※この作品はR-18です。

将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~   作:ガリアムス

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*更新遅れてしまい、申し訳ありません。今話は少しエロ表現が含まれます。

*艦これアーケードの木曾改二の魚雷発射シークエンスがカッコ良すぎる…何あのガチャンガチャンのズババババババは…


将来を有望視された青年が、冤罪で鎮守府に着任されました。 ~準備編:香取姉妹と大井の教鞭~

「アキラはん。これから一週間以内に、君にはやらなぁアカン事を『全部』やってもらうで」

 

龍驤が湯船に浸かるアキラの前に屈み、此方を見つつ言った。

 

「何からやるかは、君に選ばせたるで?内容は『頭脳の特訓』・『身体の特訓』・『心の特訓』。以上の三つ。

どの特訓も、今の華裏鎮守府に在籍しとる其の道のエキスパートの艦娘達が少ない日数で行う、『最高峰』にして『最凶最悪』の訓練や。三つの特訓を其々、約二日間掛けて行う。失敗したら待っとるのは『確実な死』のみやね」

 

ゾッとする。湯の中に居るというのに全身が凍て付き、動けなくなった。また命が絡むのか…そんな思考が働いてしまう自分が、本当に嫌になる。だが…

 

せやけど、もしも、や…。龍驤の口から出た言葉はとんでもない事を彼に伝えたのだ。

 

「もし、アキラはんが此等を全て乗り越えられた時。

 

君は『大本営の中将』に匹敵しうるだけの力と知識を得られるで」

 

アキラは驚きの表情で目を見開き、龍驤を真っ直ぐ見つめる。大本営内に存在する将位。ピラミッド状に形成された順位に置いて『中将』の称号は上から数えて『四番目』。

それより上に在るのは『大将』、『総大将』、そして『元帥』の三つのみ。

 

「ちなみにこの特訓、今まで受けた此処の提督(れんちゅう)で生き残れた奴は『唯の一人としていなかった』んや。皆、最初の特訓で一時間もせな内にギブアップ…そうやなくとも殺してくれぇと懇願するばかり。

 

…それでも『本当に』、やるつもりやね?アキラはん?」

 

念押し。彼女がそうまでするのは、それだけの危険が伴い憑き纏うからか。だが、もう彼の覚悟は既に決まっている。

 

「やります。やらせてください、先生」

 

「…そっか。ならウチはもう止めへんね。…死ぃ乗り越えて、その先の生を掴み取ってこいや」

 

『はいっ!!』

 

「タオルです。使ってください」

 

タイミングを見計らっていた大淀が彼に真っ白なタオルを渡してきた。彼は湯船から上がり、ありがとうと受け取ると体を拭きつつ、畳まれた衣服に袖を通す。

 

「さてさて、改めて聞くけど…先ず何から受けるつもりや?」

 

「俺は…」

 

* * *

 

華裏鎮守府内、某所…

 

「此処か…」

 

龍驤の指示に従い、入渠ドッグから指定場所まで移動した彼の前には、赤い扉がある。龍驤曰く、この扉の先には『頭脳の特訓』を行う際にのみ使われる特別室が在るらしい。

普段は厳重に鍵を閉め、龍驤自身も入る事は出来ない。

 

「………………………」

 

色々な事を知らな過ぎた彼は思う。

 

大本営の理不尽な采配によって、華裏鎮守府が損害を被るような事態が起きた時、吹雪や大淀達に助け支えられ、どうにか乗り越えられた。

だが、何らかの理由で艦娘(かのじょ)達の力を借りれなくなった場合、それらを自力で解決する必要がある。アキラ自身、育成学校を皆勤を取ったという快挙こそ在れど、御世辞にも勉学が良く出来た人間ではない。もっと言ってしまえば、一般的な大学卒業生よりも成績は低いのだ。

 

彼は『その程度』の人間であるから、唯々努力し、考えて、行動の積み重ねを続けた。

無我夢中で学校の授業に食い付き、テストともなれば一ヶ月以上前から準備を始め、閉校時間ギリギリまで居残り、教科書にノートとにらめっこ。

その頑張りも有ってか苦手科目も赤点を回避し、得意科目は『それなり』には取れた。

 

だが、それでも。

彼の実力は『その程度』でしかない。謂わば一般的な『凡人』であり、『二階堂 護』のような『出来た人間』ではないのだ。

 

其処に在るのは、自分と彼との圧倒的であり、同時に決定的なまでの『差』。

才覚、人望、カリスマ…それら全て加味したところで、アキラは『護には勝てない』と少なからず自覚している。

 

