とりあえず傷ついた映優梨をそのままにしておいては、セックスもできない。死にそうな顔してる女を喘がせようとしてもつまらない。
映優梨の濡れた制服をそのままに、かかりつけの医者に首の傷を見せて、診断書を出してもらった。
道で通り魔に襲われて、酷くショックを受けている子を連れて来たという口実で。
大学の試験やレポートがギリギリの時、間に合わせる時間稼ぎのために、診断の甘い医者は知っている。この町病院の院長は、あまり患者にうるさいことを言わず、休養を勧めるタイプなのでよく利用している。見込み通り医者の爺さんは深い傷を負った映優梨に同情し、干からびた唇から心配そうなため息をつきながら、
「大事を取って休んだ方がいいですな」
と定番と化した口癖で忠告。首の傷を手当てして、学校に休みの連絡までしてくれた。警察には、本人が精神的に傷ついていると言ったら、通報しなかった。映優梨の悪評を気にしている学校も、医者の診断では素行不良だのと突っ込めない。映優梨が今まで学校を休むに休めなかったジレンマを、いとも簡単に解決してやったわけだ。
映優梨は初めて学校を休めたのに、俺にお菓子を作りたいという。
「まだ傷が痛むんじゃないのか?ゆっくりしときなよ、今日は」
「瞑司さんが庇ってくれて……私、救われた気持ちになったんですよ?お礼にご馳走くらい、させて下さい」
殺されかかって帰ってきた時よりは、目に生気が戻り、声も涼やかに戻っているから、大丈夫そうだけど……。
礼は性処理でしてもらうつもりだったし、怪我の時ぐらいサボっときゃいいんだよ。
家庭に入った女は、非常時だろうと家事を気にすると聞くが……いじめにあいながらも、生活を続けようとする点では、映優梨も我慢強いと言えるか。
映優梨が出してきたのは、ガラスの器に入った白玉に抹茶アイスを添えた甘味スイーツ。今は、5月から6月に入ろうかという時期で、ムシムシとした陽気漂う季節だ。食べてみると、喉ごし良く練られた白玉、爽やかな涼を感じる抹茶アイスや透明の器で、ピッタリなメニューに思えてくる。
「この白玉、カタクリをこねて、わざわざ作ったんだろう?映優梨ちゃんの手でこねるとやっぱり違うな」
「瞑司さん、大げさです…。綺麗に丸くなるまで、結構かかっちゃいましたけど」
照れ臭そうに微笑む映優梨は、フォークを持った指を止める。
「上手くなったら、俺の玉もこねておらおうか」
口角を吊り上げて、映優梨のたおやかな指をじっと見る。あの繊細な指で睾丸を刺激されるのもよさそうだ。
「玉って……!、やめてください、食べてる時に、その、そういう話は!」
俺が唐突にブチ込んだ下ネタに、一瞬の間を置いて気づいた映優梨は、慌ててフォークを持った手を背中に回して隠す。不意を突いてやると相変わらず初心な反応を見せてくれる。
「関係はあるさ。映優梨ちゃんの白玉も身体も柔らかくて美味しいって、言いたいんだよ」
「かっ、身体もっ!?~~っ!恥ずかしいこと言わないでください…」
下ネタで純情な女子高生を弄りまくる、セクハラじみた行為。普通のガールフレンド相手なら、引かれるか逆にノッてくるかで、こうも困ったリアクションは見られないだろう。
映優梨が真っ赤な顔をそむけて、自分の皿に手を付けられない様を、白玉を食べながら眺めて悦に入る。
「しかし、あれだな。俺が食べるようになってから、料理のレパートリー増えた?」
最初に俺が来た時出してもらったのは、もらい物のクッキーと紅茶だったはずだ。
「はい。瞑司さんに、初めて紅茶や料理をほめてもらったのが、忘れられなくて…」
映優梨は少し目線を伏せて、打ち明ける。映優梨にとっては、自分が苦しい中で出した精一杯のもてなしが認められて、更に頑張る気になったってところか。まあ、俺もそれから美味しい思いをさせてもらってる。
このところは、セックスのついでに、夕食や朝食も映優梨の部屋で食べるようになっている。映優梨の十八番は和食。世界で認められる健康食だけあって、栄養や味付けのバランスがとりやすい。一人暮らしで飽きずに続けるとなると、映優梨にはかみ合っている。
最近は映優梨と俺の2人前で消費量が増えたため、丼物などの量が多めの料理も作るようになってきた。卵とじのカツ丼なんかは、俺向けに用意したメニューだろう。
「なら、しばらくは学校のことより、料理のレシピを考えといて。俺のためにね」
「はいっ、夕食のメニューも頑張ります!」
映優梨は張り切ってぐっと手を握り締めると、ネットで夕食のメニューを調べ始める。懐石料理のページがチラッと見えたが……流石に今日中にマスターするのは無理だよな?
