※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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*今回は、現話と次話、次々話からなる三話構成となります。


将来を有望視された青年が、冤罪で鎮守府に着任されました。 ~ウッド島再調査、其之三(前)~

アキラ「…………」

 

各島制圧艦隊から華裏鎮守府にもたらされた情報に、アキラは訳が分からなかった。本来深海棲艦にとって、一海域を支配する事は、赤子の手を捻るよりもずっと簡単であり、尚且つ其処に鎮座する深海棲艦がより強ければ尚更安定する。

 

安定すれば其処を起点とし、更に広く自分達の海域(ばしょ)を広げる事が出来る。

…にも関わらず、二体の姫…ネームド深海棲艦は自分達を残して、他を退けた。

 

アキラ「あの時と同じ…か」

 

アキラには、姫級のあからさまな罠にしか思えない確信があった。というのも、学徒時代にやった卓上戦闘シミュレーションゲームで、彼は二階堂 護に負けた事があり、その初めて負けた時の原因が『単機待ち伏せと見せかけた、艦隊全包囲』だった。

 

それ以降、彼は敵が単機で待ち構える状況に非常な程敏感になった。だがそれが枷となり、何度も隙を作り、二階堂 護に負け越す要因となったのである。

 

何より、そのゲームでは自艦隊が敵艦隊に包囲された場合、例えどんなに戦力で勝った状態であっても即敗北という特殊なルールがあり、指揮のいろはを漸く覚えたアキラが最初にやられた時は、クラスの笑い者にされた。

 

基本中の基本が全くなってないと教師にも叱られ、護も包囲の事は流石に謝ったのだが、彼は一ヶ月以上自信を無くし、まともに食事さえ取れなかったという。

 

彼にとって『単機待ち=奇襲or包囲』という概念として思考の奥深くに根付き、居座った。そしてそれは、朝潮達が駆逐大艦隊に奇襲を受けた時とほぼ同じ形として、数年の時を経て再現された事実を、再び叩き付けたのである。

 

そんな折「司令官」と、自分に呼び掛ける声。主は吹雪…彼女は、華裏鎮守府内のケッコンカッコカリ済み艦娘達の中でも唯一最高限界練度に至った艦娘で、曲者揃いの仲間達の束ね、統率するリーダー的存在。優しく思いやりがあり、分け隔てなく接する姿から、「吹雪さん」と呼ばれている。

 

吹雪「司令官は先程の話をどのように考えていますか?」

 

アキラ「…あまりにも不自然だって考えてる。わざわざ圧倒的な数の有利を捨ててまで、俺達と戦いたい理由が分からない」

 

吹雪「ハンデ…なのでしょうか?それとも…」

 

考えても、まるで答えが出ない。

 

天龍「アキラ、居るか?」

 

アキラ「天龍さん?居ますよ、どうぞ」

 

「邪魔するぜ」とドアが開く。腰に刀を携えた彼女は何処か心配そうな顔をしてアキラにこんな事を言った。

 

天龍「実はな。…最近『龍田』の奴の姿が見えねぇんだ」

 

龍田…天龍型軽巡洋艦の二番艦の名を冠する艦娘であり、天龍同様に世界レベルの胸部装甲持ち。天龍が刀を主体とした近接戦に対し、彼女は長刀による中距離戦を得意としている。

そして天龍曰く、龍田と言う艦娘はアキラを提督として認めていない勢の一人。

 

アキラ「単に俺と出会いたくないからじゃないのかな?」

 

彼の言葉を聞いた後、数拍置いた天龍がアキラと吹雪にこう言ったのだ。

 

天龍「確かにそうかも知れねぇ。…だけど、オレは聴いちまったんだ。アイツが…何か知らねぇけど、ヤバイ事に足を突っ込んでるみたいなんだよ…」

 

吹雪「危険な事…ですか?」

 

彼女は頷いた後に辺りを見回し、執務室の外に誰も居ない事を確認すると、二人の耳元に近付いて、小さな声で呟いたのだ。

 

天龍「龍田は…『誰かの指示を受けていた』。そして、『華裏鎮守府の工作員』って言葉も…」

 

* * *

 

青葉「アキラ司令官、またまた青葉の情報を買いに来ましたか~?」

 

前回、荒潮の情報を買った時と同じ場所で青葉はベンチに腰掛け座っていた。随分へらへらした笑い顔ではあるが。

 

アキラ「ああ。早速だが本題に入る…何せ急いでるからな」

 

青葉「ふむふむ、了解しました。では、何を知りたいですかね?」

 