「…何考えてんだろ。今は決定戦の予選突破が第一だ」

 

頬を両手で叩き、迷いを払い、気合を入れ、集中し直す。華裏鎮守府が大本営に認められる為には、最強鎮守府決定戦で優秀な成績を収める必要がある。

無論、大本営(あちら)からしても、華裏鎮守府(じぶんたち)を非公認で都合と勝手の良い所のままにしておきたい筈だ。…十中八九、妨害工作に策謀を幾重にも張り巡らせ、此方を迎え撃つだろう。

 

手を添え、横に滑らせ、扉を開く。

 

「失礼します。龍驤先生から紹介され、頭脳の特訓を受けに来ました」

 

声を発したが反応は無く、アキラは部屋の中へと進む。内部は学校の教室内と同じような造りとなっており、木製三段ロッカーと掃除道具箱、黒板に机と椅子が置かれていた。

 

「誰も居ない…?」

 

その時、彼の後ろで扉が勢いよく閉まる音が静寂の室内に木霊のように鳴り響く。

 

「え、嘘だろ!?」

 

急いで扉の前まで走り開けようとするが、外から鍵が掛けられており、ビクともしない。

 

「ちょっと待ってよ!これどうやって出んの!?」

 

「その扉が再び開くのは、特訓開始の合図から二日後ですよ。提督さん」

 

耳に届いたのは、妖艶で甘い、心を堕落へと導く、優しい声。細い何かが背中をなぞり、低反発の柔らかい温もりが当たっている。恐る恐る振り返ると、其処には艶やかな銀髪のツインテールに帽子を被る女性が一人。

 

衣服は将校が着用する正肩章と袖にはフリルが付いた礼装擬き。グレーの短スカートに、黒ハイソックスの合間から白い美肌が見える。

 

「君は…?」

 

「私ですか?華裏鎮守府在籍、第二演習艦隊主審並びに海上演習艦隊副旗艦を務めています、鹿島(かしま)と申します。

これから、よろしくお願いしますね」

 

ウフフ♪と中屈みで目配せと共に二の腕で、自身の胸を強調したポーズを取る彼女。

『言葉遣い』だけを見れば、優しい印象を覚えるだろう。

 

だがしかし、声に加えて一連の行動と仕草から、アキラの中に設けられた異性に対するボーダーラインは危険警告…つまり、レッドアラートを鳴らしていた。

 

『一瞬の隙さえ見せるな』

『堕落に導く等、奴には容易い』

『捕まれば二度と戻れない』

 

そんな声が脳内で乱反射を続けている。

 

「それはそうと…提督さん。最近、大淀達と体を重ねてなくて『欲求不満』になっていませんか?」

 

「いや、君は一体何を言ってるんだ」

 

「嘘付いても駄目ですよ~♪提督さんの視線。自分では意識していないのでしょうけど、すごぉく…『エッチ』なのを感じます。

 

鹿島にわぁ~…お・み・と・お・し、なんですからね」

 

密室で逃げることすら叶わぬ状況で、此方を甘く煽ってゆく。女性というのは異性(おとこ)の視線に対して、とても敏感であり、そして彼女自身もまた、確実に男を捕まえられる力がある。

小悪魔の視線、それとは全く真逆の優しい声。柔らかく谷間を形成できるだけの豊満なバストに、コルセットで絞めたような細い腹回り。

 

『今すぐに襲い倒したい』と、冗談でもやりかねない一縷の感情を心中に懐いてしまった己が、本当に恐ろしい。

 

が、自分はそんな行動を取らなくて済んだ。何故なら…

 

 

 

ーーーーー鹿島。貴女、何をしているの?

 

 

「…へ?あ……………」

 

鹿島の表情が一変して絶望に染まり、全身の震えが止まらない。

 

彼女の後ろに立っていたのは二人の女性。

片やオリーブ色の長髪を後ろに束ね、銀色のフレームの眼鏡を着けた、タレ目で翡翠色の瞳。鹿島と同じような軍の礼装なのだが、黒のネクタイを結び、黒いストッキングに灰色のピッチリしたミニスカートとハイヒールを着こなす。

鹿島と言う少女と比べ、一切悪ふざけの無い真面目な服装と立ち姿は、まるで高等大学の教壇に立つ、エリート女教師そのもの。

 

片や赤茶のセミロングの髪を揺らし、額に無数の青筋と暗黒の笑みを浮かべ。香取と同じきっちりした服装で身を固めた女性は、手に握った教鞭をペチッ…ペチッ…と、プログラムされたように等間隔で叩いている。

 

「鹿島さん。私、言いましたよね?提督を誘惑したりするのは止めなさいって。五つ前の提督が華裏鎮守府から居なくならなければいけない理由を作ったのが、貴女自身だって事を忘れたかしら?

