※この作品はR-18です。

部長、すみません・・・   作:夜半の月

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2ちゃんねるエロパロ版、pixiv様にも投稿しております。


部長、おつかれさまでした

 

 

 

 

 

 部長、おつかれさまでした

 

 

 

 

 

 

 後は私が──そう仰ったメルはレザースーツを着たままで私の腰に跨っていた。

 

 大きめな襟元が豹柄の黒いタイトなワンピース風のレザースーツだ。着脱衣するときに触るだろうジッパーが正面左に付いていて、しっかりと閉められている。

 

 胸元からは二本の紐が腹部にかけて出ていた。ブラかなにかを締める紐だろうか? 頭にはスーツの襟と同じ豹柄のカチューシャが付けられていて、一見するとなにもないように見えなくもない。敢えて変わったところを挙げるのならば紅潮した頬くらいだ。

 

 しかしそんな彼女の頭からゆっくりと視線を下ろしていき、顔、胸元、腹部と来たところで常との違い、そのスーツが腰までめくりあげらているのが分かる。分かるもなにも、そのスカートをめくりあげたのはこの私自身なのだから。

 

 股間を守る筈の下着は付けられて居らず、大切な所はすべてさらけださせられている。是も彼女の指示を受けて私が行った事。

 

 一方の私はと言えば、上着こそ着ていた物の、下半身の作業服ズボンは既に無く、更には下着もまた無かった。下半身全裸状態の変質者みたいになっている。

 

 もしもこのまま外に出れば「夜の街に不審者現る」そんな見出しが新聞の一面を飾り、それと共に掴まること間違い無しの格好だ。

 

 しかし、そんな私の下半身、腰の部分、厳密には股間の場所には白く美しいお尻が鎮座していた。

 

 下りきった尻は腰に座り、そして私の大切な部分、男の象徴たる硬く反り立つ肉の根を、尻よりも前に開いた華口の中へとその根本まで飲み込んでいる状態にあった。

 

 メルがそうしたのではない、年老いた男根をメルの美しい淡紅の華口へと静かに挿入し、そのまま奥まで貫いて、果ては子宮口にまで収めてしまった張本人は誰あろう私自身である。

 

 これから私たちはしっかりとした性交を行い、最終的に私は彼女の胎内へと精子を注ぎ込む事となる。注ぎ込まなければならないのだ。M・D修復の生体エネルギー源として彼女が必要としているから。

 

 ただし私は動けない。もう腰を動かすだけの体力が残されていない。だからこそしっかりした性交を“行ってくれる”のは彼女となる。

 

 行うのではなく行ってくれる。彼女に、メルに全て任せる形の性交。男としてどうなのだろうと思いながら、それだけ年寄りであるから仕方のない事といった現実が其処にはあった。

 

「メル、私は……」

 

「じっとしてなさい……私がするって、言ったでしょう」

 

 メルは静かに微笑みゆっくり腰を持ち上げていく。

 

「あッ、ん、んんッ」

 

 膝を折り曲げて座布団に座るような態勢で私の腰に跨っている彼女の腰が静かに上昇する。

 

「はっああ、ぁっ……!」

 

 根本まで入りきっていた男根が、彼女の腰の上昇に合わせてぬるりと姿を現した。

 

 愛液なのか私の先走りの液なのか。すっかり混ざってしまいどちらとも判別の付かなくなっていた体液が、私と彼女の結合部でじゅるるると音を立てながら湧出している。

 

「んっあぁぁ……っ」

 

 根本部、竿、ゆっくりと露わになっていく。そうして亀頭部のエラにこすられながら抜かれていく割れ目は、先端が抜けてしまいそうな処まで上昇したとき、そこで彼女は少しだけ背を反らし気味の態勢となり頭を振って汗を飛ばし、髪を靡かせ、そして動きを止めた。

 

「メル……」

 

「んっ……なに?」

 

「綺麗、です……」

 

 綺麗だ、とても……。混ざり合う透明の粘液が、私にはとても美しい物に感じた。

 

 僅かばかりに背を反らせて、長い髪をさらりと揺らせ感じながら、染まる頬を此方へと向ける彼女の微笑みも同じく。

 

「んふふ……そう……」

 

