三春たちは近くの病院に三春の体におこった突然のことを検査しに来ていた。
「すいません……全く原因がわかりませんでした」
「そんな……!」
「妹……失礼。弟さんの遺伝子は完全に女性のものに変わっています。現代の医学では全く原因がわかりません」
「それじゃあこれからどうすれば……」
「………とにかく今は経過を見ましょう。病院にも通って体のことを小まめに調べましょう。わかったね。三春君?」
三春は顔を俯かせながら弱く答えた。
「……はい」
*
「三春、そう落ち込むな。すぐに治る」
「………」
帰り道、千冬は落ち込んでいる三春を元気つけるが三春は落ち込んだままだ。
「私も束に連絡を取って調べて貰おう。あいつなら何か解決策を見つけてくれるはずだ」
それを聞いた三春は顔をあげ、少し元気を取り戻した。
「……そうだよね。束お姉ちゃんならなんとかしてくれるよね」
「ああ、必ずだ」
*
その次の日、三春はいつも通り登校した。
髪を切り、いつもと同じくらいの髪型にしてバレないようにした。
「よう! 三春。昨日はどうしたんだ? 風邪か?」
「え? う、うん」
「へーお前でも風邪引くんだな」
「ちょっとその言い方は失礼よ。でも、昨日は篠ノ之さんも休みだったのよ?今日も来てないし…… 」
「えっ? 箒も……」
理由を聞こうとした三春だが丁度その時担任の先生と先生に連れられた箒が教室に入ってきた。
箒はひどく落ち込んだ様子だった。
「皆さん……今日は悲しいお知らせがあります。今日をもって篠ノ之さんは親御さんの都合により岐阜県の小学校に転校することになりました。悲しいことですが、元気に送ってあげましょう」
その言葉に三春は衝撃を受けた。
ホームルームも終わり、三春は一番に箒に飛びついた。
「箒!引っ越しってどういうことなの!?」
「三春……わからないんだ。突然父さんと母さんが引っ越しをすると言って……」
「そんな……」
三春は女体化、そして箒の引っ越しと心が追いつかなくなってしまい、その日の授業も全く身に着かず終わってしまった。
そしてその帰り道、2人はいつもみたいに仲良く話しながらではなく、お通夜みたいに沈んで帰っていった。
「………」
「………」
すると箒が話を切り出してきた。
「三春……」
「何……」
「離れ離れになってしまう前にお前にどうしても言っておきたいことがあるんだ」
箒は三春に面と向かって、両手を握り、しっかりとした口で話した。
「三春。私はお前が……三春が好きだ」
「箒……」
「私は必ず帰ってくる。だからその時返事を聞かせて欲しいんだ。その時まで私を忘れないでくれ」
箒の言葉に三春は涙を流しながら、答える。
「うん! 絶対に忘れないよ!! 絶対にまた会おう!!」
*
次の日、箒は引っ越して三春も箒との再会まで一生懸命頑張ろうと決めたのだ。
しかし、自分の体の変調にだんだんと気づき始めたのだ。
まずは勉強のとき、三春は元々頭がよく学校でもトップの成績だったのだが……
(なんで……? 前はほとんどの問題わかったのに全然わからなくなってる……!?)
「それじゃあこの問題を……織斑くん。答えてちょうだい」
三春は当てられるが、全くわからなくなってしまった三春は答えることができない。
「……すいません。わかりません」
「あら?そう……今日は調子が悪いのかしら?」
「………」
そして体育では、
「ハァッ……ハァッ……なんで……ハァッ……体がこんなに……動かないんだ……」
三春は剣道も全国クラスの運動神経が抜群にいいはずだが、100mほど走ると息が荒くなってしまった。
「おい、大丈夫かよ。今日調子悪いのか?」
「う、うん……大丈夫……」
「そうか無理すんなよ」
(いったいどうなってるんだ?)
*
それから一年が経ち、三春と秋十は4年生になった。
結局三春の知力と体力は下がったままだが、秋十はその頃から成績も良くなり、剣道でも全国で一位を取るほど上手くなっていた。
その頃、秋十の身体能力は軒並み下がってしまい、今でも剣道を続けているが全く勝てなくなってしまった。
そして変わったのはそれだけじゃなく、交友関係も変わっていた。
三春は文武両道で町中で人気もあったが、秋十はパッとしないところがありそれほど仲がいい人は少なかったが、何故か三春の友達はどんどんと離れていき、秋十と仲良くなったのだ。
今では秋十が町中の人気者になり、三春は目立たなくなってしまった。
そして変化は三春の体にも現れていた。
「ハァ……胸、結構大きくなっちゃったな……」
三春の胸は三年の後半から大きくなり始め、今では少し揉めるほどまで大きくなったいた。
それに体つきもどこか女らしさがあるようになってきていた。
これは明らかに異常だった。
「三春……そろそろブラをつけること考えたらどうだ?サラシでは少しキツイだろう」
「ううん。まだ大丈夫だよ。それに僕は男だよ? ブラなんかつけたくないよ」
「そうか……」
千冬もそれを心配そうに見ている。
三春は最近ではサラシを巻いて過ごすようになり、なんとかごまかしたいた。
しかし、もう1つ問題があった。
「ふっ……!くふぅ……うぅ………」
(乳首がサラシに擦れて……!)
