将来を有望視された青年が、冤罪で問題山積みの鎮守府に着任されました。 ~地獄の底からこんにちは~ 作:ガリアムス
ヒトゴーマルマル。華裏鎮守府内中庭。
「さ、アキラはん。休憩は終わったし準備はエエな?」
「…はい」
水平線の彼方に朝日が昇り、冷たい気が祓われる。
片や華裏鎮守府提督の牧園 アキラ、片や『先導者』の二之名を有する龍驤。両者は十メートル程の距離で対峙し、向かい合う。時は来たれり。
「身体の特訓のクリア条件は『三つ』や。
一つ、ウチの心をアンタが救う事。
二つ、一定時間…まぁ『二日』やな。これが経過する事。
そして三つ、アンタがウチに『一撃』でも入れる事。
この内の何れかを満たせば、その時点で特訓終了や。
あと、此方は君を『本気で殺す』つもりでヤるから、覚悟しぃな?」
掌に勅命の炎球が燃え、巨大な巻物と十字の式神達が彼女の周りを舞う。
ゴクリと喉が鳴った。殺気で充ちる彼女から油断の文字は無い。真正面…面を向け、改めて思い知らされる、自分と彼女の『差』。
圧倒的…
次元が違い過ぎている…
化物…
心中に渦巻く感想は其ればかりだ。
才能に傲り昂る事無く自らを高め続けた先の極致に登り詰めた最強の熟達武道家に、戦い方等知らぬ馬鹿な凡人が挑むようなもの。
やると決めた筈の心が軋み、悲鳴を上げる。
恐怖で腰が後ろへ退ける。
が…
『ほないくでー』
先程まで立っていた筈の龍驤の姿が無い。
同時に響く、岩が圧力で砕き割れた鈍重音。
「……………………………ぇ………………?」
そして…
彼女の
「…ぁ……………が……………!?」
悶絶。耐え難い、声や言葉に表す事が出来ない。脳が痺れ、視界が白黒の暗転を繰り返す。胃が衝撃と苦痛から逃れようと溜めた消化物の逆流を行い、其れが食道を競り上がる。
人生で『何度も』体験した『生死に関わる』痛み。
然し、今回の
…グヂャリ。
得体に突き立てた刃を引き抜くよう、彼女の足がアキラの胴体から離れてゆく。靴先には紅い液体が僅かに付き、鋼鉄の灰色の中で其の色はより際立つ。
アキラの纏う白いシャツは靴が直撃した部分から、じんわりと赤の
「うっぶ…!?オエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
限界だった。彼女の靴が辛うじて留めていた逆流の栓を外し、彼は汚物を地面に撒き散らしてしまう。
彼女は艤装を身に付け、普段から設けられている身体能力の
勝負どころの話では無い、元々あらゆる面で劣る自分が龍驤に一撃見舞う事は愚か、触る事さえ夢のまた夢…。
「か…は……………。ち、…く…し…ょ…」
『おーい、倒れかけとる暇は…』
無いでッ!!
