将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~ 作:ガリアムス
霞ママに癒されたい人生であった…
アキラ「……………はい。……了解しました。…はい。では…」
ガチャン…
アキラ「……………くそっ」
おんぼろの壁に拳を叩き付けた。それは大本営に対する怒りと自分自身の無力さからなる物。
様子を見守る吹雪には、彼を慰める事は許されない。アキラへの慰めは、今行うべきで無いのを察知していたからだ。
吹雪「アキラ司令官」
彼の部下として、彼の成すべき事に協力する。それが彼女の答え。彼女の役目で、彼女の使命。
アキラ「海軍大本営からの伝令だ。次の第二作戦海域の敵艦隊の編成・規模等の情報を纏めたら、華裏鎮守府は即刻特別作戦から手を退け。…逆らえばどうなるか、知っているだろう。だとさ」
* * *
その日、彼が受けた伝令は鎮守府全体に通達され、激震が走った。最初に受けた「三日以内の特別作戦攻略」と、新たに受けた「第二作戦海域攻略後速やかに手を退け」の伝令は完全に矛盾している。
大本営は華裏鎮守府(自分達)の戦果を取り上げるだけに止まらず、権限を利用し命令違反を出っち上げるつもりらしい。
彼に指揮権を認めた艦娘達の怒りは凄まじく、特に大淀さんに至っては、それこそ大本営の人間を八つ裂きにして、鮫の餌にしてやろうかと言った具合。
摩耶「くそが!…大本営の野郎!提督、お前は悔しくねぇーのかよ!?」
伝令を聞いて執務室に飛んで来た摩耶は、アキラに詰め寄るが、その間へ木曾が割って入り言った。
木曾「摩耶の気持ちは分かる。だが…それを決めるのは俺達じゃない、アキラ自身だ」
摩耶「…だけどよ!!!」
木曾「俺達はアキラを信じた。だったら最後まで信じろ」
木曾の何気無い言葉に摩耶は追撃出来なかった。自分が「アキラを信じた」紛れもない事実。ぐぬぬ顔で退室し、執務室には木曾とアキラの二人になった。
木曾「アキラ。摩耶達の言いたい事、気持ち…組んでやれよ。信頼ってのは積み木みたいな物だ、積み上げるのは難しく、壊す時は簡単…。
お前なりの期待への応え方…見せて貰うぜ」
彼女は退室し、アキラは一人執務室に残された。
アキラ「第二作戦海域…やるか」
明日の出撃に送り出すメンバーを考え、現状ベストな艦娘を考察し始めた…
* * *
特別作戦:第二作戦海域 「敵艦隊陽動分断作戦」
......................
..........M......H....
.........↙.↖..K→↗.....
........↙...↖.↑.......
.......↙.....↖↑.......
......B←←←←A←←E←←←D...
.....↙.島...↑.↙.....↖
....↙.島島島..↑↙.......↖
...↙.島島島...L←←←←O←←←←C
島.鬼.島島島...↗.....↑...↗
島島.島島島島..↗島×島...↑..↗
島島島島島島..舟→→→→→→→F→→
......................
