※この作品はR-18です。

美少女と知能犯   作:gazerxxx

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善意?いいえ、前戯です

映優梨(はゆり)のマンションの前までダッシュで先回りし、彼女が帰ってくるのを待つ。彼女はメールの返信に気を取られているから、いつもより歩みも遅い。彼女が部屋に戻ってしまう前に、この生徒手帳を返せるはず。拾った時すぐに追いかけて返す、部屋を訪ねて返す、交番に届けるというのではなく、外で返すのがポイント。

 

向こうの角を曲がって、映優梨が歩いてくる姿が見えた。その瞬間、僕は待っていた棒立ちの体勢を崩し、彼女のパスケースを取り出して落ち着きなく辺りを見回す。彼女はこちらの何かを探すような挙動に気づいたようだ。そして、俺の方から映優梨の姿を確認すると、大げさに喜びの声を上げて彼女の前に進み出る。

 

「やっと見つかった!これ、あなたが落としたものですね?」

 

映優梨の目の前で急停止し、笑顔を作ってパスケースをそっと差し出す。このオーバーリアクションが、彼女の警戒を解くための第一歩。このご時世じゃ、大人の男が女子高生に声をかけただけで事案だが、大声で落し物を拾ったとアピールするお人よしを通報する人間はいない。

 

「確かに私のです…。ありがとうございます!これをどこで?」

 

映優梨は驚きつつも、素直にお礼を言う。敬語口調によく似合った、嫌味な甲高さのない涼やかな声。掴みは上々だ。にしても、本当に化粧なしでも、肌白いな。やばっ、顔見ただけでムラムラしてきた。

 

「これと生徒手帳が一緒に落ちているのを、すぐ近くの道で見つけたんです。

失礼だと思ったんですが、その時ちょうど開いていた生徒手帳の住所と写真のページを見てしまいまして。

その住所からまだ近くにいるんじゃないかと思って、自分で探してたんです。ほら、手続きのある交番に届ける前に、早く見つかるかもしれないと思いましてね」

 

生徒手帳を見た部分では申し訳なさそうに頭を傾けるも、愛想笑いを浮かべて言葉を締める。

先ほどの何かを探していたような動作と合わせて、俺がわざわざ近くにいるだろう落とし主を探していたことにする。警察ではなく、彼女の個人情報をもとに自分で探したのを善意だと強調する。手間を上乗せすることで、彼女に恩を着せる。実際に最短で彼女にパスケースが返ってきたのだから、僕のファインプレーのおかげということになる。

 

「わざわざ私を探して…ほんとにすみません!」

 

映優梨はよほど感激したのか、丁寧に頭を下げる。セミロングの黒髪が舞い、いい香りが俺の鼻先に届く。近づいて初めて嗅いだ彼女の芳香に、鼻をくすぐられる。よしよし、良い流れだ。後は家が近いことを明かして親近感を持たせて、近所のご縁だと言って、盗撮動画についての密談に持ち込めば…。

 

「あの、お礼に……お茶でも飲みませんか?私の部屋、ここのマンションなんです。お時間ありますか?」

 

「えっ?…ええ、ありますけど…」

 

なぜか俺が言いだすまでもなく、彼女が誘ってきた。彼女はそういうお誘いできない性格だから、ぼっちなんじゃないのか?まあ計画に支障はない。

 

「それじゃあ、上がってください!少し散らかっていて恥ずかしいですけど…」

 

彼女は照れ臭そうに両手を組み、誘ってくる。ああ、これはめったに客を部屋に入れない人間の誘い方だ。「少し散らかってる」なんて言葉を謙遜じゃなくて、照れながら予防線として張るのが特に。俺はむしろ「すごく散らかってるから」と言って、他人を部屋に入れない事ばかりだが。

それにしても、なんで滅多に入れない部屋に、初対面の男である俺を入れるんだ?せいぜいファミレスのボックス席とかが関の山だと思ってたんだが、簡単すぎる。警戒心ゼロか?この娘は。単に僕と同じようなぼっちキャラというわけではなさそうだ。

 

