※この作品はR-18です。

部長、すみません・・・   作:夜半の月

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オリジナルキャラの老人男性とコミックBURN-UPEXCESS&W光芒の絆に登場するメル=キャリー監査部長の恋愛話です。

メル=キャリー監査部長はいわゆるやられキャラで、原作では無残に凌辱されて殺されてしまいます。


部長、出張ですか? 後編

 

 

 

 部長、出張ですか? 後編

 

 

 

「はあ……、M・Dの耐久試験ですか」

 

 補給行為のセックスからの流れに身を任せて、愛し合うセックスへと移行するという、夫婦の営みを終えて一息。

 

 私の精は今、M・Dの食物たる役目を終えた分について、私とメル=キャリーという女性との子を成す為に、彼女の胎内で奔走中だろう。子を作るという正しい精の緩流だ。

 

 この精の緩流で子が出来るかは分からないが、都度の営みの際にメルは『子が欲しいわ』と呟きながら、枯れた、ああいや、今や満たされている老人で在る私に願うのだ。

 

 私も彼女との子が欲しい。二人目の子が。だからこれは双方の願いで在り。まあ、いいか。愛し合っていればまた出来る。

 

 七十も半ばと老いた私だが、どういう訳かメルと愛し合う様になってより精力も体力も若返っているような気がする。不細工顔と老人な事は相変わらずだが漲ってきているというか。

 

 メルとのセックスがある程度長時間になっても腰が痛まないくらいには、体力も付いてきた。だからこそ言えるのだ。また一人子を作ることが出来るだろうと。

 

 

 さておき。

 

 

 着る物を着て穿く物を穿き、作業服姿に早戻りをした私は、同じく彼女自身の股間部位を私に拭わせ、疲れているメルが弱っていた、その原因を聞いていた。

 

「はあ……、はぁ……、……そうよ、耐久テスト……」

 

 革張りのソファに深く身を沈めて休むメル。着衣の乱れこそ直されていても呼吸は未だ乱れたまま。火照り赤くなった頬を汗が伝っている。

 

 大きく脚を広げて両手をソファの背に掛けている様子は、全力疾走の後のよう。

 

 両脚の太股には黒のガーターベルトが伸び、黒いレザー製のタイトなレディスーツを身に纏う彼女のエロチシズムを感じさせたが、行為の後でさえも性的感情が沸き起こってしまうくらいに、私が性にだらしないのか? それ程までにメル=キャリーという女性を愛しているのか? たぶん後者だろう。年若く美人な女性なら私の周りには多いが、私が性を覚える相手はメルだけなのだから。

 

 一人の女性をこれ程までに愛したことが、私の人生に在っただろうか? 枯れ果てた人生に……。そもそもこんな不細工顔に惚れてくれる女性など、そう、メル=キャリーという女性が初めてだった。こんな美女が初めてだなんて年甲斐も無くときめいてしまうではないか。

 

 考えても詮無き七十余年の人生を振り返りながら、彼女と出会えた幸せを噛み締めつつ、彼女に、彼女が疲れていた事の次第を訊いていた。けしてセックスでの疲れでは無い。二十代と若く体力漲る彼女が私との性交を数回行ったところで、そんなに疲れるはずが無いから。思えば今日の彼女には最初から疲労感が見て取れた。

 

 額や頬に汗を浮かべながら、事も無げに彼女が呟いたのは、結構とんでもない事だった。

 

「無防備な一体のM・Dに対して、残り二体のM・Dのプラズマを集中させて、エネルギーの消耗率と外殻の損耗度合いを測っていたのよ……ふう」

 

 それも三体全てのM・Dに同じ事をしていたという。

 

「む、無茶苦茶してますね……」

 

 M・Dがいくら核攻撃にも耐えられる程に強靱だからと言っても、そんな事をすれば流石に損傷するし、損傷したM・Dが修復に必要な生体エネルギーを、彼女から吸い取るに決まってるだろうに。

 

 メルのいつもの様に私と行う補給行為の交接が執拗だったのも、彼女の胎内に収納されているM・Dたちが私の精を多量に吸い取っていたのも、宜なるかな。必然である。

 

 私はメルの背後に回り込んでは、彼女の両肩に手を置いて、労いを以て揉んであげた。

 

 レザースーツの滑らかな質感を手の平に感じ取りながら、ぐっと揉み込み、彼女の肩を揉みほぐす。

 

「んんっ、あっ、気持ちいいわ。ありがとう」

 

 後ろを振り返り微笑む彼女。美女の微笑みというのは破壊力が凄いな。セックスでの疲れが吹き飛んでしまった。

 

「いえ、お疲れの様ですので」

 

「悪いわね、ふうぅ、気遣いさせて」

 

「とんでもないです。部下としても夫としても、上司であり愛する妻であるメルの事を第一に考えるのは、至極当然の事ですから」

 

「ふふっ、嬉しい事を言ってくれるじゃない。本当に良き部下、善き夫よねあなたって」

 

 それ程でもありませんよ。愛するメルを想っての自然な行動ですから。

 

 むっ、少々凝っているな。二十代と若い彼女だが私の様な老齢の肉体労働者、主にメル専属の雑務従事者である肉体労働者の様に、身体の行使をする事はあまり無い。

 

 しかしながら、日々のデスクワークとM・Dの実験研究が主な仕事である彼女。デスクワークは肩が凝ると言うし、これくらいは普通の事なのだろう。

 

「ですが、M・Dについての実験は、少々無茶では?」

 

 昔、警察の特殊部隊ウォーリアーと戦った時、メルのM・Dは損傷した事がある。

 

 M・Dはプラズマ兵器だ。同じプラズマ兵器だったらしい警察の拳銃弾相手には分が悪かったとかなんとかで。

 

 当時の事もあり、彼女の持つM・Dは、それぞれに改良を重ねて対策されていたが、同じM・D同士の攻撃にはこれもまた相性が悪いようだ。

 

「ああ、それね。実は今夜から数日アメリカ本社に出張となってね。本社での研究に付いてのレポート的な物としてM・D兵器同士での戦闘データを一つでも多く上げようと思ってね、それでよ」

 

「はあ、成程。本社への報告として……、――って、出張っ!?」

 

「ええ、出張よ」

 

 平然と呟くメルに私はあわあわと取り乱した。揉んでいた彼女の肩を後ろへ引っ張り、彼女の顔を上に向かせる様な格好にさせてしまう。

 

 碧い双眸を持つ、日本人と根本的に異なる人種。アングロサクソンの美貌が私の目と見つめ合い、彼女の口があんぐりと開いた。

 

 出張――そんな話は聞いてない。それも今夜とか。

 

