびられるという変な恋人なのだ。
年齢差的にも性格的にもそうなって当然なのだが、これでも相思相愛という関係性についてだけはしっかりしていた。
それでもいびりいびられるのは、研究助手と先輩などという、デスバスターズ時代を再現したような妙な関係性をユージアルが考案して天野に押し付けたから。
ユージアルとしては便利な助手というのは是非欲しい。特に逆らったりしない従順な助手が。それが天野にぴったりと当て嵌まったのである。
世話になっている身でありながら大胆不敵だったが、それがユージアルという人間なのであった。
そして今日も今日とて研究──ではなく、今日は天野が買ってきた格闘シミュレーションゲームで遊んでいたのである。
「しっかしあんた結構器用というか、やるわねー」
彼女は、装着していたパイロットが付ける眼鏡のようなヘッドギアを触りながら天野を褒めた。
ヘッドギアのコードはゲームの基盤と繋がっており、バーチャルリアリティを楽しめるというものだ。
「私の研究材料使ってこんなの作っちゃうなんてさすがオタク」
「いやぁそれほどでもぉ~っ。前にルゥガって名前の似たようなゲームで遊んでたことあったので構造を把握していたからひょっとしたらできないかなーって。僕ってゲームが大好きですし、好きが昂じてユージアルさんの研究材料を使ってなにか面白い物を作れないかなあっていじってたら偶然作れただけですよ」
「それでも大したもんよ──っていうかさあ、目指せるんじゃない研究者を」
「そ、そうですか? ひょっとしてユージアルさん並の研究者になれちゃったりしますか!」
「私並みは無理。私は優秀にして天・才! だからね。ま、あんたがファイヤーバスター3でも作れたら私並みと認めてあげるわ。この間仮の設計図を見せてあげたでしょう? アレよアレ」
「難しすぎる以前に、あんな危ないのは作れませんよ~っ」
危ないの。ファイヤーバスターのことだ。
想像も出来ないことだが、彼女はかつて火炎放射器よりも強力な攻撃力を誇るその兵器をプロトタイプと新型。短期間の内に2台も作り上げていたのである。
それらを駆使してセーラー戦士たちを追い詰めたことさえあったのだ。
無論そんな兵器。天野はもし作れたとしても、怖くて作れないだろう。そこのところはユージアルにも分かっていた。
だから期待はしていない。自らの手で更なる改良型を作り上げ、ミメットに復讐を。
いま彼女はそんなことを考えながら日々を過ごしていた。
(セーラー戦士などもう眼中にないわ。けれどミメット! アイツだけは絶対に許さないっ! アイツをどうにかしてやったらもうデスバスターズとも縁を切ってやるわ!)
それ以前に、彼女はデスバスターズを実質クビになっている状態なのだがそれはそれ、これはこれと自分に都合よく考えていたから呆れたものである。彼女らしいといえば彼女らしいところだろう。
「まあ、あんたには期待してないわよ。どーせ復讐反対なんでしょ?」
「もちろん断固反対です! そもそも復讐なんかしたって気持ちは晴れませんよ。それにもしユージアルさんになにかあったら僕は……」
彼女と同じヘッドギアを付けながら彼女の方を見て心配そうな顔をする天野。
ヘッドギアの奥のグリグリ眼鏡のそのまた奥にある、純真な少年の瞳がユージアルの紅玉色の瞳を見据えた。
「ちっちょっと、なにゲーム中にマジんなってんのよぐりかずの癖にっ」
ユージアルはドキッとした。本気で心配されている、愛されている事が簡単に汲み取ることができる。そんな瞳で見つめられたから。
「す、好きな人のことでマジになるのって、そんなに変なことでしょうか?」
ゲーム内のぐりかず。正確にはぐりかずの操るキャラクターが、ユージアルの操るキャラクターに近付いていく。
奇しくもぐりかずのキャラクターは眼鏡キャラで、ユージアルのキャラクターは博士キャラ。
現実と仮想空間が繋がっているような錯覚さえ覚える不思議な場面であった。
そして不思議なのは、偶然にも現実の方の身体でも、天野はユージアルと正面を向き合う格好で彼女を抱き締めていたのだ。
「ぐり……かず……」
身体に感じる温もりに抱き締められていることを感じていたユージアルは、小さな声音で恋人の名を呟いた。
「ユージアル、さん……僕」
強く抱き締められることでユージアルの白衣にしわが刻まれる。
背中に食い込む天野の指、正面に感じる天野の温もり。
ユージアルはそれらを感じ取りながら、静かに天野を抱き締め返していた。
「ふん、馬鹿ねェ。このユージアル様がミメット如きに負けるとでもおもってんの?」
身体の前に流したユージアルの髪の房が、天野の頬を擽り、彼の動悸を速くする。
「如きって、僕そのひとがどんなひとかも知りませんし」
「まあね、簡単に言えばミーハーのイケメンアイドルオタクよ」
「……なんだか、僕の級友そっくりですね」
「あんたの級友とじゃ学校が違うでしょうが。とにかく」
ユージアルはヘッドギアが当たらないように天野に頬ずりをしながら、彼の唇にキスをひとつ落とす。
「ん──」
小さな口付け。とても小さく短い口付けだが、想いはしっかりと伝わる。
らしくないことをしていると自分でも思っていたが、彼女も彼の恋人である以上は恋人らしい事のひとつでもしてあげたかったのだ。
「私はねぐりかず、あんたが好きよ。なんでか自分でもわからないけれど“あの日”からあんたのことが好きだという自分に気が付いたわ。そしてあんたも私が好き。だから心配なのは分かるわよ恋人なんだから」
そうしてひとこと、ユージアルは付け加えた。
「私の復讐を諦めさせたいっていうなら頑張って私の事引き留めてなさい。あんたにならできそうだから」
男に興味のない自分に恋なんてさせた男、天野ぐりかず。ユージアルの大切な少年。
