※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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*今回、少しエロ描写が有ります


牧園 アキラ、就任之章 ~艦娘と信頼とスタートライン~
将来を有望視された青年が、冤罪で鎮守府に着任されました。 ~華裏鎮守府の実態~


寮から電車とバスを乗り継ぎ三時間弱、海辺のフェリー乗り場で俺は「華裏島行きフェリー」を待っている。

 

それにしてもまさか海の上、しかも孤島が鎮守府とは正直思いもしなかった。大本営は何を思って海の上の島に鎮守府を創ったのだろうか?

 

だがしかし、その甘い考え方は島に辿り着いた瞬間、投げ棄てる事になった…。

数十分後にフェリーがやって来て、港に入港した船長は乗場で待つ俺を哀れむ目で見ていた。

 

「君は華裏島に向かうんだよね…?まだ間に合う、今すぐにでも引き返しな」

 

引き返せるなら今すぐにでも此処から寮に帰り、そのまま夜逃げと思っている。だが海軍大本営の命令に加え、軍事裁判に発展する冤罪を背負わされた以上、逃げる事は許されない。

 

そうなれば親戚の人達に迷惑が掛かってしまう。また『あの時』のように…。

 

「ありがたいですが、自分は其処に向かわねばならぬ身。行かねばならぬ理由は聞かないでくれると助かります」

 

自分の手で被った冤罪を晴らし、己が無実を証明する。

その為に、この人を巻き込む訳にはいかない。

 

「分かりました…御武運を。若い軍人さん」

 

船長の言葉を受け取り、フェリーに乗り込んだ俺は海風に揺られ、海を越えて華裏島を目指して行く…。

この時はあんな事態になるとは、予想すら出来なかったからな…

 

* * *

 

寮から合計六時間、空は夕闇に染まり肌寒さが残る風が俺を撫でる。フェリーが停泊したのは岩だらけの舗装されていないボロボロの簡易的な港で、如何にも今作ったような桟橋がある程度。看板は錆び付いて何がかかれているのか分からず、砂利と埃を被ったベンチが1つ在るだけで余りに殺風景。

 

「酷過ぎる…」

 

口から漏れた言葉と共に、正直かなりヤバイ場所だと実感するまで時間はそう掛からなかった。

封筒に同梱されていた地図によると鎮守府はこの島の頂上…つまり、高い丘の上に有ると言う。

 

早速歩きだしたが、またしても問題が発生。道が険しい上に、傾斜35度はある坂道の連続、駄目押しに小石が滑性材の作用を後押しして、全然登れない。

 

「ふざけやがって!」とぶちギレた俺は、気合と根性で、何度も滑って転びながら、水平線に夕日が沈む頃には鎮守府の正門に辿り着く事が出来た。おかげで両手が傷んだ訳だけども。

 

「此処が…華裏鎮守府(かうらちんじゅふ)」

 

正門を潜り抜け、自分の職場に辿り着いた。道があれだけ荒れていたのだから、さぞかし鎮守府も荒れ廃れているのかと予想したが、外装はきっちり舗装され、中庭に該当するであろう此処も、清掃が行き届いており綺麗であった。

また、明治時代の建築を彷彿とさせる赤煉瓦の壁に、白土の壁のコントラストは個人的に凄く素敵な雰囲気に思う。

 

「着いたには良いが、問題は此処の鎮守府に誰がいるか…ん?」

 

辺りを見回していたら、北東の方角に四人の女の子達を発見した。

 

一人は白短髪に右目を隠す半袖・ミニスカートとストッキングを身に付け。

一人は黄色の瞳孔で半袖・ショートパンツに茶毛混じりの黒短髪。

一人は両側に青髪をドーナツのように纏めて半袖とミニスカートを着ける、透き通った蒼の瞳。

一人は炎のような赤い瞳に腰まで届く長い黒髪、左右不均一のストッキングと長袖・ミニスカートの女の子。

 

そして四人の内、三人は中々の凶器を持っていた。何処の事とは言わないが。

 

「あ、君達」

 

「ん、うちらを呼んだ?」

 

「そうそう、君達に話を聞きたくて」

 

「浦風姉さん、不用意に男に話しかけるな。あの時と同じ目に遇うぞ」

 

「磯風…」

 

蒼髪の女の子…浦風を、黒髪の女の子…磯風が睨み付けて威圧している。その様子をただただ見守っているしかない白短髪の女の子。空気がギスギスした刺々しく、重々しい嫌な感じになってきた…

 

「まま!話だけでも聞こうじゃあないか!んで君は?どっから来たのかい?」

 

黒短髪の女の子が空気をまろやかに、話しやすい状況を作ってくれた。話を切り出せる。

 