「聞いてませんよ出張だなんてっ、それも今夜って急すぎるでしょうっっ」

 

 今この瞬間に聞いた。いきなり過ぎるだろう。

 

「それはそうよ今言ったもの。ああ、勘違いしないでね。別にあなたに内緒にしてたとかじゃないから。今朝の本社とのモニター会議で決まったのよ。M・Dのホルダーを一人呼び出せないかって」

 

「え、M・Dのホルダー、つまりはメル?」

 

「そう、私。まあ私で無くとも、私以外にも社が確保しているホルダーは居るのだけれど、天文学的確率のM・Dのホルダーなのだからして、当然社が確保している人間もそんなに多くは居ないしね」

 

 確かにメルはM・Dのホルダーだ。M・DのホルダーはI・E・M社内でも非常に希少で少ない。I・E・Mは世界的巨大企業でその数少ないホルダーを幾人と抱えては居るが、それぞれ個々に任務や仕事で動いている手前、そうそう空き要員が無い。

 

 メル、メル=キャリー本社監査部長兼日本支社取締役常務も、仕事の都合上、空いている身では無いが、それでも一人ホルダーが必要なのだという。

 

「文句があるなら社に言って貰えない? 私だって好きで本社に出向したい訳じゃ無し。だって、日本は居心地も住み心地も最高だもの。あなたも居るし、アリスの事もあるし、ね」

 

 メル=キャリーという女性は日本が好きだ。黄色人種の国として当初は見下している感もあったが、ここ数年ですっかり日本贔屓となり、生粋のアメリカ人だが何年も日本に住んでいる間に、すっかり日本を第二の故郷と呼ぶ様になっているくらいに。

 

 惚気話となってしまうが、私と、そしてメルと私の間に産まれた娘アリスも居るこの東京でずっと住んでいたい、と彼女は良く口にしている。

 

 無論、正月には日本で三が日を過ごし、その後、アメリカにある彼女の実家へと顔見せする、といった生活を送っているが、アメリカにはアメリカの良さが有り、日本には日本の良さが有る。日本にしか無い日本の良さを彼女は好きになっていた。

 

 因みにエリートな彼女らしいと言えば良いのか、彼女の実家も結構な上流階級だ。

 

 実力で以て若くしながら今の地位を築いている彼女だが、一方では生まれからして私の様な下層民とは違っていた。

 

 実家はプール付きの豪邸で、如何にも上流ですと言わんばかりの内装に、私より年下の御両親も豪快ながら上品だった。ただ、裏の顔を持つ怖い人達なイメージもあって苦手だが。

 

 破壊工作に殺人、人体実験に紛争介入もしているメル自身の経歴を思えば、当然の事、御両親もI・E・Mの裏に携わる人間なのだろう。と、推測できたが。私は初対面より今まで、余計な事を尋ねたりしていない。

 

 I・E・Mの裏は、I・E・Mの闇は、私の様な凡人が立ち入って良い世界では無いと、自身の身の程を弁えているので。

 

 まあそんな家庭事情もあり、彼女が受けてきた教育も英才教育。娘アリスの教育方針でも英才で行くのか、私の様に凡庸に行くのかで意見のすれ違いも起きていた。

 

 元から住む世界が違うのだ。考え方に差も出て来よう。

 

 今年4つになったばかりの可愛い可愛い我が愛娘アリスは、肌の色は白人の白。瞳の色が碧。ハリウッドの子役が霞んでしまうほどの美的容姿。髪が腰下に届くくらいの真っ直ぐな金髪という、メルをそのまま小さくしたような外見をしている。

 

 性格もメル似かと思いきや穏やかな方で、性格だけは私とメルのミックス。外見はメルのクローンのようなメルそっくりな外見という、メルの遺伝子の99.999%を引き継いだ娘だ。

 

 産まれながらに超能力テレキネシス・パイロキネシスを使えたりし、社の研究のお手伝いをする事もある。もちろん子供には多すぎるお小遣いも出るが、そこは親である私とメルが管理していた。

 

 それとアリスの能力がI・E・Mの裏に使われたりしないか心配な私としては、メルを通してそれなりの意見を述べたりしている。

 

 4つでアレならば大人になればどれほど強力な能力者になるか分からない、そんな能力者の卵について一平社員が口を出すなと詰られたりしたが、そこはメルがこう見えてこの人は私の夫で、実験対象と見ているのは私の娘なんだけどと睨みを効かせてくれた。「そ、それは確かに、そのメル=キャリー監査部長殿の、お、お子様では御座いますが……」しどろもどろとなる日本支社幹部。日本支社の実質的な最高意思決定者がメル=キャリーなのだから、誰も文句は言えないのだ。

 

 そんなこんなで当人がどの道に進むのかは当人に決めさせようとなったのである。ただ、教育方針については英才教育か普通の教育かで私とメルの間で対立が起きていたりするのだが、それはまた別の話だろう。

 

 と、そんな話では無い。

 

 私は革張りソファーに背を預ける形で、身体を仰け反らせ、あんぐりと口を開けて私を見ているメルの頭をそっと掴んで。

 

 彼女の頭を私の方に向けさせたままに固定する。

 

「私、アリスの食事とか諸々、自信が無いのですが!」

 

 男やもめと言いますか。私はメルと結婚するまでまともに家事をしたことが無い、何せ単なる負け組男だったから。

 

 そんな私に一人でアリスの世話が出来るかと問われればNOだ。

 

「その為の家政婦なんじゃない」

 

 ふっと半目になって私を見るメル。ああ、そう言えばうちは家政婦を雇っているのを忘れていた。

 

 もちろん、メルの財力でだ。早速メルは携帯端末を取り出す。

 

「手、離してくれない?」

 

 え?あ、いま私はメルの頭を鷲掴んでいたのだった。

 

「す、すみません」

 

「いいわよ別に。アリスのことは心配だものね」

 

 ピッ、ピッ、ピッ。

 

 何処かへ決まってる。家政婦の携帯端末に繋いでいるのだろう。

 

「ああ、私。メルよ」

 

『これは奥様』

 

「あのね、悪いんだけれど私、今夜から数日本社出向になってね。その間、できの悪い旦那と、可愛いアリスの事を頼めないかしら?」

 

 できが悪いのは認めるけどそうハッキリと言うか?

 

 アリスが可愛いのも確かだけど。

 

『えッ?! 今夜からですかッ?!』

 

 家政婦さんの困惑の声が聞こえる。どうかしたのか?

 

『あのぅ、奥様』

 

「なに?」

 

『私、先だってより休暇願を出して参りましたが、それ、明日からなのですが……』

 

「へ?」

 

 へ?