 目に見える淡紅の割れ目、そこを貫く硬い赤黒さを持つ男根。

 

 目的がなんであれ、それは神聖な男と女の交わりなのだ。

 

 尊い行為であり、けして嫌悪を抱くようなものでも、恥ずかしさから否定するべきものでもない。

 

 私は上昇しきったメルに手を伸ばしていた。彼女の指示でも命令でもなく自然に。

 

「……」

 

 メルは暫し私を見つめながら、その伸ばした手を掴んでくれた。指と指を交互に重ね合わせて、しっかりと握り合う形で。

 

 ふっと彼女の口角に浮かぶ歪み、笑いかけてくれたのだろう。

 

 握り締めた手に掛かる力、彼女の重心だ。

 

 私はその力と拮抗するように下からも押して、相互の力を均衡に保ちながら下りてくる彼女を受け止める準備を整えた。

 

 そうして数瞬の見つめ合いを終えた頃、彼女はまたゆっくりと静かに腰を下ろし始めた。

 

 淡紅の華口には私の硬い男根を据えたまま、下り来る口がくちゅっと先端を飲み込んで。

 

「んっああ、ぁぁ、っぁぁん──……っああ!」

 

 か細くも綺麗な歌声にも似た喘ぎをあげながら、竿、根本と順に彼女は私を包み込んでいく。

 

 掴んだ手に更なる力が加わる、此方からも強く握り返す。

 

 交差した手の平の指は握り合う形と成ったままに、信頼を醸成するかのように互いを引き寄せていった。

 

「あ、んんっ」

 

 下りきった腰。股間同士は隙間無く触れ合い、某かの交流を図っているかのようにもみえた。

 

 股間の中心に位置する男根と女淫は、それこそ全身で包み合い抱き締め合っている。そう、愛し合う恋人達のように。

 

 中では私を包み蠕動を以て摺り合わせくる彼女の襞の動きを感じ。私は私で、腰を捻り少し動いては襞をすりあげて自分という男を彼女に刻みつけていく。

 

「はっああ……っぁぁ、駄目……っ、そん、な……こすられたら……、わた、し……っ」

 

「そんなこと仰らずに、私を……感じて、くださいメル……。私は、メルにもっと、私を感じてもらいたいのです……っ」

 

 老人の我が儘、年甲斐もなく自分を彼女に刻みつけたいという欲求が発現してくる。

 

 歳を取っても男は男──とは良く言ったものだ、男は生涯性行為が可能なのだという。

 

 それも子を成すための性行為が。男とは、それだけ欲深い生き物なのだろう。

 

「あっうう、はあっあ、んっぅぅ……、き、もち、いい……っ、はあ、とても……老人だなんて……っ、おもえ、な……っ、はうっ──」

 

 限界など超えている腰を小刻みに動かしながら、彼女の中で彼女と触れ合い続ける私に、彼女は歓喜の声でさえずる。

 

 ひとだって平気で殺してしまえるようなI・E・Mの本社監査部長が、いまはただひとりの女性となって私と受け入れ受け入れられの攻防に終始している。

 

 握り合う手はより強く握り締め、繋がり合う場所はより深く繋がり、そうして先端をM・Dを宿す胎内にまで招き入れ。

 

「んぅう──ああああ──っっっ」

 

 叫び声と共に内部の襞を私に絡ませつつ締め上げてくるのだ。

 

「くっううう──メルっっ」

 

 その締め上げに堪えられない私は、“どくんっっ! ”、一度目の射精を行っていた。

 

 続く二度目を“どくんっっ”、三度目を“どくっ”。

 

 出逢い無き人生で、唯朽ち果て死に行くだけであった私の、初めてとなる女性への射精は、なんとも云えない甘美なる感覚をもたらしてくれた。

 

 征服感のような、征服されている感じのような、どう言えば伝わるのかも分からずの心地良さを。

 

「ああっァァァァ──―っっ!」

 

 似たようで違う心地良さをメルも感じて下さっているのだろうか? 

