赤ちゃんについて
海野の家は海野の部屋。
キングサイズのベッド。二人用には必要だろうと海野父に買い与えられていたベッドには二人の姿があった。
一人はぐるぐる眼鏡をかけた短髪の茶に近いぼさぼさの黒髪をした少年、確かに中学生の少年海野ぐりおと。
もう一人、腰下まで伸びた赤い紅い長い髪を、編み込みの大きなポニーテール風に纏めた、紫色の鋭い双眸を持つ大人の女性、カオリナイトであった。
カオリナイトも裸である一糸纏っていない。全裸。精々がシーツを纏っているくらい。それもいつでも脱げる体制で。
次に時への始まりを、その身体は今か今かと待つようにうずうずさせられていた。
「はあ、はあ、カオリ、ナイト、さ……、休まずの、5回は、結構、しんどい、と言いましょうか、身体に来ますぅっ」
「うっふふふ。少し頑張り過ぎてしまったかしら。それとも気合が足りない?」
「ちょっ、待ってっ」
5回。5回も愛し合った。抱き締め合い、口付けを深く交わし、舌と舌を絡ませ合って。舌の裏を擽り合い、歯茎を舐め合い。
先に尖った先端を備え、ピンク色の乳輪に彩られた乳首。美しい乳首を備えた双丘は大きく豊かで、海野の小さな手には余る。
しかしながら、その両の乳房を鷲掴み、指を乳房に食い込ませながら、円を描くようにして回しながら、柔々と揉みしだき。
更には乳首に吸い付いてちゅうちゅうと吸い上げ、けして出ることの無い母乳の味を幻視していた。
交接は深く、浅く、深く、浅く、全体を使って行い。奥まで挿入れる時はしっかりとカオリナイトの深奥の口を押し開くようにして。華を散らし、散らした華びらを愛でる様に更に大きく一突き。
いつでもそこで出してもいい、いつでも来ていい体勢で交接を繰り返していた。実際に何度も行われた奥へと出す行為。もうカオリナイトの深奥は今いっぱいになって膨れ上がっている。それでもまだ彼女は足りないと感じていた。
カオリナイトは。
『ああっ、乳首を吸って、ああ気持ちいいっ、お、美味しい? 美味しいぐりお? わ、わたくしの乳首、乳房の味は──美味しい?』
『お、おぷ、ちゅ、お、おいし、です。カオリナイトさんの、大きなおっぱい、柔らかくって、温かくって、味も、凄く美味しくてっっ、ずっと吸って居たいくらいですっっ』
カオリナイトは海野に乳房を弄ばれる事を悦び、吸われる事に歓喜し。
『もっと乳房を揉んで、もっと、もっと、円を描く様に、指も食い込ませながらっ、ああっ、いいっっ、ああっ、ぐりおっっ』
ただ、愛する者からの、海野ぐりおからの、乳房への愛撫を悦び受け入れ続けた。
続く形で抱き締め合い始まった口付けは、最初から全力の深い物。軽い御飯事では終わらない。舌と舌を出し入れ合い、唾液を飲ませ合うという、口付けの際たる形。
海野の小さな舌はカオリナイトの大きな舌を求めて彼女の口内に侵入し、また入ってきた可愛らしい舌をカオリナイトは歓喜の元受け入れ。二人の熱く深い口付けは始まるのだ。
そうして始まった愛の交接は5回。実に5回連続で行われた。海野とカオリナイトの間ではけして珍しくもない回数。何ならそれ以上を行うこととてあるのだから。若い海野、戦闘経験豊富で特殊な能力を持つ体力のあるカオリナイト。二人だからこそだろう。
「待ちましてよ」
「ほっ、良かった本気で続きをなさるのかと思いましたよカオリナイトさん」
ぐりおはキングサイズのベッドで隣り合って眠るカオリナイトの長く艶やかな赤い紅い髪を手で撫で梳く。
いつものようでいて、いつもとは異なる行為のさなかにありながらも、彼女の髪は美しくきれいだ。