時折、体が疼くことがありそのときに限って乳首から弱い電流が流れるような感覚に襲われる。
最近ではその頻度も多くなってきていた。
登下校のときはその感覚に抗いながらしていた。
それを見つめる怪しい視線に気づかないまま……
*
帰りのホームルームのとき、担任の先生から注意事項があった。
「最近、ここら辺で変質者が現れるそうです。皆さん十分に気をつけるように、それではさようなら」
みんなが各々帰り仕度をしてると、三春と同じクラスの秋十に多くの生徒が集まる。
「変質者だって怖いね〜」
「私襲われちゃうかも!」
秋十の周りで数人の女子が可愛く秋十の気を引こうとアピールする。秋十は女子の肩に腕を回し、キザったらしく振る舞う。
「大丈夫だよ。もし襲われても俺が守るからさ」
「キャー!かっこいい〜!!」
「秋十が守ってくれるなら安心だな!」
「さっすが秋十君!」
前までは自分があそこの立場だったのにと一瞬考えてしまった三春は何をバカなことをと頭を振って振り払い、1人で帰っていった。
しかし教室を出ようとした瞬間、秋十に声をかけられた。
「おい、三春」
「……なに?」
「お前も十分気をつけろよ。女の子みたいなんだから!」
その言葉にクラスにいた全員が笑った。
「確かに!三春なら襲われそうだな!」
「女の子みたいだもんね〜!」
三春は悔しさと恥ずかしさで逃げるように出て行った。
*
三春は家の近くの公園のベンチで1人座っていた。
家に帰れば秋十とその友達に苛められるのがわかっていたからだ。
千冬に相談しようとしたが、自分たちのためにバイトをしている千冬に迷惑はかけられないとずっと黙っていたのだ。
すると三春に声をかけてくる男が現れた。
「ちょっと……!ちょっとそこのキミ!」
「えっ……?あっ、はい」
その男はまるまる太った男で朝を流し、清潔感があまりなさそうに見えた。
「あの木に降りられなくなった子猫がいるんだ! ボクの背じゃ届きそうないから手伝ってくれないかい!?」
「は、はい!」
三春は男のまくし立てるような話し方と女体化してから今までのことが無くなってきたことでできた喪失感と絶望感で考える前に返事をしてしまい、男について行った。
「あのどこに子猫いるんですか?」
「あそこだよ!あそこ!」
男が指をさすに目を向けるが見つからない。
「どこにもいま…フギッ!?」
三春が目を木に向けた隙に男は三春のうなじ部分にスタンガンを押し当て、気絶させた。
男は倒れる三春を肩に担ぎ、隠してあった大きな鞄に詰めて、誰にもみられないようにその場を去って行った。
*
三春は目が覚めると天井に電球が一個ぶら下げられたカビ臭い部屋にいた。
窓がなく、智子音も聞こえない。
「ここは……」
痛む頭に耐えながら周りを見ると三春の手足はガムテープでぐるぐる巻きにされており、全く動かせない。
「お嬢ちゃん……」
声をする方に顔を向けるとそこには公園で声をかけた男がいた。
「お嬢ちゃんの名前は「なんで僕を誘拐したんですか!? 誘拐してもすぐ警察に見つかりますよ!!」………」
三春は男の言葉を遮り、叫ぶと、男はゆっくり三春に近づき腕を振り下ろした。
「ぎっ……!?」
三春は頬を殴られ、呆然してしまうのを構わず、男は腕を振り続ける。
「今!は!俺が!質問!してるだろ!ちゃんと!答えろよ!」
「いやっ!いたっ!? やっ…!やめて!あうっ!」
男は三春の口が切れて血が出るまで殴り続けた。
「ふぅぅっ、うぅ………」
三春は体を涙を流し、怯えた表情で体を縮こませた。
「それで名前はなんで言うの?」
男は再度質問するが三春は怯えて声を出すことができない。
すると、また男は腕をゆっくりと上げると、三春はまた殴られると思い慌てて答える。
「お…織斑!み……三春……です」
「そうか三春ちゃんって言うんだ……ごめんね突然殴っちゃって。でも三春ちゃんがいけないんだよ? ボクの所有物なのに口答えしちゃってさ?」
三春は男の言葉に疑問を覚える。
「所有物ってどういうことですか……?」
「そのままのことだよ。三春ちゃんはボクのものになったんだ。これからはずっと一緒だよ?」
その言葉に三春は恐怖を覚えた。
「そ、そんな!いやです!! お家に返してください!!」
「口答えするなって言っただろうが!」
「がっ……!」
男は短気で三春をすぐ殴りつけ、三春の細い首を両手で締める。
「いいか? お前に拒否権なんかないんだ……!お前は奴隷になったんだよ……!」
「あっ……!かはっ……!」
男は三春の顔色が悪くなるまで締め続け、目の光が無くなったころに手を放した。
「ごほっ!ゲホっ!……ゲホっ!ゲホっ!……オエっ!」
「三春ちゃんがいい子にしているならこんな暴力はいらないんだよ?
わかった?」
「は、い……」
「それじゃあ、楽しい生活の始まりだね!」
三春はこれからの恐怖に体が震え、自分を抱きしめることしかできなかった。