 

 射精と共に反り返る背、宙を流れゆく長い金髪、頬に浮かんだ汗が顎を伝い飛び、落ちた雫が布団に円形の染みを作る。

 

 雫は私の下腹部にも付着して、つたい落ちていった。

 

 メルも達している。私と共に達している。大きな絶頂の喘ぎ、その様子から悉に感じ取れた。

 

 嬉しい、気持ちいい、ひとりじゃない。孤独な老人がひとりで達したのではない。彼女と一緒に達したのだ。

 

 誰かと一緒、彼女と一緒、たったそれだけの事だというのに、とても嬉しい歓喜の渦が私を支配していた。

 

 それほどまでに私は誰かの温もりを求めていたのだと改めて気付かされた。

 

 そんな私の孤独を拭いさってくれたのはメル=キャリーという女性だけではなかった。

 

「うっああ、なに、か、吸い付く……っ、メルっ、これは……っ」

 

「えっ……エムっ、ディーよっ……っ、胎内のM・Dがっ……っ、あなた、の……っ、精子に反応っして……っ、吸収しようと……っ、しているのよ……っっ」

 

 先程も当たったM・Dが、今度は私の亀頭に自らの身体を擦り寄せるかのように集まっているらしい。

 

 メルの胎内に収まるM・Dは3基。三つのM・Dが、母乳を欲っする赤子のように、吐き出される私の精子を吸収しているのだ。

 

「おおっ……! ま、まるで、赤ん坊のようっ……ですねっ、これは……っ」

 

 すりすりと、何度となく擦り寄せてきては、3基が代わる代わる亀頭に口づけている。溢れ出る精子を飲んでいる。

 

「うっ、おお! ──おおおっ、す、凄いっ、吸い込みっ」

 

 1基が亀頭の真正面に来ると、亀頭の割れ目に口付けて私の中からほとばしり出る精子を、吸着してじゅるるると吸い上げていくのだ。

 

 それはもう身体の奥まで響くような吸い上げの強さで、陰嚢の中にまで響いている感覚だった。

 

 そしてその1基が退くか、押し退けられるように追いやられると、また別の1基が同様の吸い上げを行い、私は不思議となにか自分が母乳を与える母親になったような気分にさせられた。

 

 実際には男なのだからして、その種の喩え方をするのならば父親なのだが。

 

 目に見えずとも感じるそれはまるでそう、まるで私とメルの子供のようにも思えたのだ。

 

「あっ、イっイヤァァっ、こ、こんな……っ、コロコロ……っ、動いて……っ、わ、わたしっ……っ、あっああァァ~~~っっ!!」

 

 メルは益々背を反らせては喘ぎ叫ぶ。目の端から涙を流しながらの様は痛みに泣いているようにも見える。

 

 しかしそれは違う。そう見えるだけであって気持ち良すぎることに歓喜の涙を流しているのだ。

 

 繋がっているいまだからこそ分かること。コツコツと当たるM・Dたちが、彼女の胎内壁にぶつかったり、反動を利用してまた私に吸い付いたりと、私と彼女を心地良くさせる感覚を倍増させていると。

 

 もちろんM・Dにそんな意思はない。単なる戦闘頭脳とでも呼ぶべきもの、それがM・Dなのだから。しかしそんなM・Dたちがいま、私たちの性感を煽っていることだけは理解出来た。父である私と、母であるメルのために。

 

「あっああん──っ」

 

 自然とそうなっている。意思はなくともメルの胎内で動くM・Dの胎動が彼女を喘がせ、私の射精を促す。

 

 なんとも親思いな子供達(M・D)は、母であるメルと、父である私の性交を手伝ってくれているかのようだ。

 

 きゅっと締まる子宮への道。締まったままでまた喘ぎながら腰を上げていくメル。

 

「うっうあァ……っあはァ……ァァっっきもち……いっっ──」

 

 きっと某か動かなければ意識が飛びそうになっているのだろう。私は私で腰を上げることもできない身なので、是を黙って受け入れている。ただ、しっかりと繋いだ手だけは放さぬよう、指を交差させて握り合いながら。

 

「う、んんっ、あううっ……、ダ……メ……っ、頭がっ、おかしくなりそ……っっ」

 

「メ、メルっ、大丈夫……ですかっ」

 

 なにせ彼女の胎内では収納形態で休眠中とはいえ三体のM・D(子供達)が暴れ回っているのだから。

 