 

忘れてるなら、漏れ無く…大きくて、冷たくて、素敵な『酸素魚雷』で、貴方の穴と言う穴を貫いてェ。

二度と閉まらないような、ガバカバのパクパクにしてやっても良いんですよ?」

 

「鹿島。後で『再教育』しますからね。もう『手加減』はしません、本気で其の歪に曲がった性格を叩き直してあげますから…。フフフ…フフ♪」

 

「ごめんなさい許してください、再教育と魚雷は本当に勘弁してください、死んでしまいます御願いします」

 

二人を前に土下座し、ひたすらに赦しを乞う。取り敢えずは此方は助かったと思っていた。

 

「さて…提督」

 

が、視線を向けた香取の放った何気無い一言。

刹那、全身のありとあらゆる毛が逆立ち、猛烈な寒気に襲われ、震える。

 

「さっそく始めましょうか。…『時間一杯』、貴方を鍛えてあげましょう」

 

「地獄にようこそ。弱音と反発、命乞いは一切受け付けない。『死ぬ迄』で頑張りなさいな」

 

黒い笑み。振るわれる教鞭。

丸腰無防備のアキラは、処刑台という名の学習机と椅子にそのまま連行され、座らせられた。

 

「では、私達の力を存分に見せましょう」

 

「さぁ覚悟しなさいな」

 

「提督さん。…頑張って!」

 

三人の美女に囲まれる。そして其々が衣服のボタンを開け、胸の谷間から取り出したのは、学校の試験で見るような折り畳まれた三枚の問題用紙。それぞれに『国語・数学・地理歴史・英語・社会の全科目』が記されていた。

 

「これは…?」

 

『無駄口を叩くな』

 

右側に立つ大井が汚物を見るような、死んだ魚のように冷酷な視線と静かな怒りを含んだ声で此方を睨み見る。

 

「このテストを『三十分』で終わらせ、尚且『満点』を取る事。其れが出来るまでは『食事抜き』よ」

 

始めなさい!と耳元で発せられた大声は、先程の冷酷さを更に増大させ、鼓膜を貫く。こうなってしまってはアキラは最早抗えない。

逆らえば動く所か、声の一つを挙げる前に殺される。大井(かのじょ)は必ずやるだろう。

 

僅かながら瞳に恐怖の雫を浮かべながらも、彼は何とか問題を解き、解答欄に記入してゆく。

 

だが…

 

『はい、三十分経過しました。筆記を止めてください』

 

「えっ!?」

 

体感僅か十数分、香取が告げた言葉に思わず声が出てしまう。

 

「…全く出来てませんね。では次の問題用紙を先程と同じ時間で満点を取ってください。始め」

 

再び胸の谷間から取り出し、眼前に広げた用紙にアキラは言葉を出せなかった。何故なら、それら全ての文章が『英語』で、回答も全て『英語記入で回答せよ』と書かれていたのである。

 

「因みに其の問題用紙。此所で提督をしていた人達は『当たり前のように』解けた問題です。解けなかったら…恥ずかしいですよ?」

 

鹿島が横から此方の顔を覗いて、そんな事を呟いた。アキラは其の一言に筆を走らせ、必死に躍起になって、問題を解く。果たして結果は…

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 

「話になりません。言っては悪いのですが…よく卒業出来ましたね?」

 

英語の解答欄を見た香取が呆れた様子でアキラを見て、大きな溜息を付く。机に置き直された用紙には、大多数が赤ペンの×印で埋め尽くされ、15点にも満たない惨状が其処には在った。

 

「…言わせてくれない?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「そもそも時間無い中で、こんな難しい問題解かなきゃならない此方の身にもなって欲しい。其れか、せめて一時間ください」

 

それは無理よと言ったのは大井であり、自分の正面に立ち、じっと此方を見つめて言った。

 

「本来こんな短い制限時間で問題用紙を回答させるなんて、貴方からしたらどうかしてると思うでしょ?