指を絡めて撫で梳いても、けして引っ掛かることなく滑りぬけていく髪はしっかりと細やかに手入れがなされている。
このカオリナイトの長い髪のお手入れは、彼女だけがしている訳ではない。海野も手伝い手入れをしている事がある。
だからカオリナイトの髪の事は海野も良く知っているのだ。こうして指を絡めても毛先にまで滑り抜けていくくらい艶々で枝毛も無いと。
「ああ、気持ちいい……、わたくし、ぐりおに髪を撫でられるの大好きですの。心地いいですから」
「そんなにいいものなのですか?」
「うっふふふ、あなたには分からないでしょうね。そう……、あなたには分からない」
「それはボク男ですし、髪も長くありませんから。分かろうとしても知りようがありませんよ」
「なら、ぐりおも髪を伸ばしてみる? そうすればわたくしが梳いて差し上げましてよ?」
「嬉しい誘惑ですが似合いませんよ。ボク癖っ毛ですしボンバーヘッドになる未来しか」
「ふふふっ、それもそうねぇ。ああ~気持ちいいわぁ」
「でも」
でも、と海野は懸念を表明する。気にしてみ無駄な懸念を。
「ボク、ホントに子供を作っちゃっても良いのでしょうか、け、健全なお付き合いをと当初は考えていたのに今では日毎愛し合って」
「あら。まだそのような事を気にしているのかしら。健全と、ぐりおは言うけれど。健全とは、なに?」
「え、そ、それはですから遊園地に行ったり映画を見に行ったりカフェに行ったりと」
「それはもうしておりますわ。その上で愛し合う事も健全なのではなくて? わたくしはぐりおを愛している。ぐりおはわたくしを愛している。愛し合う男女、自然と愛し合う行為へと及ぶものでしょう?」
海野の言う事も健全だが、カオリナイトの言う事もまた健全なのだ。愛し合っているのだから愛し合う。自然的行為である。
「う~ん」
「この議論はもう何度も為さったわ。そして答えは出ている。ご両親も納得の上で」
「た、確かに」
海野は優しく優しくカオリナイトの髪を撫でている。
愛撫し続ける長い髪。赤い髪紅い髪。
「そう、ですね」
「うふふふ、そうでしょう?」
「ボクはもう、いえまた迷うかもしれませんが、とりあえず今日は頑張ります」
カオリナイトさんとの子作りに。
そう告げて、カオリナイトを抱き寄せ、その唇に口付けを一つ落とした。
海野ぐりおとカオリナイト。二人の夜はまだ長い。
東京都南麻布十番、亜美のマンション、亜美の部屋に置いて
「あ、亜美さんっ、」
浦和良はこの時、少し考えさせられる状況下に居た。
それは恋人であり将来を誓い合った、いや確実に将来が決まっている女性、水野亜美の友人たちの在り方を見ての事だ。
水野亜美の友人、ぼさぼさの黒髪短髪に、ぐるぐる眼鏡をかけた、少し変わって居ながらも学年一の秀才らしい海野ぐりお。
そして、中学生でありながらもその海野ぐりおが婚約している、腰下まで届く赤い紅い長い髪の、プロポーション抜群の紫色の双眸を持つ大人の女性、海野少年の家庭教師でもある女性カオリナイト。
彼の二人の在り方は、ある意味良から見て理想的な形として見えた。お互いを愛し合い、どこに居ても甘く接触し。
いかなる時であっても互いの愛情を崩さない。そして、見えないところでは男女の愛の究極、行きつくところであるセックスさえも行っている。
更にそのセックスはただ気持ち良さを求める物、愛を交換し合う物のみに留まらず、子を作るという最終的な意味をも含むものなのだ、らしい。
つまり、海野ぐりおさんとカオリナイトさんは覚悟が出来ている。海野さんが中学生でありながらも子を作ろうという覚悟が。
法的には許されない。カオリナイトさんは28歳という結婚可能な年齢、子を儲ける事の出来る権利を保持している。