左足のカチ上げが顎を抉る。
脳が揺らされ、口と鼻から血が吹き出た。
意識を刈り取られ、視界が真っ白になる。
『おらっ、目ぇ覚めな!アキラはん!』
気付けの頭突き、其処から後頭部を鷲掴みにされての地面に顔を叩き付けた。辛うじてトンだ意識が戻るも、見透かされたように投げ飛ばされ、宙を舞う。
刹那、龍驤の姿が再び彼の前から消えた。
此の時、彼が最後に見た景色…。
それは『顔面を彼女に蹴り飛ばされ、血で染まった赤い景色の中を、サッカーボールのように地面を転がっている』ものだった…。
* * *
『情けねぇなぁ…オイ』
真っ黒な闇に覆われた世界。アキラは倒れたまま動けないでいた。
『大の男が女に負けるとか、恥ずかしかぁねぇのかよ』
…また聞こえる。心の中の更に奥底の深淵から。
『ヤツ』の声が聞こえてくる。それも今までよりも、ハッキリと、鮮明に。
『我ながら嫌になる。テメェ、それでも真面目に生きてんのか?』
倒れ伏す自分を、屈みながら見つめている。ぶすくれ不満気に睨む、瓜二つの姿をした『白いジブン』が居た。
「…少なくとも、…お前…………より、は…まし………だ……よ…」
途切れ途切れの、か細い声で言い返す。しかしそんな言葉に説得力は皆無である。
『まぁ良いさ。テメェがボコボコにされたお陰で、『オレ』が表に出られる。
其処で大人しく眠ってな。そして…
『永遠』に目覚めんな』
黒い糸が倒れた体に絡み付き、アキラをそのまま黒の液体の中へ引き摺り込んで行く。藻掻いて必死に抵抗するも、其の度に幾重にも巻き付き、引く力が強まる。
その内、彼の体の全ては真っ黒になるまでに至り。抗う力の全てを失って、漆黒の闇に呑み込まれ、消えてしまった。
『さぁ…蹂躙し返してやるかぁ!!!』
* * *
「……………」
サッカーボールキックを顔面に当てた龍驤は、更にアキラを追い詰めるべく、攻めようとしていた。
が、彼女の動きは不意に止まる。止まらざるをえなかった。
『アキラの心が読めなくなった』のだ。それも突然に。
本来、それだけならば、彼女からすれば『まだ』良い方。そのパターンの方が用意している対処方法は幾つもあり、問題ではなかった。
ところが、今回の場合は違う。
『彼の奥底から何かが湧き上がり、心を覆い潰している』のである。
過去まで振り返っても、このような現象が起きたのは『艦娘』だけ。
『人間』では、絶対に『ありえない』事だった。
「殴るかいな。こらぁ…」
ゴキゴキと骨を鳴らした彼女は先程と同じく、一瞬で間合いを詰める。振り上げた拳が流星の如き速度、烈風の圧を以て彼に迫った。
風が地に錯乱した小石達を転がす。
衝撃が空気を震わせた。
其の拳はアキラを…
『撃ち抜けなかった』
「………………………………………!?」
拳が『捕らえられて』いる。
左手の親指、人差し指、中指の三本で『鷲掴み』されているのだ。それもガッチリと。
「…『何者』や、お前?…いや、少なくともアキラはんや無いな?」
『………………………………キヒッ』
ナンダト、オモウ?
其の言葉を最後に、何かが『砕ける音』がした。
『マイッタナァ…ユビ、メチャメチャ、ニ。オレタナ …ガ』
「………やってくれおったな、ワレェ…!!!」
在らぬ方向に減し曲がり青く腫れ上がり、爪からはドロリとした粘着質の血が出る三本の指を澄ました顔で見つめ、アキラ(?)は悪魔の笑みで彼女に視線を送る。
其の先には苦悶の表情を浮かべた龍驤。彼女の拳が『V字』に折れて、血が大量に噴き出していた。
『カカカ…!ユビミッツデ、コブシイッコナラ、ヤスイダイショウデスンダナ』
「嘗めんなよ!」
無事な片手で覆い、力ずくで折れた拳を戻す。血が更に噴出するが、龍驤には関係無い。
突如として起こったアキラの異常なまでのパワーアップ…其の正体を探らねばならない。
「何が理由で変わったんかは聞く気は無い。…やけどなぁ、アキラはん。いや、『オマエ』に一つ確かめなアカン事が出来た。