 無論、私も彼女の体重が掛かり続ける腰の方が悲鳴を上げていて、こっちはこっちで大変だ。

 

「だい、じょう……ぶ、だからっ……、手だけ、しっかり、握ってなさい……っ」

 

 こすれ合う内部。こすれ合う股間。こすれ合うM・D(子供達)。私と彼女で共有するそれら。

 

 しかし掛かる負担はその差こそ有れど私の方が大きい。けして頑健ではない体格の老人の腰の上に成人女性が座っているのだ、当たり前のことだ。

 

 だからと彼女は私を気遣い、動かなくて良いと言う。

 

「メル……っ」

 

 私もその好意を受け止めて、彼女の腰の上下と併せて下りたときにだけ僅かな捻りを加えるに止めた。

 

「はっアア──っ、あ、ああん……っ、きもち……いい……っけれど、無理しなくて……っ、いい、から……っ」

 

「いい、えっ……、少し、くらいはっ……私にもっ、動かせて、っください! 私にだって、お、男のっ、意地がっ……くああ──っ!」

 

 交差する瞳、碧い目が私の視界の正面に捉えられている。潤み、涙を流す、深い海のような碧い目が。美しい、ただ彼女が美しく、その美しい女メル=キャリー監査部長を私は、私の意思で、抱きたかった。

 

 もしこのとき、私が若ければ。もっと体力があったのならば。私は身体を起こしてメルを抱き締めながら、口づけを交わし。そうして今度は自らが彼女を押し倒して、腰を動かし抽挿を始めていたことだろう。

 

 だがこの老いた身体と体力ではそれは適わないことだ。それでもと僅かばかりの要素を加えてみようとする私を、彼女は押し止める。

 

「んふぅっ」

 

 腰を下ろしたときに上半身を折り曲げて口づけを交わすという手段で。

 

 私は目を開いたまま彼女の口づけを受け止める。彼女もまた開いたままの瞳で私と視線を交わす。

 

「んっ……んっ……」

 

 啄まれる唇を押し返すようにして、私も彼女の唇に吸い付く。かさかさの唇と瑞々しい唇。本来交わされるはずの無いだろう唇がいまひとつに重なっている。

 

 キス。二度目のキス。同じ女性と行う人生二度目のキスだ。性交をしながらの、性感を刺激し合いながらの心地良い口づけだ。

 

 くちゅくちゅと唇を押し合い、啄み合い、舌先を縺れ合わせ。何分にもわたる長丁場の口づけに私は幸せな気持ちになる。

 

 男と女──若いころならばそういった感じもしたろうこの状況に、一緒に居てくれるひとが居ることの方が悦ばしいと感じる自分が居た。M・D(子供達)との触れ合いが、子供と遊ぶ親のような気持ちにさせてくれた。

 

 このまま、このひとがずっと傍に居てくれたら……。母を亡くしてよりもう数十年の時が流れた私は唯々人恋しかった。

 

 なにも要らない、ただこの孤独から解放されたい。その一心で、メルの唇を啄みながら、腕を彼女の背中に回して抱き締めつつ再びの射精を行っていた。

 

「んん──っ」

 

 キスをしながらの膣内……いや胎内射精。なぜかもうM・D(子供達)は寄ってこない。時折精子を吐き出す亀頭にこつんと当たるくらいで吸い付いては来なかった。

 

 もしかすると消費エネルギー分や欠損の回復に必要なエネルギーはもう満たしたのかもしれない。私とメルの子供達はもうお腹いっぱいなのだろう。しかし私は──

 

 “どくんっ……どくんっ……”

 

「んっんんん~~~~~!!」

 

 口付けたその態勢のままで、彼女を鯖折るかのように精一杯の力を込めて抱き締め、胎内射精を続けていた。

 

 この一夜の出来事が、夢で終わることの無いように……。

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

「ねえ、この部屋シャワーは無いの?」

 

「ありません……、すみません……」

 

 メルの求めに私は応えられないことを伝えた。こんなボロアパートだ、シャワーなどというハイカラな設備などない。

 

 東京が超近代化都市となった今でもこういう建築物はぽつりぽつりと現存していた。まるで進み行く文明より置き去りにされたかのような形で。

 

 私という孤独な独居老人はその象徴なのではないだろうか? 