 

 夫婦揃って間抜けな声を上げてしまった。

 

 そう言えば家政婦さんから休暇願が出されていたな……あれ、明日からだったのか。なんて間の悪い。

 

「ずらすって出来ない?」

 

『生憎と、その……』

 

「そう……なら、いいわ。気にせず休暇を楽しんできなさい」

 

『申し訳ありません奥様』

 

「前から決まってた休暇なんだから此方の都合に合わせるわけにも行かないじゃない。いいわよ。ゆっくり楽しんできなさい」

 

 無理に引き留めない辺り、庶民的な感覚もお持ちなんだよねえメルって。

 

「はあ。どうしようかしらねえ……あなた一人でテレキネシスにパイロキネシスまで操るアリスを相手にしてたら部屋が火事になる光景が浮かぶし」

 

「そこは大丈夫ですよ。あの娘は頭の良い子です。家や街中、私生活で能力は使わないという約束はきちんと守れる娘ですから」

 

 親馬鹿では無い。本当にメルの遺伝子のほとんどを受け継いでいるためあの子は頭が良いのだ。約束事は守る良い子でもあった。

 

「確かにそうね、でも食生活がねえ。あなたまともな料理が出来ないじゃ無い」

 

「は、はは」

 

 そこもハッキリ言うか?男七十余年。まともな料理を作れる腕が育たなかった。

 

 コンビニ弁当や、売れ残りの弁当を餌に生きてきた。メルと出逢うまでは。

 

 だから今でも料理は家政婦さんかメル頼りだ。

 

「う~ん、宛てが無い事も無いんだけれど」

 

「え、あるんですか宛て」

 

「嫌なのよね~、あのクソ女に頼むのは」

 

 クソ女。それで誰か分かった私の記憶力はまだ衰えていないな。

 

 メル=キャリーという人がクソ女と呼ぶ相手。序でに相手側もメルのことをクソ女・アメ公と呼んだりする相手。

 

「あ~もうッ。ムカつくけれどジャパニーズに知り合いは少ないしあの女に頼んでみることにするわ」

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ふたたび鳴る携帯端末のプッシュ音。

 

 プッ、プルルル、プルルル、ガチャッ。

 

 出た。

 

 ガチャンッ、ツーツーツー。

 

 切れた。

 

「あンのクソ女ぁぁッ! 電話にくらい出なさいよねッッ!!」

 

 もう一度挑戦。

 

 今度は出た。

 

 出たが。

 

『お掛けになった電話番号は現在使われておりません』

 

 なんて、肉声での応答があった。

 

 電話に出ているのは、間違いなく本人だ。

 

「ふ、ふふふッ、Mrs.キネゾノ少々お遊びが過ぎるのでは無くて?」

 

『ふんッ、犯罪者と遊んであげてるだけで済ませてるんだからありがたいと思いなさいよねミセスキャリー……っていうか私の端末に電話してくんなアメ公ッッ!』

 

「こっちだってあんたのところに態々電話したいなんて考えてないわよクソ女ッ! 要件があるから電話したのよッ!」

 

『あんたの要件なんて聞く耳無しッ、私は警察でーすッ! 犯罪者と取引はしませーん!』

 

「何年も前の事を持ち出してきて心の狭い女ねッ」

 

『合衆国政府を動かして日本の警察に圧力掛けて犯罪帳消しにしてくるような女にだけは言われたくないわ!』

 

 駄目だ。やっぱり喧嘩になった。

 

 携帯端末の通話口でギャーギャーと文句ばかり言い合う二人に待ったを掛けたのが、心強い利緒さんの旦那さんだった。

 

『おい利緒勤務中に大声出して喧嘩すんなよッ! 相手が誰かしらないが――っていうか想像付くが周りが見てるだろ』

 

『うっさい祐治アメ公の犯罪者女が性懲りも無く頼みがあるとか言って来てんのよッ! ビル爆破までして置いてどの口が言うかッ!こっちは巻き込まれた方なんだかんねッ!』

 

『まずキャリーの頼み事とやらを聞いてから考えろよッ。あのI・E・Mの監査部長メル=キャリーが態々警察である利緒に電話してくるんだぞ? 何かあったって考えるのが普通だろ感情的になるなよ』

 

 おお、祐治さん上手い誘導だ。その調子で利緒さんを宥めて下さい。私も。

 

 メルの身体を後ろからそっと抱き締め、少し恥ずかしいが、鼻で彼女の耳元に掛かる金髪を掻き分け、キスをするように彼女の耳元で囁くようにして説得を試みる。

 

「メル。頼み事を為さるのに喧嘩腰はどうかと。それに何年も前の事件でも命を取り合った当事者同士なんですから忘れろとか許せというのが無理でして。メル自身あの事件では痛い目も見たでしょう」

 

「う……、ま、まあ、それは、ね」

 

「思い出したくも無い事を思い出して怒っても無意味。大人なのですから此処は要件だけを伝えてください。利緒さんと喧嘩なさらずに、利緒さんが喧嘩腰であってもです」

 

「う、っ、わかったわよ」

 

 ほっ。なんとか上手く宥めることが出来た。メルはあの事件では今田俊明に殺され掛けている。痛い目を見ているのだ。

 

 思い出したくも無い事件の筈で、あの事件のことで自分も言い合いになったら、それこそ、自分自身傷をえぐられる行為を自分でしている訳で。

 

『で、キャリー、要件って何よ? つまんない用事だったら切るわよ』

 

「切羽詰まってるから電話したのよ……あのね、私、今夜から本社に出向で数日家を留守にするの」

 

『留守にすればいいじゃない。仕事の話を私にしてどうすんの』

 

「話は最後まで聞きなさいよ。それで、うちにはうちの旦那とアリス……娘の二人だけになるのよ。それでまあ癪だけれど、あんたのところで数日二人を預かって貰えないかと思ってね。お願いしたいの。大切な夫と娘だから」

 

 序でに、家政婦さんには休暇があって面倒を見る者が本当に誰も居ないことを伝える。

 

 残るのは七十代の老人パパと、僅か4つの娘のみ。生活できるか不安なのだと。

 

『う、う~ん、そういうこと、ね……。ま、まああんたの旦那さんやアリスちゃんには罪もないし……』

 

「引き受けて貰えない?」

 

『はあ~っ、ったく、そういうことなら……まあ、わかったわよ。私も家事能力皆無な老人と幼稚園児な子供を放置して平気でいられるほど鬼じゃなし。預かったげるわよありがたく思いなさいっ!』

 