『其の髪』と『其の瞳』…『深海棲艦』か?」
指の血を舐める青年。普通の人間が持つ光彩の『黒』とは、全くかけ離れた『真紅』。黒の中に茶毛混じりの髪はまっさらな『純白』。
『シンカイセイカン…?チガウナァ。オレモ…『コイツモ』。タダノ『ニンゲン』、ダカラナ』
「…そーかい。んなら、戦ってみるかい…なっ!」
三度、龍驤が彼の視界から消えた。今度は全力、手加減はしない。折れた拳を翳し、空気の爆発が肌身を引き裂く程の力で迫る。
撃つ速度は弾丸。真正面から拳を受けた彼の鼻が潰れ、血が飛散。
「!」
龍驤の首、それも頸動脈を掠める手刀。青年の鋭い攻撃は、普段では考えられない殺意を込めたもの。
バク転を高速で駆使し、流血と蓄積したダメージを諸ともしない身軽さで、アキラは彼女から距離を取る。
「こいつ!」
『イクゼェ…トメテミナァ!!!!!!』
獲物に狙いを定める虎のように地を滑り、彼は其処からクラウチングスタートの体勢を整える。そして、アキラの姿が龍驤と同じく目の前から消えた。
━━見えない、心が。
━━追えない、動きが。
本来なら、あの手刀も躱わせた。
『心理の先読み』が使えぬとも、体菅・呼吸・筋肉の動き、視線で相手の全てが分かる。
観察という経験から成立する絶対の自信と力、其れが龍驤には在った。
しかし、人は時として定められ、
『瞬き』。人が外界から入る光を調節する『無意識の行動』…反射の一つ。其れが彼女の運命を一瞬の内に決めた。
…腹部に衝撃走る。
「……か…ぁあ…………」
『イシュ、ガエシ…ダ』
瞳孔がぶれる。口から血が溢れ、視界がぼやけ、霞み、歪む。衣服ごと彼の細い腕と指が、己が鍛えた体の鳩尾を貫き、背中をも破り、指間には肉片がくっ付きぶら下がっていた。
『マァ…タノシカッタゾ。オマエハ…ツヨイ。オレガタタカッタ、イママデノダレヨリモ』
ズブズブと腕を引き抜こうとした、その時。二の腕を掴む手が二つ。
「ごぼっ…い、行かせへん…。お前は、ウチが…止める…!」
『…ケッチャクハ、ツイテイル。コノママジャシヌゾ…オマエハ』
「誰のせいでこうなった…ゴホッ!」
血が止まらない。立っている事さえ厳しい状態であるのに。
━━━━━━アカンわ…コレ。
自分の後ろから、ハッキリと聴こえる…足音。
水に落ちた後、ずぶ濡れた身体で泥道を歩くような、そんな歩き方。
髑髏の顔に赤い炎を燃やし、巨大な鎌を抱える…『死神』。
今、死を与える者が自分の背中に立っている。
「…へへっ………どうやら、ウチは此処までかも、しいひん…」
『?…ナニヲ』
「冥土の土産や…喰らって目ぇ醒ませや呆けぇ!」
眉間に走る一撃。
脳が揺らされ、体が飛ぶ。
貫かれた体から血が大量に流出し、足下を赤く染め上げる。
『アガ…イマノ…は!?』
━ドクン…
『マサカ…!キサマ…!?』
━ドグン…!ドグン…!!
『コレが…狙い…ダッタノ…がぁあ!?!」
━━━━ドグン…!ドグン…!!ドグン…!!!
「ああ、そうや。ウチの二之名、忘れた訳や無いやろ?アキラはん。
『生徒』が道を踏み外し掛けたんやら、ソイツを『覚醒させて』、元の正しい場所へ導き返してやる。其れが…『先導者』の役目やからな」
『ウガアアぁああああああああああああああァアアアアアアアア!?!?!?!!!!!!』
青年は断末魔の叫びを挙げながら、肩から崩れ落ちて地に体を伏せる。髪は『純白』から『茶毛混じりの黒』へ戻っていた。
「…ゲホッ。流石に無理、し過ぎた…かなぁ…これは」
━━まだだ、倒れるな。やらなければならない…自分は。この子に教えられてない。『後の先』を。其の技術を。何も。
薄れ消えゆく命と意識を繋ぎ止め、彼女は一歩、また一歩、倒れ動かぬ青年へと歩み寄る。
「アキラ…はん。ウチは…ウチはな。信じとる…。
君なら、いつか…。いつか、きっと…この鎮守府を。…━━━━━━━」