 

「そう、ならいいわ」

 

 そう言って腰をゆっくりと上げていくメル。

 

 ぬるっと姿を現すのは私の一物だが。

 

「ん、んうう……っっん」

 

 それは結合していたメルの股間に開いた華口との間で白く濁った糸を引きながらのもので、彼女の中で何がどうなっているのかを悉に物語るものその物であった。

 

 彼女がそのまま膝を立てて、一度私の腰を跨ぐ形でその場に立ち上がると、華口の縁よりつつーっと伸びてはぽたり、またつーっと伸びてはぽたり。

 

 と、メルの中で出し、彼女の体液と混ざりながらの私の精液がぽたぽたとこぼれ落ちてきた。

 

 白い糊のような体液には多くの精子が含まれている。それがこぼれ落ちてくるということは、メルの胎内に精液が溜まりきっていることを意味しており。

 

「出し過ぎね。70過ぎの童貞老人が、出すところ無く溜まりに溜まった精子を私ひとりに集中して出したというところかしらね」

 

 ふっと目を細めつつも、口元には笑みを浮かべているメル。仰られたとおりではあるが怒っても呆れてもいないらしいその様子は、いったいなんなのだろう。

 

「重ね重ね申し訳ありません……っ」

 

 とりあえず謝っておく物の。

 

「別に良いのよ。中に出せと言ったのは私だし、損傷したM・Dの早期回復には必要なことも事実であったのだから謝らなくてもいいわ」

 

 制してきた彼女に止められて、更にはもう一度膝立ちになった彼女は私の頭を抱き竦めてきた。

 

 性交を終えたばかりの独特の臭いと、汗臭さ。

 

 しかしながらその中に香る確かな彼女の匂い。

 

 そんな彼女は私の禿げた頭をなでなでと撫でてきた。

 

「あ、あのぅ……メル?」

 

「禿げてるところがつるつるしてて触り心地がいいわねあなた。それと、とっても気持ちが良かったわ。相性が良すぎるのかしらね」

 

「き、恐縮です……」

 

 そうして撫でる手の方が私には暖かくて気持ちいいし、顔に掛かる彼女の髪に、胸に押し付けられる大きな膨らみにと、ひとつひとつがなにかのご褒美のように感じて仕方がない。

 

 今月の給料を返上しても良いと思えるほどに。

 

「それにしても、思った以上にぶよぶよしてるのね」

 

 その彼女のふくよかな胸の下、彼女の下腹部に当たっている私のふくよかなお腹のことだろう。

 

 とても出っ張ったメタボ腹だ。

 

「私の胸よりも柔らかそうじゃない、このぷよぷよのお腹は。中年太りじゃなく老齢太りは肌が柔らかくなっている分だけ触り心地がいいってことね」

 

「と、とんでもないですっ! 部長の美しい胸と、私のメタボ腹では比べるに値しませ──」

 

「メ・ル・よ。役職名はやめなさいと何度も言ったでしょう」

 

「す、すみませんメル……」

 

 いけない。つい役職名で呼びそうになる。長年の間に付いた癖だ。いやしかし間違ってはいないだろうとも思う。私は平社員で、彼女は監査部長という重役なのだからして。

 

「役職名は仕事中だけになさい、いいわね?」

 

 だがメルはお構いなしに名前で呼ぶことを強要してきた。

 

 無論。私に従わないという選択などありはしなかった。

 

「は、はいっ、了解いたしましたメル=キャリー監査部長──え、ええっと、ではメル……このあとはどうしましょうか?」

 

「とりあえずはそうね……、私の中のM・Dたちも回復したようだし、おつかれさまというべきかしら?」

 

 そう言ってメルは私の身体の上に寝そべってくる。事後処理もしないままに。

 

 スカートの内側、腰の辺りだろう部位と繋がるガーターベルトの付いたサイハイソックスの脚が絡ませられ、手は私の背中に回される。

 

 ぐっと押し付けられる胸が、レザー製の衣服越しにも拘わらずやはり柔らかくて気持ちいい感触だ。

 

「メっメル、あのっ──」

 

