翌日の夕方、俺は繁華街の広場、一番端のベンチで、
「もしかして“め~じ”さん?オジサンかと思ってたけど、まだイケイケの大学生ってカンジ?」
「そういう君が、“にゃあ”ちゃんか。うん、写真よりずっとかわいいね」
声をかけてきた二彩は、可愛らしい小顔に愛想笑いを浮かべておだてているような一言。だが、くりっとした瞳をくるくる動かして、俺を値踏みしているのに気付く。金と暇のありそうなメールの内容から、独身サラリーマンなどを想定してたのだろう。地味な私服を着て、仕事帰りでもなさそうな俺の懐具合を、改めて勘ぐってるようだ。
今日はカツアゲする予定だった
それにしても、見た目は愛くるしい。良く動く、くりっとした瞳、短く薄めにカットされた眉、少し丸みを帯びた可愛らしい小鼻、唇の薄い小さな口、ふっくらした頬。それらが配置された小顔は、150cm代の身体と比較しても驚くほど小さい。赤いリボンでまとめた2つのツインテールがリスの尻尾のように、顔の横を飾り付けているので、小顔の印象は割増している。間近で見ると、透明感のある色素の薄い赤ちゃん肌に、ファンデーションなどの化粧を施してる様子。
コンパクトな幼児体型だが、手足や腰が細くて体のシルエットはスリム。チョコレート色のワンピースが、明らかに小さめのサイズでも着こなせているのを見ればわかる。袖は余らせてるけど。ブーツとオーバーニーソックスで足のほとんども覆っているが、細い稜線のニーソックスの上端から太ももがはみ出し、わずかに絶対領域をのぞかせている。露出が少ない肌を見るに、化粧は陽に弱い肌を保護するのもあるのかもしれない。
生で聞いた声は、アニメに出てきそうな甘いロリータボイス。初対面の今でも、甘えた声色を作るのに威力を発揮している。
二彩の容姿は賑やかな繁華街でも注目を集め、男どころか女もせん望のまなざしを向けている。俺に対しては嫉妬を通り越して、何か場違いな者でも見るような、詰まらなそうな目線を向けている。まあ、ファッションからして不釣り合いだから仕方なし。つーか、今まで援交した男は、皆この視線に耐えていたのかよ。プライド捨ててるな。
これなら二彩が、クラス中から人気なのも、認めるしかないか。いじめの空気を作るにも、主犯にはある程度の格や正当性が必要だしな。人を煽動するノリや目立つ華では、映優梨よりも二彩に分がある。
「も~、め~じさん、野次馬じゃないんだから、見てるだけじゃなくていいんだよ。行こ?」
二彩が袖を引っ張って催促してくる。おいおい、野次馬に当てつけるような言い方するもんだから、俺が野次馬どもから睨まれてるぞ。ひょっとして野次馬の中には二彩の援交から抽選漏れして、見てるだけの奴らも混じってるんじゃないか?
まずは二彩がお腹すいたというので、彼女のオーダーでパンケーキを食べることに。最近はやりのパンケーキと言えば、フルーツや甘いソースでデコレーションされてることで有名。俺は昨日映優梨の料理を堪能したばかりで、あまりガツガツ食べたくもなかったので、はちみつを掛けただけのパンケーキを1枚頼んだ。だが、常連の二彩が頼んだ「パンケーキ五重塔」は……。
「ねえ見て、あり得ないくらいデコってるんだけど~。超ぉ~可愛い!」
「……5枚も食べるのか?」
5層に重ねたパンケーキタワーに、生クリームやチョコホイップを交互にサンド。頂上には粉砂糖を振って、イチゴ、ブルーベリー、バナナ、オレンジ、キウイの五色のフルーツがトッピングされ、チョコソースとメイプルで彩られている。マジでホールケーキ並みのボリュームと内容を誇る一品だった。
これデザートじゃなくて、もはや一食だろ。
「“にゃあ”もね、普通のパンは5枚も食べきれないけど、可愛いのは別腹?。っていうか、今日の晩ごはんのつもりだし」
二彩はいろんな角度からスマホでお菓子な搭を撮影している。やっぱり主食か。というか、このパンケーキを主食にして、そのスタイルを維持できてるのは謎だ。
後、ハンドルネームとはいえ、一人称は“にゃあ”でいいのか。