━━━━━━━━━糸が切れる音がした。
其処から先の言葉、景色を。彼女は見る事も、紡ぐ事も出来なかった。
* * *
華裏鎮守府内、医務室。
「……………う、あ…………?」
木造りの天井と柔らかい布団の感触に、アキラは重い瞼を開く。窓の外に広がる空は夕闇に染まった黄昏時、天にはうっすらと三日月が浮かび、星々が瞬いている。
「此処って…うっ…!?」
頭に雪崩れ込む無数の
…ある『映像』を除いては。
自分の指が、龍驤の拳を破壊した。
自分の腕が、龍驤の腹部を貫いた。
「あ…ああ…」
左手を見た。親指、人差し指、中指には包帯か巻かれ、ギプスが取り付けられている。
右手を見た。隅々まで洗われていたが、腕に残った感覚は、この先一生消える事は無い。
「俺は…俺は…ッ!!!」
犯した間違い。自分の罪。
胸が苦しくなる。呼吸が乱れ、頭が軋む。
髪を掻き毟り、頭を埋め、目を瞑った。
「アキラはん」
たった一つの言葉が静寂の室内で木霊した。
震える眼で、青年は声の方へと顔を向ける。
「あの一発はかなり応えたで。よぉ出来るようになったやないか」
医務室の入口、其処に何時もと変わらない表情で龍驤が居た。
「先生…」
「ウチが『瞬き』に合わせて腹をぶち抜くなんて、そうそう出来る芸当やない。すごいやんか」
天晴れと言った具合に評価し、彼女が歩み寄る。
「…違うよ、先生」
「ま、何にせよアンタはウチに一発当てられた。約束は約束や、最後のし『違うんですよ!先生…!!!』…………」
「俺…自分の心の奥にいた自分を抑え込めなかった…!力を…制御出来なかった…!先生を傷付けて…!命を奪いかけた…!
俺は、自分が許せない…!!!」
顔を押さえ、歯を食い縛る。
苦しくて仕方無い。辛くてしょうが無い。
不甲斐ない。惨めで情けない。
どうしてこんなにも、自分はこんなにも弱いのか。
「アキラはん」
ポンと肩に彼女の手が置かれた。
「君が陸奥に言うた事、忘れとらんか?『人は失敗から無限に成長出来る』んやろ?
だったら胸を張り。失敗した時こそ堂々としな。
アンタの胸ん中にはウチを負かした、すんごい力が眠っとる。やったら其れを自分の物にして、自分の道を阻む奴等をブッ飛ばす力にしぃ。
アンタにはウチや吹雪、大淀や金剛達が居る。せやから自信を持っていきな!」
バシンと背中を叩かれた。それはとてつもなく痛い。しかし同時に体の底から熱いものが込み上げてくる。
「ま、今回で『後の先』を習得出来んかった訳やけど、またウチが教えてやるから頑張ろな、アキラはん」
「…ッ、はいっ先生!」
溢れかけた涙を拭い、青年は新たに決意を固めた。
己の中に宿る力を御し、そして自分のやるべき事を成す為に。
* * *
同時刻、某所某室内…。
カタカタカタカタカタ…。
暗闇の中で一人、ノートパソコンと向き合い何かを叩く者が居る。
「今日はこんくらいにすっかぁ~…」
「ん…おつかれ、です」
背中越しに、もう一つの声が響き、青白い電子光で出来た影が、もぞもぞと動く。
「何か分かったの…」
「ああ、『牧園 アキラ』について。ちょっとヤバイ事実が解った」
タブを最小化した後、其の者はマウスを慣れた手付きでスライド、デスクトップに在る『黒のファイル』を二度叩く。更に其処からパスワードを二回タイピングし、ロックを解除。展開したファイル内の項目、一つの画像の開きながら、後ろで寝惚け目を細める者に見せた。
画像には『赤と青と黄色のトリコロールカラーをした螺旋状の物質』が何千倍加工を施された状態で写されていたのである。
「………なにこれ」
「彼の『遺伝子』だ。普通の人間の遺伝子は元来から『赤』だと、どっかのえらーい学者が論文で発表したとか、どーたらかんたら言ってた気がする」
「…まさか…」
「あぁ、そのまさかだよ」
画像を見ながら、其の者は腕を組みつつ、衝撃の事実を口にする。
「牧園 アキラ。彼には…
『