「実は今日、此所に着任する事になった『提督』なんだ。名前は牧園 アキラ、君達は華裏鎮守府に在籍する艦娘達かな?」

 

此処は流れから普通に自己紹介をした。だが『提督』の名を聞いた瞬間、四人の顔がどんどん険しく、視線はドラマで犯人が仇を見る目かのような目に変わった。

 

その中でも特に磯風の視線が、蛙を睨み殺す蛇のように痛くなる。紅玉の瞳を赫焉に染めながら、『絶対に許さない』と訴えかけているかのように。

 

「お前が大本営のクズ共が派遣した新しい提督と言うわけか。ならば、お前に教える事もない。今すぐ私達の視線から消え失せろ」

 

「大本営のクズって…!俺は!」

 

続く言葉を遮る、1発の激音。磯風の手には拳銃型の高角砲が握られ、砲口からは硝煙が一筋立ち上る…。

 

「これは『警告』だ。次はない」

 

そう告げて俺の横を通り過ぎて行った。初対面で高角砲を撃つという、とんでもない事を仕出かした彼女…磯風。だが、それ以上に感じた事がある。

 

(あの目…、磯風の目は底知れぬ憎悪と憤怒を感じた。一体何が彼女を…)

 

疑問は募る。しかしこの出来事はまだ、華裏鎮守府の抱える数多の障害・問題の一角にしか過ぎなかった事を、この時の俺は知りもしなかった…。

 

* * *

 

鎮守府に入った俺はすぐにその異変に気付く。往来する女の子達…艦娘の視線。磯風のように憤怒や憎悪を抱くもの在れば、哀れみを含むもの、期待を抱くものと…様々。

目の前に居る彼女を除いては。

 

「貴方が新しい司令官になる方ですね」

 

「ああ。牧園 アキラ、本日付けで華裏鎮守府在住の提督になった。よろしくお願いいたします」

 

「アキラ司令ですね、初めまして。私は吹雪(ふぶき)と言います」

 

黒襟に赤の刺繍が入ったセーラー服を纏う彼女は、この鎮守府の女の子…艦娘達と違い、俺を普通に見てくれている。まずはこの鎮守府に何が起きているのか、それを知らずして、提督は務まらない。

 

「あの~…吹雪。ちょっと良いかい?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「此所にいる艦娘は、…俺に対して何か恨みでも有るのか…?俺が何かしたのか?」

 

やはり気になる。磯風だけじゃない、此の鎮守府の空気が異質過(おかしす)ぎるのだ。

 

「磯風ちゃん達に遭ったんですね…御愁傷様です」

 

いきなり物騒な事を言い出した吹雪に困惑する。彼女は鎮守府の事を話した。

 

「…この華裏鎮守府に在住している艦娘は私以外、元は『他の鎮守府に居た艦娘』なんです。

 

でも皆、鎮守府で問題を起こして左官されて此所に流れ着きました。司令殺しや規律違反、度を越えた実験に金銭の不当流用、敵である深海悽艦を保護…

 

他にも自らの意思でこの鎮守府に来たり、冤罪で流されたり、色々ありますけれど…」

 

この鎮守府は罪を背負った者や除け者達を閉じ込める監獄だった事を、俺は覚らずして思い知らされた。だが時間は待ってはくれない。

 

「…形はどうであれ、取り敢えずよろしくな吹雪。まず俺は何をすれば良い?開発か、建造か。はたまた…」

 

これ以上考えても仕方ないので、早く業務を始めようと俺は吹雪に自分の役目を問う。提督として着任した以上、やることをやらねばならない。

が、彼女から帰って来た言葉は無情にも、俺の心を打ち砕く。

 

「アキラ司令。私達の…華裏鎮守府は、『大本営認可の鎮守府』では無いんです」

 

静寂と思考停止。暫くして絞り出したのは「非公、認…?」という言葉だけだった。

 

「はい…。

 

この鎮守府は公認された鎮守府ではありません。大本営に認可されてない事は、資源の供給申請や作戦成功による戦果も記録されません。他にも建造(けんぞう)や保護(ドロップ)した艦娘の名前も記載、艦隊運用等にも様々な制限が設けられています。

 

それから華裏鎮守府は、大本営や他の鎮守府の命令に対し、拒否権の行使が出来ず、資源・資材の補助申請や作戦中に於いて艦隊運用の被害請求を担わなければいけなくて…。

 

私達は遠征しても、資源や資材を大本営等に、常に底辺を歩く状況に…」

 

吹雪が近くの戸棚を開け、そっと彼に手渡したのは、棒と折れ線グラフで事細かく記載された一枚の紙。

『華裏鎮守府の資源管理表』と書かれた其れを見たアキラは言葉を失ってしまう。

 