* * *
第二作戦海域B地点…出撃八回目にして、此処までFOLABを経由した第一艦隊は燃料・弾薬が限界ギリギリの状況で進軍を続けていた…
摩耶「正規空母の皆、対空はこの摩耶様に任せとけ!」
雲龍「頼もしいわね」
蒼龍「…しっかし島の沖合いに敵が居るなんて…まるで誘い込んでる感じでやだなぁ…」
電「弱音を吐くなら、しっかり策敵するのです」
江風「敵がこうも弱いと萎えるなぁ…そろそろ骨のある奴来ねぇのかな?」
木曾「誰が相手だろうと、俺達のやることは変わらない。そうだろう?」
艦隊の艦娘達の意見はバラバラ、木曾が旗艦をしているが、全く統率感は見受けられない。そして雲龍が乗せていた彩雲が遂に島の湾に居座る敵艦隊を発見する…
だが…その旗艦を知った時。彼女達を待ち受けるのは絶望。
雲龍「…敵艦隊見ゆ。……だけど」
摩耶「ああん?どうしたんだよ」
雲龍「敵艦隊…旗艦、……(防空棲姫)、ですって…!?」
* * *
帰投した第一艦隊の面々は全員大破という、その被害の甚大さを物語るには十分だった。緊急遠征部隊が集めた高速修復材を一人一人に手渡しし、大淀さんに吹雪、霧島。さらには高雄型重巡洋艦四番艦・鳥海と、夕雲型駆逐艦十四番艦・沖波の、心強い頭脳派艦娘を加えた緊急対策会議を設け、話し合いを開始する。
大淀「皆さん知っての通り、防空棲姫は第二次SN作戦・最終作戦海域「FS方面海域」最深部にて確認されたネームド深海棲艦の一体であり、駆逐艦でもあります。
この深海棲姫の特徴は名前の示す通り、脅威的対空能力と圧倒的な装甲が特徴で、正面から殴りに行ってもまず勝ち目は有りません」
大淀さんに続いて、摩耶と同じ服を着ける眼鏡の艦娘…鳥海がアキラに説明を開始した。
鳥海「以前、指揮を取った司令官は補給線を分断し、周辺の深海棲艦との連携を断ち、やっとの思いで照月ちゃんの救出に成功しました。今回も同じように、周辺の連携及び補給線を破壊し、ウッド島に居座る離島棲姫と分断・撃破を行わなければなりません」
アキラ「現状、敵の編成は分かるか?」
「此方に」と沖波が渡した一枚の紙には、十回の出撃を通して判明した敵艦隊の戦力と編成だった。
アキラ「エリアDに潜水棲姫…エリアBは戦艦棲姫…エリアKで装甲空母姫…馬鹿げてやがる」
霧島「ですが今回は、基地航空隊が二部隊使用可能というのが何よりの救いです。今のルートの関係上、どのルートを通っても姫級との戦闘は避けて通れない。
ならば、アキラ司令の望む道を邪魔する姫に集中しましょう」
アキラ「…分かった。皆の情報を元に再度編成を行いつつ、各姫級の居るエリアを一つずつ潰してみる!皆、頼む!」
一同「了解!」
かつて多くの提督や司令を苦しめ、心を砕き、未来を阻んだ、憎き敵にアキラ達が挑む。手始めに空母主力艦隊、打撃部隊、水雷戦隊の三部隊に編成し直し、現在判明している、姫級のエリア到達を目安とした。
* * *
エリアK…打撃部隊(摩耶、鳥海、古鷹、霧島、雲龍、蒼龍)到達。防空棲姫のふざけた装甲を穿ち貫く為、先ずは装甲空母姫からS勝利を奪う。
摩耶「でええええい!」
鳥海「主砲!砲撃開始!」
雲龍「雲龍、突撃します!!!」
装空姫「キサマラァアアアアアアアアアアア!!!ココデシズメェエ!!!」
対空番長と吟われる摩耶の対空放火でも完全には相殺しきれない艦載機。さらに襲い掛かる砲撃は雲龍、鳥海といった主力艦娘を容赦なく撃ち抜き、大破に追い込んでゆく。流石は甲作戦といったところか。
霧島「敵艦が強い…!だけど!!!」
装甲空母姫の砲撃が止んだ一瞬、霧島が装甲空母姫の懐に被弾覚悟で飛び込んだ!
装空姫「ナ!?オマエ、イツノマ…ニ!?」
霧島「マイクチェックの時間だゴラァ!!!」
一式徹甲弾を右手に填める霧島の拳は、装甲空母姫の胸部ど真ん中にパイルバンカーを叩き込む!