 

だけど『やられた』以上、そうするしか方法が無いのよ」

 

「やられた…?」

 

三人は小さく頷いて、香取が事の本末を話し出す。

 

 

アキラより三つ前に華裏鎮守府に着任した、ある優秀な提督が居た。

 

其の人は、数在る提督達の中でも作戦や計画の立案に長け、大本営が強いた幾多の作戦に対して、常に120%以上の結果を出しながら、短期間で乗り越え続け、艦娘達は一縷の希望を抱いたという。

 

彼は華裏鎮守府の力を大本営に証明し、不認可を撤廃させ、鎮守府の艦娘達を差別と軽蔑で縛り続ける鎖から解き放ち、自由にしたいと願っていた。だからこそ、あれほどまでに戦えたのだと、昔懐かしく誇らし気に語る。

 

着任から一年経過したある時、彼は大本営と『最強鎮守府決定戦の優勝』で『不認可取消し』の約束を、大本営大将に取り付け、其の為に身を粉にして勉学と艦隊訓練を取り仕切り、香取と鹿島と大井の三人は彼の力になるため、特別な訓練を行う。

其れが、『頭脳の特訓』の始まりであった。

 

寝る間も惜しみ、命を賭して、来るべき戦いに備る。

彼なら必ず、華裏鎮守府を優勝へと導いてくれると、華裏鎮守府の艦娘達の多くは確信していた…。

 

そして、最強鎮守府決定戦の予選が始まる。

一次予選…演習勝率は九割七分九厘。華裏鎮守府は文句無しの『一位』で通過。続く二次予選の学科試験、彼をよく知る者は「間違いなく彼は満点で通過する」と口を揃えて言った。

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は『最下位』となっていた。

 

不正(カンニング)等、彼が先ずやる訳が無い。

事前に取り組んだ過去の試験問題五科目全てで、満点を取っていた。

試験前日は早く眠り、しっかりと朝食を食し最高のコンディションで学科試験へと望んだ。

 

しかし、結果は残酷で。

現実は無情であり、そして無慈悲なもの。

 

最強鎮守府決定戦・二次予選での最下位脱落という、不名誉の烙印を押された彼の『提督としての』人生は、急転直下、底辺よりも更に下の下にまで落ちていく…。

 

最強鎮守府決定戦前から積み上げてきた他の鎮守府との連絡が取れなくなり、大本営からの新しい情報を何一つ手に入れられなくなった。

 

それにより誤った情報と正しい情報が入り雑じり、其れを元に彼の作戦が立案され、作戦中に多くの艦娘や鎮守府に本来想定していた以上の被害が及び、その情報は大本営を通して各鎮守府に拡散。

小さな畝りは波紋へと変わり、多くの提督達が彼を袋叩きにするという、異質にして異常な光景が出来上がった。

 

毎日毎日、朝から晩まで鳴り響き続ける電話の音と、受話器越しの怒号の声。

其れを取る度に三分以上、彼はひたすら頭を下げては、謝罪の言葉を述べ続けた。

 

其れが数ヶ月続いたある日の事。

彼は一枚の置き手紙と『ある証拠が入った差出人不明のUSBメモリ』を遺し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華裏鎮守府から忽然と姿を眩ました。

 

所々湿り気を含んだ紙は、彼らしからぬ感情を顕にした殴り書きの文章が羅列し、黒ずみかけた幾つもの紅い斑点が在った。

 

直ぐに明石の元で鑑定と解析が行われ、手紙からは彼の指紋と血液が検出され。USBメモリ内のファイルを開いた時、彼女達は『其の事実』に言葉を失い、絶望した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験終了三十分前、答案用紙を試験官に没収され、全く異なる物に変えられてた。

彼が絶対に解けないような問題が、幾つも羅列した物へと。

 

何より『試験中』でありながら、彼が絶望の中で苦しみ、最後の一秒まで抗おうとした姿を『隠しカメラ』で録り続け、時折見えた撮影者の『嗤い顔』が、華裏鎮守府の艦娘達の心を、確かに減し折った。

 

ある艦娘は、それまで人間に対し抱いた憎しみをより深く、強いものとし。

 

ある艦娘は、華裏鎮守府が絶対に逃れられぬ地獄の最底辺に在るのだと悟り。

 

ある艦娘は、全ての流れが成すままに身を委ね、思考と歩みを止めた。

 

そしてある艦娘は、消えてしまった『彼』と同じく、大本営と戦う意志を持つ提督が着任した時に備えて、自らを高め始めた。

 

 

「提督さん…。…理解して、頂けました…か?」

 

アキラは何も言えなかった。

 