対して海野ぐりおさんは中学生。亜美さんと同じ年である。法的に結婚も子作りも認められない。
もちろん、亜美さんから伺ったカオリナイトさんは特殊な力を持つ、所謂セーラー戦士の様に法に縛られない存在。
海野さんとカオリナイトさんが子を儲けても、実のところ誰からも邪魔や妨害は入らないのかもしれない。
そこで話は戻る。良は亜美とそういう関係になれるのではないかと考えてしまったのだ。
今日の亜美の積極性、自分の在り方、これならば海野さんとカオリナイトさんほどとは言わずとも、近いくらいはと。
「な、なに良くんっ、」
ベッドの上。乗り出す良に亜美の身体が硬くなる。まさか今日、私は初めてを散らすのか。それならばそれでもいい。
良に初めてを捧げられるのなら、これは福音以外の何物でもないからだと。そも、良以外に考えられない。
自分が捧げる相手は良だけ、この広い銀河の中で浦和良ただ一人だけなのだ。運命が巡り合わせた男性なのだ。
広い、広い、銀河の元辿り着いたのは、浦和良という名の華の元。水野亜美という蝶はその蜜を吸い、共に成長していく。良という華と共に。
良は亜美の頭を掻き抱く様に抱き寄せながら、その青いマリンブルーの短い髪へと指を通した。
良の五指に絡みつく青い髪。まるで海がそこに、手の中にあるようで、しかし確かな青い毛髪は良の手の中に残る。
「ぼ、僕は、僕の考えはまだ甘かったと言わざるを得ません。僕は亜美さんと手を繋ぎ出かけ、ウィンドウショッピングを楽しんだり、遊園地へ遊びに行ったり、港にデートへ行ったり、それで十分だと考えておりました」
そう、それは私も考えていた。それで十分だと。良くんと二人で色んな場所へと出かけ甘い静かな時を送るだけで。時々そう、口付けるだけで。
今の様に大胆に頭を抱すくめられながら、髪を撫で梳かれる。その五指の感触味わう私、触感がとてつもなく心地よくて、全身の力を抜き、良くんに身体を委ねる。
そうだ。これでいい。これで十分であり、これ以上を望むだなんて高望みという物。だけど、しかし。
それを今日、海野くんとカオリナイトの関係を見て大きく覆された。彼ら彼女らはその遥か先、交接し交接の彼方に子を授かることまで視野に入れていた。
正直まさかの事態だった。だって海野くんは私と同級生。中学生だもの。如何に世の理から外れた存在とはいってもカオリナイトと子供を作るところまで考えてるだなんて。
だからこそ、私はその熱さにあてられた。彼ら彼女らの愛の熱さ、激情の愛の熱さにあてられて。だから少々大胆な事もしてしまった。
「で、でも僕は今日、愛の極致をこの目で見ました。海野さんとカオリナイトさん。二人の愛は極地の彼方にまで達していますっ、」
でしょうね。私も思う物。海野くんとカオリナイトは愛の極致にまで至っているって。
少し熱く良くんは続けた。
「ぼ、僕らも、だからって訳じゃないんです……けして彼らの真似をするわけじゃない。そもそもにして他人の真似をしても仕方がありませんから……、ただ、僕らも一歩先へと進みませんか? 彼らほどではなくとも、この現状における一歩先へと」
「い、一歩先……それって」
「さ、幸いって言えば良いのでしょうか。亜美さんの親御さんは今、不在……今なら、その、一歩を踏み出す条件が」
昼間に海野くんとカオリナイトの熱い熱にあてられたことも、その準備の中には入っているのだろう。
誰かの影響を受けてというのは正直望ましくないと思う。でも、お互いに様子見をしながら少しずつ進んでいる私たちが、大きな一歩を踏み出すには、外部の影響も時に必要なのではないか?
