木佐さんがくれたチョコを食べた俺は腹の芯から熱が広がり、持て余す自分の中心を自覚して、高野さんの求めを拒む理由を失っていた。
高野さんの手が俺の来て欲しい所に動く。まるで何もかも分かっているぞと言わんばかりに。
今日はホワイトデイで俺からのお返しの日なのに。
でも高野さんと俺を隔てているフランネルのシャツは期待にあふれる胸の尖りを隠せない。服の上からそこをつままれて思わず漏れる声に羞恥が掻き立てられる。
「もうぷっくりしてる。」
ふふふと笑いながらつまんでいたそこに高野さんは唇を寄せ、服ごとはむっと敏感な部分を歯で噛んだ瞬間、指とは違う鋭い刺激に思わず身体がのけ反ってしまった。
「手はこっち。」
行き場の定まらない俺の手を高野さんが首に誘導すると、裾から手を入れ腹をさすりながら服をたくし上げ、肉付きの少ない胸を外側から包むように寄せ親指でさらに存在感を増すそれをつぶすように押した。
痛いと痛くないの丁度真ん中、気持ちいいのところで高野さんの指が遊ぶ。
そう、右の胸の方が気持ちがいい・・・。
高野さんはなんでもわかってる。俺が自分のことさえも分からないで過ごした一年間だって、高野さんは俺がもうとっくに陥落していたことなんてお見通しだった。
なんでこの人なんだろう。
どうして?
高野さんは知ってる?
高野さん・・・、
高野さん?
どうして俺はあなたじゃないとだめなんですか?
高野さんが頬を撫でて俺を見つめるから、
その目の色があんまり優しいから我慢できなくなって、首に回していた手に力を込め、顔を引き寄せてキスをねだると高野さんの舌が俺の熱くなっている舌をよこせと唇を舐めた。
通例儀式は様式美とでも言わんばかりに唇を少し開くと高野さんのそれが柔らかく入ってきて、俺の舌も、裏顎も、頬の内側も、全部が気持ちいい所に変わっていく。
いっぱい食べて、高野さんを俺でいっぱいにして・・・。
あなたに教えられたすべてで俺は構成されているんです。
俺はどうですか?
あなたを満足させていますか?
「やべー。もう我慢できないかも。」
高野さんのつぶやきに少しだけ身体を起こして首に回していた手を高野さんの腰から内ももに這わせると「してくれんの?」と嬉しそうに目を細めて妖艶に笑った。
▽
ベッドヘッドボードに枕を当てて寄りかかる高野さんの荒い息遣いが頭の上から聞こえる。
高野さんの小さな反応も漏らさないように注意しながら、大きく膨らんだそれを口に含み、吸い、手で扱きながら先端の露になった部分を舌でさするとびくびくとそれ自体がまるで生き物のように蠕動した。
まだイかないように、もう少し味合わせてもらうように、付け根を少し強めにきゅっと握って、裾に添えられているやわやわとした膨らみの中身をクリクリと転がすように揉むと俺の頭をつかんでいた手をぐっと引き寄せ「りつ・・・。」と息を漏らす。
動きたいんですね。
高野さんの味がジワジワと口の中に広がってそろそろおしまいにしてとねだる。
表皮を少し下に引きながら、口に力を入れ、膨らみ切った凶悪面をしているであろうそれを強く吸いつつ上下させると、ほどなくして高野さんは小さい喜びの声とともに俺の口の中に欲望を吐き出し、俺はそれを余すところなく内に取り込む。
高野さんを手に入れたという独占欲と、俺が果てさせたという征服欲が満たされ、まるで自分もイッたような恍惚感にめまいがしそうだ。
高野さんは俺のモノ、俺だけのモノ・・・。
息も荒く射精後の無我の境地を漂っている高野さんに擦り寄りその胸に顔をうずめると心臓の鳴る音が間近に聞こえる。
いつも俺は高野さんにドキドキしてしまうし高野さんもそうだと言っていた。
生き物の心臓の鼓動の数はみな同じだと聞いている。そうしたら俺たちは他の人より早く死んでしまうかもしれない。
大変だ。もっともっと高野さんと愛し合わないと持ち時間に追い越されてしまう。
そんなことを考えていたら高野さんの爪が俺の背骨をツイっとさすった。
思いがけずの急な刺激に思わず「ヒャッ」と声を上げてしまうと、「なに人心地ついた顔してんの?お楽しみはこれからだろ?」と高野さんがヘーゼルに光る獣の目でにやりと笑った。
高野さんのターンはもはや手加減はなく激しかった。
脱ぎかけのフランネルのシャツを腕だけ残して脱がされて、手はシャツに拘束されたまま体中を愛撫されたのだ。
高野さんに触れられたら髪の毛の先さえもみんな気持ちいい場所になってしまう。
ツルツルと頭皮を撫でられ、うなじを噛まれ、足の指の股を舐めあげられる頃には自分がどんな姿勢でいるのかもわからなくなった。
不自由さは不安感のはずなのに、今はそれさえも気持ちいい。
高野さんが俺にひどいことをしないと分かってるから。
高野さんに触れたいのに触れられないもどかしさが感覚を鋭敏にし、すべてを開放する。
俺が高野さんでいっぱいになる。
今日はいつもよりずっといい?
