※この作品はR-18です。

金田一少年とHNぱとりしあ   作:夜半の月

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夫婦生活

 

 

 

 

 夫婦生活

 

 

 

 

 

 二人が結婚したのは八月五日の事であった。記念すべきその日は金田一一の十八回目となる誕生日の日でもある。

 

 はじめは不動高校三年生という誰の目から観ても高校生な身分ではあったが、日本の法律では親の承諾さえあれば男は十八で結婚することが可能なのだ。

 

 はじめはこの日に奈々と結婚する事を前もって決めていた。

 

 恋人という関係で進むのではなく、男としてしっかりとケジメを付け、責任を取るために。

 

 浅香奈々という一人の女を幸せにするために。

 

 もちろんはじめの母は賛成であり父も了承している。元より結婚を前提とした同棲生活を二人に進めたのが誰を隠そうはじめの母なのだから反対する理由など無い。

 

 奈々の事情を知っている母の後押しによって、金田一家における奈々の立場はまさに息子の嫁といったものになっていた為、はじめ自身も恋人感覚ではなく夫婦感覚での交際を意識していた。

 

 夫婦として当然の如く行われる夜の生活は、ただ快楽を求め愛し合うだけの行為としてのみには終始せず、子作りを意識したもの。

 

 性交の仕上げとしてありったけの精を注ぐはじめは孕ませるつもりで。注ぎ込まれる奈々も妊娠を覚悟して。

 

 避妊具や避妊薬など一切使用せずの合意以前の自然の流れとして子作りに繋がる行為を行っていた。

 

 食事は必ず揃って食べ、風呂も一緒。

 

 寝るときははじめの部屋……正確には、はじめと奈々の二人の部屋となった愛の巣で。

 

 布団は一つ、枕も一つ、熱い情交を交わした後は裸のまま一つになって眠るのが日常的となっていた。

 

 そこまで深く愛し合い実質的な夫婦関係を築いていた二人なのだから奈々の妊娠が発覚した以後に訪れたはじめの十八の誕生日にその脚で役所へ行き、婚姻届を提出することに何の問題が有りや? となるわけだ。

 

 そもこれは金田一家の家族会議で決まっていた予定調和に過ぎず、二人とはじめの両親はただ流れのままに事を進めただけの話なのだから。

 

『はじめ。あんたの今年の誕生日プレゼントは奈々ちゃんっていうお嫁さんで決まりね』

 

『お、お母さん、私がプレゼントって』

 

『だってそうでしょ奈々ちゃん。今日から奈々ちゃんははじめの嫁で、私の娘になるんだから奈々ちゃんこそが最高のプレゼントなんだって自覚して貰わないと』

 

『は、はい、あの……、問題ばかりの嫁ですが、宜しくお願いします』

 

『そう。それでよろしいっ!』

 

『母さん強引すぎだろ』

 

『強引でもいいの。子育てに必要な物で足りない物もまだあるんだしあんたの誕生日プレゼントを買う余裕が無いんだから。それにあんた奈々ちゃん以上の誕生日プレゼントがあるとでも思ってんの?』

 

『ま、まあ、そりゃあそうだけどなあ……、でも今日入籍すんのは前から決まってたことだしプレゼントも何もないから、なんか誤魔化されてるような気がして仕方ない……』

 

 といった感じで乗り気の母を伴い役所へ提出した婚姻届。

 

 その時点をもって金田一一と浅香奈々は名実共に正式な“夫婦”となったのである。

 

 夕飯の買い物、夕食の準備と調理、今までは総てはじめの母一人でこなしていた主婦の仕事。

 

 そこへ今では金田一家の嫁として奈々が加わっている。

 

 主婦としてのプロ・先輩であるはじめの母に教わりながら、彼女は日々家事に買い物にと忙しくも充実した時を送り。

 

 はじめもエプロンを着けた奈々が夕飯を作っている姿に「これが夫婦という物なのか」と、ある種の感動を覚えていた。

 

 そんな様子からも分かるように、奈々は金田一家の嫁として両親から手放しの歓迎を受け迎えられている。

 

 特に母は『奈々ちゃんがはじめの嫁として家に来てくれたお陰でとっても助かるわ』と一番の喜びを見せていた。

 

 ではもう一方の奈々の家族は? となるのだが、此方についてもまったく問題は無い。

 

 否、問題無い以前の話か。

 

 なにせ奈々は疾の昔に両親から縁を切られており、天涯孤独な身の上となっているのだから。

 

 奈々が何処で何をしていようが彼女の両親にとっては最早どうでも良い関係のないことでしかない。

 

 要約すれば赤の他人扱いだ。

 

 散々勝手な事をしてきた上、法で裁くことが不可能な完全犯罪ながら殺人まで犯してしまった。

 

 そんな愚かさ身勝手さは彼女自身が一番よくわかっているが故に弁解の余地など有りはしないしするつもりもない。

 

 電脳山荘ではじめに抱かれ、快楽の果てに身体の中へと解き放たれた彼の精。

 

 幾度となく注がれる熱い精を受けたときより始まった幸せ。

 