 上手くいったようだ。というか上手くいってくれないと私が困る。家事能力0の私ではアリスの食事とかがコンビニ弁当とかになってしまうからな。

 

 私は上手くいったメルの身体を彼女の背中側から抱き締めたまま、いけないと分かっていながら彼女の大きな胸を、黒いレザースーツ越しに揉んだ。

 

「ひゃあっうン!」

 

『ん? どしたの?』

 

「な、なんでも、ないわ……、そ、それじゃ、お願い、ね」

 

『はいはい了解』

 

 ぷつり。切れる電話。

 

「で、電話中に何をするのよ、へ、変な声が出ちゃったじゃない」

 

「あ、ああ、いえ、申し訳ありません……、その、身体を密着させておりました物で、つい……」

 

 言い訳しながらそれでも手は更にメルの胸を揉みし抱く。

 

「ひゃあっあ――な、なに、よ……あなた、あれだけしたのに、まだ、したい、の?」

 

 少し喘ぎながら、メルは私を振り向く。今にもその唇を塞いでしまいたい。

 

「補給行為じゃない、純粋なセックスを――メル=キャリーという女性としたくなってしまいまして。セックスをさせてくださいませんか?」

 

「なによ。随分と積極的じゃない。いつもの気後れしたあなたはどこへいったのかしら、あんっ」

 

 再度胸を揉む。下から上へと持ち上げる形で彼女の大きな胸を。レザースーツ越しでもしっかりと感じられる柔らかさを揉みし抱く。

 

「今日はもう、メルが日本を発つまでしたい――させてください」

 

 M・Dへのエネルギー補給行為と夫婦としての営み──性交。

 

 毎日行っている行為が数日とは言えども出来ないのは正直寂しい物がある。

 

「うふふ、そんな事を言ってもいいの? あなたの腰が持たないわよこの発情老人」

 

「持たせますよ。今日ばかりは何が何でも。そうでないと数日寂しい思いをしてしまいますから」

 

 胸を揉み揉み。揉みし抱き続ける。柔らかい……なんて柔らかく大きいのだろうか。こんなに大きいのに張りもあって、最高の胸だ。

 

 鳴尾、いまは甲子園祐治さんは昔乳揉み魔だったと聞いたことがある。その祐治さん曰く『キャリーの乳は利緒並み』らしい。利緒さんも大きいのは確かだが、メルの評価が高いのを喜ぶべきなのだろうかこの場合。

 

「んっふう、いい、わ。私の事、好きにして……あなたの、好きに。愛してくれても、いい、からぁ」

 

 メルの誘いの言葉に、私の男はズボンの中で大きくなってしまう。早々にズボンを脱ぎ捨てた私は、メルのタイトな黒いレザースーツのスカート部を、彼女の腰の位置までたくし上げ。

 

 彼女の下着を脱がせた。ゆりゆるとゆっくり膝を下りていく下着、膝の辺りでくるくる丸まり、それを彼女の脚から引き抜く。

 

「ああ、ん」

 

 艶っぽい彼女の声。ソファの上に私が座り。

 

「対面座位?」

 

「はい、メルと見つめ合いながら抱き締め合ってしたいので」

 

「いい、わ」

 

 私の膝の上にメルが乗る。私の猛りが彼女の中に沈み入っていく。

 

 彼女の腰を引き寄せ大きく猛りを押し込んでいき。

 

「はあっあああン、奥までっ、奥まで来てェ!」

 

「もちろんですよ」

 

 深く奥まで入っていく。膣口を押し開いて胎内へと陰茎被大部位を押し入れてしまう。もうこれでもかというくらいに入りきり。

 

 私はメルの股間に自らの股間を重ね合わせたまま、彼女と二人、ぎゅっと抱き締め合う。

 

 レザースーツ越しながら感じられる、メルの暖かい温もりだ。

 

 抱き締め合いながら彼女の背に回した手で、彼女の腰下まで真っ直ぐに伸びるさらさらの金髪。金色の長い髪を触り。指の間をすり抜けていく髪の触感を楽しみながら。レザースーツ越しにその背をなぞり撫で、彼女を感じさせる。

 

「はあっ、あ」

 

 彼女は枯れながらも、ここ数年はメル=キャリーという太陽に照らされて、雄々しく回復した老木である私の身体を、しっかと抱き締める。彼女の指が私の背をつつーっと撫で、感じた私は、私より先に快感を覚えているだろう彼女に、一度目の射精を情けないながらもメル=キャリーの胎内に解き放った。

 

「あっあああああ~~~っっ!! あ、あつっっ、熱いっ、え、これっ、で、出てるの? ちょっ、早いじゃないっ。私、まだっ……満足っ、してないわっ、始まったばかりなのにっ」

 

「ええ、ええ、始まったばかり、ですっ、もちろん私も、まだまだっ」

 

 射精しながら腰を突き上げ始める。ギリギリまで引いて、最奥まで挿入して。

 

 メルの膣内には先ほどの愛液も残っている。そこへ今の私の射精により彼女の中は私の精子で満たされて、良き潤滑液となってくれ。

 

 思うままの前後運動と交合を行う事が出来ていた。

 

「あっ、ひゃっ、だ、出され、ながら、セックスっ、気持ち、いっ」

 

 交接の動きに波打つ彼女の金色の長い髪が綺麗だ。胸元を大きく盛り上げている二つの胸の感触が柔らかくて気持ちいい。

 

 太股を見ればガーターベルトがエロチシズムを沸き立たせ、真正面で見つめ合う美貌はハリウッド女優顔負けの尊顔。

 

 メル=キャリーという女の魅力を全開に引き立たせている。

 

「あっああっっ、気持ちっ、いいのぉぉ、あなたのっが、奥まで、来てっ、あっはあああ!」

 

「メルっ、メルっっ」

 

 この美しい女が自分の妻ということ。信じられないが事実なのだ。

 

 彼女と愛し合い、毎夜床を共に夜を過ごし、職場では補給行為という名の交合を行い、そして私と彼女の間に子供も産まれた。

 

 人生負け組だったはずの私が彼女と出逢い全てが変わった。私は彼女を愛している。彼女もまた私の様な醜い老人を愛してくれている。

 

 だから今日、この日この時この瞬間も愛し合う。補給で終わりでは無い。愛し合いたくて愛し合うのだ。それは始まったばかり。

 

 そうだ、まだ始まったばかり。就業時間までは、夜まではまだ、長い。

 

「ふっ、くうっ、」

 

「あっ、ああっ、ふああっ、あっ、気持ちっ、いい、わ。だけどあなた年も年なんだからっ、無理しなくていいわよっ」

 

「男にはっふうっ、無理しなければならないときがっ、あるんですよっ、メルっ」

 