撮影が終わると、インスタグラムに投稿し、反響を確認して、中々食べようとしない。ああ、こいつ普通の店だと食べる前に料理が冷めるから、こういう“撮影大歓迎”の店でないと入れないタイプの客だな。
一通り済んだのか、運ばれてから20分経って、ようやく食べ始める。小さな口に次々とスプーンを運び、五重塔を崩していく。別腹というだけあって、撮影よりもかける時間は短く済むかもしれない。
「あれっ?め~じさん、もう食べ終わってるじゃん。萎える~」
ああそうだよ。20分も待たされたら完食するだろ、普通。むしろ食べない奴らは、「食べずに待ってた」というより、20分もの間、動くタイミングを逃してるだけだ。その時点で完全に二彩のペースに呑まれてるんだよ。
「にゃあ一人だけ食べてるのもさみしいし……はい、あ~ん」
さっきまで使ってたスプーンでパンケーキをすくって、屈託のない笑顔で二彩は、俺の口にパンケーキを運んできた。クリームまみれのスプーンを突き付けられて、考える間もなく口を開けて、スプーンを咥える。
二彩が使ったスプーンは、クリームや、ソース、果汁などがしみ込んで、五重塔の味を一口にミックスしていた。甘々だが味わい豊かで、5枚でも行けそうな気はする妙味だ。
しかし、今重要なのは味じゃない。二彩と間接キスしたという事実。二彩はニヤニヤした表情で、俺を見つめている。
「どう、美味しい?」
ペロッと唇の周りを舐め、小首を傾げて、悪戯っぽく聞いてくる。
あっ、こりゃ落ちるな。援交するような奴には、効果抜群に違いない。俺もつい意識してしまった。
「ああ、まあまあ……」
「プッ、キョドり過ぎ。強がらなくていいのに」
俺の誤魔化しきれてない反応に、二彩はご満悦。その後も俺にリアクションを取らせようと、何度もあ~んしてきた。映優梨とはこういうことしてなかった俺は、どうにも気恥ずかしい。二彩を油断させるにはちょうどいいかもしれないが……。
二彩は食べ終わると、さっきのインスタグラムを見せて「パンケーキ五重塔」の評価について駄弁り始める。知り合いからの反応をいちいち取り上げて、今日はクリームが多めだったとか、フルーツはいつもよりキラキラな色合いだったとか、盛り付けのバランスがヤバくて崩れそうだったかもとか、店中に注目されていようがお構いなしでしゃべりまくる。
他の客は二彩の感想を聞いてざわめき、慌てて自分のスマホやタブレットを操作して確認し始める。必死に書き直してる奴もいるが、パクリの感想でいいのか?
店員は盆を持ったまま聞き耳を立て、褒めたり貶したりする二彩の気まぐれなコメントに一喜一憂している。それよりも、後ろの客が注文の品を催促してるぞ。あいつもうダメだな。
二彩が醸し出すカリスマ美少女オーラに、店内が巻き込まれてるようだった。
「にゃあがリピーターだから、とれたてフルーツやクリームをサービスしてくれたわけだけどぉ~、盛り過ぎってカンジ。それを崩さずに食べちゃって、余裕であ~んできる、にゃあスゴくない?」
「そりゃすごいよ、色んな意味で。その分だと、この辺でも随分顔売れてるんじゃないか?誰かに通報されたりとかは…」
声をひそめて、援交がバレてないか心配して見せる。
「だ~いじょ~ぶっ。にゃあの知り合いは、チクったりしないように、言ってあるから。それに、学校のオトナもにゃあの友達だしぃ」
そこは甘え上手の二彩のこと。仲間のJKにはチクらないように同調圧力をかけ、学校の教師にも取り入ってるということか。道理で問題にならないわけだ。
「へー。じゃあさ、この辺のJKは大体知ってたりする?」
「まーね。学校違っても、SNSでやり取りする子もいるし」
「この辺りって、にゃあちゃん含めてレベル高いよね?この間見かけた子も可愛かったなあ。黒髪セミロングで、身長160くらい、一人で歩いてた子。制服からしてすぐ近くの学校?」
俺はさりげなく映優梨を話題に出して、探りを入れてみる。
これを聞いて、二彩の態度が一変する。眉をひそめて、舌打ちして答える。ボリュームを落とした声も、打って変わってトーンが低くなっている。