今、私はそう思う、
「一歩って……なに、良くん」
答えは分かっている。尋ねる必要もない。
「それは、」
私の座るベッド。良くんが両手を重ねて私の身体をベッドへと押し倒す。
押し倒された私は柔らかい生地に包まれて、ただ良くんを待つ。
「こういうことです──んん」
「んんっ」
いつもの良くんにはあり得ない強引な口付け。唇と唇が重なりながら、湿り気の帯びた表面同士がつつっと重なり流れる。
「んっ、んん」
逃れそうになればもう一度深奥に戻し、啄む様に口付けは続く。
温かくも湿り気の帯びた、甘酸っぱい口付け。これまでに幾度も行ってきた良くんとの口付け。
でも、だけれど、この日の口付けは少し違う。一つの決意を帯びたような口付けは続き、そして──。
その先に良くんが望む事。私と良くんの子宝についてを考え始める。
それはそう、私たちにとって初めての試み。充てられての結果であったとしても、私と良くんが選んだ私たちの未来への第一歩。
ところかわってユージアルの研究所
「ああ~っ? これからについてだぁ~?」
身体の前、胸にかけて一房纏められた赤い髪を流し。
背中には、後ろ髪を二房に分けて身体の前に纏めている、髪の房と同じピンク色の髪留めで纏めている腰まで届く長い髪。ルビーの様に赤い双眸を持つ女性は苛立たしそうにつぶやいた。
「は、はいっ! こ、これからについてですっ!」
そんな女性の鋭い視線を受けて緊張のあまり、声が上ずった少年、中学生天野ぐりかずは、ぼさっとした自らの頭を何度か掻いて誤魔化しながら、赤い長い髪の女性ことユージアルの前に立ち思うところを主張した。
「なんなのよ。言ってみなさい。研究助手の分際でしょーもない事を言い出したら酷いからね」
「ええ~僕ってそんな扱いですか~っ」
「うっさい天野っ!! 私はミメットへの復讐に燃えてんのよっっ!!」
「そ、その復讐の事ですが」
勇気を振り絞った。ここは引いてはならないところだと。
やめませんか──?
「……や・め・る・……あんたもう一度言ってみなさい」
「そ、その、ミメットという人への、引いてはデス・バスターズなる組織への復讐となってしまう行い、やめましょうよっっ!!」
僕は思いの丈を解き放った。どうしてか? 危険だからだ。危険が伴うからだ。
世界をどうこうしてしまおうと考えている組織と、僕とユージアルさんのたった二人で戦うだなんて、無謀にも過ぎる行為だから。
「ああん? こら、この研究助手がいい度胸してんじゃないっ! ミメットに殺されかけたこの私にミメットの命を諦めろとか……」
怖い雰囲気、本当に怖い空気を出しながら、反目になって天野に迫るユージアル。
そんなユージアルに天野は一言。
「き、綺麗です、ユージアルさん」
と、大胆な一言を送ったのだ。これには予想外のユージアル。普段は研究助手としつつも、確かな恋人関係にある天野ぐりかずへの対応に慌てた。
「んなっ、なっなっなっ、な、に、言ってんのよっ、このクソ天野がぁ~っっ!!」
恥ずかしさを誤魔化さんと、天野の両こめかみをすかさず両手で拳を作り、ぐりぐりと攻め始めた。
ユージアルにとって真正面から綺麗だ等と言われるのは天野を置いて数少ない。それも天野は実験助手だが恋人でもある。恋人から綺麗だと言われて嬉しくないわけがない。取り乱さない女など居ないという物。
「い、いたっ、痛いですがっ、でもやっぱり綺麗なんですよユージアルさんはぁぁ」
こめかみをぐりぐりされつつ、天野の視界に揺れているユージアルの真っ赤な長い髪を掴み。優しく撫でる。
手触りは良い、滑らかで質感も良く、手入れの行き届いた髪は纏めているピンクの髪留めまでの間でも十二分以上に心地よい触り心地だった。
「髪も、こんなに綺麗で、特にルビーみたいな瞳は美しくって」
「まだ言うかこんのクソ中坊のクソガキがぁぁぁ!!!」
綺麗な物は綺麗。ユージアルは十二分以上に美人だ。その間違っているとは言えども心根の真っすぐさなども加えてやっぱり美人なのだ。美しい女性を美しいと言って何が悪い。
ある種、天野は開き直っていた。この横暴なる博士に対して。
危険な事はやめてほしい。危険でも制御可能な危険にしてほしい。デス・バスターズなんて危なそうな組織のメンバーであり、ユージアルの事を殺しかけたミメットという人には関わらないで欲しい。
至極一貫した願いだった。ユージアルを危険にさらしたくない。愛するユージアルに危険へと近づいて欲しくないという。
愛しているのだ。恋しているのだ。彼女とはもう抱き合う仲なのだ。そんな大切なユージアルを天野は──。
「お願いですユージアルさん。恋人として僕は貴女の在り方が心配でなりません。ミメットさんですか?殺されかけたのでしょう?そんな危ない人に関わるのは」
「……」