アキラ「今、華裏鎮守府に在籍している龍田と言う艦娘の居場所を教えてくれ」

 

「龍田さんの居場所ですかぁ…」と、彼女はあからさまに困った顔をして、視線を明後日の方角に游がせては、時折此方に目を向ける。

間違いない、手取りの追加料金を払わないと提供しない手口だ。

 

アキラ「…間宮さんの特性パフェ大盛にアイス大玉追加」

 

青葉「彼女、夕方時に燃料庫裏に一人で居る所をバッチリ目撃してますよ~!はい、それがこの写真です~!」

 

鼻歌混じりに去っていく彼女の背中を見て、調子のいい奴だと溜息一つを吐いたアキラは、渡された写真を確かめる。其の写真には夕暮れ刻、建物の影が出来た場所で、『何かを持って』いる龍田の姿が写っていた。

 

アキラ「まさか…いや、有り得ない話じゃない」

 

天龍の言葉。それから推理すれば、彼女が持っているのは『電話が出来るもの』である可能性が高い。

 

今までの大本営が押し付けてきた、一見無茶な様に見えた資源徴収…。しかしよく考えてみれば、『何故大本営[かれら]が華裏鎮守府[こっち]の資源のギリギリを知っていたのか』が解せなかった。

 

アキラ「つまり…つまりは…」

 

脳をひたすら稼働させる。今までの言葉を思い出し、得てきた情報と組み合わせ、合致させ、結論を導いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『龍田は大本営のスパイ』

 

 

 

 

最早それ以外に考えられなかった。

 

* * *

 

アキラ、青葉との接触から数時間経過…

 

???「はい…何時も貴方には御世話になっておりますので、これくらい御安いです。ええ…全く問題ありません。…はい…では、また…」

 

影に微かに響く声。主は誰かと話を終えて、手に持っている物をポケットに入れようとしていた。

 

「見つけたぞ」

 

直後、視界が真っ白な光に覆われた。突然の出来事に思考が追い付かない。その時、手に持っていた物が何処かへと消え失せる。

 

???「何…!?」

 

「逃げようとしても無駄だ。君は完全に包囲されている」

 

目が光に順応し、周りの状況が把握出来るようになった其の者は、今現在自分が置かれているを見た。

 

建物の屋根には赤城・加賀・翔鶴・瑞鳳が弓を構えて鎮座、自分を取り囲むように江風・吹雪・木曾、そして天龍の姿が在った。皆、艤装と探照灯を持ち、放つ殺気は深海棲艦との戦いに於ける其れと同じ。

 

そして自分を捕らえんとした首謀者の隣には黒の髪を三つ編みに束ねた、青い目の少女…時雨が、先まで自分が握っていた物を持っている。

 

時雨「提督。これが彼女が持ってた物だよ」

 

アキラ「ありがとうな、時雨。…さて、言い訳なら聞いてやらん訳でも無いが…。

 

一体誰と話していたのか、包み隠さず全てを話して貰うぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『龍田』…『大本営のスパイ(裏切り者)』、よ」

 

「はぁ…」と一息置き、「ドジしちゃったぁ~…」と呟く。追い詰められたというのに、龍田の表情には焦りや困惑の色が一切無い。

 

逃げられる確証でもあるのか?不可能だ、航空支援も無い状態で逃げれば、先ず確実に空母達の攻撃で蜂の巣は確定する。

 

天龍「龍田…何で。何で、こんな事したんだよ…」

 

震えた声で、彼女へと問い掛ける。怒りと悲しみを混ぜた其れに、龍田は答えた。

 

龍田「天龍ちゃ~ん…人は見掛けによらないの。私は貴女が思う以上に、とっても…とぉ~っても悪い女。

 

大本営に華裏鎮守府の資源状況の情報を逐一送っていたのも、私。其れに貴女達の練度も常に私を通じて大本営へ伝わってるの~。

 

本当に此の鎮守府は甘くて助かったわよ~…おかげさまで、色々情報も得られたし」

 

淡々と軽々しい口調で、自分の行いを告白する彼女に対し、アキラの心の奥底からブクブクと怒りの感情が沸いてくる。だが彼は其れを寸での所…言うなれば鍋の縁で止め、一つの呼吸で冷静に龍田に問う。

 

アキラ「…此処の皆を、仲間だと思った事は無いのか」

 

スパイならば、任務達成の為にあらゆる物を利用する。友やら情は肩書きだけ、必要なのは敵の重要な情報のみ。彼女もそうだと思っていた。

 

龍田「天龍ちゃんだけよ」

 