装空姫「ゴブォ…!?」
霧島「ぶっ壊れ…やがれ!!!」
刹那、装甲空母姫の身体がブクブクと膨張。全身から気色悪い体液を無数に吹き出し、最後には惨たらしく破裂。霧島の右手は焼け爛れ、その体には装甲空母姫や徹甲弾の破片が突き刺さり、血がドクドクと流れている。
硝煙で鼻が曲がり兼ねない戦場で、一人立つその姿はまさに羅刹そのもの。旗艦を失った敵艦隊は総崩れとなり、我先に一刻も早く逃げようとした。
霧島「何処へ逃げるつもりです?貴方達に逃げ場なんか無いんですよ…オラァ!」
撲殺、撲殺、また撲殺。脳天をカチ割り、深海棲艦の臓器を引っこ抜き、死に物晒す姿は…鬼か、悪魔か。
雲龍「…正気の沙汰とは思えない」
摩耶「流石は金剛粉砕(ダイヤクラッシャー)…血祭りに上げる姿、やっぱえげつねぇ…」
鳥海「私もいつか…、霧島さんのようになりたい…」
約一名を除いて皆、彼女の姿を恐れ目を反らす。防空棲姫攻略の手始めとなる装甲空母姫戦は此処に決着した。
* * *
艦隊帰投後、甚大な被害を受けた雲龍・鳥海・霧島は即刻入渠命令が下り、三人は風呂場に送られた。
摩耶「…と、装甲空母姫は霧島さんが一式徹甲バンカーで潰したよ」
アキラ「…一式徹甲弾で膨れて破裂する何て、何が有ったらそんな超上現象が起こるの…?」
二之名持ち艦娘の馬鹿さ加減を間違えたような戦闘力に、アキラはただ困惑するばかり。
アキラ「…取り敢えず摩耶さん達も休んでください。時間は有りませんが、誰かを犠牲にしてまで勝利は欲しいとは思いません」
「おう!」と答え、摩耶は執務室を後にする。
アキラ「…次は潜水棲姫、天龍さん達の出番。現状足りない戦力は緊急遠征部隊から協力を要請。…そうなると対潜装備を用意しなきゃか…」
装備一覧を見て、アキラは三式ソナーと爆雷・四式ソナーの数に目を光らせ、吹雪に朝潮・霞・大潮・荒潮の四人を連れて来るよう、指示を促した。
* * *
潜水棲姫戦…摩耶達を下げ、入れ替わりに天龍を旗艦とする吹雪、朝潮、霞、大潮、荒潮の水雷戦隊がFCを経由し、エリアDに到着。
無論静かな海域…のように見えるが、敵は海中で静かに、じっくりと此方を狙い定めている。
天龍「皆、単横陣展開!いけるか!」
霞「誰に口を聞いてるの!?」
荒潮「ウフフ…ソナー起動。よぉく見えるわぁ…」
水雷戦隊がソナーで感知し捕らえたのは、潜水棲姫率いる敵潜水艦隊の多数の影。護衛はただでさえ厄介な潜水ソ級flagship三隻に、ソ級elite二隻と対策が無ければ確実に殺しに来ている編成。
だが今回、水雷戦隊の面々は対潜水艦特化の装備に加えて、対潜先制爆雷攻撃と呼ばれる秘技が有った。
ソ級f1「棲姫サマ…テキカンタイ、ハッケン」
潜水棲姫「キタノネェ…エモノタチガァ!アハハハハハハ!!!」
白の髪を海中に広げ、高らかに笑う潜水棲姫。よもや彼女自身が獲物にされるとは、思いもよらずに居たのであろう。
ソ級f2「棲姫サマノシジ、アルマデ…ギョライヨウイ…」
発射可能なように潜水艦隊は各自魚雷を構え、天龍達が射程距離内に入る瞬間を、今かと待ち望んでいたのだろう。秘技:対潜先制爆雷攻撃が決行される、その時までは。
天龍「っしゃあ!全員掛かれ!」
天龍の号令を引き金に、機動力を生かし吹雪達の爆雷の雨が敵潜水艦隊に投下された!ソナーにより正確無比の投下により水中で幾度となく爆ぜる爆弾!