未だ未知の存在である深海棲艦から、艦娘達を率いて日本を、延いては世界の海の安全を守る使命を全うしなければならない筈の海軍大本営。

其れが絶対の権力を振り翳し、度を通り越した暴挙を奮い、一人の人生を完膚なきまでに狂わせ尽くす、血も涙も無い鬼畜の所業を、嬉々として行うまでに腐敗している。

 

「…………ふざけるな」

 

「えっ…」

 

「絶対に…許さない。許す訳にはいかない」

 

握り拳を震わせ、歯を噛み締める。目は怒りで血走り、今にも爆発しそうであったが、慌てず深呼吸し、感情を踏み留めて、三人に言った。

 

「大井さん。鹿島さん。香取さん。三人が持っている知識を全部、俺に教えてくれ。あと、中途半端な手加減はしないで欲しい。

 

『死ぬ気』でやらなきゃならない。そして、華裏鎮守府が今後成すべき事も分かった」

 

目を綴じ、軈て見開いた時。彼は『今までに抱いた事さえない』言葉を口にする。其れが何を意味するのか、アキラ自身が一番よく理解していた。

下手をすれば『最悪の結末』に直結する言葉である事も。

 

「俺は。いや…俺達、華裏鎮守府は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大本営を、潰す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人の表情は一瞬こそ強張ったが、アキラの揺るがぬ決意秘めた瞳を見て、溜息を吐いた後、彼の前で片膝を付く。

 

「アキラ司令。其の覚悟、確かに受け取りました」

 

「我等、教練艦娘一同。貴方に己が運命を託します」

 

「全ての力を振るい、最大の敵を打ち倒しましょう」

 

「ああ。やってくれ!」

 

『はいっ!』

 

『頭脳の特訓』の部屋は戦場へと瞬く間に変わり果てる。鞭が振るわれ、紙が破け散り、彼女達とアキラの声が昼夜響く。

 

まるで狂喜に壊れたブリキの人形のような、恐ろしく怖い声が鎮守府中に響き続けた…。

 

* * *

 

四十三時間後、部屋唯一の出入口の鍵がガチャリと鈍い音を立てて外れ、同時に扉をコンコンとノックする人影が一つ。

正体は龍驤、今回アキラが『頭脳の特訓』を行うにあたり、香取・鹿島・大井の三名を召集し、部屋で待機させる指令を出した艦娘である。

 

「おーい、アキラはーん。生きとるかいなー?」

 

ガラガラと開けた時、龍驤は思わず鼻を摘まみ、息を止めた。

其れは、開けた瞬間に肌に焚き付けられた熱と蒸気、汗等に混ざった皮脂の嫌な臭いが鼻を襲ったからである。更に自分の足下どころか、床一面に丸まったり所々千切れた問題用紙が散開しており、何があったのかと柄になく心配してしまう。

 

慎重に歩みを進めつつ、自身に許された『特権』を使用し己の艤装を纏い、身構える。

 

「アキラはん!無事…か!?」

 

部屋の中にはアキラと教練艦娘達が居る。…のだが、色々と不味い状態だった。

主に目のやり場に困る的な意味で。

 

まず香取・鹿島・大井の『下着を含む衣服が机の上に積み重なって』おり。

香取は『うつ伏せ』、鹿島は『仰向け』、大井は『横伏せ』の『全裸状態』で木造の床に身を委ね、全身を『痙攣』させていた。

 

そしてアキラの顔は獰猛たる野獣の如き息遣いで、眼はギラギラと次の獲物を求め、彷徨い、龍驤と視線が合った。

 

「ウウウ…」

 

「ちぃ!鹿島が何かしやがったかいな、しゃあないわ!少し痛かろうが、気張りな!」

 

勅命の焔が掌に灯り、巻物が彼女の周囲に延びつつ、式神型の艦載機が独りでに動く。が、発艦指示を飛ばすより前にアキラの身体がぐらつき前のめりに倒れて、龍驤の小さな身体へ吸い込まれるように落ちていく。

 

「おわ!?ととと…」

 

驚きつつも受け止める。彼はというと、龍驤の耳元で寝息を立てながら眠り始めてしまった。

約二日通して特訓を受けたのだから当然か…。彼女はそう思いつつ、アキラを米俵代わりに肩に担いで運んで行く。

 

「アキラはん。先ずは『頭脳の特訓』、お疲れさんや。…せやけど、少し休んだら他の特訓もあるで。まだまだ始まったばっかりや、頑張って生き残りな」

 

 

 

大本営召集まで後5日と二時間弱…果たしてアキラは残る二つの特訓を終え、大本営中将と同じだけの力を得られるのだろうか?

 

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