これを伝えられたユージアルはこめかみへのぐりぐりをやめて、天野の前で両手を組んだ。
両手を組み俯いた。
「……はあ、馬鹿ね。たかが十数回身体を重ねて、数十回キスしただけの女にそこまで入れ込むなんて……だいたいこっちが関わらなくたって向こうから関わってくる事だってあンのよ。私とカオリナイトの二人は組織の裏切り者なんだから」
俯きを増すユージアル。白衣の裾から豊かな実りが見えそうで、逆の意味で天野はドキドキするがそこは健全なる青少年。それを止められる手段はない。
「いいわよ……、ああもういいわよいいわよ、ミメットを狙わなきゃいいんでしょーがこのボンクラっっ!! ただせっかく作ったファイヤーバスター3.使う時があれば使うわよ。それでいいんでしょう天野ぐりかずっっ!」
素直さの欠片も無くぶっきら棒に唾を吐いたユージアルに。天野のぐりぐり眼鏡の下の瞳は微笑みの形に変わる。
そんな天野を。
「来なさい天野」
「へっ、うわっ」
実験室の仮眠用のベッドに引っ張り込まれた天野。
ユージアルはその天野の身体に自身の身体を添わせるような形で、天野に抱き着く
白衣越しにでも分かるユージアルの豊かな双丘が、天野のヒョロイ胸板に押し潰される。
「ありがたいと思いなさいよ天野。このユージアル先輩の肉体を自由にできる権利はこの世で天野ぐりかずただ一人なんだからね」
「も、もちろん、光栄に感じております。ユージアルさんの豊かな肢体が僕だけの物という現実に」
ふと、天野は思い至る。当然の事でもあった。
「あ、あの、僕とユージアルさんはずっと生でその、して、いるわけすが……あ、赤ちゃん、できちゃったり」
意外にもユージアルにはその覚悟があった。
「そりゃ、出来る可能性もあんじゃない? なに、天野。あんた子供が出来たら降ろしてとか逃げる気?」
強気なユージアルの言葉にほんの少しだけ隠れていた弱気さを、天野ぐりかずという少年は見逃さなかった。
そして、ここでけして答えを間違えてはいけないのだとも。
「ユージアルさんが僕の赤ちゃんを妊娠したらもちろん家族総出で歓迎ですよっ! 恵まれて産まれてくる子ですっ、絶対に産んでくださいっっ!! 僕も頑張りますのでっ!」
「くすっ、あははははっ、あんたが頑張ってどうすんのよ天野っ!……ま、いいわ、産んでやるわよ天野の子供。認知はまあ年齢の事を考えるなら私がするわ。あんたとはあんたの年齢がそれなりに達するまで社会的関係はお預けだけど、いいわね?」
「それは、仕方がないですから」
こうしてユージアルのミメット復讐計画は終わったが、彼女がけしてデス・バスターズの事件に巻き込まれないという保証はない。
その為、彼女が作り出した、実用新案特許出願中のファイヤーバスター3の活躍するときもあるだろう。
ところ変わって三条院邸
茶色い長髪の美男子。三条院正人。
彼の腕の中、肩までのウェーブのかかった緑色の大きなリボンを付けた少女が一人、くつろぐ様に抱かれていた。
「ネフライト様」
腕の中の少女、大阪なるは三条院ことネフライトを見る。瞳と瞳が重なるが偶然な事にその瞳の色はほぼ同じ、薄い青。
いや運命で結ばれた二人のその瞳の色が偶然同じというわけもない。互いを呼ぶようにして重なり合ったのだ。
華が蝶を呼ぶように、ネフライトという華は見事大阪なるという美しく可憐な蝶をその袂へと呼び寄せたのである。
「なんだいなるちゃん」
優し気に微笑みを浮かべてなるを見るネフライト。まるで、否、確定的にそれはこの世で一つの宝物を見る目であった。
ネフライトの五指がなるのリボンに触れ、なるの髪の中へと入っていく。奥まで、そう髪の奥までだ。波打つなるの髪の奥深くまでネフライトの指は入っていき。
そしてその髪を栗色の髪を五指に捉えては、愛を込めて撫で梳くのだ。肩までの髪。肩までの距離。短くも長く、長くも短いその距離を、ネフライトは愛を込めて撫で梳くのだ。
引っ掛かる栗色の毛。けして枝毛ではない。ネフライトが指に巻き付ける様にして撫でているから引っ掛かるのだ。その滑らかな質感を楽しむために。
「ネフライト様は、海野ぐりおって知ってますよね」
海野ぐりお………。ああ、なるちゃんのクラスメイトだな。目立たない少年故に少し忘れていた。大阪なるについてネフライトはその全てを知りえておかなければならないというのに。
ダークキングダムとの戦いは終わっても、多くの戦いが続いている。最近ではブラックムーン、デス・バスターズといった闇の組織がうごめいている。
実際になるちゃんを救う為にとそのドロイドやダイモーンといった怪人と戦ったりもした。けしてこの十番街は、この世界はまだ安全安泰とは言えないのだから。
といって、海野ぐりおとはなるちゃんのクラスメイトに過ぎない。何の危険性も無いだろう。というのが私の、ネフライトの見解だった。