…即答、其の言葉に嘘と偽りは無い。それどころか視線が一転して、鋭利で真剣な物に変わる。

 

龍田「私が所属していた鎮守府には天龍ちゃんは居なかった。いくら探しても、建造しても来なかった…私だって独りぼっちは辛い…。それが積み重なって、三年が過ぎて私は限界になった。直訴したの、大本営に。

 

天龍ちゃんが居る鎮守府に肩書きだけでも良いから、置いて欲しい…って。ただただ、天龍ちゃんに会いたかった。そしたら華裏鎮守府(ここ)のスパイをするなら配属させてやると条件を貰って、私は捨て艦から辛くも逃げ延びた艦娘と言う設定を組み込んで…此処に来たの」

 

天龍「龍田…」

 

龍田の話を間近で聞き、「時雨はどう見えた?」と小声で聞いてみると、「僕は龍田さんの話は本当の事だと、僕の心がそう言った」と返す。

 

其の答えに小さく頷いたアキラは、龍田へと驚くべきある『提案』を繰り出す。

 

アキラ「龍田。…これまでのスパイの件、俺達は『見ていないし、聞いてもいない』事にしてやる」

 

皆、自分の耳を疑った。彼の言葉は今目の前にいるスパイを見す見す取り逃がす事と同意義であり、絶対に言ってはいけない言葉である。

 

加賀「アキラ司令、貴方の発言に空母組一同は満場一致で賛同出来ません。今すぐにでも、このアマは海底へ沈めるべきです」

 

江風「江風も同意だ!骨全部折って砕いて、後悔させてから殺す!そんでもって大本営に送りつけてやる!」

 

完全ブチギレの加賀さんに、戦争したいだけだろうと誤解を招く発言を咬ました江風。このまま二人の意見に従い龍田を処分すれば、異変を察知した大本営が華裏鎮守府に大軍を向けるだろう。

そうなれば行き着く先は、艦娘同士の血を血で洗う阿鼻叫喚の地獄絵図、それだけはなんとしても避けなければ…彼はそう考えていた。

 

アキラ「待って。…確かに皆の意見は同意出来る。だが、今此処で龍田を殺して何か得られるのか?

 

そうじゃない…俺達は『大本営に自分達を認めさせる為の戦い』をしてるんだろ」

 

アキラの言葉は、彼が華裏鎮守府の提督に着任し所信表明演説の際に言った言葉と同じだった。

 

アキラ「大本営に搾取され続け、不等な差別と待遇と評価を少しでも覆す…其れが今の俺達がやらなきゃならない事。

 

新型の姫級深海棲艦を倒して、ウッド島の秘密を暴き、そして俺達の戦果を大本営に真っ正直から叩き付ける。

他より劣っているなら、皆で弱点を補い合え。至らないなら、持てる力の全てを、限界を越えて一滴残さず絞り出せ。

 

お前達が生きて、積み重ねた『努力』は無駄じゃないと、大本営に見せるんだ。そして証明する…大本営[おまえたち]の家畜じゃないって事を。

 

『皆』で…証明する。勿論、龍田も含めて」

 

強い意志と眼差し、真っ直ぐでブレない言葉。アキラは誰にも譲れない想いを、ハッキリと艦娘達の前で言い切った。

 

吹雪「アキラ司令…」

 

加賀「…わかりました。沈める意見、取り下げます」

 

江風「仕方ね、ブチ殺しは御預けかぁ~…」

 

怒りの矛先を静かに納め、やれやれと言った顔をする加賀と江風。この男を提督と認めた自分も、随分な甘さを持ったのものだと考えているに違いない。

 

龍田「…本当に甘いわ。貴女達も…提督も…」

 

困惑した顔で首を横に振る。敵である自分さえも仲間と認め、あまつさえ大本営に立ち向かう仲間の一人にしている事に。

 

スパイ行為は他の鎮守府でバレれば重罪、悪ければその場で処刑される。其れが当たり前であり、そうなった場合の覚悟等、既に出来ていた。

 

しかしこの男は違った。自分が考えていた以上に、真っ直ぐに生きている。どんな理不尽な目に遭おうとも、全ては華裏鎮守府と、此処で生きる全ての艦娘達の為に…。それだけに尽力しているのだから。

 

アキラ「ただしスパイ行為に此方が目を瞑る以上、龍田にも相応の任務や戦いに身を置いて貰う事になる。

 

つまるところ、カモフラージュという奴だ…良いか?」

 

「…勿論」と小さく縦に首を振る。

 

龍田「アキラ司令、何なりと御命令下さい。今後とも、どうぞ宜しくお願い致します」

 