ソ級f3「ギャアアアアア!?」
ソ級e1「ソ級ヤラレタ…!エンゴォベオ!?」
潜水棲姫「ギャァ!?ヤメテヨォ…!!」
爆雷の雨は止んだ。その結果、潜水棲姫中破、flagship二隻撃沈・一隻大破、elite全滅の大惨事。敵潜水艦が魚雷を放つ前に、高い海中策敵力で潰す戦法。
それが対潜先制爆雷攻撃だ。
潜水棲姫「ヨクモ…!ヨクモォ!!!」
一矢報いるべく放つ魚雷。だがズタズタに壊された状態では、威力は殆ど失われ、高い練度に至った彼女達には掠りもしなかった。
荒潮「アハハ…!苦しまないように、仕留めて…あ・げ・る♪」
大破したソ級flagshipに荒潮の爆雷が命中し、さらに深い水底へ沈んで、海底の闇に墜ちてゆく…
大潮「どーん!」
一発、自分の艤装が砕かれて。
朝潮「この海域から出ていけ!」
一発、自分の髪が引き千切れ。
天龍「吹雪ぃ!」
吹雪「お願い!当たってくださぁい!」
一発…自分の身体が真っ二つに割れた。
潜水棲姫「ア、アア…ワタシハ、ココデ…オワル…ノ…?ソウ…カ…ソウ、ナン…」
その表情は怒りから解放され、穏やかな笑みを浮かべ、割れた胴体と共に、海底の闇に消えていった…。
天龍「潜水棲姫…撃破完了。これから帰投するぜ」
戦争である以上、敵に情けは掛けられない。情けを掛ければ自分が、艦隊の全員が轟沈のリスクに晒される。
相手も自分達の守るべき者の為に戦い、命を落としたと、考えざるを得なかった…
* * *
アキラ「皆、お疲れ様。」
天龍「おう!帰ったぜ」
霞「全く!ただでさえ遠征で忙しいってのに、潜水艦討伐とか馬鹿じゃないの!?」
朝潮「霞!いい加減にしなさい、司令官に失礼よ!」
指揮権は認めても自分をまるで信じようとしない霞と、指揮権を認め自分を信じる朝潮。二人の対立は、姉妹の溝を思い知らされる。
霞「疲れたから休む!」
朝潮「霞、まだ話は!」
アキラ「朝潮、追わなくて良い…ゆっくり休め。荒潮、大潮も頑張ったな」
第一艦隊を解散し、皆を休め労を労う。霞の事も気になるが、今は立ち止まる訳にはいかない。次の戦艦棲姫との戦いにS勝利を取らねば、恐らく防空棲姫は倒せない。
* * *
???「OK、テイトクー!戦艦棲姫はワタシに任せるネー!」
金剛型戦艦一番艦・金剛さん…霧島さんのお姉さんであり、華裏華裏鎮守府での彼女の在籍日数は、五本の指に入る古株だ。高速戦艦が必要な今、霧島さん一人の力ではでは足らず、防空棲姫を倒すには戦艦棲姫を倒さねばならない。
だが此処に来て、積み重ねた出撃が実を結ぶ。防空棲姫迄の最短ルートが分かってきたのだ。
それは、高速戦艦・正規空母・重雷装巡洋艦を一隻ずつにした上で、速度統一並びに吹雪型駆逐艦二隻を組み込む事で、LABを通り防空棲姫に辿り着ける事に。
金剛「ラユキー!ブッキー!ウンリュー!キソー!フルタカー!着いて来てくださいねー!金剛型高速戦艦一番艦、金剛改二!いっきまぁーす!!!」
金剛を旗艦に六人はカタパルトから射出、ゲートを越えて、アキラは局地戦闘機を有する基地航空の二部隊をB地点に固定し、発進命令を出す。
* * *
エリアLのル級改flagship率いる厄介な水上打撃部隊の砲撃を潜り抜け、エリアAでヲ級改flagshipの艦載機を躱わしきり、金剛達はエリアB地点に到達した。
戦艦棲姫「ナンドデモ…シズメテ、アゲル…」
血で染め固まったようなドス黒いワンピースに赤の瞳。従える巨大で邪悪な禍々しい獣は、彼女を…戦艦棲姫を守るように喉を鳴らしている。
護衛するのは軽巡ツ級flagship二隻と戦艦ル級flagship、そして駆逐艦イ級後期型からなる艦隊。
金剛「何時見ても憎ったらしい奴デース…沈めてやりますヨ!!」
まともにやり合えば、ただでは済まない敵艦隊。だからこそ、このエリアでの被害を抑え込む為の切札が、爆音高らかに到着する!!!