「その海野某くんがどうかしたのかい?」
「あ、あの、」
少し照れ臭そうに。恥ずかしそうになるちゃんはもじもじする。
まさか何かされたのか?! もしそうならこの手で八つ裂きに──。
少々物騒な事を考えるネフライト。
ネフライトは意外と自分は嫉妬深いのだなと思った。どこかの家庭教師は自分の嫉妬深さを自身で気づいていたが……意外とネフライトは気づくのが遅かった。
ライバルがいないからというのは件の家庭教師も同じだ。では……一種の平和ボケかもしれない。まだまだこの世界には危険が満ち足りているというのに。
とりあえずはなるちゃんが何かをされたのかという話だが。
だが、違った。良い方でなのか。悪い方でなのか違ったのだ。
「海野、海野んちで家政婦兼家庭教師をなさっているカオリナイトさんって大人の女性、すっごい美女と海野は寝食を共にしているんですけど、こ、子供を作る覚悟でいつも生活しているようなんです。そ、そのお、海野が、カオリナイトさんを妊娠させる覚悟で。って、きゃーっ!」
ほう、なるほど。その海野少年というのはある意味ではできた少年だな。
法的には許されざる年齢において子を作る覚悟とは。このネフライト、身習ねばならんところだ。
或いはそう、私の様に、法の外に居る人間こそがその相手なのやもしれんな。カオリナイトと言ったか。そのカオリナイトなる存在が私やブラックムーン、セーラー戦士たちの様な、法の外の存在ならば十二分にあり得る事だ。
「で? なるちゃんはその様な話を私に聞かせてくれて、何を望んでいるのかな?」
何を。一つしかないだろう。法の外に居る私になるちゃんが頼むことなど。
「も、もう、ネフライト様のいじわるっ、分かっているくせに」
「はははっ、少しいたずらをして見せたのさ……、ただ、それは覚悟がいる行為だぞ。子は私が君と結婚できる年齢になるまで預かっておくとしても、だ」
「確実、じゃなくていいんです。出来たら産みたいなって……その、私も実感ないし、私の友達の中においてこの手のお話で一番進んでいるのは海野とカオリナイトさんですから」
「ふふふっ、人が進んでいると聞くとその先を進みたくもなるな」
「ね、ネフライト様っっ?!」
「ははっ、安心しろなるちゃん。そこまで軽挙妄動になるつもりはないさ。人は人。私たちは私たちだ」
「も、もうネフライト様のバカぁっ」
だが、と一言おいてネフライトは呟いた。
「なるちゃんとの子供、欲しいかと言われれば欲しい。それが俺の、私の本音だよ」
「ね、ネフライト様っっ」
少女は抱かれゆく。青年の腕へと……。
ところ変わって誰も居ない衛の部屋。正確には衛とうさぎの二人だけがいる部屋。衛には家族がいないからだ。
「ねえまもちゃん」
「なんだうさこ」
シーツにくるまった月野うさぎ。その隣に寄り添うようにして座る衛の姿があった。
丁度愛し合った。愛し愛し愛し、愛し合った直後の事。
「あたしたち、家族なんだよねえ」
家族。うさぎの言う家族とは父母弟、ちびうさの五人月野家の家族の意味での家族ではない。
衛と二人の家族という意味だ。妻にして夫、母にして父、前世より結ばれた運命の人としての。
そこへちびうさが入ってくる。娘としてのちびうさが。
「家族だな……ああ、そうさ、うさこと俺は家族さ……そうだよな」
呟き、うさぎを抱き寄せその長すぎるほどに長い金色の、月の色の髪を指に絡めて撫で梳く。
しっとりと濡れた、髪。汗に濡れた髪。生々しい愛し合いの残滓を持つ金糸の髪。
どこまで撫で進めたところで長すぎる金の髪はその毛先へと衛の指を届かせる事は無い。
髪より抜け出さない指。
だが、心地いい。汗に濡れていようがその質感、滑らかさは寸土も失われておらず。ある意味愛の行為前よりも輝いて見える。
雲間に見える月の様に美しい長い髪、五指に絡みつけながら撫で梳き、何度もその先を目指すが、やはり先までは通り抜けない。
だが衛はこの美しく光る金色の長い、長すぎる髪が大好きだった。
鼻を近づけ、その美しい金糸の匂いを嗅ぎながら。衛は考え、自分を振り返る。
家族のいない衛。皆交通事故で死亡している。趣味は読書で、得意なスポーツは陸上。
好きな色は黒。好きな科目は物理、苦手な科目は特になし。
好きな食べ物はチョコレート、嫌いな食べ物は無し。行ってみたいところはアメリカ。
占いはしない、癖は髪をかき上げる事。得意技はレディーファースト。
解体ペットはドーベルマンで、苦手な物はうさぎの泣き落とし。
モットーとしてはやはりレディーファースト。
好きな物、綺麗な物、苦手な物、行ってみたいところ、色々あれど、地場衛という青年は基本的に紳士なのだ。
誰かに教えられたのではない、彼の在り方そのものが紳士として出来ている。
その紳士である衛にうさぎはある意味で紳士たる彼を蹴飛ばそうとするような質問をした。