「あァァ――~~っ!!」

 

 メルの数日の出張。つまりは数日できなくなってしまう。ならば今、この場でもっとしっかりとした交合を。

 

 メルのM・Dたち、ヘラトスもキセノンもソシアルも、三基のM・D達は完全なる休眠状態。

 

 だからいまは、私とメルが深く正しく愛し合う時間である。交合を行い愛し合い、子を作る行為を。

 

「あっ、あっ、ああっっ、気持ちっ、いいわっ、いつも以上にっ、あなたを感じるっ、ああっ、あああっっ」

 

 この数年、遅咲きの青春を取り戻してきた私は、メル=キャリーという女を、ただただ求めていた。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「ふう、もう夕刻か。メルは今頃空の上。私は就業時間を過ぎて、駆け足で家へ帰る。老人に何てことをさせるんだ全く」

 

 足早に家路へ急ぐ。タワーマンションが見えてきた。私とメルの愛の巣たる部屋があるマンション。

 

 敷地内に入ると警備員に止められる。まあいつもの事だ。

 

「困るよ。爺さん。ここはあんたみたいな人が入って良いところじゃないんだからね」

 

 まあそりゃそうだろう。私だって普通ならばそう思う。作業服を着た老人が仕事時間外でタワマンに。

 

 しかも東京のど真ん中のタワマンに入る。ただの不審者だ。

 

 だが、私は水戸黄門の印籠さながら。身分証とカードキーを見せ付けた。

 

「あ、こ、こ、れは、住人の方でしたか」

 

 住人も住人だ。何年も前からこのマンションに住んでいる。アリスが生まれる前からね。

 

 安アパートから強制的に連れてこられたのだ、メルに。

 

「そ、そうならそうと仰って下されば」

 

 新人警備員だろう手を揉み揉み。胡麻をすってくる。この手の人間は余り好きじゃ無い。

 

 かつてそっち側だったことを思い起こさせるからね。

 

「じゃあ通りますよ」

 

「どうぞどうぞ」

 

 私はゲートを通るとロビーに入り、カードキーを各部屋へと繋がる機械の鍵穴に挿して、暗証番号を入力する。

 

『はーい』

 

 すると通話口からメルとそっくりな声が聞こえてきた。本人と同じ声ながら優しげな声に癒やされる。

 

「アリスちゃん、開けてくれるー?」

 

 我が愛娘のアリスだ。

 

 先に幼稚園から帰っていたのだろう。非常に頭の良いこの子は送り迎え無しでも自分一人で帰宅できる。

 

 とはいえ、普段はメルの寄こした黒服の警備員二人に送り迎えされていたりするが。

 

『はーい、パパ』

 

 ピーっ、カチャ。

 

 入り口のドアの開く音。

 

 早速中へと入りお目当てのエレベーターに乗り、高層階のボタンを押す。

 

 といっても最上階の億ションだが。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「パパお帰りなさーい!!」

 

「ただいまー!!」

 

 玄関を開けると元気良く飛び込んでくるメルを丁度そのまま小さくした女の子。

 

 目の色は碧、金色の髪は長く腰下まで届いている。服装まで母親を意識した感じの物。容姿はハリウッドの子役顔負けの可愛らしい容姿。将来さぞ美貌の女となる事確実な。

 

 メル=キャリーの生き写しの4歳の女の子。アリス=キャリー、我が愛娘である。

 

 頭は非常に良く超能力であるテレキネシスやパイロキネシスを使いこなす、ちょっとばかり怖い子でもあった。

 

 普段は「パパ。パパ」って可愛い娘なんだけれどね。

 

「大人しくしてたかい?」

 

「うん、アリス大人しくしてたよ?」

 

「言いつけをちゃんと守って良い子だね」

 

 アリスの頭を撫でる。この歳で出来た子だからか多少親馬鹿も入って掻い繰り撫でる。

 

「うふふふっ、パパくすぐったーい」

 

「嫌だった?」

 

「んーん。パパが撫でてくれるのアリス大好きー♪」

 

 ああ、本当に良い子だ。この良い子をI・E・Mの裏側に触れさせたくは無いなあ。

 

「ああ、そうだそうだ。忘れるところだった。今日ねママお仕事でアメリカに行っちゃったんだよ」

 

「ええーっ」

 

 涙が湧いてくる。そりゃまあまだ4歳児だからなあ。それにこの子パパとママが大好きな子だから。

 

「ママ、帰ってこないの?」

 

「何日かしたら帰ってくるよ」

 

「ホント?」

 

「ホントホント。アリスは良い子だから分かるよね?」

 

 卑怯なやり方だ。頭が言い分無理矢理言うことを聞かせる。良く理解できるから。本当は寂しいのにね。

 

「うん。アリス良い子にしてママのお帰りを待ってる」

 

「良い子だ。ママは直ぐに帰ってくるから安心して。その代わりと言ってはなんだけど、今日から利緒さんの家に泊まりに行くことになってるんだよ」

 

「えっ? 美緒ちゃんのお家へっ!」

 

「そう、美緒ちゃんのお家だ。一杯遊べるよ」

 

 甲子園美緒。アリスの幼稚園での同級生だ。なんとも奇妙な縁で、警察の特殊部隊ウォーリアーの甲子園利緒さんの娘の美緒ちゃんと、警察のビルを爆破したメル=キャリーの娘、アリス=キャリーが同じ幼稚園で且つ仲の良い友達だったりするのだ。

 

 頭の痛い事実だが、複雑怪奇なれど現実なのだから仕方が無い。まあ、利緒さんはメル以外には敵意を向けたりしないし、メル相手でも仲の悪いママ友的な枠に現在では収まっているのは、まあ、良いことなんだけどね。

 

「ああそうそう、それだ。急いで甲子園さん家に向かわないとね。夕方に待ち合わせをしているんだよ」

 

「じゃあ早く準備しなくっちゃ! 美緒ちゃんの家にお泊まり! 美緒ちゃんの家におっとまり!」

 

 ああ、子供の頃って友達の家にお泊まり会とかわくわくしたっけなあ。

 

 もう60年70年前の古びた記憶だが……。

 

「パパ早く準備準備っ」

 

「はいはい」

 

 本当に無邪気だ。メルのクローンかと思わんばかりにメルそっくりなのに、メルには無い無邪気さがある。

 

 子供って良いなあ。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「ほ、本日は、いや、ここ数日間お世話になります」

 

 流石に警察の人相手だと恐縮してしまう。

 

 身内が犯罪者なだけに余計に。

 

「そんなガチガチにならないでもいいわよ。あんたも、この子もあのくそアメ公じゃないんだし」

 