「ああ、映優梨のこと?アイツみんなからハブられてるって噂だよ、ヤバい奴だから」
「そう?お一人様でも、おとなしそうな感じだったけどなあ」
「アイツ、いっつも敬語でノリ悪くて、ウザいっていうか。付き合い悪い代わりに成績良いっていう、イヤミなカンジ?転校してきた頃にウケがよかったからって調子乗ってない?ちょっと可愛いって言っても、にゃあレベルじゃないじゃん?」
「はあ、そう……」
その後は、俺が耳にしたデマとほぼ同じ
「ってわけで、アイツはカマトトぶったウザい奴なの。信じらんないよね?」
「……ああ、信じられない奴だね」
やっと終わったか。俺が信じられないのは、お前の与太話の方だがな。
「愚痴ってすっきりしたし、次はショッピングね。行こ行こ」
「出るの速ッ!……やっぱ払いは俺か」
レジで確認すると、「パンケーキ五重塔」は税抜1555円もした。五重塔だからって、値段まで5で重ねるのかよ。他にも飲み物とか頼んでるわけで、軽食のつもりが合計3000円もかかってしまった。
しかし、この程度では済まなかった。
次の洋服店で二彩は、何着も服を選び、試着しては俺に撮影させて、インスタにアップしての繰り返し。二彩は最新ファッションを次々試して、ファッションショーのノリでいるから、俺には付き合いきれない。スリムで多少の袖余りは気にしないから、どの服も着られるというのはすごいっちゃすごいが……駄目だ、見飽きて感想が出てこなくなってきた。
「ね~、これもいいと思わない?似合う?」
「ああ、いいんじゃないのかな…」
十数回目のやり取りで、答えも投げやりになってくる。俺の選択肢が全肯定の一択しかないのに、よくもまあ続くもんだ。しかしまあ、二彩も服をまとめ始めたから、そろそろ終わるんじゃ……。
「決めた、全部買って♥」
「全部!?いや、いくら何でも…」
「全部似合うって言ってくれたじゃ~ん。買ってくれないなら、にゃあ帰るぅ~」
最新服十数着を全部買おうものなら、財布が空になって、ここで解散となってしまう。貢がされて金が切れ、途中でハイさよならとなった男もいるだろう。かと言って、全部突っぱねれば、機嫌を損ねて帰ってしまう。
ワガママ気味の二彩相手に粘って交渉し、「今回は一番似合ってた服にする」ということで、高めのトップスとスカートの1セットで妥協した。相当の出費だが、財布に余力は残した。
二彩は早速試着室で、買った服に着替える。店を出る時には、青い長袖ジージャンと赤地に黒い格子模様のチェックスカートという、ワンピより動きやすそうなファッション。ジージャンはブーツと、チェックスカートはオーバーニーソックスと調和して、買ったばかりの取り合わせとは思えない。その辺は、センスがある。
こうして服を変えていれば、援交を見とがめられる可能性も低くなる。その点でも考えているな。
しかし、この牝猫と付き合ってると、財布と胃に穴が開きそうだ。
既に町はネオンが瞬く夜になっていたが、「まだ夜には早すぎない?」と二彩に引っ張られ、次に向かった先はカラオケ。やれやれ、ここなら金をかけずに時間がつぶせそうだ。しかし、俺はまたしても二彩の立ち居振る舞いに驚かされることになる。
ニ彩はノリノリでマイクを握ると、流行りのjーpopを熱唱し始めた。すると、さっきまでの甘いロリータボイスはどこへやら、歌姫のような透き通った声色。サビでも人気歌手に負けず劣らずの声量で盛り上げ、話題のナンバーを歌い切った。カラオケの得点でも、ほぼ満点に近い表示が出ている。
「や~りぃ!にゃあの歌、マジ神ってるでしょ?」
「……お…おおっ、すごいよ、ここまで歌えるなんて!」
何か悔しいが、これは認めざるを得ない。ただの甘ったるいアニメ声だと思っていたら、歌手や声優並みとは……!交互にやろうと言われ、俺も昔見ていたドラマのエンディングテーマを選曲する。
俺が歌い始めると、二彩は愛想笑いで聞いている。しかし、2曲目に入ると、二彩も合わせて歌い始める。1曲聞いただけで、どう歌えばいいか、マスターしたっていうのか、こいつ…!