「あの、お名前は…」

「ああ、氷浦(ひうら) 瞑司(めいじ)、って言います」

 

こっちも漢字が独特なので、免許証の名前だけをさっと見せる。

 

「瞑司、さん。って呼んでもいいですか?」

 

いいも何も、彼女の口から名前を呼ばれるだけで、何とも言えぬ愉悦が走った。

 

映優梨の部屋に入る時は、まず玄関の靴を確認した。やはり彼女の靴しか確認できない。覗き見ていた通り、一人暮らしか。

聞けば、彼女は両親を早くに亡くし、母方の叔母に身寄りを引き取られた。その叔母も経済的援助はしてくれるが、仕事が忙しくてなかなか会えず、メールでやり取りしている。叔母の転勤の都合で、こちらに転向して、ワンルームマンションを借りたとさ。

 

玄関から短い廊下を歩き、窓から何度も覗き見ていた部屋に通された。窓を通じてみる以上に、全体的に小奇麗に片付いた部屋だと分かる。机の上にノート類が広げられていたり、ベッドに寝た跡が残っていたりする程度で、小物やごみが散らかっていることはない。本当に「少し散らかっている」くらいだ。

俺なら2、3日掃除してない部屋でも「少し散らかってる」で済ませてしまうものだ。だが、彼女はお客向けに掃除していない、その一点が気になってしまうんだろう。

 

「あのぅ、おかしいですか?私の部屋…」

 

俺の目線が「少し散らかってる」箇所にも向いていると察したのか、不安げな上目づかいで彼女は尋ねてくる。

 

「いや、女の子一人だからか、と感心したよ。俺の部屋に比べれば綺麗で、羨ましいな」

 

映優梨の部屋という、プライベートな空間に上がったので、敬語を崩してフランクに話し始める

参った参ったという感じで、頭をかきながら褒めちぎる。女性への最初の褒め言葉は、身の回りにある物からでいい。女性は身の回りを飾る物へのこだわりが強い。物をほめれば、間接的にそれを選んで飾っている女性自身も褒めることになる。

どっかでそんな口説き文句を仕入れたことはあるが、使う日が来るとは思わなかった。

 

「そんな、綺麗だなんて…」

 

映優梨は緊張が解けたのか、組んでいた指を解いて、顔の横に手を当てる。褒められたのが久しぶりなのか、熱を持った頬を自ら撫で冷ますようなしぐさ。何か庇護欲を湧き立たせるような、優しさに飢えたリアクションだ。その姿にますます独占したくなる反面、なぜ彼女がこうも孤独なのか疑問は尽きない。今の彼女を見れば、大抵の人間は更なる優しさを注ごうとするはずなんだが。 あー、それにしても頬染めは、あの時の恥じらいを思い出すからたまらない。腹筋に力を入れて、跳ねようとする屹立を、ズボンの下で押さえつけ、気持ちを鎮める。

 

おっと俺が見つめてるせいか、彼女が余韻に浸って動かない。俺も黙って観察、考察してる場合じゃないか。

 

「そうそう、どんなお茶がある?」

「…はっ、すいません。紅茶でいいですか?」

「ああ、砂糖とミルクはなしで」

 

映優梨が湯を沸かしにキッチンに向かっている間に、考察を再開。本来は裏で考えていると悟られてはならない。

ついでに、薄着に体のラインが浮かぶ後姿を、ここぞとばかりに鑑賞する。まだ白いブラウスの背中に、水色のブラ紐が透けているのが確認できる。あの時と同じ下着か、早く剥きたい。邪な視線で、プリーツスカートに包まれた桃尻を見送る。

 

俺は映優梨を勝手に、孤高ぼっちとしてカテゴライズしていた。彼女ほどの品行方正な美少女を周りが放っておくはずがない、ならば彼女は俺と同じで自ら関係を断ち切っているのだと。

しかし、彼女は初対面の俺を部屋に上げて、軽い褒め言葉にも反応している。彼女は寂しがっているのだ。となると信じられないことに…彼女は周りからハブられていることになる。

 