一時期は50000まで貯めた資源も、残り1000近くまでしかない事が多々。酷い時は資源が100を切る事態も。

 

「…想像以上に、置かれている状況が不味い」

 

つまり華裏鎮守府は、大本営と大本営に加担する鎮守府、並びに他の鎮守府との間に越えられぬ壁があり、其の下に華裏鎮守の逆ピラミッドの最下位に在り、ついでに不認可の為に、此方が出来る事はあまりにも限られているという事。

 

更に他の鎮守府には在る筈の拒否権の行使。これが華裏鎮守府には一切無い。故に大本営から与えられた命令は絶対で、逆らったらどんな罰が下されるか分からず、最悪の場合、提督共々華裏鎮守府の全滅は必至となる。

 

そして大本営が発令する大規模な作戦において、財政難に陥った際に、大本営に対し全うな理由や現状を鎮守府設置の供給申請書に記入し送る事で、資源・資材を鎮守府や提督の実績に応じるだけの量が手配される。

しかし華裏鎮守府は非認可鎮守府であるが故に供給申請書が無いので支援を受けられず、其処に浪費癖のある無計画な提督連中の尻拭いで常に貧乏と、これらの三重苦行を強いられているのだ。俺は頭を抱えるしかなく、悩んだ末に一つの決断を下す。

 

「吹雪、大淀さんを大至急呼んできてくれ」

 

真守曰く、「困った時は大淀に頼め」だそうだ。助けて貰う事としよう。

 

* * *

 

「吹雪さん、軽巡・大淀(おおよど)。到着しました」

 

白シャツに腰骨がチラリと見える青のミニスカート、茶色と銀のニーソックス、長い髪に黒縁の眼鏡を着けた、如何にも秘書と言うべき大人な女性がやって来た。

 

「…」

 

「…?あの~司令、官…?」

 

「…大淀さん可愛い」

 

「え…!?」

 

大淀が停止している。そして赤面から涙目で此方を見ている。

 

「え、どうしたの大淀さん?!」

 

「い、いえ…可愛いなんて言われたのが今までなくて…」

 

何だろうか…エロい。何がエロいかと言うと潤んだ瞳や唇、健康的な体つきとか、チラリと覗く鼠形部とか太腿とか。今まで恋愛に興味無いまま生きてきたけど、初めて異性を意識した瞬間だと思う。

 

「提督!」

 

「大よ!!?」

 

ふ、吹雪がいるにも関わらず、大胆不敵にキス…だと!?しかも俺の初めてが…奪われた!舌を絡めて来てるし、唾液とか唇が甘いし、何だこれは!?

 

「ん、んん…はぁ…。ふふっ…可愛い♥これからよろしくお願いします。提督♪」

 

上機嫌に、そして雑じり気のない素晴らしい笑顔で彼女が微笑んだ。これは一杯食わされた。

そして吹雪よ。そんな目で俺を見るな、恥ずかしい。

 

「えっと…話を進めないと…」

 

全くもってその通りです、本当にごめんなさい。

 

「とと…話は吹雪さんから聞きました。華裏鎮守府の現時点の備蓄情勢はこのようになっています」

 

大淀さんから紙を受け取り、俺は三度頭を抱える事に。

燃料、弾薬は目算で出撃1回分。鋼材は駆逐艦だけを修理するなら足りる、ボーキサイトは雀の涙。

 

「…遠征部隊は行ってますか?」

 

「はい、各資源をバランス良く集めに」

 

「そうか…」と一先ずは安心出来る。何をするにせよ備蓄が無ければ話にすらならない。これなら…

 

ブゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!

 

「な、何だ何だ!?サイレン!警報!?」

 

「大淀さん!吹雪さん!見張りの電より、鎮守府各員に通達!鎮守府より北北西沖にて此方に接近中の敵艦隊見ゆ!

 

距離12000!構成部隊は…嘘!?

 

戦艦ル級改flagship…重巡リ級改flagship…駆逐イ級後期型エリートが…3体!?補給ワ級flagshipも多数確認…!」

 

電と言う娘の言葉に吹雪と大淀の目の光(ハイライト)が消え失せ、後を追うようにアキラも敵の殺意に青ざめた。

 

何故ならル級改・リ級改、そして後期型駆逐など本来、此の海域(ば)に居てはいけない連中共(しんかいせいかん)。それが何の怨みが在ってこの場所に現れたのか、アキラには全くもって理解不能(わからない)のだ。

 

(いきなり俺…詰んだ…!?)

 

迫る精強の敵艦隊!

尽きかけの資源!

壊れかけの提督(アキラ)!

 

前途多難の華裏鎮守府に置ける提督生活が、今始まる!

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