「その意気なら、大丈夫だな。俺は夕方まで腹ごなしに行ってくる」
まあ、映優梨が集中してる間に、俺は帰ってターゲットである萌野もえの二彩の情報を集めておこう。転校してきたばかりの映優梨をいじめるような奴が、他に何もないとは思えない。
俺は検索をかけて、映優梨の学校の生徒たちがたむろする掲示板、いわゆる学校裏サイトを見つけ出した。
そこでのホットな話題は、主に映優梨の誹謗中傷。映優梨が夜の繁華街で遊び歩いてるとか、カンニングしてるとかいう目撃情報に、多くのレスが食いつき、「ヤバくね?許せねえよな?」と言ったノリで叩いている。こんなデマでお祭り騒ぎできる奴らが学校の大多数を占めているのだから、見ていて頭が痛くなる。
中には、映優梨が自らバラ撒いたというヌード写真の画像もあった。閲覧してみたが、実際の映優梨とは似ても似つかない年増な裸体の雑コラだった。映優梨の顔をつなげてはいるが、美白肌や、清純な顔つきには不釣り合いなコラだ。あるいは、首謀者の二彩がわざと年増ヌードをくっつけて、ネガキャンしてるのか。
こんな写真でも、掲示板の男どもは大騒ぎし、「顔と身体だけは抜けるわ」「いい身体してるのに大安売りじゃねえか」と、雑コラをズリネタにする気満々だった。コラだと知ってる俺からすると、余りに滑稽で吹き出してしまった。本物の映優梨はもっと色白流線型の気品すら感じる裸なんだが。
映優梨には、こんなサイトの存在を感づかれない方がいい。表で無視されて、裏で攻撃されると知ったら、余計にダメージが大きくなる。
さて、スケープゴートで流れが決まってる掲示板の中にも、萌野二彩についての情報は少しあった。出会い系サイトで援交してるという噂だ。すぐさま大勢の批判レスに押し流されていたが、かえって二彩派による工作臭いな。匿名掲示板でも、スクールカーストは変わってない。男子や女子双方から、「二彩ちゃんはそんなことしない!」というイメージで否定されていた。
まあ、あどけない見た目で大人の営みからは遠そうな印象が強く、金にも困ってなさそうだ。もちろん、クラスでもモテていて、付き合った男子も何人かいるらしい。全部二彩からフッたらしいけど。何も援交に手を染めるほどの事情はないようなのだ。
しかし、二彩には注目を集めたというだけで、映優梨をいじめるほど、苛烈な一面がある。一見恵まれた環境でも、気に入らない相手には、影に隠れて攻撃的になる。てことは、ちょっとした理由で援交してるのも、十分考えられる。こんな裏サイトでも、好き勝手やってるからな。
裏サイトに転がっていた情報を元に、いくつかの出会い系サイトを当たって、この近辺で援交
をかけている女子高生を探す。すると、大量の画像の中に見つけた。顔の上半分は隠しているものの、二彩と思しき写真の援交女子高生を。
ふっくらした頬に、透明感のある肌。薄い上唇が下唇を覆って、少しユーモラスなアヒル口を作っている。背が小さいが、小顔でコンパクトなスタイル。チョコレート色のワンピースは首元を開けて、鈴の付いたチョーカーとピンクキャミソールの肩紐をのぞかせてる一方で、手は隠して制服姿と同じ萌え袖にしてある。黒いオーバーニーソックスで、絶対領域を形成してる着こなしも同じだ。これほどのルックスとスタイルはめったにいる物じゃない。