「少し寝かせて……警察の特殊部隊との闘いに続けてイマダに腹を蹴られたのよ……そのあとあなたとセックスして……疲れたの……あなたももう動けないでしょう……。ゆっくり休みなさい」

 

 だからといって私を布団代わりになされるなんて……。

 

「お休みなさい……」

 

 うつ伏せになって私の上で寝そべるメルは──

 

「……zzz」

 

 もうすやすやと寝息を立てていた。

 

「メル……もう、寝てしまわれたのですか?」

 

「zzz……zzz……」

 

 限界だったのだろうか体力的に。

 

 警察の特殊部隊といってそれはSAT辺りではないと思う。たぶんテロや破壊工作阻止専門の部署だと。そんなところと闘ったっと、さらりと言う辺りがもう恐ろしい。

 

 それに今田氏のこともあったし、かなり疲れていたのだろうな。

 

 私はいつもひとりの孤独なこの部屋に誰かが……メルが居ることが不思議で、ひとりで寝ている筈の布団で、こうして密接して眠れる事が嬉しくて……。

 

 そっと、メルの背中を覆う金糸を撫でる。染めたのでも脱色したのでもない綺麗な金色だ。汗にまみれてもさらさらしていて触り心地がいい。

 

「……母さんが亡くなってから、誰かと同じ部屋で寝るなんて……、初めてだな……。誰かが家に居るなんて……初めてだ……」

 

 家族の居ない私はもう誰かと同じ部屋で眠れるなんて思ってもなかった。

 

 老い先短い残りの人生。精々30~40年をひとりで過ごす、いつもと変わらない毎日があるだけだとばかり。

 

「おやすみなさいメル。おつかれさまでした……そして、ありがとうございます……」

 

 こんな年寄りと床を共にしてくれて。

 

 怖くて強くて重役である女性を助け、そして不思議な縁を持ったこの夜に感謝し。

 

 私はメルの髪を撫でながら、彼女を掻き抱くように抱き締めて。

 

 そうして、静かな眠りに入っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 じりりりり。

 

「ん……」

 

 耳に響く電子音に目が醒めた。

 

 部屋は未だ薄暗く、しかし時計は起床時間を指し示している。

 

 憂鬱な朝がやってきたようだ。

 

 昨日と変わらぬなにもない朝が。

 

「はあー……」

 

 爽やかな目覚め、と言えたらどれほど嬉しいのだろう。

 

 古稀を迎え、間もなく一年が過ぎようとしているような歳。

 

 一緒に歳を重ね来た妻がいて。

 

 息子夫婦や娘夫婦がいて。

 

 幾人かの孫がいて。

 

 お祖父ちゃんおはよう──そうした挨拶を交わす。

 

 そんな朝があってもいい年齢の私には、しかしなんにもなかった。

 

 なにもないがらんとした六畳一間の部屋で迎える朝。

 

 誰もいない部屋、古びた床の直ぐ傍には、古びた一台のブラウン管テレビだけが置いてある。

 

 他には小さな冷蔵庫と、備え付けの調理台が一つ。

 

 生活に必要な最低限のものだけがあるそれだけの寂しい部屋。

 

 誰もいない、声も聞こえない、私一人だけの生活空間。

 

 ずっと一人だ。

 

 もう何十年か前に父と母を看取ってから、ずっと変わらない環境。

 

 いつもと同じ、目的もなく生きる、意味も無く生きている朝だった。

 

 早朝は薄暗く、一般的な定年の歳を迎えても未だ仕事をしなければ食べていけない都心のアパートに住む私の人生は、こんな何もない朝から始まる。

 

 そ、普通なら、普段なら何もないで始まるはずだったのだ。

 

 

 おはよう──。

 

 

 その声を聴くまでは。

 

 部屋の入り口の扉より聞こえてきたのは甘い女性の声。

 

 振り向いてみると、そこには丈の短いスカートで襟とカチューシャは豹柄、黒のサイハイソックスをガーターベルトで留めた、ワンピース風の黒いレザースーツを着た長い金髪の女性が、手提げ袋を手に持ち此方を見つめていた。

 

「キ、キャリー、部長……」

 

「……はあ~、なんどいったらわかるの。メルよ」

 