龍田が見せた其の表情と声は、どこか妖艶さを含み、同時にどこか恐ろしい物を含んでいた。

 

* * *

 

華裏鎮守府・執務室…

 

アキラ「時は来ました。我が艦隊はこれより、ウッド島沖合いで待つ、深海海月姫と深海星条姫の掃討作戦を開始します」

 

アキラの隣には大淀さんと吹雪が立ち、彼の目の前には、綾波・木曾・古鷹・時雨、その後ろには金剛・翔鶴・大鳳・雲龍・摩耶・鳥海が一列に並び立っていた。

 

大淀「金剛さんを旗艦とする第一艦隊は深海海月姫を、古鷹さんを旗艦とする第二艦隊は深海星条姫にそれぞれ攻撃を仕掛け、此等を撃破。同時に後方の艦隊がウッド島へ上陸し、島の情報を迅速に得る事が目的となります。

 

吹雪さんと私は、古鷹さんの艦隊に加わり、共に撃破の為に尽力します。

 

また敵の伏兵が何処にいるか分からない以上、此方も道中・決戦共に支援艦隊を展開、さらに出撃ならびに撤退時の護衛艦隊を編成。援護に当たります。

 

全ては時間との勝負…各員出来ることをやり遂げてください!」

 

『了解!』

 

全員敬礼の後、皆カタパルトの在る、地下エリアへと走る。

 

地下へと続く廊下では各艦娘が走りながら、それぞれ自分自身が最も力を発揮出来る装備をパッドから選び、送信してゆく。こうする事で、明石と夕張の元にデータが送られ、各艦娘の艤装に反映されるのだ。

 

鉄の扉が開かれ、ベルトコンベアーが戦車のキャタピラ めいた唸りの声を上げながら起動。

 

装備を決めた金剛が最初に飛び乗ると、上部が開き、作業用サブアームが展開される。その細くとも力強く動く腕達は、艦娘達(かのじょたち)が選択した装備を艤装に組み込み、ジョイントへと合体させ細かな隙間などを埋めてゆく。

 

そうして調整が施され、完成された艤装を身に纏い、一人、また一人とカタパルトへと乗り込んで行った…!

 

白雪『発進シークエンス準備…!進行方向視界良好、ならびに障害物無し!発進タイミングを各艦娘へと譲渡します!

 

目標地点へのゲート開門…!行けます!!皆さん、御武運を!!!』

 

金剛「深海海月姫及び深海星条姫撃滅連合大艦隊、第一艦隊flagship、金剛改二!!出撃シマース!!!!」

 

摩耶「高雄型三番艦・改装防空重巡洋艦、摩耶改二!出るぜ!抜錨だ!」

 

鳥海「高雄型重巡洋艦・四番艦、鳥海改二…抜錨!出撃します!」

 

翔鶴「翔鶴型装甲航空母艦・一番艦、翔鶴改二甲!出撃します!」

 

雲龍「雲龍型航空母艦・一番艦、雲龍改…出る!」

 

大鳳「大鳳型装甲航空母艦、大鳳改!行きます!」

 

第一艦隊がカタパルトからピンボールの玉のように射出され、勢いよく着水すると眼前のゲートを潜って行った。

発射台が第二艦隊出撃メンバーの元へと戻る。

 

古鷹「深海海月姫及び深海星条姫撃滅連合大艦隊、第二艦隊旗艦!古鷹型重巡洋艦・一番艦、古鷹改二!出撃します!」

 

大淀「大淀型巡洋艦・一番艦、大淀改!出撃!」

 

木曾「球磨型重雷装重巡洋艦・五番艦、木曾改二!征く!!!」

 

時雨「白露型駆逐艦二番艦、時雨改二。出撃するね」

 

綾波「特型駆逐艦・綾波型一番艦、綾波改二!行きます!」

 

吹雪「特型駆逐艦・吹雪型一番艦!吹雪改二!出撃です!!!」

 

続く第二艦隊がカタパルトから射出、着水と同時に缶の出力を最大に引き上げ、全速力でゲートを潜り抜けて行った。

 

アキラ「皆…頼んだ」

 

合わせる手に力が籠る。彼女達の無事を、彼は只々祈る事しか出来ない…。

 

* * *

 

第一・第二艦隊がゲートを越え、作戦海域に辿り着くと、彼女達の目の前に数多の艦娘達が立っていた。

 

金剛「アサシオー!来たのデースネ!」

 

ウッド島にある各島を攻略すべく出撃した、艦隊の面々が待っていたのだ。その中には、付き添う形で赴いていた沖波と飛鷹型改装軽空母姉妹の姿もある。

 