(あたしに親は居ない。居るのはこんなあたしみたいなどうしようもない女を愛して、大切だと言ってくれるはじめ君だけ)

 

 故に彼女としてはもうこれだけで充分であるとして実家への報告もしていないし、それはダメだと代わりに電話をしたはじめも、もう家とは関係無い赤の他人だとして切られるという結果に終わっていた。

 

 だが、これで良かったのだろう。

 

 奈々の家族は金田一家──それがはっきりしたのだから。

 

 

 

 *

 

 

 

「優太が生まれてからもう一月になるのか。早いよなぁ。来る日も来る日も時間さえあれば子作りしてさ。〈ぱとりしあ〉を孕ませたい、早く子供を産んで貰いたいって思いで排卵日には朝から晩まで夢中になって」

 

「あたしは嬉しかったわ。はじめ君にいっぱい愛されて……。気持ちいいし排卵日に中に出されるとね、凄く幸せな気分になれるの。 ああ、はじめ君は本気であたしを妊娠させようとしてくれているんだ。あたしと子供を作ろうとしてくれているんだって。女としての本能的な幸せなんでしょうね。愛する人が本気であることを全身で受け止められる悦びとでも言うのかしら」

 

「俺も凄く幸せな気分だったぜ。俺と〈ぱとりしあ〉はいま本当に子作りをしてるんだ。〈ぱとりしあ〉は俺と子供を作る為に受け入れてくれてるんだってさ。なんていうかこう、排卵日って男の本能も刺激される感じがするんだよ。普段してるエッチよりもずっと敏感になって気持ちいいし、中に出す悦びってのを強く感じるんだ」

 

 事実そうだった。

 

 排卵日ははじめの男を刺激して奈々と子を作りたいと本能が訴える。

 

 奈々も女の本能が強く刺激されてはじめの精子を受けたくなる。

 

 性交時の感じ方や気持ちにまで影響を及ぼし、ただ抱き合っているだけで得られる至上の幸福感を感じることが出来ていた。

 

 排卵日のみの特有の感覚なのだろう。愛し愛され子を作る悦びに身を任せ、時間も忘れて耽ってしまうのだ。

 

 寝る間も惜しんで行われた睦み合いは時に夜を跨ぎ、明くる日の朝まで続けられる事さえあった。

 

 お互いを求めて六時間、七時間と体力の続く限り激しく愛し合う。

 

 正状位、後背位、騎乗位。

 

 体位を変えながら幾度も幾度もただひたすら獣のように。

 

「そして優太が生まれた」

 

 はじめと奈々が行い続けた子を成す為に必要な行為。

 

 奈々の胎内へと注がれた命の源が卵子の中に入り、融け合い、混ざり、受精することで出来た、二人の愛の結晶。

 

 子宮内で芽吹いたその種はすくすくと育ち、奈々のお腹を目に見える形で大きく膨らませていった。

 

 お腹が大きくなり始めた事で奈々は母親となることを意識する。

 

 内側から蹴られる振動と痛み。膨らんだお腹に耳を当てて喜ぶはじめ。

 

 自分の夫が此処に居て、自分の子供が此処(お腹)に居る。

 

 自分はもう母親という立場になったのだと。

 

 

 

 *

 

 

 

 母親を自覚し始めてより暫く後、妊娠十一ヶ月目を迎えたあの日。

 

 家にいた彼女は産気付き、酷くなった陣痛の痛みに耐えながらはじめと母に連れられて病院へと向かい、そのまま入院となった。

 

 分娩室にて傍に付き添うはじめに手を握られ励まされる中での破水。

 

 撒き散らされるのは子を育む場所より流れ出でた羊水。

 

 下腹部を降りていく大きな圧迫感を同時に感じる。

 

 その総てが初めての体験。

 

 女として生まれた者が子を成した以上、必ず訪れる避けては通れない最も苦しい時間──出産。

 

 はじめの子を身籠もった奈々にもその瞬間が訪れていたのだ。

 

 幸せであり苦しくもある、女として最も大切な子供を産むというその瞬間を。

 

 下腹部を内側から裂かれるような激痛はやがて膣口へと達し。

 

 愛し合うときは入り口、愛の結晶を産み落とすときは出口となる割れ目が丸く大きく広がっていくのを感じた奈々は絶叫を上げた。

 

『ア゛ッ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~~~~~~~~~~ッッッッ!!!』

 

 耳を塞ぎたくなるような悲鳴は大きく開いた彼女の口から迸るもの。

 

 充血した目より途切れることなく溢れ出すのは生みの苦しみの証明とも言うべき涙。

 

 気が狂いそうな程の激痛に奈々が堪えられたのは愛するはじめが傍に居てくれたからだ。

 

 自分にとって命の恩人とも言うべき年下の恋人が、掛け替えのない夫が、常に手を握っていてくれたからこそ頑張れる。

 

『頑張れ、頑張れ奈々ッ もうちょっとだッ……あと少しの我慢だッッ!』

 

 はじめに励まされる中、奈々は大きく開いた股の間に何かの違和感を感じた。

 

 その何かは、温かい生ある温もりを持っている。

 