「あっ、はっはいメルっ──」

 

 夢じゃ、なかったんだ……。昨日の、こと……。

 

「パン買ってきたのだけれど、食べる? それともジャパニーズのモーニングはオコメかしら?」

 

「あっ……、い、いえ、パン……いただきます……」

 

 いつも冷や飯を取り出して、梅干しと味噌汁だけで済ませる簡単な朝食が、今日はパンだった。

 

「起き上がれないのなら食べさせてあげるけれど。どうしてほしい?」

 

 私の腰のことだ、昨日のことで腰を痛めているから。私はその言葉を受けて起き上がろうと試みた──がしかし。

 

「……い、痛いです……」

 

 ズキッと走るギックリ腰のような痛み。ギックリ腰ではないのでじっとしてればいずれは治りそうな感じだが。

 

「わかったわ。じゃ、そのままにしてなさい」

 

 メルはそう言って、私の枕元に座り手ずからパンを差し出す。私はそのパンに齧り付く。真ん中が割れて、マーガリンが塗られただけのパンだ、だが凄く美味しい。

 

 あまり食べたいと思わない味気ない飯は、それでも仕事をする上で必要だからと摂っていたが、今日は、とても美味しいパンだった。

 

 食べたくなくても食べる美味しくもない朝食ではなく、食べたくて食べるメル手ずからの美味しい朝食。

 

「ほら、そんながっつくから口元付いてるわよ」

 

 伸ばされてくるのは彼女の手。不意に当たるハンカチに拭われる口元。

 

 拭ってくれるのは、楽しくもない朝ご飯を、誰もいない寂しいこの部屋を、今だけふたりにして楽しくしてくれた女性。

 

「ありがとうございます。──メル=キャリーさん」

 

「なあに改まっちゃって。プロポーズでもする気?」

 

「プっプロポ──ああいえ、……なんでもありませんよっ、美味しいですねこのパンっ!!」

 

 数十年ぶりとなる、誰かとの朝食は、唯々甘いパンの味だった……。

 

 

 こうした残業? の夜の出来事の後、明くる久方振りとなろう楽しい朝を終え。

 

 腰を痛めた私が起きるのを待っていたらしいメルの隣を歩くように午後出勤した私には、メル手ずからの辞令を渡される事となる。

 

 それはメル=キャリー監査部長付き雑用という、不可思議な辞令であった。

 

 彼女のような若い女性と同衾後に出勤するだけでも緊張するのに、手ずからの辞令とは……。二度の緊張に襲われながらも私は内容を確認した。

 

 業務内容は──雑務全般。

 

「ろ、老人ですよ私は。清掃員の経験しかない」

 

「専属雑務といったら専属雑務。平社員の分際で重役の私に口答えするものじゃないわよ」

 

 と、そして──。

 

「それと、あっちのほうも……ね♪」

 

 生体エネルギーの補給……。つまりそういうことらしい。

 

 もちろんそこにはメル自身の意向が働いていたようで、「あなたのこと気に入ったわ。公私共に宜しく頼むわね」と彼女に肩を叩かれたところから、私の新しい朝は始まりを告げた。

 

 そんな中、事件そのものは一か月が過ぎた頃、今田俊明I・E・M元日本支社開発部部長が警察の特殊部隊との闘いの末に死亡したことで終幕を迎えていた。

 

 あの恐ろしい今田氏にメルが狙われることはもう無く、私自身も会社の裏側との距離が置けるということであり、何もかもが無事丸く収まった、そう思えるようになったのはメルの雑事要因として仕事も覚えてきた三ヶ月後のこと。

 

 と同時に孤独からの解放、それが適う事になろうとは。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 いま私はあのボロアパートには住んでいない。

 

 メルに肩を叩かれた日、あのアパートは半ば強制的に引き払わされてしまったから。

 

 そうした私の行き先は。

 

「いつ、見ても……凄い眺めですね……」

 

 日本支社での社宅として使っているらしい、高級マンションの高層階からの眺め。

 

 数多くのビル群、摩天楼の屋上を見渡せ、遠方まで喪を眼下に見据える光景は、日本成らず世界でも一握りの人間だけが持つ特権なのだろう。

 