「家族、もう一人、ほしくない?」
「ああそうだな家族をもう一人欲しく──はあっ?!」
驚く衛。それはそうだろう。いきなり口を開いたかと思えばいきなり家族が欲しいなのだから。
「ちびうさかね、ちびうさのお兄ちゃんかお姉ちゃん♪ ちびうさは産まれるの確定だしだったら、ちびうさの兄妹とか、ね♪」
「お前は……いきなり何を言い出すんだうさこ。冗談なら冗談と」
「冗談じゃないよ! 家族、ちょっちあたしもほしくなっちゃったの。だって、海野とカオリナイトがあっつあつで子供を作る覚悟で愛し合ってるって言うんだもん」
要は無い物ねだり。自分に無い状況を持つ海野くんとカオリナイトを羨ましいという、乙女心という物であった。
「あ、あのなあ、あの二人の場合は海野くんが中学生で男で、カオリナイトが大人で女で法の枠から外れた存在なんだ。だから可能であって俺たちの場合は──」
「愛の前に法律なんて関係ないもん。あたしたちの愛の前に法律なんて関係ある? 未来の王と女王だよ?」
「そ、それは先の話であってだな。今は未だ世の法律の枠組みに」
「あたしセーラームーン。まもちゃんタキシード仮面様。はい、法から外れました。海野とカオリナイトと同じ条件です」
「あ、あのなあ、うさこ~っ」
海野くん、カオリナイト。なんて爆弾を作ってくれたんだ。
レディーファーストな紳士衛でも、未来の妻の我が儘にはかなり手こずるのであった。
でもォ、とうさぎは告げる。
「本当に本気でまもちゃんとの子供。赤ちゃんは欲しいなーと思って居ます」
「うさこ……」
美しい月の少女は笑う。屈託のない笑みで。
その笑みに引かれる様にして、地球の王子は引かれ、彼女をその腕に抱くのでした。
それは静かなる幸福の福音。それは大いなる福音。地球と月が重なりし時の、その始まりの瞬間であった。
出してほしいキャラは誰ですか?本当はもっと書きたいですデマンドとかちびうさとか(期待に応えられるかは分かりません)
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カオリナイト
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海野ぐりお
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ユージアル
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天野ぐりかず
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地場衛
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月野うさぎ
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ネフライト様
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大阪なる
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テルル
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ビリユイ
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シプリン
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プチロル
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水野亜美
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浦和良
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火野レイ
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木野まこと
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愛野美奈子
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天皇はるか
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海王みちる
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冥王せつな