金剛「基地航空隊の皆ー!おもいっきりぶちかますデース!!!」
大軍勢の航空機…エリアBに全て集中された機械の蝗は、深海棲艦という田畑を食い潰すようにして、襲い掛かった!軽巡ツ級flagshipの対空放火が火を吹く。が、局地戦闘機を組み込んだ航空隊の数は易々と減らせない。
そして…蹂躙が始まった。ツ級達の対空放火を潜り抜けた航空隊の落とす魚雷と爆弾が、ツ級を。後期型駆逐艦を。次々と爆散させ、藻屑に変えて撃沈する。
戦艦棲姫「アア!…クソガァア!!!」
彼女の連れる獣は爆撃と魚雷でズタボロの雑巾に。彼女自身も服や肌は爛れ、赤い血を流し、吠えている…。
木曾「俺がヤツの足を止める!金剛、トドメは任せたぞ!!!」
木曾が前進を開始。左側の魚雷発射管が唸りを上げながら、五連の重雷装魚雷を発射し、戦艦棲姫の獣を打ち砕き、足を止めた。
戦艦棲姫「オノレ…オノレェ…エ!」
金剛「じゃあね、バイバイ」
紫雲と徹甲弾の弾着観測射撃が叩き付けられ、戦艦棲姫は海に沈んだ…。
断末魔の叫びも上げる事も無く、情けも見せずに…
* * *
エリアBより防空棲姫のいる湾内に進行してゆく…
吹雪「第二次SN作戦以来ですよね…防空棲姫と戦うのは」
金剛「イエース。それに華裏鎮守府が提督と一緒に戦った最後の作戦デシタ。…彼は今、ナニをしてるんでしょーカ…?」
雲龍「…昔を懐かしむ暇が有るなら、集中しなさい」
木曾「…同意見だ、迷いは戦場で死を招く」
金剛「分かってマース」
無き者を思い出そうと帰って来る訳ではない。金剛はピシリと両手で頬を叩き、再度集中し迫る防空棲姫戦に備える。
第二次SN作戦・最終作戦海域から数年流れた今、あの時から更なる強さを得た…その答え合わせの時間だ。
雲龍「敵艦隊…いいえ、防空棲姫発見!」
木曾「あの時は力になれなかったが、今回は違う!」
白雪「沢山の戦いを越えて、此処に居る!」
古鷹「皆で勝って!必ず帰りましょう!」
吹雪「金剛さん!」
金剛「皆さーん、防空棲姫撃破最優先で突撃シマース!!!」
艤装のエンジンを最大速力(フルスロットル)に変更。島沿いを駆け抜け…そして奴の姿を、視覚にハッキリと捉えた。
胸と股にだけが覆った布状の装甲、黒の手袋に角、白い肌に髪、真紅の眼。腰掛ける艤装は四つの牙持つ口と10inch高角砲…
防空棲姫「キタンダァ…?ワタシニ、ツブサレル…タメニサァ…!!」
金剛と吹雪、古鷹は防空棲姫の言葉が僅かに震えている事に気付いた。それは仲間を殺された怒りによるものか、定かではない。だが明らかに、防空棲姫自身の余裕が無くなっているのを感知したのである。
吹雪「これって…!」
金剛「やっぱりネー…。姫クラスとは言っても、やっぱり仲間が居ないと怖かったりするみたいデス!」
雲龍「このチャンス、逃しはしない!艦載機、全機発艦!…攻撃、開始!」
雲龍の烈風隊が、防空棲姫の強力無比な対空放火に次々と撃墜されてゆく。だがそれで良い。彼女の目的は防空棲姫の艦隊を相手に制空優勢以上を取る事…!