黒髪セミロングの清純な美貌、脱いだらエロいスタイル、照れを顔に出すような純真さに、一人暮らしでも掃除や来客に対応する家庭的な一面もある敬語女子。まあ、敬語はあくまで俺の方が年上だから、当然か。いや、今の女子高生はそんな礼儀に捉われた言葉遣いしてないのは置いといて。エロシチュでは超人気と言っていい属性の宝庫だろうに、なぜ目の前の彼女は不人気なのか。映優梨ならちょっとした失敗の一つや二つは軽く許されるはず。

その不可解な人間関係を整理しておこうか。後々思わぬ伏兵が乱入してくるかもしれないから。今回は偶然を利用したから、まさか美人局ってこともないだろうけど。

 

そう次の手を考えていると、映優梨が戻って来た。手際良いな。湯気の立つカップとクッキーの缶をお盆に乗せて運んでくる。

 

「お口に合うかどうか、分かりませんけど…」

「悪いね、ごちそうになって」

 

全く、文句のつけようのない作法だから、こっちも話を合わせるには肩がこる。つか、気を使いすぎ。紅茶を口に含むと、これが中々いける。味からするとインスタントだろう。しかし、味の濃さと湯加減が絶妙。口に含んでも、味のしつこさ、湯の熱さがない。細かいところまで丁寧だな、とゴクゴク飲み込む。

 

「あのう、お味は…?」

「ゴクッ、ぷはぁ~。こんなに上手いお茶の入れ方は、中々味わえないよ」

「本当ですか?嬉しいです!」

 

今度は心底嬉しそうな眩しい笑顔になる。ああ、まただ。褒め言葉の反響が大きすぎて、こっちが引く。ま、これから彼女にとって嫌な話題に移らせてもらうつもりだけど。その顔、どう崩れるかな。

 

「うん、本当。友達とかにはおいしいって言われない?」

 

その瞬間、映優梨の笑顔がフリーズする。しかし、すぐに言葉で取り繕おうとする。

 

「友達とは…よく外で遊ぶんですけど、転校して来たばっかりで……まだ家に呼んでいないんです!」

 

なるほど、転校で上手くいかなくなったパターンか。人間、「あれさえなければ」という障害を言い訳に使ってしまうものだ。前の友達とも、縁は切れてるんだろうな。そこまではわかったが、敢えて触れない。

ここは、ストレートに「学校楽しい?」と聞いてプレッシャーを与えてはいけない。

 

「へえ、もったいない!狭いからって遠慮しないで、呼べばいいんじゃん?」

「でも私、一人暮らしで、オーディオとかも置いてませんし…」

「そう?俺はこんな部屋泊まってみたいと思いますよ?本やドラマのDVDがたくさんあることだし」

「そう、ですか…」

 

謙遜することで自信がないとアピールし、逃げを打つ。そんな相手には、親身になっておだてるのがコツだ。第3者視点からの気休めではなく、当事者のように味方すること。つまり深入りしなければ、本心は話さない。

 

他人の問題はなあなあで聞き流し、後のことはスル―。そんな対応で話しにくくなるのは、嫌というほど経験してきた。彼女も客への緊張は解けて来たみたいだ。

 

そのままドラマについて話しこむ。まあ、現実の付き合いを絶っている俺も、ドラマはよく見てる。現実と違って、人間が本音で人間関係を整理する所がいい。彼女も話を聞くと同意見らしい。

 

「俺はDVDじゃなくてリアルタイムで見てたけど、これとかは、彼氏がヒロインを帰り道で呼び止めて、プロポーズする話?」

 

ちょうど手に取ったDVDの表紙が、ヒロインが振り向いた印象的なカットになっているから、そう聞いてみる。ヒロインが会社の仕事や、夢を追う彼氏に翻弄されるのがコミカルで、見ていたラブコメドラマだ。筋書きは単純でも、キャラクターの言動がドラマチックで見ていて飽きなかった記憶。

 

「そうなんです!ヒロインが彼氏の夢のために身を引こうとしてるところで、プロポーズされるのに、ちょっとドキドキしちゃって……。ここ何回も見直したくて、買っちゃいました」