「は、はい……、あ、ほら、アリスも挨拶しなさい」

 

 言うと両手でスカートの端を摘まんでお上品にお辞儀をするアリス。ああこれ絶対にメルが教えたな。

 

「こんばんは。利緒おねーさん。アリス=キャリーです。数日間お世話になります。よろしくお願いします」

 

「きゃー聞いた祐治。利緒おねーさんだって。やっぱり育ちの良い子には分かるのよ。でも本当にあのアメ公とうり二つね~、クローンとかじゃないでしょうね。髪の毛の長さに色、瞳の色に顔立ち、全部キャリーとそっくりじゃん」

 

 何度も聴いたそれに私は答える。

 

「遺伝子の99.999%がメルの遺伝子なんですよ。ですから必然的にメルそっくりになるわけでして」

 

「なるほどねー。でも性格はぜんっぜん違うわね可愛いわ。それに礼儀正しいし」

 

 アリスはニコニコしている。母親の悪口を言われてもニコニコしているのは、母親の裏の顔を見知っているからだ。

 

 違法な行為に手を染めていることを。ああ、どうかアリスがそっちの道に進まないように。

 

「ま、玄関であれこれしてるのも何だし上がって頂戴。丁度夕飯が出来るところだから美緒ー、アリスちゃん来たわよー」

 

 利緒さんが呼ぶと、とたとたと廊下を走ってきたのは小さな子供、こちらも夫の祐治さんより利緒さん似の可愛いポニーテールの髪をした女の子。髪の色まで利緒さんと同じ金髪だ。

 

「アリスちゃ~ん! いらっしゃあーい!!」

 

「美緒ちゃんこんばんはー!!」

 

 アリスも一瞬にして年頃の子供に戻ってしまった。やはり友達と出会えばこんなものか。

 

「あんたたち、夕飯出来るまで遊んでなさい」

 

『はーい!』

 

 利緒さんも警察官を感じさせない普通の主婦になっていた。

 

「本当は主夫は俺なんだけどね」

 

「祐治さん」

 

「はは、こっちは男同士で飲もうぜ」

 

 祐治さんとは超強気な妻を持つ者同士、いつの間にか飲み友達となっていた間柄だ。

 

 今ではメルが寝ているときか、彼女が仕事で遅くなるとき、祐治さんと飲みに行ったりしている。

 

 何でも祐治さんも昔犯罪者だったとか。そこを親の財力で警察官になったとか。日本の警察大丈夫か。

 

 メルほどの犯罪を犯していないから良いのかもしれないが。

 

 ◇

 

「しっかし乳はいいモンだ。おっさんもそう思わねえ?」

 

 酔いが回ってきたころ力説された。胸は良い物だと。

 

「ええまあ。柔らかくて温かくって、持ち上げればむちむちもちもち。張りがあり柔肌を直接触る感覚が何とも」

 

 メルの胸は大きい。平均サイズと比べてもかなり大きい方だ。あの張りのある胸を触り、頂点のサクラ色の乳首をこりこりと捏ねるときの彼女の喘ぎが溜まらない。

 

「だろだろ。俺が警察に入った直接的な切っ掛けも利緒の胸なんだよ。あの大きさ、形、張り具合、どれを取ってもまさに完璧。非の打ち所が無い! 恐らくあの利緒の乳こそが俺が長年追い求めていたキング・オブ・チチなのさっっ! まああんたの嫁さんのメル=キャリーの乳も利緒の乳とタメを張る素晴らしい大きさと張りと形をしているけどね。まさか利緒級の乳の持ち主がこの世にそうそうと居るなんて、世界は狭いやら広いやら」

 

 凄い力説である。また説得力もあるところが凄い。同じ男として感じ入る物があるという事か。メルの乳はまさにいま祐治さんが力説したとおり、完璧な乳だと私も思うから。日々触っているからこそその張り、大きさ、形をよく知る私は、メル以上の胸の持ち主など同等級など、見た目からして利緒さんしかいないと思っていた。世の中狭いなあ。

 

「あんたら何を変態チックな事を話してんのよ! 特に祐治! 大声でそんな話をしてんじゃあないわよ! 子供達に聞こえたらどうすんの!!」

 

 利緒さんに怒られた。まあアリスや美緒ちゃんにこんな話を聞かせられんしなあ。

 

 

 ◇◆◇

 

 

「はい。寒い今日は鍋よ鍋。白菜椎茸にんじん。牛肉一杯のお鍋のできあがり。うどんもあるわよ~」

 

 フローリングの部屋の中央。毛布の敷かれたそこには大きめのコタツが一台据え付けられていた。

 

 そこに陣取っているのは、幾本もの酒瓶と、ガスホースと繋げられた大きなお鍋。

 

「おおー美味そう……例によって焦げてねーよな?」

 

 と祐治さん。ああ、利緒さん家も結構な広さがあるし、祐治さんは超の付くお金持ちのお坊ちゃんらしいが。

 

 こういう庶民的なお鍋もイケる口なのか。私んちと同じだ。私の所も『ジャパニーズオナベ私大好きなのよねえ!』とメルがよく寒い日は鍋と、鍋の材料を買いに行っている。

 

「糸こんにゃくですか?」

 

「マロニーよ。丁度良いのよ。あと豆腐にネギに」

 

 私が聞くと利緒さんが答え。ネギという言葉に子供達が。

 

『ネギきらーい』

 

 と口を揃えて言う。そうだアリスも漏れなくネギが嫌いなのだった。子供って大体ネギが嫌いだよなあ。

 

「そんな事言ってると二人だけ肉禁止にするわよ。ネギって頭に良いんだから」

 

「おバカな利緒がそれ言うと説得力が一気に無くなる」

 

 ネギが頭に良いとは良く聞くなあ。元より頭の良いアリスにネギを食べさせれば超人アリスに目覚めるかも。

 

 なんて馬鹿なことを考えていると。

 

 ミニメル=キャリーことアリスが隣に座って。

 

「パパ。おネギ食べて」

 

 そう小首をかしげて可愛らしくお願いしてくる。

 

「流されたら駄目よあんた! それ、子供の常套手段だから!」

 

 見ると同じ事を美緒ちゃんが祐治さんにしていた。

 

 うーん、子供の演技力って凄いな。

 

 結局嫌々ながらネギを食べさせられるアリスと美緒ちゃん。

 

 私はアリスが超能力まで使って逃れようとするんじゃないかとヒヤヒヤしたが、普通の時は能力を使ってはいけないという約束は守ってくれているようだ。

 

 テレキネシスはまだしも、ガスを使ってるここでパイロキネシスなんか使われた日には、部屋ごとドカンだ……。

 