雲龍「制空は取った…後は」
金剛「霧島ァア!!!」
大きく手を挙げた時、彼女達第一艦隊の後ろに霧島・黒潮・陽炎・摩耶・飛龍・赤城の姿が。アキラは防空棲姫撃破に少しでも助けになれるよう、決戦支援艦隊を派遣していたのだ。
霧島「マイクチェックの時間だゴラァ!!!」
摩耶「ぶっ殺されてぇかぁ!!」
飛龍「第一攻撃隊!発艦始め!」
砲撃と艦上爆撃機の支援が、防空棲姫の護衛を二隻撃ち沈める。戦果は上々と言えるだろうか。
木曾「後は俺が一匹でも落とせりゃあ!!」
重雷魚雷が唸り放たれる。狙いは…防空棲姫!
木曾「よし!ぶちかませ!!!」
防空棲姫「チョウシニノルナァ!」
防空棲姫の艤装が四分裂に変形し、両腕と腰に合体。魚雷を驚異的な跳躍で回避し、即着地からエンダーマンびっくりの超高速移動で木曾に迫る!
木曾「!!!」
化け物と融合し殴り付けてきた左腕を、間一髪腰の刀を抜刀し受け止める。一撃は重く、彼女の足と身体が後ろへと押されてゆく。
白雪「木曾さん!」
木曾「俺はコイツを何とかするのに手一杯だ、周りの奴等を叩け!!」
刀身を僅かにずらして木曾は防空棲姫を横へ流すや、再び重雷魚雷を五発発射するが、敵は何と爆雷を投擲、魚雷を相殺する荒業で対処してきた!
「この作戦に来られなかった北上姉ちゃん達の分まで、たっぷり叩き込んでやるよ…!重雷装巡洋艦の雷撃をな!!!」
海水が舞い散り、金属が激突し弾ける。木曾の斬撃と、防空棲姫の打撃と、両者の砲撃が互いに急所を狙い合い、ギリギリの死線が交錯し合う…!!!
金剛「バァアニングゥウウウ…ラァアブ!!!」
古鷹「撃てぇええええ!」
金剛の砲撃で敵が弱った所を、古鷹がサポートし撃沈させる。敵艦隊は既に半壊していた。
吹雪「白雪ちゃん!私達で木曾さんをサポートするよ!雲龍さんは、金剛さんと古鷹さんが弾着観測しやすいよう、航空隊の援護攻撃お願いします!」
雲龍「了解…もう少しだけ頑張って、皆。第二次攻撃隊、発艦開始…!目的、前方の防空棲姫…行って!」
道中と第一攻撃で艦上攻撃機の大半を失った雲龍に、火力は期待出来ない。だが一回でも攻撃出来るのならば、彼女は一撃でも敵に見舞う事を選ぶ。
白雪「撃ちます!」
吹雪「木曾さん、無茶はしないでください!」
木曾「吹雪、白雪!三方向から叩くぞ、遅れるな!」
トライアングルフォーメーションを展開し、白雪が高角砲で防空棲姫の足元の海を弾き、視線を断ち切ると、木曾は副砲、吹雪は高角砲で防空棲姫の艤装と装甲を少しずつ削り取る!さらに雲龍の僅かに残された、艦上攻撃機も襲い掛かった!