「…でもさ。そんな事、可能なの…?」
「…『普通なら』無理だね。クローン技術や移植手術にしても、深海因子と艦娘因子は犬猿の仲。共存は本来出来ない。
…筈なんだけど、『吹雪さん』の例もある。其れに彼の体は両因子が在るのにも関わらず均衡が保たれてるんだ。私はおそらく、人間因子か牧園一族の遺伝子が関係してるんじゃないかと思っている」
「…もっとアキラの事、調べなきゃ」
「だな。…『彼の家族』について調べてみよう」
再びタイピングを始めた者、布団に潜り静かな寝息を立てた者。其の者達が見つめるのは、自らを満たす探求か、はたまた世界に潜む悪意への反逆か。
答えは誰にも分からない。
* * *
「「一日早く、大本営に向けて旅立つ?」」
再び華裏鎮守府内、医務室。
龍驤を通じてアキラに呼ばれた大淀と吹雪は、彼の発言に疑問の声を挙げた。
「簡単な話さ。大本営がフェリーの時間を操作してダイヤを変えないって保証は何処にもない。あっちが何かやらかす前に、此方から手を打つ。
大淀さんは明日の午前九時にフェリーの予約を入れて。其れから『民宿』にも」
「ホテルの方が…いや、確かに民宿の方が良いかも知れないですね」
「…これは俺の予感なんだけど、ホテルは不味い気がする。特に『都心部』なら尚更だ。パパラッチなんか当たり前のように沸いてる。仮に俺が大淀さんとホテルに入るとして、その場面を撮影されたとする。そして其のパパラッチが『大本営の息が掛かった』奴等だとする。
…確実に不純交際だとか冤罪を掛けられかねないぞ」
「…せやな。んじゃ、アキラはん。君の『対応策』を教えて貰おうか」
龍驤の言葉にアキラは頷き、語り始めた。
* * *
七月三十日。時刻はマルハチサンマル。
華裏鎮守府の正門前に、アキラとアイオワ、サラトガ、吹雪の四人が各自の手荷物を確認していた。彼等を見送りに来た大淀や金剛、阿賀野に陽炎と不知火、そして黒潮もまた、フェリーが予約通りに来るか気が気でならないと言った表情で忙しなくしている。
そんな彼等を嘲笑うかのように、まだまだ序の口と言わんばかりの太陽は、日本特有の湿気を含んだ蒸せ返る暑さで肌を照り付け、鉄板焼きのようにジリジリと、自分達を焼いてくる。
「オゥ…ジャパーンのsummerseasonは、veryhotね…全身カラカラのミイラにされそう」
「肌が焼けちゃうわ…。日焼け止めも買い足さなきゃ…」
「ごめんね、アイオワさん。サラトガさん」
「慣れればいいですが、やっぱり天気は気紛れですからね…」
普段とは違い、アキラ達の服装はラフな物だった。
アイオワは茶色いブーツと青のカットジーンズ、星条旗ビキニの上にシャツを袖で結んで、カウボーイハットと星形サングラスを頭にちょこんと乗せる『元気でセクシーな外国の女の子』。
サラトガの衣服はストレートな白のワンピース、豊満な胸まで掛かる大きな麦わら帽子を被った『育ちの良い御令嬢』。
吹雪は黒い襟の着いたシャツとスカートを青へ変えた服を纏い、何だか懐かしそうに自分を見つめる『夏を迎えた中学生』。
アキラは黒ズボンと白シャツ、青のネクタイという、『某企業傘下の会社に入社して三年目の若手会社員』である。
これらの服装、実は華裏鎮守府の歓迎会等で使われたりした衣装なのだが、捨てるのは勿体無いと一部の艦娘達が綺麗に保管していた物を譲って貰ったのだ。
「大淀さん。留守間の艦隊指揮、よろしくお願いします。それから明日は華裏鎮守府に在籍中の艦娘全員に休養を取らせてあげて欲しい。最強鎮守府決定戦が始まったら、まともに休める時間は殆ど無いと思う」
「了解しました、鳥海さん達に報告を入れて各員に伝達します」
「よろしくお願いします。…行ってきます」
アキラの敬礼に、大淀達もまた鏡写しのように敬礼で返した。かくして彼の最強鎮守府決定戦への戦いが幕を開ける。
まだ見ぬ強豪を相手に、彼等は優勝をもぎ取る事が出来るのだろうか?