「おっさんよお、年取ってるっつってもそこそこイケるよな。もっと飲めよ」

 

 七十代の老人に酒を勧めてくる祐治さん。まあ飲み友達だから私の許容量は知っているだろうが。

 

「これはこれは、おっとっとっとっと、おお。ではご返杯」

 

「おお。これはこれは」

 

 なんてやり取りを祐治さんとしていたときだった。

 

 

“ピンポーン”

 

 

 インターホンが鳴った。

 

「はいはーいって、今日誰も呼んでないんだけど宅配業者かな?」

 

 ポニーテールに纏めた利緒さんの髪が右へ左へ揺れている。んー後ろ姿もだけど美緒ちゃんも利緒さんそっくりだなあとこうしてみると思う。

 

「呼んでない奴だったら追い返せー!」

 

 酔った祐治さんが無責任なことを言う。祐治さんあなた政財界の大物をお父さんに持っているんですから、発言には気をつけて。

 

 子供達はここぞとばかりに肉ばかり器に入れていく。食の無法地帯である。

 

 ――こんばんわーん。まだやってる夕食――

 

 何処かで聞いた落ち着いた声。

 

「ちょっ、あんたら何勝手に入って」

 

 続く利緒さんの声に。

 

「いいじゃん減るもんじゃなし」

 

「減るわよ!!」

 

 此方も聞き覚えのある今時の女子高生って感じの声。更に。

 

「え、えっと、お邪魔します?」

 

「あ、由加里ちゃんはいいわよお邪魔しても」

 

 確定で今田由加里ちゃんの三人。

 

 入って来たのは。

 

 利緒さん、祐治さんと同じく、ウォーリアーに所属する面々だった。

 

 先に入って来たのが緑色の短い髪に、赤紫の瞳のどことなく勇壮さを感じさせる成人女性――神宮真弥さん。

 

 続いて入って来たのは腰まである髪を頭の両側で二つ括りに纏めた、桃色の髪に水色の瞳の愛らしい女性――リリカ・エベットさん。

 

 最後に10代前半と思しき艶やかな黒髪を肩下まで伸ばした女の子――今田由加里ちゃん。

 

 の三人だった。

 

「煩いわねえお土産も持って来たわよ」

 

 真弥さんが取り出したるは、ビールにえのきなどのキノコ類。更に追加のお肉だった。

 

 この追加のお肉に我が娘と美緒ちゃんの二人が餓鬼の様に飛びついた。

 

「お肉お肉~」

 

「お肉だ~」

 

「アリスちゃん、美緒ちゃんこんばんは。お姉さんが飛びっ切りのお肉を持って来てあげたわよ~」

 

 餌付けされた我が愛娘には最早、天才と呼ばれるその片鱗も見て取れなかった。

 

 由加里ちゃんもお鍋が気になっているのか、少しそわそわしていた。これを見ていた利緒さんは。

 

「由加里ちゃん、鍋食べてて良いわよ」

 

「い、良いんですか?」

 

「うんうん、子供が遠慮しない」

 

 基本的に利緒さんは優しい。普段の言動や行動から過激な人物かと勘違いされてしまうが、敵意の無い相手には優しいのだ。

 

 例えば、私の様な、裁きようのない捕まえようのない犯罪者を妻に持つ男にでも、優しくしてくれるし、気を遣ってくれる。

 

「んじゃそゆことで~」

 

 呑気にリリカさんが卓につき、コタツに脚を突っ込んだ。私の隣だ。

 

「お邪魔するわね」

 

 クールに真弥さんはキメながら、祐治さんの隣に座り、コタツに脚を突っ込んだ。

 

「ほらほら利緒~。お土産持って来たんだから鍋に追加しなさいよ~」

 

「お鍋~、お鍋~」

 

「あたしゃ鍋奉行か! リリカに至ってはお子様か!」

 

 この人達見てると飽きないな。

 

 で、子供達も含めて全員が卓に付いたとき。宴会は始まった。

 

 ただの食事の筈がこの人数ではもうお食事会の域を超えているだろう。

 

 ただまあ、宴会の規模となると、大人はお酒を飲んでばかりで、食事は子供達ばかりが摂る。

 

 必然的にお腹の大きくなった子供達は寝てしまい、後に残るは酔っ払い共だけ。

 

 アリスや美緒ちゃんに比べればとても年上な由加里ちゃん。

 

 小さな子に負けられないと頑張っていたのか我慢して起きていた。

 

「ふう、ふう、ふああ」

 

 ただ周りの酔っ払い共の話は由加里ちゃんには分からない。

 

 大体が大人の話をしているわけで、時折、由加里ちゃんの顔は真っ赤に染まったりしている。

 

 そんな由加里ちゃんに私は。

 

「由加里ちゃん、無理して起きて無くて良いんだよ。酔っ払い共の話なんてキミには未だ早すぎるしね」

 

 かく言う私も酔っぱらいの一人だ。そういうと由加里ちゃんはこてんと倒れてしまった。

 

 みんな酔いすぎているために子供達に構う余裕すら無いらしく、寝入った子供達は私が子供部屋に運んで寝かしつけて置いた。

 

 再びリリカさんの隣に座り、暖房も付いているだけに暖かい部屋。さむさむとはならずコタツに入った私に。

 

 リリカさんがしなだれかかってきた。

 

「えっ?! ちょっ?! リリカさん!」

 

 リリカさんは瞳を閉じて。

 

「私たちが酔っ払っちゃってるからって率先して子供達を寝かしつけてあげたり、由加里ちゃんへの応対とか見てたけど、優しいんだあ~。お爺ちゃんみたいな優しい人、私のタイプなのぉ」

 

 タイプって……、ああ、私は何故に青春時代に青春を謳歌せず、この歳になって結婚とかモテたりとかするんだろうか。

 

「リリカって枯れ専通り越してじじ専?」

 

 枯れ専、デブ専とかは聞いたことがあるが、じじ専なんてのもあるのかあと利緒さんの言葉にはあっとした。

 

「そういうんじゃないよぉ、ただこのお爺ちゃんがタイプってだけェ」

 

 言いながらリリカさんは私の背に腕を巻き付け、抱き着いてくる。仄かに香る良い匂い。女性特有の甘い匂いがし。

 

 彼女はそのまま私を押し倒してきた。何を言ってるのか分からないが、私も何を言ってるのか分からない。

 

 二十代の若い女性に私は押し倒されたのである。祐治さん曰く『形と張りは申し分ない』というリリカさんの胸が、私の胸板に押し付けられる。

 

「ねえ、しよぉ~よ~。お爺ちゃん私を抱いてェ。男は生涯イケるって聞いたことあるしお爺ちゃんにはお子さん居るしぃ、出来るよねェ?」

 

 するって、何をするって事ですか? こんな公衆の面前で?