満潮「私達はウッド島に妖精さん達と上陸するのが目的よ。あの司令(クズ)にしては、全うな作戦を起てたようだけど」

 

荒潮「うふふ…たぁくさん、証拠を持ち帰ってみせるわぁ~♪」

 

朝潮「朝潮、調査艦隊旗艦として最後まで任を全うします!」

 

皆やる気に満ち溢れ、顔と体がキラキラしている。

 

日向「後は『三人』…だな。恐らくあっちのゲートを越えて来る頃合い…か」

 

吹雪「三人?」

 

その時、彼女達が潜り抜けてきたゲートがスパークを放つと、三人の艦娘が姿を現したのだ。

 

一人は茶のショートヘアに白の服と黒のミニスカート、腰に光る菊の華の紋章と八門の巨大な砲塔を艤装に載せた、長門型超弩級戦艦・二番艦の陸奥。

 

彼女の後ろには白の着物に桜の刺繍が施され、ミニスカートと同じ赤の瞳が光る、女性が二人居た。

どちらも頭に長く天を貫かん艦橋と、其の腕に巨大な航空甲板を大事な赤子をあやすかの様に抱えている。

 

 

大淀「あ、貴女達は…!」

 

扶桑「大淀さん、吹雪さん。扶桑型戦艦姉妹も、応援に駆け付けたわ…」

 

山城「私は…姉様が心配で…」

 

吹雪「応援感謝します!御二方の尽力が有れば、百人力ですよ!!!」

 

扶桑姉妹はお互い顔を見て小さく微笑んだ。今の自分達を必要としている彼女達に感謝しているかのように…。

二人に礼を述べた後、大淀は静かに呼吸を調え、指示を出す。

 

大淀「これより、我が大艦隊は敵新型深海棲艦の深海海月姫及び深海星条姫の撃滅戦を開始します!各艦、各々が今日まで培った力の全てをぶつけ、各自の役目を果たして下さい!!!

 

全艦、突撃します!!!」

 

一同『了解!!!!!!!』

 

缶が唸りを上げる。曇天の空は今にも降りそうな程に黒く、白の光が時折光る。

 

数分の後に来る、巨大な戦を暗示するかのように…。

 

* * *

 

星条姫「キタ、カ…!」

 

ウッド島沖合い…二体の姫君達は遠くから此方に迫る数多の小粒を目視で捉えていた。

 

海月姫「ヤクソク…マモッテ、クレタ…」

 

星条姫「ミー、ガ…ホシカッタノハ…!コウユウ…タタカイ…!アットウテキ、カズノ…ボウリョク!ソレヲ…ギャクニ、ジュウリン…スル!」

 

メラメラと目に燃える金と銀の、靄のようなオーラが彼女達を包み込む…!

 

ギャオオオオオ…!と、唸り鳴く星条姫に付き添う獣の咆哮が空に響く。

 

* * *

 

朝潮「居ました!あれです!!!」

 

敵との距離7000の当たりに着き、一番最初に深海海月姫と深海星条姫に接触した朝潮が真っ先に声を上げた。

 

大淀「あれが…撃破目標…」

 

金剛「オゥ…随分alienなformデスヨー…アレ」

 

二体の姫の内、特に深海海月姫に於いては、普段見慣れたヲ級以上に巨大で、ポッカリと開いた艤装の穴から漏れる青白い光と、あちこち焼け爛れた肌が、彼女をより化物じみさせる。

 

しかし朝潮は怯む事も退く事もせず、自身に装備した電探で敵に通話を敢行した。

 

朝潮「約束は守りました。これから貴女達を撃破させて貰います」

 

敵からの通信…二体の姫は互いに顔を見たが、軈て朝潮の言葉に対して、静かに答える。

 

 

 

 

ナガク、ナガク…!マチコガレタ…イクサノ…ジカンダ!

 

 

 

サァ…アイテヲシテ、アゲヨウ…カ…!!!

 

 

 

吹雪『全艦砲撃戦闘並びに航空攻撃戦闘用意!

 

敵新型深海棲艦を撃滅します!!!』

 

吹雪の声を皮切りに、敵味方が共に動き始めた…。

 

 

 

 

 

後に『ウッド島沖海戦』と命名され、海軍史に。

延いては深海棲艦との戦いに多大な影響を与える戦い。

 

同時に牧園アキラと華裏鎮守府の艦娘達が『救国の英雄』と成る『長き戦いの始まり』として、後世に語り継がれた、戦いである…。

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