彼が本気で引き留めるのなら、いずれ彼女の復讐心も霧散してしまうかもしれない。
怒りよりも恋とは行かない物の、彼女も恋人を心配させ続けるつもりはない。
「でもまあねぇ、私は付き合わせるつもりだけれどね。あんたを私の復讐に」
ただそうすると天野と同じようなぐるぐるの瓶底眼鏡を掛けたあの教育ママが黙って無さそうだ。たくのぐりかずを危ないことに関わらせないでとかで。
「ひ、人殺しとかは絶対にダメですよ!」
「あのね、私はその人殺しをミメットからされそうになったんだけど」
「だからってユージアルさんまでがやっていいことじゃないです!」
「はあ、あんたってどこまでお人好しなんだか……デスバスターズって世間一般で言うところの悪の組織よ。ひとも傷付けるし破壊工作もするし世界征服だってするわよ。それにねえ、あんたがもし私と同じ目にあったとしてもそれ言える?」
「似たような目には合いましたが……やっつけたのはセーラーVでしたし……、正直ユージアルさんみたいなピンチにあってみないと分からないとしか……でも、復讐なんてできっこないです僕には」
「はあ? セーラーV? そんなセーラー戦士いたかしら?」
抱き締め合ったままで居た2人はゲーム途中のヘッドギアを取る。なんとなくお互いの顔を見たかったからなのだが。
しかし頬を触れ合わせつつ、ペタンと女の子座りというお揃いの状態のまま、互いに顔を見ることはなく、なぜか天井を見上げていた。
そしてユージアルは前々から気になっていたその天井について天野に問う。作りが少し変なのだ。
「……前から変に思ってたんだけどねえ、この天井って後から増設してない? 色が少し違うし壁との接合部がちょっと変よ? なんでこんなおかしな設計にしてんのよ」
問いながらユージアルは頬をひと擦り。
天野の顔が赤くなる。
「あ、やっぱり分かります? 実は前に一度このフロアって言いますか、うちの天井全部吹っ飛んだことがありましてね」
ゲームに始まり物騒な話に終始しながら最後は天井の話と、昔居たというセーラー戦士っぽいセーラーVの話を聴きながら。ユージアルは自然に天野の身体を自分の方へと抱き寄せていた。
そして頬をもうひと擦り強く擦り込む。
「天井吹っ飛ぶってなにがあったわけ……?」
「ぼっぼぼっ僕もよくっ、わっわからなくってっ、そっそのとき気絶してましたからっ」
抱き寄せられた天野の顔は更なる赤に。
焦りも見えて実に面白いと彼女は考えながら、恋人とのひとときを楽しむ。
ただ2人でゲームして遊んでいるだけなのに、これでは本当に恋人同士の愛を育む時間のようだとユージアルは密かに思うのだった。
因みに、ユージアルが白衣だった為に保健の先生に甘えているようにも、カウンセリングを受けているようにも見える微笑ましい光景であった。
出してほしいキャラは誰ですか?本当はもっと書きたいですデマンドとかちびうさとか(期待に応えられるかは分かりません)
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カオリナイト
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海野ぐりお
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ユージアル
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天野ぐりかず
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地場衛
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月野うさぎ
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ネフライト様
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大阪なる
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テルル
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ビリユイ
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シプリン
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プチロル
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水野亜美
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浦和良
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火野レイ
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木野まこと
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愛野美奈子
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天皇はるか
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海王みちる
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冥王せつな