 

 出来るか出来ないかで言えば確かに私は出来ます。メルとのセックスで腰も鍛えられてきたし、体力も付いたのでそれなりには。

 

 って。

 

「だ、駄目ですっ。私は妻帯者なんですっ。妻を裏切ることは出来ませんっっ」

 

 言い切ると。祐治さんが。

 

「ひゅ~っ、男だねえ。そういう男俺は好きだね。俺も利緒以外の女の子を抱くなんてしないしな」

 

「ちょ、ちょっと祐治何言ってんのよ!!」

 

 利緒さんも利緒さんでまんざらでも無い。

 

 そこへ真弥さんが。

 

「あーもう、どいつもこいつも色事ばっか。ねえあんた」

 

「は? 私?」

 

 未だリリカさんに押し倒されたまま、頬をすりすり、桃色の長いツインテールをさらさらと擦り付けられて、どうしたらいいのか困っている私に、真弥さんは。

 

「男紹介しなさい。あ、若い男よ? それくらい居るでしょう。なんたって世界的巨大企業I・E・Mの社員なんだから、居ないとは言わさないわよ」

 

 それはまあ勤続年数も長いからそれなりに若手社員に知り合いはいるが。

 

「今から電話して呼び出しなさい。美人があなたを待ってますって。もちろんイケメンに限るから注意してよね」

 

 イケメンな社員の知り合い。居ない事も無いが。いま、呼ぶの?

 

「呼んじゃえ呼んじゃえ!」

 

 利緒さんは煽り。

 

「俺以上のイケメンなんてそうそう居ないだろうけどね」

 

 祐治さんは自信たっぷり。

 

「私、お爺ちゃんがいい~っ、ねえ良いことしようよぉ~」

 

 リリカさんは私以外に興味が無い。というかリリカさん、私にはメルという愛する妻が居るのです。ですから後生です諦めて。

 

「諦めないからぁ~。愛人でもいいよぉ~」

 

 なんてことを言うんですかこの人……この人も一応警察官でしょうに。

 

 だが、リリカさんの頬擦りは一向に止まらない。寧ろ身体全体を使ってくる。油断せずとも確実に食われそうだ。

 

「お爺ちゃん、リリカとエッチしよう?」

 

「リリカは良いから私に男を紹介して頂戴よ」

 

「リリカさん、頭撫でてあげますから勘弁して下さい……真弥さんほどの美人なら引く手あまたでは?」

 

「性格やら始末書やらが災いして部署の男が寄りつかないのよねェ」

 

 笑う利緒さんに。真弥さんは。

 

「あんただって祐治って変態が娶ってくれなかったら同じ状況だったくせに偉そーにしてんじゃないわよっ」

 

「なにおーっ」

 

「なによーっ」

 

 酔っ払い共の取っ組み合いの喧嘩。祐治さんは見てるだけ。

 

「いーの。いーの。どうせいつもの事だから。それよりあんたは真弥の為に男でも呼んだげて。手間掛けさせて悪いけどな」

 

「い、いえ、それはまあ、いいんですが」

 

「お爺ちゃん好きぃ~」

 

 リリカさんがぴったりがっちりくっついて私を押し倒したまま離れてくれないのが難儀なんですよね。

 

 私なんかを好きになってくれるのは嬉しいのですが、何度も言うように私は妻帯者でして。

 

 とりあえず私は携帯端末で会社の私基準でイケメンと思われる数人に連絡した。

 

 美人がいるというと、皆二つ返事。宴会が合コンになりそうである。

 

「私はお爺ちゃんがいるからいい~」

 

 酒臭い。リリカさんかなり飲んでるな。

 

 この迫り方は酒に呑まれているからなのか。

 

 と思ったら否定された。

 

「たぶんリリカは本気よ。精々キャリーと揉めないようにね~」

 

 利緒さんが他人事のように、ああ、実際他人事か。

 

「てーかさー。あんたみたいな言っちゃ悪いけれど不細工なお爺ちゃんと、キャリーが何で知り合って結婚してるわけェ?」

 

「あ、それ俺も気になる」

 

「私も」

 

「おじいちゃ~ん 」

 

 リリカさんは別として、祐治さんも真弥さんも気になるようだ。

 

 ここは話してみよう。

 

「実はメルと知り合ったのは、メルが今田俊明に殺され掛けている場面に私が出会したのが発端なんですよ」

 

「えっ?! キャリーってば今田に殺され掛けてたの!?」

 

 利緒さんが驚く。まあ利緒さんはメルと直接戦ったからメルの強さも知ってるしな。

 

「はい。M・Dに生体エネルギーを吸い取られて弱っていたところを襲われて、お腹を蹴られて今田に『夜はまだ長い。たっぷりつきあってもらうぞ』と言われていたので、恐らく陵辱を受けて殺されていた物かと」

 

「そこをあんたが助けたと」

 

 と、真弥さん。

 

「大声出して人を呼ぶ振りをしただけですよ。そして弱っていたメルを私のアパートまで運んで、M・Dの生体エネルギーの補給のために、その」

 

 利緒さんが恥も外聞も無く告げた。

 

「キャリーとあんたは熱いセックスをしたってわけね。殺されそうな処を助けられて、助けるために抱いてあげる、抱かれる――ん~~中々のロマンスじゃない。私にとっちゃただの犯罪者のクソアメ公だけど、癪だけどあんな美人と縁が出来て愛し合えて、結婚までするって七十代のお爺ちゃんしかも容姿は良くない男が出来るモンじゃないわよ」

 

 これぞ良縁って奴ねえと利緒さんは締めくくった。

 

「問題はリリカがあんたに本気になっちゃったことよね~」

 

「おっさん、若い子、しかも美人にモテるって気分が良いだろ」

 

 利緒さんと、祐治さん、無責任なことを言わないで助けて下さい。

 

「まあ、私はリリカがあなたを好きになっても別に良いわ。イケメンがくるってなら」

 

 真弥さんも自分の事ばかり……。

 

「お爺ちゃん。私の事抱いて~」

 

「リリカさんですから私は妻帯者でして」

 

「お爺ちゃんの優しさに惚れちゃったのよォ。仕方ないじゃん~」

 

 ぎゅううと抱き締めてキスまで求めてくるリリカさん。

 

 ああ、こんな美人にモテてたぶん最高のシチュエーションなんだろうけどでも、リリカさん今の話聞いてましたか?

 

 

 

 

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