素顔を知らない他のサイト利用者からもロリ美少女に見えてるようで、援交の申し込みが殺到し、リピーターまでついている。二彩が提示しているのは、休日のデートプランに追加料金次第でHなオプションがついてくるという、JK同伴みたいなシステム。店でもなく、顔も見せてないのに、もったいぶるとは大した自信だ。
サイト内では人気なので、複数の申し込みから二彩が選ぶ権利を持っている。まずは、選ばれて二彩に接触するチャンスを作らなくては。俺は新たにアカウントを作って、二彩に明日の放課後、近所での援交を申し込んだ。選ばれるのは今日の夜、それまでは暇がある。その後は、援交サイト内での二彩の情報を漁った。
情報収集や下調べをしていたら、外はとっぷり暮れていた。検索に時間かけすぎて、腹も減った。窓から映優梨の部屋を見てみる。部屋のカーテンは開けてあり、テーブルに料理がずらっと並んでいるのが見えた。先に椅子に座っていた映優梨は、俺が見ているのに気付くと、窓を開け、手を振って俺を呼ぶ。
「瞑司さ~ん、出来ましたよ~」
「座って待ってたのか?電話もせずに?」
「瞑司さんなら、気づいてくれそうな気がして……」
映優梨の部屋を覗くような俺だし、今もそうやって気づいたから、的を射ている。ククク、映優梨も随分と分かってきてるじゃないか。
俺が部屋に上がって目にしたのは、テーブルに隙なく配置された懐石料理の数々。
マグロ・ブリ・アワビの刺身が扇状に盛りつけられたお造り、エビと大葉の天ぷら、映優梨が得意とする肉じゃが、土瓶に入った蒸し物、 蒸気して水滴を浮かべた蓋付きの漆塗りの御椀4つは、いつもご飯と汁物に使っている奴だ。和食のフルコースが勢ぞろいしている。
「マジで懐石料理作ってたのかよ……というか、全体的に高そうだけど、そんな金あったのか?」
「瞑司さんのおかげで、また貯金できるようになったんです。だったら少しはいいかなって…」
いじめで脅し取られなければ、十分すぎるほどの生活費は持ってるってことか。まあ、俺が映優梨に要求するのがセックスばかりで、それ以外に好みと話したのは料理しかないよな。
素材の豪華さばかりでなく、味も最高だった。お造りは魚の繊維を傷めない捌き方で、口の中で新鮮な身がほどける。
海老天は衣がサクサク軽いのに、エビから旨味の成分があふれてくるジューシーな仕上がり。エビの水分を飛ばさず、上手に揚げればこうなると聞いたことがある。大葉の天ぷらの苦みが、てんぷらの脂っこさをセーブしている。
定番の肉じゃがも気合が入っていて、ジャガイモのわずかな型崩れもない見栄え重視の仕上がり。パッと見が野菜をそのまま切り出した形状なのに、火が通ってホクホクの触感だ。
これらでご飯がよく進む。どれも食べごろに温かいのは、俺が気づくタイミングが良かったのか、それとも俺が上がってくるまでに温め直したのか。どちらにせよ、絶妙な加減だ。
箸休めに開けてみた土瓶蒸しは、茶わん蒸しだった。口の中で優しい卵の風味がとろける。
汁物はアサリでダシをとった御吸い物。口直しとして適量な薄味に調味されている。
結構な品数だったが、俺もかなり頭を使ってカロリーを消費していたからか、完食しきってしまった。
「夢中で味わい過ぎて、食べ終わるまで言葉も出なかったな。ここまでできる物なのか?」
「私も見てたんですよ、瞑司さんが頑張ってるの。待ってる私も、恥ずかしくないように料理して、瞑司さんを迎えたかったんです」