防空棲姫「ヤッテクレタナァア…!オマエタチモ!ハチノス…ニシテ、ヤル!」
吹雪「きゃあ!?」
対空迎撃用の高角砲が三人に乱射され、発艦した艦攻は全滅し、乱撃が吹雪の艤装を撃ち抜き、管が故障し動きが鈍る!
白雪「吹雪姉さんをよくも!」
白雪が怒りと共に真上に発射し、蹴り飛ばした魚雷が乱射弾に当たり、爆発。爆煙曇るその中を金剛と古鷹が突貫し、主砲の一撃を見舞い、金剛の拳が防空棲姫の左腕を折る!
防空棲姫「コシャクナァ!!!」
金剛「ぶちかますデス、キソー!」
木曾「おおおおおおおおお!!!」
金剛の視界に隠れる形で、木曾が再び剣の間合いに滑り込み、その白肌に鋭く深い斬撃を入れた!
防空棲姫「オマエモダ…!オマエモ、イタクシテヤルウウウウ!!!!!!」
木曾「ぐぁあ!!」
古鷹「木曾!」
残された右腕と艤装の零距離砲撃が木曾の頭部右側を直撃し、眼帯が砕け、緑の髪が焼け焦げる!!!
古鷹「木曾!しっかり!意識はある!?」
木曾「問題…ねぇ。だが、…艦首をやられて、平行感覚が…!古鷹、刀(コイツ)を…防空のクソッタレの、…コアに刺して、やれ…!!!」
夕暮れの陽と鮮血に染まる彼女から相棒(刀)を受け、古鷹が立ち上がる…
白雪「アキラ司令!夜戦の許可を!」
アキラ(全艦突撃!夜戦で敵を打ち倒せ!!!)
日が落ちて、夜の闇が彼女達と運命を包み込み、夜戦の幕が上がった!
吹雪「照明弾、打ち上げます!」
古鷹「制空優勢…夜偵発艦!」
古鷹が夜偵を空へと投げ、吹雪に搭載した照明弾が上空で炸裂し、太陽の如き光で彼女達を照らす…!
金剛「フルタカー!ワタシが活路を開きまーす!一撃でやっちまえデース!」
金剛を先頭に、白雪と雲龍が、最後尾に古鷹が続き、左右に移動しながら砲撃を開始!夜戦により火力が飛躍的に上昇した白雪と古鷹の一撃が、防空棲姫の装甲を破壊してゆく…!
防空棲姫「オチロ…!オチロォオオオオオ!!!」
怒りに狂う彼女の弾幕が先行する金剛と白雪を容赦なく撃ち抜き、大破に、航行不能に追い込む。
金剛「アウチ…!!!」
白雪「くぅうううう!!!」
防空棲姫「アハハハハハハ!!!シズメェ!!!!!!」
刹那。彼女の胸部を後ろより貫く刃が一つ。
防空棲姫「エ…?」
防空棲姫の後ろに立つは、木曾の愛刀を持つ古鷹の姿があった。その左目は金の光を放ち、真っ直ぐに敵を見据え、迷いなく突き立てたのだ。
古鷹「…おやすみなさい」
コアの中核を貫かれた防空棲姫の瞳からハイライトは失せ、骸と化した身体は海へ落ちて、消えていった…
吹雪「アキラ司令!防空棲姫、撃滅完了しました!!!これより華裏鎮守府に霧島さん達と共に帰投します!」
弱体化が功をそうし、アキラ達は防空棲姫を打ち破る。傷付いた金剛、木曾、白雪。管が故障した吹雪を帰航し帰路へと付いた…。
助けて
金剛「ン~…?」
霧島「御姉様、どうしました?」
金剛「何か聞こえた気が…。気のせいデスカ…?」