得点を見ると、俺が一人カラオケで歌った時よりも跳ね上がっている。何だこれ。
「め~じさん、にゃあ、ドラマだけじゃなくて、アニソンとか、アイドルソングもイケるけど、どうする?」
二彩が悪戯っぽくウインクして笑いかけてくる。
こうなると、他の曲でもお手並み拝見と行きたくなってくる。
その後は、二彩の独壇場だった。アニソンでは、声優演じるキャラソンを完全再現。実際に見ているアニメのアテレコと、そん色ないレベルだった。女の子と言えば、俺は映優梨にいろんな声を上げさせたが、彼女もここまで声は変わらない。この声変わりはアニヲタにもウケるな。俺もテーマソングを歌ってるが、二彩がその上を行く。
さらに、人気絶頂のアイドルソングを振りつきで披露。今度は女の子らしい声色で、明るく切なく歌い上げる。双房のツインテールがリズミカルに揺れ動く。曲のノリに合わせて眩しい笑顔をこぼす。
狭いカラオケルームの密室なので踊ると同時に、目の前でスカートがヒラヒラする。肌はほとんど見せてないフル装備だが、チェックスカートはかなり短い。ダンスのために動きやすいスカートに変えたのかもしれない。太ももの近くをスカートの裾が舞い、パンツが見えそうになる。
だが、見えそうで見えないところまでアイドルをまねてるのか、鉄壁スカートはその向こう側を見せてくれない。衣装をヒラヒラさせる細かいダンスがじれったくなってくる。見えろ…見えろ…と、頭がその一念で占められてくる。
「さっきから、にゃあのココ、気にしてるよね?」
二彩が踊りながらも、流し目で聞いてくる。そう言い当てられても、揺らめくスカートから目を離せない。パンツが見えない代わりに、肌色の絶対領域で目の保養をする。波打つスカートが寄せては引いて面積を変える絶対領域は、薄肌色もあって、波が満ち引く砂浜のような景色を見せている。
「見たい?」
「……いくら?」
直球で聞かれた淫靡な誘いを、ストレートに投げ返す。ここでケチっては来た意味がない。
「1曲ごとに2000円になりま~す」
「1曲ってことは、約5分で2000円、高いな」
「そお?見てれば感想変わると思うよ…」
そうして新しく曲がスタートすると、二彩はスカートを気にしない激しいダンスを踊り始めた。今まではアイドルを真似したテレビコード向けダンスだったから、ギリギリ見えていなかったが、今度はピンクのパンツがチラチラと見えまくる。それを見せているのは、アイドルのダンスを踊り、アイドルソングを完璧に歌えるロリ顔JKだ。
俺もテレビでアイドルのダンスが流れた時、揺れ動くスカートを目で追ったことはある。気になっていたパンチラを、今は堂々と拝んでいる。映優梨の着替えを覗いた時の密やかな優越感とは、別の妖しい高揚感が部屋に満ちてくる。
さらにダンスが山場に入ると、その場でクルリと一回転したり、ジャンプでスカートをフワッと浮かせる。めくれたスカートから、ピンクでフリル付きのパンツが完全に露わになる。慣性の法則ですぐさまスカートが覆い隠してしまったが、二彩が履きそうな少女趣味のパンティは、確かに視界に収まった。
「は~い、タイムアップ。5分間ガン見だったじゃん。2000円ね」
「ほら。にゃあちゃんも、だいぶエロいこと考えるね」
ダンスを装ってパンティ見せる幼い誘惑は、パフォーマンスとエロの融合といった感じで、男心をかなりくすぐられた。カラオケと油断してたら、こうも興奮させられるとは。
「フツーに見せるだけだと時計も見ないから、時間分からないでしょ?5分経ったかどうかでゴネてきてウザい客もいるから、この方が楽しいかなって」
ニ彩の言うとおり、こういう場合時間の感覚を忘れて、後から水掛け論を起こすのが男のサガだろう。その点、曲で測れば、時間がすぐわかる。
「ねえ、もう一曲踊る?それとも…」
二彩は色っぽく目じりを細めて、俺の股間を見下ろし、屈んでくる。
「して欲しくない?」
ズボンを持ち上げる屹立を、小さな手でスリスリと屹立を撫でて、刺激する。あどけないベビーフェイスに、小悪魔めいた笑みを浮かべて。
「そうだな……続きはラブホでしてもらおうか」
俺も顔をニヤつかせて答える。悪いが、ステージはここで降りてもらおう。今度は俺が、手癖の悪い牝猫を弄ぶ番だ。