「中々煮え切らなかった彼氏が、思い切って告白を見せた場面だね。俺もあれ見て、遂に行ったか!ってね」

 

映優梨がドラマの話に夢中で、隙を見せたところで畳みかける。

 

「こんなにドラマのことで人と話したのは久しぶり、だよね?」

「そうですね…」

 

映優梨も思わず同意したところで、不意に尋ねる。

 

「あれっ?友達とは、話してないの?」

「えっ?それはっ、そのぉっ…」

 

それまでの会話では、ドラマの世界に入っていたはずが、唐突に現実に引き戻され、彼女は返事に困る。

 

俺はというと、落ち着いてクッキーをつまむ。高そうな缶に入ってるのを見るに、どうせこっちは貰いものだ。褒める意味はあまりない。

 

「ああ、良いドラマなのに、見てる人が周りにいないのか。僕も話せる相手がいないからさ、分かる分かる」

 

そこまで言うと、クッキーを咀嚼しながら、彼女の答えを待つ。質問の直後に、こちらが喋らない間を作れば、彼女は“答えなければ、間が持たない”と思ってくれる。

それに、さりげなく「いいドラマを見ていない」と、映優梨の周囲に理解がないかのように言及する。悪口とも言えない程度の言葉だが、彼女の口から愚痴を引き出す呼び水にはなる。

 

「そうなんです、クラスの人とは、ドラマの話ができなくて…」

 

映優梨は遠慮がちに、本音を少し漏らす。

 

「じゃあ、クラスのみんなは、このDVDも見てないんだ、もったいないな。俺以外にも、本当は布教したいんじゃないのか?」

 

「それはちょっと……」

 

映優梨は少し伏し目になって、尻込みする。

 

「もしかして、プレゼンで躓いた?クラスのみんなにうまく勧めたいなら、相談に乗るよ」

 

徐々にクラスの級友に関連付けて、映優梨の秘密に踏み込んでいく。

 

「いえ、みんなはきっと、あのドラマ嫌いだと思います…」

 

映優梨は撫で肩を落として、頭も前に傾けて顔をそらす。切りそろえられた黒い前髪で、ベールのように美貌を隠す。もはや、愛想笑いも維持できなくなっているらしい。

 

「皆から嫌われてもさ、誰かには好きになってもらいたいって思わない?少なくとも俺なら、好かれそうなチャームポイントはわかるけど」

 

これはもちろん、ドラマにかこつけて、彼女自身に向けた言葉。敢えて主語を抜かしてあるが、映優梨の心が、ドラマよりも自分自身に向いていれば……。

 

「本当に、分かってくれるんですか……」

 

そう言って顔を上げた彼女のまつ毛には、涙の粒が光っていた。彼女をそれとなく褒め続けて、好感度を稼いでおいたんだ。彼女が期待するのも当然だろう。

 

「もちろん、クラスのことを話してくれればね。一緒にどうすればいいか考えよう」

 

秘密を話しやすくするには、ききだす前から相手を「君は悪くない」と肯定して、希望を持たせることだ。そうして嘘をついている罪悪感を持たせて、精神的優位に立つ。俺もこのように上手に話を引き出す相手がいれば、距離を置かなくて済んだかもしれないんだがなあ……。

 

「私、本当は、クラスに友だちなんていないんです……」

 

映優梨は辛そうに息を吐きながら、心中を吐露し始めた。

 

そこからの話をまとめると、やはり学校でいじめられていたそうだ。

2年から転校でこの学校に移った彼女。最初はクラスのみんなからも、よく話しかけられた。ま、映優梨みたいな美少女なら、それが自然だろう。

だが、それを快く思わない同級生が、他の同級生に、あることないこと吹き込み始めた。

 映優梨は一人暮らしをいいことに夜遊びしてるとか、成績がいいのはカンニングしてるからだとか。その噂を流した主犯は、クラスで抜け目なく人脈を作っていて、まだ転校して間もない映優梨より、そっちにクラスメートはなびいた。