逆に俺の部屋を覗いていたことを、映優梨はエプロンを膨らませた胸の前でたおやかな手を組み合わせながら、恥ずかしそうに告白する。映優梨の目には、俺がパソコンの前でずっと調べものしていた姿が映っていたことだろう。
映優梨が高級な懐石料理を作ってる間、俺はいかがわしいサイトを調べてたんだが、その辺の落差は秘密だ。幸いにも、映優梨への誹謗中傷が書かれたサイト見てたのはバレてない。
「知ってるか?食欲と性欲は、元は同じものだって話」
「瞑司さん?知りません、そんなの……」
「セックスと同じで、俺は欲望のままに求めるのが楽しい。映優梨ちゃんは、それに応えようとすると、何より集中できるんだろ?」
「それは……確かにそうです」
映優梨は孤独の中で、「人に求められたい願望」が強まっていた。だから奉仕する時、目覚ましく能力を発揮できる。それを自覚すれば、セックスでも真面目な性格を保ったまま、いやらしさを向上させてくれるはずだ。
その姿を想像すると興奮してきた……と言いたいところだが、明日二彩を犯してやると考えると、前夜から精力を使ってる余裕はない。それに、二彩に申し込みが通ったかどうか、確認しておかないとな。
「今日の料理は、しばらく外食する気が失せるくらい美味かった。俺の期待以上だったよ。もうゆっくり休んでいい」
「えっ……は、はい」
そう言って撫で肩を叩くと、映優梨が固く身を強張らせていたのが感じ取れた。俺が普通に料理をほめて帰ろうとしてるので、映優梨は拍子抜けしたように目が点になっている。話の流れから、俺にヤられると思っていたら、当てが外れた気分だろう。ただ、わずかに下がった細眉から寂しさが見える。俺とのセックスが自然になってきてる証拠だな。お互い、少しの辛抱だ。
帰ってパソコンを見ると、ハンドルネーム・にゃあからの返信があった。これでとっかかりを掴めた。
二彩のサイトでのハンドルネームは、“にゃあ”。鈴付きのチョーカーをつけてることもあって、猫のようなキャラをイメージしてるのだろう。また、本名の二彩をもじったネーミングでもある。俺はそのセンスに同調する形で、本名をもじった“め~じ”というハンドルネームにした。こちらは羊の鳴き声を入れ込んだ名前だ。俺は羊の皮をかぶってるだけのキャラだが。
さらに、近くの繁華街で落ちあうデートコースを申し込んだ。二彩はどう考えても、デートコースでおごらせる気満々。ならば、二彩自身がよく知ってるコースの方がやりやすいだろう。また、平日の放課後の方が知り合いに会う確率も低い。俺が二彩の前情報を知っているのもあって、上手く好みや都合に合わせてやったわけだ。
二彩は図々しくも、「たくさんのオプションコースがあるから、キャッシュは多めに用意してね!」とメールに書いてある。オプションと言っても、何かおごらせるつもりだろう。と言いつつも、Hなオプションを妄想してしまうのが男のサガ。俺も、あの幼げな顔してどんなプレイするかは興味がある。何しろ、調べたところでは二彩はこのサイトでは、いわくつきの情報があるからな。
俺はメールで金と暇には余裕があることをにおわせる。すると二彩は食いつきがよく、その後1時間にわたって、メールのやり取りをする羽目になった。……マジで疲れて寝落ちしそうになった。明日になったら覚悟しとけよ、牝猫が。