 その一握りの中に彼女、メル=キャリーという女性は入っていた。己の力でのし上がりその地位を掴んだのだ。

 

「まだ慣れないの?」

 

 スーツのジッパーを下ろす、ジーッという音と共にメルが私の傍に寄る。

 

「慣れ、ません……。こんな光景どうやって慣れろというんですか……」

 

「ふふ、1年も見てれば慣れるものよ」

 

「そ、そんなものですかねえ……」

 

 黒いレザースーツを脱ぎ、胸を拘束しているブラの紐を私に引かせるメル。

 

 こっちの方……生体エネルギー補給要員を過ぎ去り、いつしか自然のままに築かれていった男と女としての関係も、恋愛経験0の私にはまだ慣れない。慣れないというのに──。

 

「この子が生まれる頃には慣れてるでしょうね」

 

 子供だけは出来てしまった……。

 

「この子……私の子、なんですよね……?」

 

 大きな乳房を触りながら、ゆっくりと下ろしていく手を、彼女のお腹に当てた。

 

「あなた以外の誰が居るのかしら? 心配ならDNA鑑定でもしてあげましょうか?」

 

「い、いいえ、もしメルがされるというなら止めませんが……」

 

 この僅かばかりに膨れ来たお腹の中に、私とメルの子が居る。

 

「まさか70も超えてから父親になるとは思いもしませんでした……それも、メルのような20代の女性と」

 

 他にも日本人とアメリカ人。

 

 平社員とI・E・M本社監査部長兼日本支部の事実上の支社長。(本当の支社長が彼女の命令を聞いているところからそれが分かる……)

 

「別に気にする事じゃないでしょう、そんなことは。私はあなたに命を助けられて、あなたは私に孤独から助けられて、そして成り行き上、自然のまま流れるままに結婚して夫婦になった。そうしてこの子ができた。それだけのことじゃない」

 

 事も無げに仰るメル。それだけって、簡単に仰いますが色々と。

 

 それに子供ができたのは生体エネルギーの補給行為の最中の事故であって。

 

 ……もちろん、嬉しかった。メルが。

 

『生んであげるわ。ただし正式に夫婦になってもらうわよ? 社会的にも会社的にも私の地位で未亡人としての出産は拙いし、ね♪』

 

 そう仰って下さったことも含めて。

 

「幸せかどうかが大事なんじゃない。破壊工作や人体実験、大量殺人もやるような会社で、実際にそれらを行っている身ではあるけれど。私も女よ、幸せにはなりたいわね……。どう? あなたは幸せ? こんな私と結婚して、子供まで作って」

 

 怖いことばかりを言うメル。事実彼女自身が人体実験の被験者でもある。大量破壊や殺人だって私の知らないところではきっと行っているのだろう。

 

 あの日、警察の特殊部隊と闘いM・Dを使用してのビル爆破を行った日。あの日だって死者数0であるはずがない。人の入っているビルが一棟破壊されて死者が出ないはずがない。

 

 そんな恐ろしいひとだメル=キャリー監査部長は。だが、それでも私は。

 

「幸せですよ、あなたと、メルと結婚して、子供ができて、幸せです。幸せいっぱいですよ」

 

「嬉しい……私も、幸せよ……あなた」

 

 私はメルのさらけ出されている大きな胸に手の平を乗せ、ぐっと優しくも力を込めて揉みし抱いた。

 

「あっあん……!」

 

 丸い大きな乳房の真ん中、桜色の綺麗な丘の上を人差し指ではじき。

 

「んんっ」

 

 転がしながら。

 

「メル、私は幸せですよ」

 

 そう、私は幸せだった。

 

 怖いひとだろう。

 

 恐ろしいひとだろう。

 

 大量破壊だって行ってしまうひとだろう。

 

 でも私は、そんな彼女を愛しているから。

 

 だから私は何度でも言うだろうひとつのことを、何度でも言い続けるだろう一つの言葉を。

 

 幸せだ。

 

 たったひとつのその言葉を。

 

 

 

 

 

 




あとがき


原文ではすでに子供が生まれた後というエピローグでしたが、改訂版となる今作では結婚はした物のメル=キャリー監査部長は現在妊娠三ヶ月としました。
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