要は、相当のぶりっ子だったってわけか。

 同級生たちが転校生の彼女に向けていた興味は、ゴシップを流されたことで、ゲスな勘繰りへとエスカレートした。映優梨が夜には家でドラマを見ているといっても、信用されない。夜の町でどんな男と遊んでるのか、と噂される。カンニング疑惑で、教師にまで呼び出される。あくまで疑惑なので、保護者への連絡はされなかったが、逆に味方してくれる者は誰もいない。映優梨自身も、多忙でありながら学校に通わせてくれる親戚に、こんな恥ずかしい噂は知られたくなかった。

 

だが、いじめはこの程度では収まらず、悪者に仕立て上げた映優梨をハブにしだした。

同級生は映優梨を遠巻きにして、ヒソヒソ悪評を立てるようになり、映優梨は弁解も許されなかった。

直接話しかけられなくなった代わりに、嫌がらせを受けるようになった。靴を水浸しにされたり、机や教科書に落書きされたりした。しかし、映優梨がショックを受けても、周囲は知らぬ顔。クラスメートは映優梨のみじめな姿をニヤニヤ眺め、教師も映優梨の悪評を気にして、関わり合おうとしない。

それでも、映優梨は最初の風評被害よりはましだからと、我慢するつもりだった。自分が望み通り、目立たなければいいと。

 

とはいえ、いじめてる側にとっては、彼女を下げる空気を作るのが目的だろうし、控えたぐらいで止める物じゃないと思うが。

 

映優梨の思い空しく、さらにひどい段階に入った。いじめの主犯が3年の先輩を連れてきて、休み時間に呼び出しを掛けるようになった。こいつも、他の同級生や教師から疑われないパターンか。

そんな先輩に呼び出され、生意気だと名指しされて、暴力を振るわれる。一人暮らしのために用意している生活費からお金を渡さないと、やめてくれない。証拠を残さないためか、傷が残るような暴力は受けていないが、毎回痛みと疲労で立てなくなるほど痛めつけられる。そうして、授業に遅れてきても、誰にも声を掛けられない。

 

いつも二人は、床に倒れ伏した映優梨を見下しながら、こう罵るのだ。

 

「床で寝てるとか、ダサいよね~。お前みたいなのが、ゆるふわ愛されJK・ニ彩ちゃんより、話題になるなんて、もうありえないし」

 

いじめの主犯・萌野は笑いながら、倒れた映優梨をつま先でチョンチョンつつく。

 

「転校してきた時は、お高くとまってたらしいじゃん?カマトトぶってるとか、ウチもムカつくタイプ。アンタみたいなKYは、友達も彼氏もナシで、ずっと一人だから」

 

いじめに手を貸す先輩・黒柄はガンを飛ばしながら、床に広がった映優梨の黒髪を踏みにじる。黒柄は恋愛には奔放との評判で、人を惹きつける魅力と反比例して、他人との付き合いに控えめな映優梨にはイライラするとか。

 

「キャー、先輩かーっこい~!もっと言ってやって下さいよぉ~」

 

黒柄の威嚇に萌野が合いの手を入れて媚び、さらに調子づかせる。

 

これって、ブスが言ってるなら嫉妬乙で済む。けど、クラス写真見せてもらうと、萌野も黒柄も、それぞれ学年トップクラスの容貌みたいなんだよな……。

 

萌野ニ彩は、ツインテールが似合う、高校生よりも幼く見えるベビーフェイスで、ウインクしている。くりっとした瞳は、つぶらで小動物に似ている。つるりとしたくすみのない肌は、白か黒に色づく前の赤子に近い透明憾のある肌色だ。リスみたいに膨らんだ頬は、今にも落ちそうなほど柔らかそうだ。他のクラスメートと並ぶと、頭身が低い小顔で、起伏の薄い幼児体型。だが、膝上のスカートとオーバーニーソックスの絶対領域や、指先だけ袖から覗かせた長めの萌え袖など、自分の魅力を自覚して、あざとく制服を着こなしている。

その子はクラスでのアイドル的存在で、転校生にクラスの注目が集まったのが、気に入らなかったらしい。

 