ああ、木佐さんがくれたチョコのせいかな?
それなら仕方がないじゃないか。
俺がもっと高野さんが欲しくなっても・・・。
愛撫の手が止まり少しだけ今に引き戻されてふっと高野さんを見ると、高野さんは小さな四角い袋を開いている最中だった。
袖口のフランネルのシャツを脱ぐと首につけられていた銀のリングが一層冷たく感じられる。
二人で通じることのできる内容が増えて、高野さんが何をしたいのかもわかるようになってきた。
この人は今俺を労わろうとしてくれているのだ。
高野さん自身にはそれほど必要なものではないはずだなのだから。
「明日も仕事だしな。つけとく。」
確かに何ラウンドになるかわかんないけど処理する時間だけは楽かもしれない。
身体にも負担になることは否めない。
そう、俺から頼んだことはないのに、こうやって翌日が仕事の日は高野さんがつけてくれることが多くなった・・・。
「さて再開。」
高野さんが自分の丁度いい位置に来るように俺の膝を肩に抱えて、そろそろ待ちきれないと言いたげな俺の窄まりの縁をもう一度確かめるように軽くなぞった。
ゾワリとした違和感と期待で鳥肌が立ち、身体がフルっと震えてしまう。
高野さんのそれがあてがわれ、次には高野さんも待ちきれなかったというように荒々しく少し強めに体重をかけて俺の中に分け入る。
この瞬間の不快感が快感に変わったのはいつからだろう。
柔らかくなっているはずの入口が高野さんが擦れていく刺激でギュッと締まる。逃さないと追いかけるように。
「まだだめ。力抜いて。」
一度奥まで到達した後で高野さんが軽く引き少しだけかき回すように動いた。
何か違う・・・。
いや?違わない?
イヤ?やっぱりだめ・・・。
「たかのさん、それ嫌だ・・・。今日はしないで・・・。」
はじめは、高野さんは何を言っているかわからないようだったけどすぐにピンと来たようで、「感触違う?」と困ったように眉毛を下げた。
感触ではないのだ、これは心の問題だと分かっていた。
それを感じるほど中の皮膚は敏感ではないはずだ。
だけど今日は・・・、なんか嫌だ・・・。
「今日は高野さんに触れたい・・・。」
それでも中の刺激はいつもと変わらずきつくて、俺は喘ぎながらやっとそう告げた。
「りょーかい。」
そういうと高野さんはさっさと自分自身を俺の中から引き抜いて、ぱちんとそれを外して俺の身体を引き上げると、嬉しそうにあむあむと俺の顔じゅうをまるでワンコのように甘嚙みし舐めまくった。
高野さんも同じ気持ちだろうか?
俺に触れて、もっともっと深い誰も知らないところまで全部あげるから。
高野さんに跨って向き合いながら尻をつかまれて上下させられると、あっという間に俺は達してしまってもはや身体のどこにも力の入れられないぐらいトロトロ状態に陥ってしまった。
「やべー、お前今日良すぎる・・・。」
高野さんが俺の耳朶を食み、熱い息を漏らしながらそういう。
高野さんが気持ちよくなってくれてるならよかった・・・。
頭の中心点滅するような、めまいにも似たいつもの感覚が押し寄せる中でそんなことを思っていると「ちょっと気を紛らわせたいから。」と一旦高野さんの動きが入口付近で止まってしまって、持て余した俺の熱が行き場を失った。
「だめ・・・、もっと欲しいから、奥までいっぱいにして。」
腰をグイッと押し付けると俺の中の高野さんが嘶く。
「ホント今日のお前、最高・・・。」
俺の求めに高野さんがまた嬉しそうに笑った。
きっとこれもチョコレートのせいだよねと言い訳しあって、明るくなるまで何度も何度も俺たちは互いを喜ばせあったのだった・・・。
以上、恋人たちの夜から日にちの変わった15日の未明までのアツアツの出来事でしたとさ。
おしまい。