 此処で、この膣という部位で感じた事がある生の温もりは、はじめの猛りの温もりだけ。

 

 愛し合うとき、子作りを行うその時に挿入される、彼の逞しい男の象徴だけだ。

 

 だがいま生まれて初めて感じているのは彼のペニスよりもずっと大きな存在。

 

 外から中へと入れられる彼のペニスとは異なり、自身の身体の中から出て来ようとする命有るもの。

 

 それが何かを教えてくれたのもはじめであったが、この命ある存在が何であるかなど、いま必死に産もうと頑張っている奈々自身が一番良く分かっていた。

 

『もう頭が出て来てるッ……もう少しだ頑張れッッ!!』

 

 子供の頭だという大きな丸い物。

 

 子供。

 

 赤ちゃん。

 

 はじめと二人で育んできた愛が、注ぎ続けて貰った命の源が、身体の奥で卵子と結びつき芽吹いた新しい命。

 

(あ、赤ちゃん……、あたしと、はじめ君の赤ちゃん……、うっ、うっ……くぅぅぅ──―ッ!)

 

 愛する彼との子供を産み落とそうと力む奈々。

 

 子供の頭が膣口から出た瞬間、一瞬だけ楽になった。

 

 だがそれも束の間、すぐにまた激痛へと変わる。

 

『ひぎッ、う゛ッうううう~~~~~~ッッ!!』

 

 愛し合うときに、いつも其処へ入っているはじめの猛りの何倍もある大きな物が膣道と膣口を内側より引き裂くように圧迫しているのだからこれが痛くない筈はない。

 

 呼吸の乱れや息苦しさも性交時の比ではなく、文字通りの呼吸困難というものであり、碌に息も出来ないほど。

 

 吹き出る大量の冷や汗。暑いからではなく苦しいからこそ噴出するその汗が身体に纏わり付く不快感。

 

 首の部位までが膣から出たその時は多少マシになったが、それでもやはりはじめのペニスより太く大きな赤ちゃんの首は膣口を裂いている。

 

『かはッ……あ゛あ゛……ッッッ』

 

 股間の割れ目は通常では有り得ないほど大きく広がり激痛を伝えてくる。

 

 赤ちゃんの頭はもう完全に外に出ていたが、細い首の部分だけでも相当な痛みを感じた。

 

 その痛みに耐えながら力むと今度は肩までが入り口を広げて外へ出る。

 

 思わず舌を噛みそうになる奈々であったが、はじめが噛ませてくれたタオルがそれを防いでくれた。

 

『ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛──────────────―ッッッ!!!』

 

 いつ終わりを迎えるのかも不明な長い長い激痛を受けて涙を流しながら叫ぶ奈々は、それでも懸命に赤ちゃんを産もうと頑張った。

 

 ずっと痛みの中に居る所為か時間の感覚も失われどれくらいの時を苦しみ続けたのかまるで分からない。

 

 しかし、産みの苦しみに耐え続けた彼女にも漸くその瞬間が訪れる。

 

『──────ッッッ!!』

 

 最後の力みと共に身体の内側から発されていた圧迫が消える。

 

 広がりきった膣の中から何かが抜け落ちたのが分かった。

 

 ズルッとした感触と共に粗相でもしたかと思わせるほどの大量の水、羊水が秘裂から吹き出す。

 

 それまで大きく広がっていた膣が一瞬にして収縮し、先程までの痛みがまるで嘘であったかのように綺麗さっぱり引いて無くなった。

 

『ハアッ、ハアッ、ハアッ』

 

 代わって襲い来たのは全身を包む倦怠感と脱力感。

 

 身体の力が抜けてしまい指一つ動かせなくなった。

 

『ハアッ、ハアッ、は……はじめ……く…………ッッ』

 

 息も絶え絶えとなり虚ろな目をした奈々は、何がどうなったのかを知りたいと、愛する彼の名を呟く。

 

 そんな彼女に対し、出産の間ずっと手を握っていたはじめは満面の笑顔を浮かべて伝えた。

 

 大切なことを、苦しみに耐えて頑張った彼女の、何物にも代え難い成果を。

 

『生まれた……。生まれたんだ……俺と〈ぱとりしあ〉の、奈々の赤ちゃんが、さ』

 

 はじめが見せたのは今この世に誕生したばかりの新しい命。

 

 たったいま、奈々が産んだばかりの命。

 

 お腹の中で大きく育っていた、奈々とはじめの二人で紡いだ命。

 

 血と羊水に塗れて赤くなったその命……今し方彼女が産み落とした子は、確かに“赤子”と呼ばれるに相応しい姿をしている。

 

 見慣れぬ者が目にすれば少し目をそらしそうな、苦しみを感じさせるであろう新しい命の誕生の場面であったが、二人にとっては可愛く愛おしいとしか感じられない我が子が誕生する、結ばれて以来最も尊いひと時の瞬間であった。

 

『ハア、ハア……、こん、にちは……、ユウ……タ……』

 

 産む前より決めていた名前を呟きながら愛おしい我が子を抱いた奈々は、陣痛が始まってより此方ただ苦しみに歪めていた顔に、初めてとなる微笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

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