 対照的に、黒柄麗緒瑠は、金髪のミディアムボブに、意思の強そうな虹彩を宿したアーモンドの瞳、不敵に釣り上げた口角。健康に日焼けした小麦色の肌。3年にしても高身長で、全体的に引き締まったスタイル。しかし、ブラウスの胸は、中々見栄えする形に盛り上がっている。動きやすく詰めたであろうスカートの下からは、程よく筋肉の付いた太ももが、パンパンに張っているのが拝める。ルーズソックスを履いた、バネのありそうな美脚だ。萌野がロリ系なら、黒柄は肉食系と言ったところだ。

その黒柄もスポーツ万能で、スポーツ推薦が既に決まって、他の部活の助っ人までやっている有名な先輩だとか。こいつにボコられたら、男でもキツイんじゃないだろうか。

 

ってか、こいつらクラス写真に写ってるのに、制服や髪いじりまくりだな。やはり教師からもお目こぼしされる側か。

 

まあ、今は写真よりも、目の前にいる美少女の方が、強く意識されるところ。もちろん、映梨ちゃんも学年に一人いるかいないかという、レベルの高さだ。これは高レベル同士ゆえに、タイプが違う方を潰そうとするいじめか。清楚VSビッチみたいな。

 

「そんな風に、何度も言われてるとっ……私ってもう…男の人と、一生付き合えないんじゃないかって…」

 

彼女は涙の粒で濡れ光るまつ毛を瞬かせて、泣き声で途切れ途切れ告白する。なるほど、自信を折られてしまったのか…。いい身体してるのにもったいない。

 

今分かった。あの時、俺に少し優しくされただけでも、それが身に染みたから、部屋に招いて話がしたくなったのか。

 

いつも一人なのはわかっていたが、そこまでの寂しさを抱えてるとは思わなかった。ましてや、その事情を知ってもらうには、自分が誹謗中傷で貶められてるのも打ち明けなければならない。

そりゃ、通りすがりの俺相手でないと、できない話だろうね。

 

まあ、ここまでは落ち着くまで黙って話を聞くターンだ。映優梨は自分の話を聞いて、まず相手が疑ってこないかを心配している。

 

周囲全てから嫌われるのは、彼女にも何か落ち度があるんじゃないか?

噂にも真実が混じってはいないか?

 

そういった半信半疑の口を挟むだけでも、彼女は傷ついて心を固く閉ざしてしまいそうだ。だから、うんうんと頷いて話を促すだけに留める。

 

「私っ、どうすれば、いいですか…一人じゃ、苦しくて……」

 

ようやく映優梨は胸のつかえを吐き出して、会話する準備が整った。彼女に言葉を届かせるなら、ここからだ。

 

「……辛いことを、よく話してくれたね。一人で考えないで、これからは僕に頼ればいい」

 

彼女が最も欲している言葉を投げてやる。それだけで彼女は、顔を上げて大きく反応する。

 

「そんな!何でも頼るなんて、迷惑じゃないですか?私は、誰かに話を聞いてもらいたくて…」

 

そう言いつつも彼女は、俺に去って欲しくないような目を向ける。

 

上手く心の隙間に入り込めたな。彼女が誰からも捨て置かれているなら、俺が拾う。これが寂しい少女を落とすための王道、否、邪道だ。弱ってるとはいえ、都合のいい信頼は危険だと教えてやろう。

 

「映優梨ちゃんとは、これからも付き合っていきたいと思ってるけど?知り合いに、君ほどかわいい子いないからね!」

 

俺の熱弁を聞いて、思わず映優梨は吹き出す。完全に安心させて、警戒は解けたな。

 

「フッ、フフフッ…すみません。でも、瞑司さんのかげで、久しぶりに笑えた気がします!」

 

映優梨は、心からの美しい笑顔を見せる。真っ当に落とそうとするなら、ここで満足すべきだろうね。だが、俺の目的は、プラトニックなつながりではなく、会った今日この日に身体でつながることだ。心中では、情欲の炎が収まっていない。

もっと違った彼女の表情を暴いてみよう。

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